
飲食店やホテル、宴会場などの厨房は、O-157などの大腸菌対策については、保健所からの指導などで気にされていることでしょう。
大腸菌対策は、「普段から厨房を清潔にしているか」にかかっています。
また、厨房はカビの温床です。厨房は、湿気、温度、エサといったカビが発生する条件が整っているからです。
大手スーパーで厨房の清掃担当をしていた方の話によると、「厨房機器の脚先や脚元を丁寧に清掃するようにしたら、大腸菌が減った」という事例もありました。
大腸菌やカビの対策の基本は入念な清掃です。
その大手スーパーでは、話をしてくださった方が清掃担当をするまでは、清掃が行き届いていなかったそうです。
要するに、大腸菌やカビの対策は、清掃責任者様やオーナー様が、大腸菌やカビの対策に清掃が大事であることや、自分自身が責任を持って現地調査をして指示することが大事であることを、理解しているかどうかから始まります。
この記事では、光触媒コーティングによる大腸菌やカビの対策をご紹介します。入念な清掃を基本としつつ、正しい光触媒コーティングを選ぶことで、高いレベルでの大腸菌対策やカビ対策ができるものと考えます。
厨房で1箇所を入念に清掃しただけで
大腸菌が減ったエピソード
その大手スーパーでは、お刺身やお惣菜などを製造する厨房で、大腸菌の数が減らなくて困っていた店舗がありました。その数が上限値ギリギリにまで高まっていたようで、このままでは厨房が閉鎖されかねません。
店長は、「厨房スタッフの作業に問題があるのかもしれない」ということで、調査をしても作業工程に問題はありませんでした。夜の清掃作業は外注しており、清掃業者を変えても大腸菌の数が減らないので、店長は「どうしたものか?」と悩んでいたようです。
そこに、冒頭でお話しした人が、清掃業者の責任者として派遣されて来ました。
その方は、大腸菌の事情を聴いてから厨房全体を見渡しました。すると、ある部分にだけ清掃が行き届いていないことを発見しました。その部分とは、テーブルや厨房機器の脚先や脚元でした。
脚先の複雑な形状の隙間や脚先と床との間に、調理したときに落ちた切れ端がひっかかるなどして、黒くなっていました。また、のぞき込まないと見えない部分も同様に下側から黒くなっていることを発見し、その部分を、歯ブラシなどの道具を使って、入念に取り除くことをしました。
それ以外は、大手スーパーが作成した清掃マニュアルに従って清掃を行ないました。
すると、大腸菌検査ですぐに良好な結果が出て、店長が抱えていた大きな悩みの種が吹き飛んだそうです。当然、店長は清掃責任者に理由を訊きますが、その方は「汚れている箇所を入念に清掃しただけだ」と答えるのみでした。
つまり、清掃マニュアル通りに清掃しただけでは、汚れが残っていることを意味します。その店舗では清掃マニュアルの見直しが行われたそうです。
この事例のように、大腸菌対策は入念な清掃が基本となります。
光触媒コーティングによる抗菌性
大腸菌の数を減らすためには、入念な清掃が大事ですが、それを基本としつつ厨房の大腸菌の数をさらに減らすことができる可能性について検討したいと思います。
その方法とは、光触媒コーティングです。
光触媒で抗菌ができるメカニズム
光触媒とは、光が当たるとOHラジカルという活性酸素を発生させる性質があります。
OHラジカルは強い酸化力を持ち、大腸菌やカビ菌などの菌類の突起や表面のタンパク質、細胞壁などを分解することができます。すると、大腸菌やカビ菌の活動や繁殖を抑制したり、死滅させたりすることができます。
光触媒は、このようなメカニズムによって、抗菌ができます。
室内では抗菌ができない光触媒もある
ネット検索をしていると、「酸化チタン光触媒は効果が無い」との記載が出てくることもあります。それは事実です。
酸化チタン光触媒は、一般的に多く利用されている光触媒なのですが、光の中でも特に紫外線が当たることによって抗菌効果を発揮する光触媒なのです。つまり、紫外線が当たらない場所では、抗菌効果がまったくと言ってよいほどありません。
厨房では、紫外線ランプが天井に向けて照射されていることがありますが、その光が当たっている箇所でしか抗菌効果を発揮しないのです。
ですから、厨房機器の下側や脚先・脚元といったような陰になりそうな部分には、酸化チタンコーティングをしても、抗菌効果はほとんどありませんから、施工する意味が無いのです。
厨房の陰になるところでも抗菌効果を発揮する光触媒
厨房の陰になるところでも抗菌効果を発揮する光触媒とは、結論から申しますと銅担持酸化チタン(銅ドープ酸化チタン)です。
「担持」とは「結合させた」という意味で、銅担持酸化チタンとは、酸化チタンを基材としてそれにナノサイズの酸化銅を結合させた成分です。
銅担持酸化チタンは、紫外線が当たる場所ではもちろんのこと、蛍光灯やLED照明の光にも反応します。蛍光灯やLED照明の光でも反応する光触媒のことを、可視光応答型光触媒といいます。銅担持酸化チタンは、数ある可視光応答型光触媒の中でも抗菌力がもっとも高い光触媒であることが知られています。
また、銅担持酸化チタンは、光が当たらない暗所でも抗菌効果を発揮する、特殊な光触媒成分です。光触媒にはいろいろな種類がありますが、暗所でも抗菌効果を発揮するものは、銅担持酸化チタンだけです。厨房の抗菌コーティングは、銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティングをご利用ください。
銅担持酸化チタンの大腸菌抗菌試験

