

オフィスは人が集まる環境にあるので、オフィスに抗菌や抗ウイルスを導入したいとお考えの方は多いことでしょう。
風邪の予防方法として、加湿器や空気清浄機を置いているオフィスもあります。オフィス内を抗菌コーティングしているところもあります。
この記事では、オフィスの抗菌・抗ウイルスが行えるコーティング施工として、銅担持酸化チタン(銅ドープ酸化チタン)を使った光触媒コーティングの魅力をご紹介します。
光触媒コーティング剤によっては、オフィス内で抗菌効果がまったく無い製品もあります。オフィス内を抗菌したいとお考えの企業様、テナントビルの管理会社様などは、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも光触媒とは?
最初に光触媒がオフィスの抗菌や抗ウイルスに効果がありそうなのかどうか、その可能性をお感じいただけたらと思います。
結論として最初に、一般的な光触媒「酸化チタン」では、オフィス内の抗菌や抗ウイルスはできないことをお伝えします。
光触媒とは?
光触媒とは、光が当たると触媒効果を発揮する物質です。もっとも知られている成分は、酸化チタンです。
光触媒に光が当たることで、その表面にOHラジカルという活性酸素が発生します。OHラジカルが発生するメカニズムの詳細は、「光触媒による防カビのメカニズムと光触媒が活躍する場面」をご覧ください。
OHラジカルは、とても酸化力が強いので、菌類やウイルスに触れると、その表面を酸化分解します。するとそれらの活動を抑制したり、死滅させたりすることができます。
光触媒は、花粉といった光触媒成分の大きさと比べて巨大なものを分解するのには時間がかかり過ぎます。花粉は30μmほどの大きさですから、光触媒成分からすると1万倍ぐらいの大きさになります。
それに対して風邪の菌の大きさは、それよりも1/100ほどの大きさになります。またウイルスはさらに小さなものになります。そういった小さなものは、光触媒の活性によって酸化分解されやすい性質があります。
オフィスの壁紙や天井、床(タイルカーペット)、エアコン内部、ブラインドなどを光触媒加工しておけば、空気中を漂う菌類やウイルスには効果がありませんが、塗装面に触れた菌類やウイルスを除菌してくれる可能性があります。そのようなことで、光触媒によって抗菌や抗ウイルスが期待されるわけです。
酸化チタンではオフィス内の抗菌・抗ウイルスはできない
光触媒で一般的に知られている成分は「酸化チタン」です。酸化チタンは紫外線が当たると、強い触媒効果を発揮し、抗菌や抗ウイルスの効果を発揮します。冒頭で、「オフィス内では効果が無い」と言っておきながら、いったいどちらなのでしょうか?
実のところ、オフィスの室内では抗菌などの効果はありません。その理由は、「酸化チタンは紫外線が当たらないと効果がないから」です。
オフィス内は、窓際はともかく直射日光が当たらない場所です。高層ビルのように、大きな窓ガラスがあるオフィスであったとしても、紫外線カットガラスが利用されているオフィスであれば、室内は明るかったとしても、紫外線はほとんどありません。
ですから、一般的な光触媒成分である酸化チタンを、オフィス内にコーティング施工しても、抗菌や抗ウイルスといった効果は発揮されにくにのです。
ときどき、「オフィスの抗菌コーティングなら酸化チタンコーティング」などといったふれ込みでPRしている塗装業者もありますが、そういった詐欺広告に騙されないようにご注意願います。
オフィス内でも抗菌効果のある光触媒は可視光応答型光触媒
オフィス内のように、紫外線が当たらない環境でも抗菌や抗ウイルスの効果のある光触媒成分は存在します。オフィスの明かりで抗菌や抗ウイルスといった効果を発揮する光触媒を利用することが大切です。
オフィス内といった、室内の明かりで反応する光触媒のことを可視光応答型光触媒といいます。「目に見える光で応答する光触媒」という意味です。オフィス内の明かりには、蛍光灯やLED照明が用いられていますが、それらの光源から出てくる光は、紫外線がほとんど含まれていなくて、目に見える光がほとんどです。
そのような目に見える光でもって、抗菌や抗ウイルスができる光触媒成分があります。光触媒コーティング剤として実用化されている可視光応答型光触媒は、次の種類があります。他にもあるかもしれませんが、弊社にて把握している実用化された製品では次のものになります。
- 銅担持酸化チタン
- 窒素担持酸化チタン
- 鉄担持酸化チタン
- 酸化タングステン
ここで「担持」とは、酸化チタンを基材として、それに銅や鉄を結合させることです。すると、紫外線にしか反応しなかった酸化チタンが、青色や水色といった光にも反応する可視光応答型光触媒になります。
これらの成分はどれもオフィス内で抗菌などの効果があるのですが、その効果の高さに違いがあります。そして、これらの中でもっとも効果が高いものが銅担持酸化チタン(銅ドープ酸化チタン)というわけです。銅担持酸化チタンの効果の高さは、弊社の調査では、他の可視光応答型光触媒と比べて、10倍~20倍ほどです。
銅担持酸化チタンとは?
