光触媒は、光が当たることによって除菌や消臭、アレルゲンの分解といった効果を発揮します。
この効果を布団に適用できると、洗濯がしにくい、もしくは出来ない布団にとって、とても大きなメリットがあります。
弊社は光触媒コーティング剤のメーカーですから、光触媒布団を販売しておりませんが、布団メーカー様に向けて、光触媒布団の可能性をご紹介したいと思います。
光触媒布団の効果や出来ないこと、布団に光触媒塗装をする方法を解説いたします。
光触媒布団にご興味を持たれた布団メーカー様は、弊社までお気軽にご相談ください。
光触媒布団の効果
光触媒とは、光エネルギーを受けるとOHラジカルという活性酸素をその表面に発生させ、アンモニアや有機物などを分解します。その効果を布団に付与したときのメリットは、次のものになります。
- 布団の防カビ
- 臭いの消臭
- 抗菌
- アレルゲンの分解
それぞれ解説したいと思います。
布団の防カビ
布団は寝ている間に、人から出た汗を吸います。寝起きに、布団をそのままにしておくと、湿気によっていつの間にかカビが発生することがあります。布団を光触媒加工しておくと、カビの発生を抑制してくれます。
布団に加工された光触媒成分からすると、カビ菌は巨大なものです。ですから、カビ菌を完全に分解することは難しいのですが、カビ菌の表面の物質や細胞壁などを酸化分解できるので、カビ菌の活性を抑えたり、殺菌したりできます。
ただし、布団に加工された光触媒に触れた菌類を抗菌できるわけであり、それに触れていない菌類はそのまま残ってしまいます。ですから、布団の表面だけを光触媒加工するのか、中綿まで光触媒加工するのかによっても、抗菌の範囲が異なります。
光触媒加工された布団であったとしても、できれば湿気は避けておきたいので、寝起き時に布団をめくったり、室内においても干したりして、毎日除湿するようにすることが大切です。
臭いの消臭
布団の臭いには、人が寝ている間にかいた汗の臭い、皮脂の臭いもありますが、羽毛布団であれば羽毛特有の臭いが出るものもあります。
布団の側地や中綿の表面などを光触媒加工しておけば、それらの臭いを消臭することができます。布団カバーにも光触媒加工されたものを利用しておくと、消臭効果が高まります。
光触媒は皮脂も分解してくれるのですが、毎日使っている布団に付着する皮脂の量からすれば、光触媒で分解ができる皮脂の量は圧倒的に少ないと思われます。皮脂が気になるようであれば、布団や布団カバーを洗濯した方が良いです。
抗菌
顔のニキビや吹き出物は、アクネ菌といった菌類が原因といわれています。
20代や30代の男性であれば、特に一人暮らしですと枕カバーを洗濯することが少ないため、顔に吹き出物ができやすいと思います。布団カバーを洗濯しないと、顎のあたりに吹き出物ができやすくなる場合もあるそうです。「顔の吹き出物が気になる方は、枕カバーや布団カバーを洗濯すると良い」と医師から聞いたこともあります。
布団や布団カバー、枕カバーを光触媒加工しておくと、防カビと同様に菌類の活動を抑制したり殺菌したりでき、ウイルス対策にもなるので、布団の抗菌ができるので、衛生的な布団になります。
アレルゲンの分解
光触媒は、アレルゲンも分解してくれます。布団はダニが発生しやすい環境ですが、ダニの排泄物や死骸がアレルゲンになるといわれています。
ダニの死骸を分解することは、光触媒であっても時間がかかると思いますが、ダニから出てくるアレルゲンでしたら、その成分は微細なものなので光触媒で分解ができます。
アレルゲンは何もダニだけではありません。花粉や揮発性有機化合物(VOC)といったものも、アレルゲンになり得ます。
花粉は、光触媒からすると大きな物体なので分解できませんが、花粉が持つアレルゲンは微細なものですから分解ができます。
また、VOCも光触媒で分解ができます。ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドは、どのうな光触媒の種類でも、簡単に分解ができます。後ほどご紹介する「銅ドープ酸化チタン」という光触媒なら、トルエンやキシレンといったベンゼン基のVOCでも分解が可能です。銅ドープ酸化チタンについては、後ほど解説いたします。
寝ている間に、光触媒布団に触れた空気を浄化してくれるようになるので、アレルゲンが気になる人からすると、寝やすくなる可能性があります。
夜間でも光触媒が効果を発揮するのか?