弊社が開発した銅担持酸化チタンを使った屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1の大腸菌抗菌試験結果をご紹介します。この試験は、佐賀大学農学部のラボで行っていただきました。
写真の製品が、大腸菌抗菌試験をしていただいた光触媒コーティング剤です。
蛍光灯下での大腸菌抗菌試験
次の図は、蛍光灯の光を当てたときの試験結果です。試験での明るさは20μW/cm2程度で、薄暗い部屋を想定しています。

上側のブランクは、何も塗布していないもの、中ほどのシャーレには、酸化チタン光触媒を塗布したものです。下側のシャーレには、銅担持酸化チタンを塗布したものになります。
蛍光灯からでも紫外線が出ていますから、酸化チタン光触媒でも、ある程度は抗菌効果が発揮されています。銅担持酸化チタンでは、試験開始から1時間ほどで1/20程度に下がっています。
暗所での大腸菌抗菌試験
次の図は、暗所での試験結果です。真っ暗にして試験をしました。

ブランクと酸化チタンは、大腸菌の数がほとんど同じですから、暗所にて酸化チタンは抗菌効果が望めません。それに対して銅担持酸化チタンは、3時間後には1/10以下に下がっています。
銅担持酸化チタンを塗装しておけば、暗所でも大腸菌を減らす効果があることが実証されました。
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1を塗装できる材質
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1を厨房のどういった箇所に塗装できるのか、その材質をご紹介します。
塗装できる箇所
- ウレタン防水塗料
- ステンレス
- プラスチック
- 石膏ボードやケイカル板
ウレタン防水塗料やステンレス製の厨房機器や冷蔵庫にも塗装ができます。プラスチックにも塗装ができるので、パネルや冷蔵庫の中、排気口、エアコン、防水エプロンや長靴などの抗菌コーティングにもご利用いただけます。
天井や壁の石膏ボードやケイカル板がむき出しの場合には、そこにカビが発生することがあります。光触媒コーティングをしておけば、防カビができます。
厨房のリフォームで、ウレタン防水塗料を塗装したばかりのときは、VOCの臭いが気になります。特に厨房では、VOCの臭いが強いと問題となることもあります。ウレタン防水塗料の上から光触媒コーティング塗装をすれば、VOCの臭いも分解されるので、VOCの臭い対策にもなります。
他にも塗装できる材質はたくさんあるので、塗装面の材質のご相談があれば、弊社までお気軽にご連絡ください。
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1を塗装できる材質をご説明しましたが、反対に塗装できない箇所は次の通りです。
塗装できない箇所
- ガラスや鏡
- 電子レンジの中
- 包丁やまな板などの調理器具
- 塩ビ製品
ガラスや鏡に塗装をすると、光触媒特有の虹色のまだら模様が出てしまい、見栄えが悪くなります。ガラスでなくても、ポリカーボネートやアクリルなどの窓、透明なビニールカーテンも同様に、虹色のまだら模様が出てしまうことがあります。
電子レンジの中には金属類の使用はできませんから、銅やチタンをコーティングできません。電子レンジをONにしたときに、電子と酸化チタンや銅が反応して異常加熱し、火災の原因になる可能性があるからです。
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1は、念のため毒性試験を行ってもらい無害であることが実証されていますが、念のため包丁やまな板などの調理機器へのご利用は控えてください。
塩ビ製品に塗装ができないとしている理由は、塩ビは撥水性が高いので屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1を塗装したときに弾いてしまい、均一な塗装ができないからです。
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1の塗装方法
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1の塗装は、次の手順で行います。
- 厨房の入念な清掃
- 厨房機器の移動
- 塗装しない箇所の養生
- 光触媒コーティング塗装
- 乾燥
- 片付け
最初に厨房を入念に清掃します。塗装箇所が汚れていると、汚れが分解されて落ちていくときに、光触媒コーティングも落ちていき、抗菌効果が無くなってしまうからです。
厨房機器の移動は、必要最小限でかまいません。厨房の壁面に塗装するときは、厨房機器を移動させて塗装ができるようにします。
塗装しない箇所の養生とは、ビニールシートなどで塗装しないところを防護することです。例えば、電気機器やガラス、コンセントといった箇所を養生します。
光触媒コーティング塗装では、専用のコンプレッサーとスプレーガンを用います。塗装後は、塗布された液剤が乾燥するまで待ちます。夏であれば30分ほど、冬であれば2時間ほどです。
乾燥後に、養生の撤去や厨房機器を元の場所に戻すなどの片付けをして完了です。
施工方法としては、弊社の光触媒製品を扱う施工代理店にご依頼いただくか、御社にて塗装機材をそろえて光触媒コーティング担当者を育成するかのどちらかになります。
厨房を10年に1回程度の頻度で、光触媒コーティング施工するのであれば、弊社の光触媒製品を扱う施工代理店にご依頼いただければと思います。防水エプロンや作業着、長靴などの衣類を頻繁に光触媒コーティング加工したい場合は、衣類用の特別な光触媒コーティング製品もございます。
施工代理店のご案内や衣類用光触媒コーティング製品については、弊社まで、お気軽にご相談ください。
以上、厨房の大腸菌やカビの対策なら銅担持酸化チタン光触媒コーティングについてご説明いたしました。
厨房の大腸菌対策やカビ対策で光触媒コーティングを導入されたい方は、弊社までお気軽にご相談ください。
弊社では、光触媒コーティング塗装の方法をお教えする施工講習会を開催しています。厨房の清掃業者様で、光触媒コーティング加工を新規事業として取り入れたい方は、光触媒コーティング施工代理店募集のご案内をご覧ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。