銅担持酸化チタンについて、少し詳しくご説明いたします。
酸化チタンを可視光で活性化させることの意味
酸化チタンの光触媒効果に注目が集まったときに、「これを室内でも使えるようにならないか?」ということが検討されました。なぜなら、抗菌や抗ウイルスをしたい場所は室内だからです。もし、酸化チタンを室内の光で活性化させることができたら、光触媒利用の幅が大きく広がります。
そのようなことで、「紫外線が存在しない室内でも抗菌や抗ウイルスといった効果を発揮する光触媒コーティング剤が開発できないか?」ということで研究され、重金属を結合させることによって可視光応答することが知られていました。
室内で効果の高い光触媒コーティング剤の開発は、光触媒メーカーの長年の夢でしたが、室内の弱い光では抗菌や抗ウイルスといった効果がほとんど無かったため、実用化には至っていませんでした。
銅担持酸化チタンの発見
弊社は25年ほど前にこの難問に取り組むことにしました。当初は光触媒メーカーにお願いして、可視光応答する酸化チタンを開発してもらおうと協力を呼びかけましたが、どこも「そのようなことは不可能だ」と一蹴されてしまいました。
そこで自社で取り組むことにしました。弊社はもともと光触媒メーカーではありませんでしたから、佐賀県窯業技術センターの一ノ瀬博士に協力を依頼し、開発に取り組みました。
日夜、たくさんの成分を混ぜて試験し、たくさんの失敗の山を築き、2年ほど経過しました。そして、半ば諦めかけていたときに、ふと「銅を担持させたらいいのではないか?」と思い至り、弊社が発見した製法で銅を結合させることに成功しました。それが室内の弱い光でも触媒効果を発揮することを、世界で初めて発見しました。2002年のことです。
この新成分の製法を特許申請し、世に発表したところ、多くの研究機関や大手メーカーからさまざまな反響がありました。そして、NEDOと東京大学などの共同研究でも追試が行われて、銅担持酸化チタン(銅ドープ酸化チタン)という名称で呼ばれるようになりました。「室内空間が変わる?ウイルス分解の新技術」(東洋経済オンライン、2012/10/11)
銅担持酸化チタンの性質
銅担持酸化チタンは、次の図に示すように、紫外線はもちろんのこと、紫色や青色、水色(シアン)の光が当たっても抗菌や抗ウイルスといった効果を発揮することが判りました。

つまり、オフィス内に銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を塗装することで、塗装面を抗菌コーティング、抗ウイルスコーティングすることができます。
また、銅担持酸化チタンの可能性を研究している中で、驚くべき特性をいくつも発見しました。その特性の一つとして、「暗所でも抗菌がある」ということを発見しました。
通常であれば、光触媒は光が当たることで触媒効果を発揮します。ですから光触媒という名称で呼ばれています。銅担持酸化チタンは、もちろん紫外線や青色などの光が当たることで触媒効果を発揮しますが、光が当たらない場所であったとしても若干効果は弱くなりますが、触媒効果を発揮したのです。
この性質については、成分を開発した弊社の技術スタッフも疑ったほどです。しかし、何回試験しても、暗所でも抗菌効果があったのです。次の図は、佐賀大学にて大腸菌の抗菌試験をしてもらったときの結果です。暗所にて、ブランク、酸化チタン、銅担持酸化チタンの3種類で大腸菌がどのように変化するのかを試験してもらった様子です。

銅担持酸化チタンを塗布したシャーレでは、暗所でも大腸菌の数が減っていっていることが判ります。
銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティング剤
銅担持酸化チタンは、抗菌や抗ウイルスといった効果を発揮しますが、それを光触媒コーティング剤として実用化しなければいけません。実用化のためには、光触媒コーティング剤が次のような性質を持っていることが望まれます。
- 身体に毒性がないこと
- 光触媒コーティング剤を塗装できること
- 光触媒コーティング剤を保管していても品質が1年以上保てること
- 塗装面に強固に定着し、耐久性が10年以上あること
これらの性質をすべて満たすために、第三者機関での試験やさまざまな塗装機械での塗装試験、いろいろな保管方法での試験、テスト塗装をしてから実際に10年以上経過しての抗菌試験などを行いました。
その結果、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)という製品が完成し、自信を持って世に問うことにしました。
この光触媒コーティング剤は、オフィスだけでなく東京や佐世保の大手テーマパーク、ホテル、クリーンルーム、クリニックといった抗菌を気にされる場所で広くご利用いただいています。
