PRODUCTS EXPERIMENT

光触媒コーティング剤のノロウイルスに対する抗ウイルス試験

HOME / 業務用光触媒製品 / 光触媒コーティング剤のノロウイルスに対する抗ウイルス試験

弊社の屋内用光触媒コーティング剤「BX01-AB1」が、ネコカリシウイルス(ノロウイルス代替)に効果があるのかを調べるため、一般財団法人北里環境科学センター(ウイルス部ウイルス課)にて「抗菌性光触媒『BX01-AB1』によるネコカリシウイルス(ノロウイルス代替)に対する抗ウイルス試験」をしていただき、試験環境での抗ウイルス効果が確認されました。

以下は、一般財団法人北里環境科学センターが発行した報告書を弊社が抜粋し、一般財団法人北里環境科学センターに許可を得て転記したものです。

※ この試験結果は、あくまでも試験での効果ですので、あらゆる場面での抗ウイルス効果を保証するものではありません。

報告書番号

北環発2016_0052号

発行日

2017年2月16日

目的

貴社ご提供の抗菌性光触媒「BX01-AB1」塗布タイルを用いて、ネコカリシウイルス(ノロウイルス代替)に対する抗ウイルス性能を評価した。

依頼者

名称:株式会社イリス

所在地:〒844-0027 佐賀県西松浦郡有田町南原甲1044-2

試験機関

名称:一般財団法人北里環境科学センター

所在地:〒252-0329 神奈川県相模原市南区北里1-15-1

担当:ウイルス部ウイルス課

試験期間

2017年1月19日~2017年1月24日

試験片および試験条件

試験片

  1. 抗菌性光触媒「BX01-AB1」塗布タイル(サイズ45×45mm)
  2. 無加工品(無加工ガラス板)(サイズ50×50mm)

試験品の清浄化

評価面を紫外線放射照度1mW/cm2で試験前に24時間照射した。

照射線源:BLBランプ(東芝ライテックFL20SBLB-A)

(測定機器:浜松フォトニクスUV POWER METER MODEL C9536-01)

光照射条件

  1. 明所(200lx、シャープカットフィルタType B)
  2. 明所(500lx、シャープカットフィルタType B)
  3. 暗所

照射線源

FL(蛍光灯):東芝ネオライン白色FL20SW 20W、照度:200lxおよび500lx(測定機器:TOPCON IM-5)

静置時間

0時間(初期) および4時間

供試ウイルスとウイルス液の調製方法

ネコカリシウイルス(Feline calicivirus, strain:F-9)

ウイルスをネコ腎臓細胞(CRFK:Crandell-Rees feline kidney)に感染させ、細胞培養面積の約90%以上が細胞変性効果(CPE:cytopathic effect)を示したとき-80℃の冷凍庫に凍結保存した。その後、凍結融解操作を行い、3,500rpmで10分間遠心した上澄みを採取し、限外ろ過膜で濃縮した。このウイルス液を用いて、超遠心法で調製したウイルスを保存ウイルス液とした。ウイルス液は試験まで-80℃の冷凍庫に保存した。試験前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffered saline)で20倍に希釈して用いた。

感染価測定用細胞の種類

ネコカリシウイルス感染価測定用細胞として、CRFK細胞を用いた。

試験方法

試験方法

試験は、光触媒試験法「ファインセラミックス―可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス性試験方法-バクテリオファージQβを用いる方法」(JIS R1756:2013)を参考にした方法により実施した。すなわち、保湿シャーレ中に入れた試験片に、ウイルス液0.15mLを滴下した後、40×40mmのポリプロピレン製フィルムを載せた。

試験片へのウイルス液の接種は、光の影響を抑制させるため、安全キャビネットの蛍光灯を消灯した約70lx(紫外線放射照度は測定範囲未満)の条件下で行った。ウイルス液を接種した試験片は、25±3℃の条件で所定の時間、光照射した。また、暗所条件は遮光した容器に入れ、25℃の恒温槽で所定の時間静置した。

なお、0時間(初期)は「無加工ガラス板」にウイルス液を接種して直ちに誘出操作を行ったものを用いた。

ウイルスの回収

所定の時間、明所および暗所に静置した試験片をスチロールケースに入れ、10mLのPBSを加え100回/分で3分間振盪してウイルスを誘出した。この液をウイルス感染価測定用の試料原液として用いた。

ウイルス定量法

ウイルス感染価測定用試料原液をPBSで10倍段階希釈した後(希釈ウイルス液)、感染価測定用試料原液または希釈ウイルス液50μLと5% FBS加Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM)に懸濁したCRFK細胞50μLを、96ウエルマイクロプレートに植え込んだ。

その後、37℃の炭酸ガスふ卵器内で4日間培養を行った。培養後、ウイルスの増殖によるCPEを倒立顕微鏡で観察してReed-Muench法を用いてウイルス感染価(TCID50/mL) を求め、ウイルス誘出液量(10mL) から、試験片当たりの感染価(TCID50/試験片)に換算した。

