光触媒は、布にもコーティング加工が可能です。
布を光触媒加工すると、布に次のような光触媒の性質を持たせることができます。
- 抗菌
- 防カビ
- 消臭
- 抗ウイルス
- 揮発性有機化合物(VOC)の分解
- アレルゲンの分解
光触媒は光エネルギーを受けて、アンモニアや有機物などを分解しますが、それによって布に悪影響を及ぼす場合もあります。
この記事では、布の光触媒加工をしたいとお考えの方に向けて、光触媒コーティング剤のメーカーが布の光触媒加工を本音で徹底解説いたします。
不織布の光触媒加工
不織布は、マスクやおむつ、フィルター、キルト、ウェットティッシュなど、私たちの生活の中で欠かせない布です。光触媒加工された不織布は、多くの場面で活躍することでしょう。
不織布マスクに光触媒加工をするとどうか?
不織布マスクを光触媒加工すると、表面に付着したウイルスやアレルゲン、雑菌などを分解してくれます。
マスクを着用して会話をすると、唾液がマスクに付着します。その自分の唾液の臭いで不快感を覚えたことは、誰しもご経験されたことでしょう。
銅ドープ酸化チタン光触媒を使った光触媒スプレー「アキュートクリーン」をマスクの内側に塗布しておくと、唾液の臭いが消臭できます。
「マスクに付着した花粉を分解できるだろうか?」とご質問をいただくことがありますが、光触媒で花粉は分解できません。なぜなら、花粉の大きさと加工された光触媒成分の大きさを比較すると、タンカーとサーフボードくらいの大きさの差になり、分解するのに膨大な時間がかかるからです。ですので、「現実的に分解はできない」とお答えします。
花粉が分解できない理由の詳細は、「光触媒では花粉を完全に分解できません」をご参照ください。
花粉から出るアレルゲンは分解できることを確認しております。
ウェットティッシュの光触媒加工はどうか?
ウェットティッシュは使い捨てですから、ウェットティッシュに光触媒加工すると、費用対効果が合わないと思います。
それでしたら、ウェットティッシュに使われている液剤に、光触媒成分が含まれるものを利用した方が良いと思います。
空調機の不織布フィルターを光触媒加工するとどうか?
テナントビルなどで利用されている大型空調機には、ロールの不織布フィルターが設置されています。不織布フィルターの前後の気圧差を計り、その差が一定量を超えると、ロールが少し巻き取られる仕組みになっています。
不織布フィルターを光触媒コーティング加工しておくことで、ロールを巻き取る速度が遅くなりますが、コスト削減にはつながりません。なぜなら、光触媒加工の費用の方が高いからです。
空調機の不織布フィルターに光触媒加工する理由は、「不織布フィルターを抗菌すること」です。
空調機の内部を点検口から除くと、不織布フィルターは真っ黒になっています。そこには、埃やカビ、ダニといった、いろいろな汚れが付着しています。その空気をまた部屋に送り返すわけですから、部屋で生活をしている人にとって健康に悪そうです。また、食品工場やクリーンルームであれば深刻な問題になりかねません。
不織布フィルターを光触媒加工することによって、抗菌効果を持たせることができるので、部屋の空気を浄化できます。
不織布フィルターに加工する光触媒成分は、銅ドープ酸化チタンがおすすめです。銅ドープ酸化チタンであれば、暗所でも抗菌効果があるからです。さらに効果を高めるために、不織布フィルターに紫外線ランプやLED照明の光を当てることです。すると、高い抗菌力が得られます。
ロールの不織布を光触媒加工する方法とは?
ロールになっている不織布に光触媒加工する方法は、次の2種類です。
- 光触媒コーティング剤をスプレーする
- 光触媒コーティング剤にどぶ漬けする
どちらの場合も、不織布の製造工程で行うことが望ましいですが、メーカーで光触媒加工をしてくれることは稀です。不織布のロールに光触媒コーティングをしたい場合は、弊社までご相談ください。
接着剤結合された不織布に光触媒加工するとどうなるのか?