4年ほど前から弊社施工代理店になっていただいた株式会社フロンティアライフパートナーズ様では、もともと他社の光触媒コーティング剤を利用していましたが、「塗装して1年もしないうちにカビが生えた」とクレームがたくさんあったそうです。そこで、効果の高い光触媒コーティング剤を探している中で弊社の光触媒製品と出会い、導入していただいた経緯があります。弊社製品をご利用いただいてから、「カビが生えたというクレームは1件も無い」と喜んでいただいています。
東京都のオフィスビルや新築マンションの部屋の光触媒コーティング塗装なら、フロンティアライフパートナーズにお気軽にご相談ください。
銅担持酸化チタンの抗菌等のエビデンス
弊社が独自で「抗菌や抗ウイルスができる」と言ったところで、あまり信用されないことと思います。そこで、エビデンスとして第三者機関にて試験してもらいました。(これらの試験結果は、効果を保証するものではないことを、あらかじめご了承ください。)
他にもカビ菌の試験も行い、効果を確認しています。屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、ご家庭での施工でたくさんの防カビができた事例もあり、お客様だけでなく施工代理店からもご好評いただいています。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の
オフィスでの施工方法
光触媒コーティング剤「屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)」のオフィスでの施工方法は、次の手順で行います。
- オフィス家具や什器、事務機器などの移動
- 事務機器や照明、ガラスなどを養生
- 塗装面の清掃
- 直射日光が当たる箇所の下地保護剤の塗装(1回目)
- 乾燥
- 下地保護剤の塗装(2回目)
- 乾燥
- 光触媒コーティング剤の塗装(1回目)
- 乾燥
- 光触媒コーティング剤の塗装(2回目)
- 乾燥
- 片付け
机の上にも抗菌コーティングしたい場合には、机の上を片付けておいてください。ガラスに光触媒コーティング塗装をすると、ガラス面に光触媒特有の虹色のまだら模様が出てしまいます。そのため、ガラス面への塗装はご遠慮いただいています。
下地保護剤とは、光触媒による劣化促進を防止する保護剤です。光触媒は菌類やウイルスといったものを酸化分解する性質がありますが、塗装面をも分解する可能性があります。特に窓際で直射日光が当たる箇所は、光触媒の効果が強く出てしまい、塗装面を色あせさせたり、変色させてしまうことがあります。それを防止するために、先に下地保護剤を塗装しておくわけです。
下地保護剤のことを、弊社では「プライマー」と呼んでいます。弊社の製品は「屋内用プライマー(AS01)」という名称です。プライマーを塗装した後に乾燥させた後に光触媒コーティング剤を塗装します。プライマーと光触媒コーティング剤は、それぞれ2回ずつ塗装します。合計4回の塗装となります。
プライマーや光触媒コーティングの塗装には、ABAC温風低圧塗装機を用います。弊社のプライマーや光触媒コーティング剤の粘性は、ABAC温風低圧塗装機を用い、スプレーガンのノズル口径はφ0.3~0.5mmで最適化されています。
光触媒コーティング塗装後にも乾燥を待ちますが、サーキュレーターを用いることで乾燥を早めることができます。乾燥時間は、夏であれば30分ほど、冬であれば2時間ほどです。冬でもオフィスの室内が温かい場合には、1時間ほどでも良いと思います。
このように、光触媒コーティング施工では、専用の塗装機械や施工技術を要するので、オフィス内を光触媒コーティングしてもらいたい企業様は、弊社の施工代理店にお任せいただくことになります。(もし御社が塗装業者様であれば別ですが・・・)
以上、オフィスを抗菌コーティングしたいとお考えの方に向けて、酸化チタン光触媒ではオフィス内の抗菌効果が無いこと、銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティング塗装の魅力や施工方法などをご説明いたしました。
オフィス内を光触媒コーティング施工したいとお考えの企業様は、ぜひ弊社もしくは弊社の業務用製品を扱うお近くの施工代理店にご相談ください。室内塗装に対応する施工代理店一覧は、こちらのページです。
また、弊社の業務用製品を扱う光触媒コーティング施工代理店になりたいとお考えの企業様がいらっしゃいましたら、弊社までお気軽にご相談ください。弊社では、光触媒コーティング施工を学べる施工講習会の開催や、集客のご支援なども行っており、御社が光触媒コーティング施工を新規事業として取り入れやすい環境を整えています。
弊社の業務用製品を取り扱いたい企業様、施工代理店をご希望の方は、光触媒コーティング施工代理店募集のご案内をご覧ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。