試験品の抗ウイルス活性値

抗ウイルス活性値(VFI)および光照射による効果(△V)は、試験結果を基に「JIS Rl756:2013ファインセラミックス―可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス性試験方法―バクテリオファージQβを用いる方法」を参考に、以下の計算式により求めた。

  • VF-I=[log10(UF-I/US) – log10(TF-I/US)]=log10[UF-I/TF-I]
  • ΔV=log10[UF-I/TF-I] – [log10(UD/US) – log10(TD/US)]=log10[UF-I/TF-I] – log10[UD/TD]

F:試験で用いたシャープカットフィルタの種類(Type B)

I:試験で用いた照度(200lxあるいは500lx)

US:無加工品におけるウイルス液接種直後のウイルス感染価

UD:無加工品にウイルス液を接種後4時間暗所に保存した後のウイルス感染価

TD:抗ウイルス加工品にウイルス液を接種後4時間暗所に保存した後のウイルス感染価

UF-I:無加工品にウイルス液を接種後、200lx(UB-200)または500lx (UB-500) で所定時間光照射した後のウイルス感染価

TF-I:抗ウイルス加工品にウイルス液を接種後、200lx(TB-200)または500lx(TB-500)で所定時間光照射した後のウイルス感染価

試験結果

試験の結果を表-1に示した。また、表-3に試験結果のまとめを示した。

初期感染価は1.4×107TCID50/試験片であった。「未加工品(無加工ガラス板)」にウイルス液を接種後、暗所、200lxおよび500lxの条件でそれぞれ静置したところ、感染価はそれぞれ、2.0×107TCID50/試験片、1.7×106TCID50/試験片および7.1×106TCID50/試験片となった。

一方、「抗菌性光触媒 (BX01-AB1)塗布タイル」にウイルス液を接種後、暗所、200lxおよび500lxの条件でそれぞれ静置したところ感染価はそれぞれ、 2.0×104TCID50/試験片、 3.0×104TCID50/試験片および8.2×103TCID50/試験片となった。

4時間静置後の「抗菌性光触媒(BX01-AB1)塗布タイル」の抗ウイルス活性値を求めたところ200lx照射の条件では1.7、500lx照射の条件では2.9となった。光照射による効果は、200lxおよび500lx共に、0.0であった。

 コメント

本試験では、貴社ご提供「抗菌性光触媒(BX01-ABl)塗布タイル」のネコカリシウイルスに対する抗ウイルス効果を調べた。JIS R 1756では、抗ウイルス活性値および暗所での効果を求める計算式は記載されているが、抗ウイルス効果の判定基準は記載されていない。

一方、光触媒の抗菌試験であるJIS R 1702、JIS R 1752には、抗菌活性値が2.0以上で効果ありと基準が定められており、この基準を本試験結果に適用すると、抗ウイルス活性値が500lx照射条件で2.9となり、効果ありと判定された。

今回の試験では、200lxの試験条件において、「無加工ガラス板」の感染価が500lxの光照射および暗所静置と比較して減少が大きかったため、抗ウイルス活性値が低い値を示した。500lxの光照射では、感染価の減少が起こっていないことから、光照射による減少とは考えにくい。

暗所での抗ウイルス効果は3.0、500lxの光照射での抗ウイルス活性値は2.9であったことから、200lxにおける効果は同等であることが推測される。

試験品試験条件照射時間
0時間(直後)4時間
未加工品(無加工ガラス板)暗所1.4×107 US2.0×107 UD
抗菌性光触媒「BX01-AB1」塗布タイル 2.0×104 UD
未加工品(無加工ガラス板)明所 (200lx+Type B) l.7×106 UB-200
抗菌性光触媒「BX01-AB1」塗布タイル 3.0×104 TB-200
未加工品(無加工ガラス板)明所 (500lx+Type B) 7.1×106 UB-500
抗菌性光触媒「BX01-AB1」塗布タイル 8.2×103 TB-500
表-1 抗菌性光触媒「BX01-AB1」のネコカリシウイルス感染価への影響

試験ウイルス:Feline calicivirus, F-9, ATCC VR-782

感染価単位:TCID50/試験片

接種ウイルス感染価と接種液量:2.0×108TCID50/mL, 0.15 mL

検出限界値:6.3×101TCID50/試験片

試験品抗ウイルス活性値光照射による効果
抗菌性光触媒「BX01-AB1」塗布タイル(200lx+Type B)1.7 a)0.0 c)
抗菌性光触媒「BX01-AB1」塗布タイル(500lx+Type B)2.9 b)0.0 d)
表-2 抗菌性光触媒「BX01-AB1」のネコカリシウイルスに対する抗ウイルス効果

抗ウイルス活性値および光照射による効果の算出式

a) VB-200=[log10 (UB-200 / US) – log10( TB-200 / US)]=log10[UB-200 / TF-I

b) VB-500=[log10 (UB-500 / US) – log10(TB-500 / US)]=log10[UB-500 / TB-500]

c) ΔV=log10 [UB-200 / TB-200] – log10 [UD / TD]

d) ΔV=log10 [UB-500 / TB-500] – log10 [UD / TD]

なお、光照射による効果がマイナスとなる場合には、0.0と記載した。

ページトップ