
古い建物に入居している飲食店でよくご相談いただくことの中に、「トイレがドブ臭い」というものがあります。
よく、「封水の水が切れたから臭いが上がってくる」と言われますが、そのようなことは、ほとんど無いと言って良いでしょう。なぜなら、飲食店ではトイレの水を頻繁に流しているからです。
下水配管の臭いが逆流しているわけですが、飲食店特有の理由で逆流している場合があり、それが判らないと消臭ができません。
また、ドブ臭いということは、汚水管からの臭いではなく、下水管からの臭いでしょうから、「トイレの便器が原因では無い」と言えます。
飲食店のドブ臭い原因はパイプスペースからの隙間風!?
飲食店のトイレでドブ臭が漂う理由は、下水配管の臭いが逆流してきているからです。そして、トイレがドブ臭いとお悩み方は、古い建物に入居されている場合が多いです。
封水が原因であることは少ない

トイレの臭いの原因をネット検索で調べていると、多くのホームページでは「封水の水が減っているから」と書かれています。ところが、飲食店のトイレがドブ臭いのは、封水が原因であることは少ないのです。
古い建物といえども、トイレの便器や手洗いの流しには、封水と言って、臭いが逆流してこないように工夫されていますし、水を頻繁に流すので、封水に水が溜まっている状態ですから、臭いが逆流してくることは、まずありません。
便器や手洗いから臭いが出てきているのであれば、素人でも原因が判るはずです。また、便器の汚水管から臭いが出ていたら、明らかにドブ臭とは異なる臭いがします。
原因は負圧になっているため
さて、トイレの中にドブの臭いが漂う原因は「部屋の中が負圧になっているため」です。
負圧とは、建物の内部の空気圧が外の気圧(大気圧)と比べて低くなっている状態のことです。なぜ負圧になるのかと言いますと、厨房に大きな排気ファンを付けているからです。キッチンの排気ファンを24時間起動させているところが多いと思いますが、室内の空気を排気しているので、室内が負圧になります。
よく飲食店に入るときに、入口の扉付近で気流の音がすることがあると思います。ドアの隙間などで、「ピューッ」と音がしていることがあります。つまり、どこからか空気を室内に吹き入れています。
そして、たまたまトイレに繋がっている下水配管の空気を引き入れてしまっているのです。ドブの臭いの原因が不明なパターンでよくあるのが、パイプスペース(PS)の臭いを隙間から引き込んでいるケースです。

次の写真は、トイレがドブ臭いことでお悩みの飲食店を現地調査したときの写真です。入口を入り、ドアを閉めたところ、ドアの隙間風の音が強くしていたので、パイプスペースの臭いを引き込んでいることを疑いました。すると案の定、上水管の隙間からドブの臭いが入り込んでいました。

古い建物はなぜ臭いが出てくるのか?
古い建物は、パイプスペースの中にある配管のパッキンが傷んでいるのか、配管に隙間ができることによって、ドブの臭いが漏れ出していることがあります。地震で傷んでしまうこともあります。
パイプスペースの中のドブの臭いが、トイレとパイプスペースをつないでいる上水管の隙間から入り込んでいる場合があります。その理由としては、トイレのタンクの上水の引き込みのところは、隙間が埋められていない場合があるからです。
その隙間を通じて、パイプスペースに充満しているドブの臭いが、トイレの中に少しずつ入り込んできている場合があるのです。
臭い対策の方法は?
そのようなことが原因でドブの臭いがする場合には、まず穴を塞いでしまうことが大切です。
トイレの中のどこにドブの臭いが漏れ出している隙間があるのかを調査し、そこを塞いでしまうことが、最初に行なうべき対策になります。
次の写真は、ドブ臭が出ている隙間にパテを充填して、穴を塞いだ様子です。

