
スクラバーでは、工場などの排気で化学物質や有害物質などを除去や分離をし、排ガスの排出基準を満たすようにします。
スクラバーの種類は、大きく乾式と湿式に分類されます。
乾式スクラバーでは、活性炭やセラミックなどの吸着剤で排ガスから化学物質や有害物質などを除去しています。吸着性能が衰えた活性炭やセラミックは、再生処理されてまたスクラバーに戻ってきます。
湿式スクラバーでは、水や薬剤などを散布してガスから化学物質や有害物質、粉塵などを除去しています。水を使用した場合、その水を循環させて利用しますが、水の汚れを浄化してから再利用されることもあります。
この記事では、スクラバーの各種フィルターに光触媒を利用する方法について検討いたします。スクラバーのメーカー様で光触媒にご興味のある方は、ぜひ銅ドープ酸化チタン光触媒をお試しください。
光触媒コーティングされた活性炭の活用
スクラバーに使用される活性炭を光触媒加工すると、どのようなメリットがあるのかを、ご説明します。
活性炭を光触媒加工すると半永久的な処理能力に
活性炭が化学物質を吸着してくれる性質を持っているので、スクラバーによる排気ガスの浄化にはとても効果的です。活性炭はいずれ目詰まりをしてくるので、活性炭の吸着能力が低下していきます。
活性炭フィルターをある程度使用して、排気ガスの処理能力が低下してきたら、新しい活性炭と取り替えます。取り換えられた活性炭は再生処理されて、またスクラバーに戻ってきます。
もし、排気ガス中に含まれる成分が、光触媒によって分解できる成分であれば、光触媒コーティングされた活性炭を利用することで、活性炭が半永久的に化学物質を分解し続ける性質を持ちます。
再利用も直射日光に当てるだけ
また、光触媒加工された活性炭の再生処理は、活性炭を直射日光などの光を当てておくだけですから、手軽に再生できます。塗布された光触媒の効果が持続しているのであれば、光触媒コーティングの再塗装は必要ありません。
実際には、半永久ということはありませんが、おそらくは10年以上効果が持続するものと思います。
排気ガスの成分によっては、光触媒を利用することができない場合もありますが、ほとんどの化学物質を分解できるものと考えます。
光触媒には、抗菌や抗ウイルスの効果もあるので、活性炭フィルターの使い方によっては、生物の研究所の排気にも利用できる可能性があります。ドラフトチャンバーに接続された小型の乾式スクラバーにも応用ができるのではないかと考えます。
スクラバーに利用すべき光触媒成分とは?
光触媒は、たくさんの種類があります。その中で、化学物質を容易に分解できる成分として、銅ドープ酸化チタン(銅担持酸化チタン)をおすすめします。
銅ドープ酸化チタンの性質
銅ドープ酸化チタンとは、アナターゼ型酸化チタンにナノサイズの酸化銅を結合させた光触媒成分です。酸化チタンは紫外線にしか反応しませんが、銅ドープ酸化チタンは可視光下や暗所でも触媒効果を発揮する成分です。
銅ドープ酸化チタンは、一般的な光触媒成分である酸化チタンでは分解が難しいとされる、ベンゼン環を持った化学物質をも分解ができます。そのようなことで、工場の排気ガスに利用されるスクラバーの多くに、銅ドープ酸化チタンでコーティング加工した活性炭フィルターが有効だと考えます。
弊社が主催して、銅ドープ酸化チタンで分解試験を行った主なガスは、次のものになります。
- アンモニア
- ホルムアルデヒド
- アセトアルデヒド
- エチレン
- トルエン
- キシレン
- スチレン
- イソプロパノール
- 酢酸
- トリメチルアミン
- メチルメルカプタン
他にも、銅ドープ酸化チタンをご利用いただいている企業様が、独自に試験された結果もございます。VOCの分解性能については、「揮発性有機化合物(VOC)を分解できる光触媒成分とは?」をご参照ください。
吸着剤の銅ドープ酸化チタン光触媒加工
活性炭やセラミックなどの吸着剤を銅ドープ酸化チタンで加工する方法は、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を塗布します。
