
イリスの防カビ施工は、特殊な光触媒を使った防カビコーティングです。
その特殊な光触媒の名前は、「銅ドープ酸化チタン(銅担持酸化チタン)」と言われる成分です。
この成分は、弊社が世界で初めて製造に成功し、東京大学の先生から「今世紀、これよりも抗菌力の高い光触媒は生まれないだろう」とまで言われたものです。
この記事では、銅ドープ酸化チタンを使った食品工場の防カビ施工について解説いたします。
酸化チタンと銅ドープ酸化チタンの違い
光触媒(ひかりしょくばい)とは、光が当たったら触媒効果を発揮して、カビ菌を分解したり活動を抑制したりする成分のことです。
酸化チタンでは食品工場内の防カビができない
酸化チタンにはいくつかの結晶構造があり、光触媒でもっとも利用されているのがアナターゼ型と言われる結晶構造の酸化チタンです。アナターゼ型酸化チタンは「一般的な酸化チタン」と言えます。
アナターゼ型は紫外線が当たると強い抗菌力を発揮することで知られています。
食品工場の中で使用されている照明器具は、LED照明がほとんどのことと思います。そのため、LED照明は、次の図のように紫外線がほとんど含まれていませんから、「防カビをしたい」ということで、アナターゼ型酸化チタンを使用される場合もあるようですが、防カビ効果がありません。

アナターゼ型酸化チタンを防カビ剤として利用される場合は、紫外線ランプと組み合わせる必要があります。
銅ドープ酸化チタンなら食品工場内の防カビが可能

銅ドープ酸化チタンとは、ナノサイズのアナターゼ型酸化チタン結晶の表面に酸化銅を結合させた光触媒です。
アナターゼ型酸化チタンは紫外線にしか反応しませんが、銅ドープ酸化チタンは紫色や青色といった光にも反応するので、LED照明でも防カビ効果を発揮します。
銅ドープ酸化チタンを食品工場の壁や天井などに塗布することができたら、それらの防カビが期待できるわけです。

また、光触媒はカビだけでなく、食品から出る臭いも分解してくれます。食品から出る臭いがあるので、食品工場内の臭いを完全に消せるわけではございませんが、臭い成分が銅ドープ酸化チタンに触れたら分解消臭されるので、臭いが緩和されます。
可視光応答型光触媒
LED照明のような目に見える光に反応する光触媒のことを、可視光応答型光触媒といいます。
可視光応答型光触媒にはたくさんの種類がありますが、実用化されているものとしては、次のものがあります。
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 鉄ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
「これらの中で、銅ドープ酸化チタンが一番良い」ということなのですが、その理由は、銅ドープ酸化チタンだけが、光が弱くても防カビ効果を発揮するという性質があるからです。
他の可視光応答型光触媒と銅ドープ酸化チタンの防カビ効果を比較すると、200lx程度の薄暗い光の中では、他の可視光応答型光触媒では効果が無く、銅ドープ酸化チタンだけが高い効果を発揮します。

もちろん光が当たっている方が高い防カビ効果があるので、銅ドープ酸化チタンを用いても、できるだけ光を当てていただきたいのですが、カビが発生する場所は、光が当たっている場所だけとは限りません。
明るい場所は、カビが発生したら目立つので掃除をしますが、テーブルの裏側などの暗い場所は無視されることがあります。
そういったことからも、食品工場の防カビは、光が弱くても防カビができる銅ドープ酸化チタンが最適だと言えます。

銅ドープ酸化チタンを塗布する方法
銅ドープ酸化チタンを使った防カビ剤

銅ドープ酸化チタンを塗布する方法は、防カビ剤として銅ドープ酸化チタンが添加された光触媒コーティング剤を用います。
弊社が開発した製品は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)という名称で業者向けに販売しています。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗布には、専用の塗装機械を用いて行います。弊社が推奨する塗装機械は、ABAC(アバック)温風低圧塗装機です。次の写真は、ABAC温風低圧塗装機SG-91です。