不織布の製造方法の一つに、接着剤で繊維の交点を接着させる方法があります。この方法で製造された不織布を光触媒加工すると、「光触媒の効果で接着剤が分解されて、不織布が壊れやすくなるのではないか?」とお考えの方もいらっしゃることでしょう。
光触媒は有機物を分解する性質がありますから、もちろん接着剤も分解の対象となります。この場合、光触媒が接着剤を分解するほどの効果を発揮するためには、不織布に直射日光ほどの明るさの光を当て続けることが条件となります。
その不織布を、不織布フィルターなどといった光の当たりにくい場所にて利用されるのであれば、銅ドープ酸化チタンを利用したとしても、接着剤を分解するほどの効果は出ないものと思われます。
ポリエステル布の光触媒加工
ポリエステルの布にも光触媒加工が可能です。
ポリエステル布に光触媒加工する方法
ポリエステル布に光触媒加工する方法は、不織布と同様に、光触媒コーティング剤をスプレーするかどぶ漬けするかです。
ポリエステルの布は、水を弾きやすい性質があります。なぜなら、繊維を顕微鏡で見ると、表面が滑らかだからです。
光触媒加工では、光触媒コーティング剤を塗布する方法が一般的ですから、ポリエステル繊維に光触媒コーティング剤を塗布すると、液剤を弾いてしまって、繊維を均等に光触媒加工することが難しい場合があります。
そういった場合には、光触媒コーティング剤に界面活性剤を添加して濡れ性を高めたプラスチック用光触媒コーティング剤を用います。
ポリエステルの素材自体に光触媒を練り込んだらどうか?
ポリエステル繊維を製造する過程で、ポリエステルの素材自体に光触媒を練り込む方法もあると思います。
この方法ですと、ポリエステル素材の表面に出てきた光触媒のみが、抗菌や消臭の効果を発揮しますから、内部に入り込んでいる光触媒は効果が出ません。そのため、光触媒がもったいないと思います。
光触媒を練り込むのではなく、表面に加工した方が均一にまんべんなく加工できますし、効果が高くなります。
光触媒によってポリエステル布が分解されないか?
光触媒は有機物を分解するので、有機物であるポリエステルもその対象となります。ただし、光触媒成分と比べてポリエステル繊維は巨大ですから、分解されて消えてしまうことはありません。
しかし、直射日光に当て続けると、ポリエステルの表面が劣化し、場合によっては焦げたような臭いが出る場合もあります。特に、カーテンを光触媒加工する場合は、直射日光に当たり続ける場合があるので、注意が必要です。
カーテンに光触媒加工する場合は、光触媒コーティング剤を塗布する前に、下地保護剤(プライマー)を予め塗布しておきます。すると、プライマーによって光触媒が直接衣類に接触することを防いでくれるので、ポリエステル布の劣化を抑えることができます。
カーテンの光触媒加工するときの注意点は、「カーテンを光触媒コーティングするメリット」をご参照ください。
綿布の光触媒加工
綿布は、Tシャツや布団、タオルなど、肌に接触する箇所でよく利用されており、生活に欠かせない布です。綿布の光触媒加工について本音で解説いたします。
綿布へのコーティング塗装は耐久性が高い
綿糸は、顕微鏡で拡大して見ると、ポリエステルとは異なり、表面がザラザラしています。ですので、光触媒コーティングをすると、そのザラザラのとこで光触媒成分が付着するので、耐久性がとても高くなります。
衣類は洗濯を繰り返すため、光触媒成分が落ちやすいと言えますが、綿布への光触媒加工ですと耐久性が高いので、光触媒の効果が長期間持つ可能性が高いです。
綿80%、ポリエステル20%の布はどうか?