そして、穴を塞いでしまったとしても、ほんの少しだけでも隙間が残っていると思います。ドブの臭いが緩和されたとしても、トイレの中が負圧になっていると、その小さな隙間から少しずつドブの臭いがまた出てきてしまいます。
そこで、トイレ全体に消臭コーティング塗装を行い、漏れ出した臭いを分解します。
トイレのドブ臭の消臭施工
パイプスペースからドブ臭が入り込んでいる場合の、消臭施工の流れをご説明いたします。
空気が漏れている穴をパテやコーキング剤で埋める
まず、パイプスペースから空気が出てきているところの穴を塞ぎます。穴の塞ぎ方は、パテやコーキング剤を用い、隙間に充填します。
もし、パテやコーキング剤で穴を塞いだ後に消臭コーティングを行う場合には、パイプスペースの中に消臭コーティング剤を塗布しておくと良いと思います。穴の中に注射器か何かを用いて、消臭コーティング剤を勢いよく吹き付けると良いと思います。

穴を塞いだ後に、消臭剤を吹き付けるなどして、いったん臭いを消臭し、ドブの臭いが漂ってこないか確認してください。
トイレのドブ臭は、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒スプレー「アキュートクリーン」で、簡単に消臭できます。
アキュートクリーンは、接着成分が入っていないので、一時的な消臭にご利用ください。
トイレの消臭コーティング塗装

ドブの臭いが漂ってこなくなったら、トイレ全体を消臭コーティング塗装します。
穴を塞いだとしても、少しばかりはドブの臭いが出てくると思うので、消臭コーティングをしておくと安心です。
消臭コーティング剤には、銅ドープ酸化チタンを使った屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)がおすすめです。屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)については、後ほどご説明いたします。
臭いの確認
ドブ臭いトイレには、市販の大きな芳香剤や消臭剤が置かれていると思います。施工後は、それらをトイレから出して、臭いを確認してください。
ドブの臭いは、飲食店であれば1~2分ほどで漂ってきたはずですから、消臭ができているかすぐに確認できるはずです。穴がしっかりふさがっていたら、消臭できます。
トイレのドブ臭を消臭できる
光触媒コーティング剤の選び方
光触媒を使った消臭コーティング剤の選び方をご説明いたします。間違った光触媒成分を選んでしまうと、消臭効果が弱いばかりか、まったく効果が感じられない場合もあるからです。
光触媒コーティング施工を依頼するときは、どのような光触媒成分を使った光触媒コーティング剤なのか確認する方が良いです。なぜなら、施工業者も効果が無いことを知らずにPRしてくる場合もあるためです。
酸化チタンだとトイレの消臭はできません

光触媒コーティング剤でもっとも利用されている成分は、酸化チタンです。酸化チタンとは、金属のチタンが酸化した結晶体で、その微粉末を液剤にしたものが、光触媒コーティング剤です。
酸化チタンの結晶構造にはいくつかの種類があり、主にアナターゼ型と言われる結晶構造の酸化チタンが光触媒としてよく用いられています。
アナターゼ酸化チタンは、紫外線が当たることで強い消臭効果を発揮する成分です。紫外線が当たることで、表面にOHラジカルと言われる活性酸素が発生します。OHラジカルは強い酸化力を持つ物質で、ドブ臭を酸化分解してくれます。紫外線が当たる場所では、酸化チタンはとても高い消臭効果があります。その反対に、紫外線が当たらない場所では、ほとんど消臭ができません。
では、トイレでアナターゼ酸化チタンを使ったら、消臭ができるでしょうか?
すでにお気づきのことと思いますが、トイレの中は紫外線どころか、可視光でも薄暗いものですから、ほとんど消臭ができません。いえ、まったく消臭効果が感じられないと言った方が良いでしょう。

銅ドープ酸化チタンを用いるべき理由

トイレの薄暗い光でも消臭ができる光触媒が、1種類だけあります。それは、銅ドープ酸化チタン(銅担持酸化チタン)と言われる光触媒成分です。
銅ドープ酸化チタンとは、アナターゼ酸化チタンの結晶の表面に、ナノサイズの酸化銅を結合させたものです。
銅を結合させることで、紫外線にしか反応しなかったアナターゼ酸化チタンが、紫色や青色、水色(シアン)といった色の可視光に反応し、OHラジカルが発生するようになります。また、ごく弱い可視光でも活性化して消臭効果を発揮するようになります。

