光触媒は、除菌や防カビ、消臭といった効果が期待され、室内に塗装する人もいます。
室内にはLED照明や蛍光灯の光があるので、室内に光触媒コーティングをすると「効果が出る」と思われる方は多いかもしれません。
実は、光触媒の代表的な成分である酸化チタンは、紫外線を吸収して光触媒の効果を発揮するのですが、LED照明や蛍光灯の光は吸収されないため光触媒の効果がありません。
弊社は屋内用の光触媒コーティング剤を製造販売していますが、「効果が無いなら詐欺ではないか?」と思われたかもしれません。LEDの光でも強く活性化する光触媒成分「銅ドープ酸化チタン」を使っているのです。
この成分ですと、室内の光でも強い光触媒活性を示し、除菌・消臭効果が高いことを、世界で初めて発見しました。
この記事では、LED照明の光で、なぜ酸化チタンのみを使った光触媒コーティング剤は効果が無いのか、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤はなぜ効果があるのかを、光の波長でご説明したいと思います。
少し難しい話になるかもしれませんが、なるべく簡単な言葉を選んで図解でご説明いたします。室内に効果の高い光触媒コーティング塗装を行いたい方は、ぜひついてきて下さい。難しいと思われた方は、3つ目の図だけでもご覧ください。
光の波長とは?
光は、目に見える光と見えない光があります。光は「光子(こうし)」と言われる、素粒子が目に届いて、光として見えているのです。
その光子は、どれも一定の振動をしながら、約秒速30万kmで飛んできています。ですので、もし光が飛んでいるところが見えたならば、波を描きながら飛んでいっているはずです。
その波の振幅のことを、「光の波長」と呼んでいます。
そして、この光の波長の長さによって、青色や緑色、黄色、赤色といった色として見ることができます。目に見える光のことを「可視光」といいます。
LED照明は、多少は赤色っぽいものや青色っぽい色のものがありますが、基本的に白色です。では、「白色の波長は?」ということですが、白色の光の波長というものは存在しません。白色に見えるのは、いろいろな色の光が目に入ってくることで、白色に見えています。
白色のLED照明の光の波長
白色のLED照明はいろいろなタイプがありますが、青色発光ダイオードの光を蛍光体に通して白色にしているものが一般的です。
次の図は、このタイプのLED照明の波長を表したものです。この図のことを、スペクトル分布といいます。
虹色の曲線は、一般的な白色LEDから出る光の波長の強度です。光の波長のnmという単位は、「ナノメートル」といいます。ナノメートルは、1mの長さの1/1,000の長さ(ミリメートル)をさらに1/1,000した長さ(マイクロメートル)を、またさらに1/1,000した長さです。
先ほど、光が波のように見えることを述べましたが、その振幅の長さがnmという、ごく短い波長になっています。
この図のように、波長が450nmの光が青色です。500nm付近がシアン、550nm付近が緑色、600nm付近が黄色、650nmからそれ以上の長い波長は赤色です。380nmよりも短い波長が紫外線、780nmよりも長い波長が赤外線ということになり、目で見えない光です。
LED照明の光の波長を分解してみると、上図のような曲線になります。高さは、光の強度を表します。青色の光や黄緑色の光にお山のピークがあり、400nmよりも波長の短い紫外線や、750nm以上の赤外線は出ていません。
一般的なLED照明の光は、白色っぽく見えていても、実は青色が強いのです。
酸化チタン光触媒はLED照明で活性化するのか?
酸化チタン(アナターゼ型)が光触媒の効果が強く出る光の波長は、380nmよりも短い波長の光です。
次の図は、先ほどのLED照明の図に、酸化チタンに効果の出る光の波長の範囲を加えたものです。
白色のLED照明からは、380nm以下の波長の光は出ていませんので、酸化チタン光触媒を活性化させる光が出ていません。つまり、LED照明の元では、酸化チタン光触媒を活性化させられないので、効果が無いことを意味します。
酸化チタンのみの光触媒コーティング剤を室内で使用してしまったら、まったく効果が出なくてカビが生えてしまったり、消臭ができなかったりする理由は、ここに原因があります。
酸化チタンはLED照明の光で活性しませんでしたが、冒頭でお伝えした銅ドープ酸化チタンは活性化します。次に、そのことをご説明します。
銅ドープ酸化チタン光触媒はLED照明でも活性化する
次に、酸化チタンに銅を添加した「銅ドープ酸化チタン」が、光触媒の効果を発揮する光の波長は、紫外線はもちろんのこと、可視光でも3800nm~490nmの範囲の波長にて活性化します。
上の図に、銅ドープ酸化チタンが活性化する光の波長の範囲を加えたものが、次の図になります。
銅ドープ酸化チタンが活性する領域は、LED照明の青色のピークの範囲と見事に重なっています。つまり、銅ドープ酸化チタンは、LED照明の光を受けると、光触媒の効果を発揮することが分かります。
酸化チタンは、紫外線が当たるととても強い光触媒の効果を発揮するので、広く利用されています。そして、酸化チタンは銅を加え、酸化チタンに担持させることができたら、LED照明の光でも活性化するようになります。
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤は、室内でも効果が出るので、室内の除菌や防カビ、消臭、VOCの分解などに効果があります。
このように、可視光でも反応する光触媒成分のことを、「可視光応答型光触媒」といいます。可視光応答型光触媒は、銅ドープ酸化チタン以外にもいろいろな成分があります。しかし、光触媒の効果の高さには違いがあり、銅ドープ酸化チタンが光触媒効果のもっとも高い成分です。
「光触媒は室内では効果がない」と聞いたことのある方は、それが誤解であることをご理解いただけたことと思います。正しくは、「酸化チタンのみを使用した光触媒は、室内では効果がないが、銅ドープ酸化チタンなら効果が高い」ということです。
以上、LED照明の光の波長や、その波長では酸化チタン光触媒は効果がないこと、さらには銅ドープ酸化チタン光触媒ならLED照明でも効果があることを、ご説明いたしました。
銅ドープ酸化チタンをもっと詳しく知りたい方は、「銅ドープ酸化チタンとは?室内でも高い光触媒効果を発揮」をご参照ください。
銅ドープ酸化チタンを使った室内用の光触媒コーティング剤は「屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)」という名称で販売しております。この製品は業務用ですので、弊社の施工代理店に卸販売しているものです。
銅ドープ酸化チタンを室内にコーティング塗装で、部屋を強力に除菌や防カビ、消臭などをした方は、ぜひ弊社もしくは弊社の製品を扱う施工代理店にご依頼ください。施工代理店の一覧は、こちらのページをご覧ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。