この塗装機械を使って、壁や天井などに塗布します。
効果の持続期間
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の耐久性は、10年ほどです。
ただし食品工場のような湿気の多いところでは、5年ほどの場合もあります。また、すでにカビが発生している食品工場では、カビの根っ子があり、カビの除去が十分でない場合には1年ほどでカビが発生してしまう場合もあります。
できれば食品工場を新築されたときに、防カビ施工をしていただいた方が良いです。カビが発生してお困りの食品工場では、丹念にカビを除去してから防カビ施工をしたり、銅ドープ酸化チタンの塗布量を多くしたりすると、効果の持続期間が長くなります。
防カビ効果を高める方法
過去に食品工場で施工をさせていただいた実績では、水蒸気の多い食品工場でも、工場内の明かりだけで十分に防カビができ、お客様に喜んでいただいています。
銅ドープ酸化チタンの効果は、湿気ているよりも乾燥している方が、防カビ効果が高いです。食品工場内は常に換気しておいてください。
「もっと強力に防カビをしたい」という場合は、防カビ施工した箇所に強い光を当ててください。銅ドープ酸化チタンは、LED照明の光に反応しますが、紫外線を照射すると効果がさらに高まります。夜間に人がいない間でもLED照明を点灯させておいたり、紫外線の殺菌灯を照射しても効果が高まります。
食品工場で利用可能か?
次に屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の成分についてご説明します。防カビ剤にどのような成分が利用されているのかは、食品工場にとっては重要なことです。
この内容を踏まえて、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)が食品工場で利用できそうかをご検討ください。
有機溶剤が利用されているのか?
一時期、カップ麺から有機溶剤の臭いがしたということでニュースになったことがありました。
このニュースは、防カビ剤とは関係はございませんが、食品工場を防カビする場合には、有機溶剤が揮発するようなものは利用できません。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の成分は次の通りです。
光触媒成分 | 銅ドープ酸化チタン |
---|---|
接着成分(バインダー) | アモルファス酸化チタン |
その他 | 水 |
このように完全な無機成分のみで構成されており、防カビコーティング後は、水分しか揮発しません。
重金属などの溶融は?
食品工場で利用される防カビ剤は、重金属などの有害な物質が溶融するようなものは利用できません。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を、プラスチックにコーティングしたものを、日本食品分析センターに依頼して、重金属などの溶融を調べてもらったところ、問題はありませんでした。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、食品工場の防カビコーティング剤として、安心してご利用いただけます。
防カビ施工の流れ
すでにカビが発生している食品工場での防カビ施工の流れは、次の通りです。
- カビの除去
- 屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗布
まずカビを除去します。カビは漂白剤等を使って丹念に除去してください。専用の業者さんにお願いすると良いと思います。
一般的には、カビの除去が終わったら、直射日光が入ってくる場所に下地保護剤を塗布するのですが、多くの食品工場では直射日光が入ってくる窓はほとんどありませんから、下地保護剤の塗布は必要ありません。
カビの除去を終え、壁や天井が完全に乾燥してから、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗布は、先ほどご説明したABAC温風低圧塗装機を使って、十字方向に2セット行います。

十字に1セット塗装したら乾燥させて、2セット目を塗装しますが、乾燥は夏場であれば30分ほど、冬場は2時間ほど待ちます。液剤は、塗布したらすぐに乾燥したように見えますが、接着成分が固まるまで待つので、30分~2時間ほど待ちます。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗装は、弊社もしくは弊社の施工代理店にお任せください。
施工事例
石川県にある、大手コンビニの弁当に使用されるご飯を製造している食品工場からご依頼をいただいたことがあります。
その工場では、何台もの大釜でご飯を炊いていましたが、その湯気でカビが発生し、天井や壁は真っ黒になっていました。「大手コンビニの担当者が工場に視察に来て指摘された」ということで、カビを除去し、防カビ施工をすることになりました。
専門の業者さんにカビを除去してもらい、その後に銅ドープ酸化チタンを使って防カビコーティング施工をさせていただきました。
施工後2年経過して、カビの発生状況を確認したところ、「カビが出ていない」とのことで喜んでおられました。その後も防カビ効果が続いているようです。
壁や天井以外にも防カビ施工が可能

屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、壁や天井以外にも塗装が可能です。
この写真は、パン工場のエアコン内部の防カビ施工をしている様子です。
食品工場では、次のような場所に防カビ施工ができます。
- エアコンや空調機の内部やフィルター、吹き出し口
- エプロンや長靴、マスク
- テーブルや製造機械類
- 発泡スチロールやパレットなどの容器
- ビニールカーテン
- エアシャワー
以上、食品工場の防カビ施工について解説いたしました。銅ドープ酸化チタンによる防カビ施工で、清潔な食品工場の実現をご支援いたします。
ご不明なことがございましたら、お気軽にご相談ください。

この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。