綿布は、綿100%とは限りません。耐久性を高めるためにポリエステル繊維といっしょに編み込まれた布もあります。そういったポリエステル混の布に光触媒コーティングすることもあることでしょう。
その場合、ポリエステルは先ほどご説明した通り、表面が平らなので、光触媒コーティングの耐久性が弱いですから、綿の箇所よりも先に光触媒コーティングが落ちてしまいます。
しかし、ポリエステルは臭いがしみ込みにくいので、光触媒コーティングが落ちてしまったとしても、綿の部分に光触媒コーティングが残っているわけですから、防臭は可能だと考えます。
色あせが心配
綿布が着色されたものや柄がプリントされているものは、その上から光触媒コーティングをすることになります。
その綿布で縫製された衣類を使用するわけですが、その衣類を着ているときや、洗濯後に干したときに、直射日光が当たることになります。光触媒に直射日光が当たると、顔料の色あせを進みやすくする性質があります。直射日光が1,000時間や2,000時間といった長時間当たることで、顔料が次第に劣化し、色あせが起きます。
衣類の色は、次第にあせてくるものですが、光触媒加工することでその劣化が進みやすくなるので、色物や柄物は対策をするべきでしょう。
色あせを防止する方法としては、光触媒コーティング塗装をする前に、下地保護剤(プライマー)を塗装し、その上から光触媒コーティング塗装をします。すると、光触媒が直接衣類に接触することを防いでくれるので、光触媒による色あせの進みを抑えることができます。
白色や生成りの布であれば、色あせは起こりませんから、用途にもよりますが、光触媒加工は白色や生成りのものに向いていると言えます。
布の汚れを落ちやすくできるのか?
率直に言って、効果が実感できるほどにはならないと思います。なぜなら、綿に付着する汚れは、綿の繊維の中にしみ込んでいくからです。
例えば、光触媒加工された衣類を販売したとして、それを着ていてケチャップが付いてしまったとしましょう。ケチャップは、目で見えるほどの大きなものです。それが繊維にしみ込んでいきますから、光触媒からすると、とても大きな物質です。
光触媒でケチャップが分解されたとしたら、おそらくは綿も分解されていることと思います。
そういったことから、「光触媒で漂白ができるのではないか?」と期待される方もいらっしゃいますが、それはできません。
下着のTシャツを着ている状態で除菌・消臭できなか?
下着のTシャツは白色なので、色あせをあまり気にする必要はありません。そのため、下地保護剤(プライマー)は使用しなくても良いと思います。
ここで、「下着として着用している間は真っ暗なので、除菌や消臭ができないのでは?」とお考えの方もいらっしゃることと思います。
確かに、下着のTシャツの上にはさまざまな衣類を重ね着するわけですから、Tシャツには光が届きにくいです。光触媒は、一般的には光が当たることで除菌や消臭の効果を発揮しますから、「下着として着用したら効果がない」とお考えになることは、ごく自然なことです。
光触媒コーティング剤として実用化されている光触媒成分の中には、光が当たっていなくても消臭効果を発揮するものがあります。その成分の名前は、「銅ドープ酸化チタン」といいます。銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤をTシャツに塗装しておけば、中に着込んだとしても、消臭してくれます。
光触媒は漂白剤に耐えられるのか?
光触媒成分の酸化チタンは、漂白剤の成分と化学変化を起こして、ピンク色になるという噂があります。
弊社の試験では、酸化チタン光触媒粉末に市販されている漂白剤を掛けてみたところ、色に変化はありませんでした。
光触媒加工された綿布を洗濯時に漂白しても、ピンク色に変色することは無いはずです。
光触媒加工で部屋干ししたときの除菌や消臭ができるのか?
銅ドープ酸化チタンで加工していたらできます。
部屋干しの場合は、室内の光しか当たらないわけですから、紫外線がほとんどありません。そのため、酸化チタン光触媒コーティングでは、効果がありません。
それに対して銅ドープ酸化チタンであれば、部屋の明るさがあれば、高い抗菌力を発揮します。また夜であっても、効果は落ちますが抗菌力を発揮します。
都心で独り暮らしの女性は、外に衣類を干して出かけられませんから、室内干しが基本です。銅ドープ酸化チタンで加工されたTシャツや下着などは、部屋干しをしても臭いが出にくいので、ヒット商品になる可能性があります。
タオルに光触媒加工したらどうか?
タオルに光触媒加工すると、タオルに抗菌性や防臭効果を付与できるので衛生的になるので、とても良いと思います。雑巾にも光触媒加工すると良いかもしれません。雑巾が臭いにくくなると思います。
タオルも綿100%のものであれば、光触媒コーティング加工の耐久性は高くなります。
以上、布の光触媒加工をしたいとお考えの方に向けて、不織布やポリエステル布、綿布の光触媒加工について、光触媒コーティング剤のメーカーが布の光触媒加工を本音で徹底解説いたしました。
光触媒コーティング剤の開発や布の光触媒加工、光触媒加工された布製品の開発なら、ぜひ当社にご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。