そういったことから、トイレの消臭で光触媒コーティングを行いたい場合には、銅ドープ酸化チタンを使った製品でないと、ほとんど効果が無いのです。
弊社が販売している銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤では、さきほどご紹介しましたが、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
トイレの光触媒コーティング施工の流れ

トイレの光触媒コーティング施工の流れをご説明します。ドブ臭が漏れ出してくる穴を、パテやコーキング剤で塞いだ状態からのご説明となります。
- トイレに貼ってあるポスターや額などを外し、芳香剤やトイレットペーパーといった備品などもトイレの外に出す
- ガラスや照明などの光触媒コーティング塗装しない箇所に養生をする
- トイレ内を清掃する
- トイレ全体に屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗布する
- コルクボードやポスター類などにも塗布する
- 塗布したコーティング剤が乾燥したら養生を外して元に戻す
- 消臭ができたかを確認
臭気測定を依頼された場合には、施工前後に臭気測定器を用いて臭気測定を行ってください。臭気測定の結果は、カメラで写真を撮っておくと、後で証拠になりますし、報告書作成にも使えます。
備品類を外に出すときに、棚の中にもコーティング塗装する場合には、棚の中もからっぽにしておいてください。
トイレ内の清掃では、コーティング塗装する箇所すべてを拭き掃除します。
塗装作業では、トイレ全体を塗装しますが、便器の後ろ側といった箇所はスプレーガンで塗装ができませんから、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を不織布にしみ込ませて、それで拭き掃除をするように塗布してください。ポスター類に塗布する場合も、スプレーガンですと勢いが強すぎて吹き飛ぶので、不織布で塗布します。
塗布後の乾燥時間ですが、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の水分は蒸発してすぐに乾きます。しかし、しっかり定着させるために、夏であれば30分ほど、冬であれば1時間ほど放置しておいてください。
光触媒観葉植物を置いたらドブ臭を消臭できるのか?

ドブの臭いが漂っているトイレでは、率直に言って効果は期待できません。
光触媒観葉植物とは、人工観葉植物の表面に光触媒コーティング塗装をしたものです。「それをトイレに置いておくと消臭ができるのか?」ということですが、2つの理由からドブの臭いの消臭が難しいことをご説明します。
その理由の1つ目は、まず光触媒観葉植物に用いられている光触媒成分の多くが、酸化チタンだからです。先ほどもご説明したように、酸化チタンは紫外線にしか反応しませんから、それを薄暗いトイレにいくら置いたところで、消臭効果がありません。
2つ目の理由は、仮に消臭効果の高い光触媒観葉植物を用いたとしても、ドブの臭いが光触媒観葉植物に触れて分解されまでに、人の鼻に入っていってしまったら、臭いを感じてしまうことです。
下水の隙間はおそらくはトイレの部屋の中の下側に位置すると思います。そして、トイレの排気ファンは上側に設置されていますから、臭いが下から上に上っていきます。光触媒観葉植物は臭いが漂っている場所に置かれていることは稀ですから、消臭ができません。
もし光触媒観葉植物でトイレの消臭をしたいとお考えであれば、少なくとも銅ドープ酸化チタンを使った光触媒観葉植物をご利用ください。ちなみに、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒観葉植物を販売しているメーカーは、今のところ花緑の楽園のみです。
以上、飲食店のトイレがドブ臭くなる理由やその対策、光触媒コーティング剤の選び方や施工方法などをご説明いたしました。
ご紹介した施工事例の写真は、弊社の光触媒コーティング愛を扱う施工代理店、株式会社マテリアルリサーチの施工事例です。マテリアルリサーチでは、都内の飲食店のトイレ施工で実績のある施工店です。
この施工代理店は、女性の施工技術者が所属するので、女性トイレの消臭コーティング施工も安心してご依頼いただけます。
飲食店のトイレの消臭をご希望の方は、弊社もしくは施工代理店までお気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。