塗布と言っても、液剤を活性炭にそのまま塗布すると、多孔質である活性炭の孔が埋まってしまい、吸着剤本来の性能が発揮されなくなる可能性があります。そこで、吸着剤の表面だけに光触媒コーティング塗装方法を用います。
弊社は、活性炭の表面に光触媒加工する方法で特許を取得しており、実績もあるので、少量生産であればすぐに対応可能です。テスト加工にも対応しているので、活性炭の光触媒コーティングをご希望の方は、弊社までご相談ください。
スクラバー内の活性炭フィルターの効果を高める方法
銅ドープ酸化チタンは暗所でも化学物質を分解する性質を有しますが、光を照射すればその効果が高まります。紫外線を照射すればなおさらです。
スクラバー内は暗所になりますから、活性炭フィルターに光を照射することで、光触媒の効果を高め、排気ガスの化学物質の濃度を下げることができます。さらに濃度を下げたい場合には、活性炭フィルターと光源を幾重にも重ねると良いでしょう。
また、スクラバー内やダクト内にも光触媒コーティング加工が可能です。スクラバー内やダクト内にも光触媒コーティング加工をしておくことで、スクラバー内やダクト内に付着する煤塵などを分解してくれる可能性があります。
可能性と書いた理由は、煤塵の大きさにもよるからです。光触媒は基本的に目に見えるほどの大きなものは分解ができません。分解は、ナノサイズほどの微少なものに限ります。
光触媒加工された
ステンレスメッシュフィルターを用いる方法
光触媒加工された活性炭を用いないで、光触媒加工されたステンレスメッシュフィルターを用いる方法もあります。活性炭では吸着ができないものを除去する場合、光触媒加工されたステンレスメッシュフィルターを用いることはいかがでしょうか?
ステンレスメッシュフィルターであれば、見た目で汚れ度合いが判りますし、洗って汚れを落とせるので、手軽に再利用ができます。
洗って利用するステンレスメッシュフィルターを光触媒コーティング塗装したときは、強固に定着させるために、加熱処理をすると良いでしょう。加熱温度は300℃ほどで熱処理します。すると光触媒コーティングが強固に定着します。
湿式スクラバーの水処理
水を使った湿式スクラバーの水処理に、光触媒が利用できるかもしれません。
水のシャワーで何を除去するのかによりますが、除去した成分を光触媒で分解することができる場合があります。また、そもそも湿式スクラバーを利用しなくても、光触媒加工されたメッシュフィルターで排気ガスを浄化できる場合もあります。
また、湿式スクラバー内を光触媒コーティング塗装しておくことで、湿式スクラバー内に苔やレジオネラ菌が発生することを防いでくれるはずです。これはまだ実験したことがありませんから、湿式スクラバー内に銅ドープ酸化チタンを光触媒コーティング加工した製品を開発したいメーカー様は、ぜひ弊社までご相談ください。
苔やレジオネラ菌の防止は、冷却塔の水処理にも利用できると思います。
以上、スクラバーの光触媒応用について検討いたしました。スクラバーに利用する光触媒の種類として、銅ドープ酸化チタンがおすすめです。その理由は、銅ドープ酸化チタンは酸化チタン単体では分解が難しい化学物質をも分解ができること、暗所でも触媒効果を発揮することです。
乾式スクラバーに利用される活性炭を光触媒加工することで、活性炭の寿命を大幅に延ばすことができる場合があります。また、活性炭ではなく光触媒加工されたステンレスメッシュフィルターを利用し、活性炭を利用しなくても良くなる可能性もあります。
湿式スクラバーでは、水処理で光触媒を利用できますし、光触媒を使えばそもそも湿式にする必要がなくなる可能性もあります。また、水処理に光触媒を利用すると、苔やレジオネラ菌などの発生を抑制してくれるはずです。
これらの効果は、スクラバー内に光源を設置することで、光触媒の効果を高めることができます。
ともあれ、銅ドープ酸化チタンが利用できるかどうかは、スクラバーでどのような化学物質を除去したいのかによると思います。スクラバーの光触媒利用なら、弊社までお気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。