さて、光触媒布団の効果やメリットを解説いたしましたが、ご説明した内容は「光触媒が効果を発揮した場合」に限定されます。
夜間はどうなるのか?
そもそも光触媒は、光が当たることで効果を発揮するものですから、「寝ている間、部屋の明かりを消灯している間は、光触媒は効果が無いのでは?」と疑問になられた方もいらっしゃることでしょう。
それは、そのように思われた通りなのですが、世の中には例外があるのです。つまり、光触媒成分の種類によっては、光が当たっているときはもちろんのこと、光の無い夜間でも効果を発揮する種類があるのです。
その光触媒成分の名前は、「銅ドープ酸化チタン」といいます。
銅ドープ酸化チタンは、数ある光触媒成分の中で光触媒コーティング剤として実用化されている成分の中で、夜間でも触媒効果を発揮する成分です。唯一と言って良いものです。
銅ドープ酸化チタンとは?
続いて銅ドープ酸化チタンを解説したいと思います。銅や酸化チタンは聞いたことがあると思いますが、「ドープ」とは、聞きなれない言葉だと思います。ドープとは、日本語では「添加した」とか「加えた」という意味です。酸化チタンに銅を添加したので、銅ドープ酸化チタンというわけです。
しかし、銅ドープ酸化チタンは単純に酸化チタンに銅を入れただけではありません。特殊製法によって、酸化チタンに銅を結合させたものになります。
なぜ酸化チタンに銅を結合させたのかと言いますと、酸化チタンは紫外線にしか反応しないのですが、銅を結合させることによって室内の明かりでも反応するようになり、室内でも効果が出るようになるわけです。
光触媒コーティング剤に実用化されている光触媒成分の種類
光触媒コーティング剤として実用化されている光触媒成分の種類は、次のものがあります。
- 酸化チタン
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 鉄ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
- タングステン・ドープ酸化チタン
- 銅ハイブリッド酸化チタン
これらの中で、室内用として利用され、室内の光でも効果のあるものは、2番目~5番目のものになります。室内の光でも効果のある光触媒成分のことを、「可視光応答型光触媒」といいます。
そして、これらの中で唯一、銅ドープ酸化チタンのみが夜間でも防カビや消臭、アレルゲンの分解といった効果を発揮します。
寝ている間は、電気を消灯しますし、電気を点灯させていたとしても暗いことでしょう。また、布団の中は真っ暗です。効果の高い光触媒布団は、そういった状態でも効果のある光触媒成分「銅ドープ酸化チタン」を選ぶことが必須となります。
光触媒布団で出来ないこと
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒布団でも出来ないこともあります。その例を解説いたします。
完全な消臭
光触媒布団を用いたとしても、光触媒加工していない布団カバーを利用したら、それに皮脂が付着するなどして、そこから臭いが出ることがあります。
また、部屋の中でタバコを頻繁に吸っている人がいて、それが布団にこびりついてしまったら、その臭いがしばらく取れないこともあります。光触媒でタバコのヤニを分解されていったとしても、さらにタバコを吸ってヤニが上塗りされてしまったら、臭いは消えません。
光触媒布団を利用したとしても、部屋全体が臭っていたら、臭いを感じてしまうものです。
部屋全体の臭いを消臭したい場合は、光触媒布団を利用するだけでなく、部屋全体を光触媒コーティング塗装することをおすすめします。
花粉やダニの分解
光触媒で分解ができるものは、ナノサイズの細かなものに限ります。
布団に加工された光触媒成分のサイズはナノサイズです。それに対して花粉の大きさは、マイクロサイズです。その差は1万倍以上の差になると考えます。ダニの大きさはさらに大きなものになります。すると体積は3乗で比例しますから、1兆倍以上の大きさになります。
花粉やダニは有機物ですから、光触媒から発生するOHラジカルという活性酸素によって酸化分解されていくことと思いますが、膨大な時間がかかることでしょう。
先ほど、花粉やダニから出るアレルゲンは分解ができるとお伝えしましたが、花粉そのものやダニそのものは現実的に分解ができません。
光触媒による劣化の可能性
光触媒は、有機物を酸化分解する性質を持っていますが、布団の材質も有機物ですから酸化分解されて劣化していく可能性があります。
布団の色あせ
布団の繊維は、光触媒の大きさからすると巨大なものになるので、繊維が切れてしまったり、消滅したりすることはありません。しかし、繊維に着色された色が、色あせしていく可能性があります。
室内といった弱い光のところでは、おそらく光触媒による劣化は気にならないと思います。光触媒の効果の強さは、光の明るさによりますが、室内の光は直射日光と比べたら、1/500ほどの明るさですから、光が無いに等しい状態です。
ところが、布団は外に干すことがあります。その間は、直射日光が当たるわけですから、10回や20回干したところで色あせはしないと思いますが、5年も10年も使っていると色あせが目立ってくるものと思われます。
また、ベッドの位置によっては、窓から入ってくる直射日光が当たる場合もあります。その場合は、毎日のように直射日光が当たるわけですから、色あせが心配です。
布団の色あせは試験したことがありませんので、布団の光触媒加工を試されたい方は、色の薄い無地や生成りの側地を利用することをおすすめします。
下地剤の塗装で劣化を防止
布団の色あせを防止する方法としては、光触媒加工をする前に、布団の色あせから守る下地材を先に塗装しておく方法があります。
下地剤を先に塗装しておくことで、光触媒と布団の繊維が直接触れないようにできるので、光触媒による色あせを防止することができます。
弊社が開発したプライマーの名称は、屋内用プライマー(AS01)です。
布団の光触媒加工の方法
銅ドープ酸化チタンを使って布団を光触媒加工する方法を解説いたします。マットレスの光触媒加工も同様です。
布団を光触媒加工する方法は2種類
布団を光触媒加工する方法は次の2種類です。
- 布団の素材となる繊維やクッション材に光触媒成分を練り込む
- 布団や布団の素材を光触媒コーティングする
1つ目の素材に光触媒成分を練り込む方法は、原材料メーカーでないとできませんから、実質的に2番目の光触媒コーティング触媒を選ぶことになります。
光触媒コーティングは、光触媒コーティング剤と言われる光触媒成分が含まれる液剤を塗装する方法です。光触媒コーティング剤は、粘性が水と同じようなもので、塗装は専用の塗装機械とスプレーガンを用います。
光触媒コーティング剤の選び方
光触媒コーティング剤とは、光触媒成分が溶け込んだ液剤のことです。
光触媒コーティング剤は、何を利用しても良いわけではありません。銅ドープ酸化チタンを使用した液剤を選ぶ必要があります。弊社の製品は、室内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
この液剤は完全な無機塗料ですから、燃えるような素材ではないので、ホテル用などの防炎布団にもご利用いただけます。
ここで注意点なのですが、銅ドープ酸化チタンを選ぼうとして間違って「銅ハイブリッド酸化チタン」を選んでしまう人がいます。これは要注意です。なぜなら銅ハイブリッド酸化チタンは、紫外線が当たる場所でしか触媒の効果を発揮しないからです。
銅ハイブリッド酸化チタンとは、銅ドープ酸化チタンとは異なり、酸化チタンに銅イオンを混ぜただけの成分です。
塗装のための機材
布団を光触媒加工する方法は、光触媒コーティング剤を塗装したら良いわけですが、塗装する機材として、次のものを利用します。
- 温風低圧塗装機(ブロワユニット)とスプレーガン
- 光触媒コーティング剤専用ノズル
温風低圧塗装機とは、塗料をエアースプレーで塗装するための機械です。小型の機械であれば、それにスプレーガンが付属しています。温風が噴き出るので、液剤が乾きやすくなり、作業効率が高まります。
次の写真は、ABAC社製の温風低圧塗装機「SG-91」とスプレーガンです。
光触媒コーティング剤専用ノズルは、φ0.3mmといった小口径のノズルを利用します。
弊社では、ABAC温風低圧塗装機をおすすめしています。ABACは「アバック」と呼びます。ABAC温風低圧塗装機に付属しているスプレーガンは、噴霧された光触媒コーティング剤を包み込むように、エアカーテンが噴き出るので、液剤が飛び散るムダを減らしてくれます。
塗装方法
塗装の準備ですが、塗装がはみ出ても良いように、布団を大きめのブルーシートなどの上に置いて塗装をしていきます。
スプレーガンによる塗装は、コツをつかめば簡単です。スプレーガンの塗料カップに液剤を入れ、塗装をしていくわけですが、次の図のように上下左右に塗装をしていきます。
塗装をするときは、念のため防塵マスクと防塵メガネを着用するようにお願いしています。
塗装に不慣れな方は、弊社にて講習会を開催しているので、ぜひご利用ください。
側地?中綿?布団のどこに光触媒塗装するのか?
最後に、布団の側地や中綿など、どういった箇所に塗装したら良いのかを解説いたします。
綿布団であれば、側地と中綿があります。マットレスであれば、側地とスポンジです。羽毛布団であれば、側地と羽毛です。
綿布団やマットレスの光触媒加工
綿布団は、ダニが問題視されることが多いです。ダニの糞や死骸がアレルゲンとなりますが、光触媒加工することによって、そこからしみ出してくるアレルゲンを分解できる布団になります。
手作り布団店では、綿布団を手作りされているわけですが、出来上がった布団の表面を光触媒塗装する方法と、中綿を入れるときにワタの表面にも光触媒塗装をする方法があります。
もちろん、後者の方が中綿に直接塗装されるわけですから、効果は高いものと思います。
マットレスも同様です。出来上がった製品の表面に光触媒塗装をする方法と、中のスポンジにも光触媒塗装をする方法があります。
綿布団やマットレスの臭いを防止するだけでしたら、表面に光触媒塗装をしておけば良いと思います。カビも防止したい場合は中綿やスポンジにも塗装をしておくことが大事です。
中綿やスポンジの内部にも塗装をしたいと思われるかもしれませんが、表面からスプレーガンで塗装をすると、ある程度なら内部にまで入り込むと思います。
内部まで完全に塗装をしたい場合には、光触媒コーティング剤に中綿やスポンジをどぶ漬けする方法がありますが、加工の費用がかなり高くなりますし、綿の場合は綿特有のふんわりとした質感が損なわれる可能性があるので、おすすめできません。
羽毛布団の光触媒加工
羽毛布団は、羽毛そのものを光触媒加工したい場合には、羽毛布団を製造する工程で光触媒加工をしますから、羽毛布団工場での施工が必須となります。
しかし、弊社としては「羽毛布団は表面のみの光触媒加工で良い」と考えます。
なぜなら、羽毛布団はカバーリングをして利用しますから、羽毛布団の内部にまで汗が入りにくいことが挙げられます。また、側地は細い番手の糸が使用されていますし、ダウンプルーフ加工によって内部にダニが発生しにくいので、内部まで光触媒加工する必要は無いと思います。
羽毛特有の臭いは、羽毛布団の側地に加工された光触媒によって分解されるので、臭いが気になりにくくなると思います。
布団カバーや枕カバーの光触媒加工
布団カバーや枕カバーを光触媒加工し、それを利用するだけでも、菌や臭い、汚れがかなり抑えられると思います。
また、光触媒加工をしても、ドレープ性は失われないと思われます。なぜなら、光触媒コーティングでは、繊維の表面にナノサイズという極小の幕をつくる程度だからです。
布団カバーや枕カバーは、布団と比べて頻繁に洗濯をしますが、光触媒加工は頻繁な洗濯にも耐えられるくらい強固に定着します。
ただし、天然繊維よりもポリエステルなどの化繊の方が、繊維がツルツルしているので、光触媒加工が落ちやすいと思います。
耐久性としては、調べたことはありませんが、今までの経験から、化繊の布団カバーでの洗濯回数は20回ほど耐えられるものと思います。
以上、光触媒布団の効果や選ぶべき光触媒コーティング剤の種類、加工方法などを解説いたしました。布団メーカー様で「光触媒布団を製造したい」とお考えの方は、ぜひ弊社までご相談ください。
また、手作り布団屋さんや布団販売店様で、「布団の光触媒加工をサービスとして取り入れたい」「光触媒布団をテストしたい」とお考えの方も、ぜひご相談ください。弊社の光触媒製品を扱う施工代理店に依頼する方法と、御社にて施工機材を取り揃えて加工する方法がございます。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。