光触媒は、光のエネルギーを受けて、除菌や消臭、化学物質や有機物の分解、防汚などの効果のある物質のことです。光触媒でもっとも効果のある物質が酸化チタンです。
酸化チタン光触媒は、とても高い光触媒効果があり、外壁の防汚、室内の除菌・消臭、シックハウス対策などでの化学物質(有機化合物)の分解にも利用されています。
そのような魅力的なメリットのある酸化チタン光触媒ですが、問題点もあります。
酸化チタン光触媒の主な問題点は、次の3種類です。
- 可視光で反応しにくい
- そのままでは塗装面に定着しにくい
- 塗装面を劣化させてしまう
それぞれ解説をしつつ、それらの問題点を克服した、弊社の酸化チタン光触媒コーティング施工をご説明いたします。
酸化チタン光触媒の問題1
「可視光で反応しにくい」
酸化チタン光触媒は、「可視光で反応しにくい」という問題があります。
酸化チタン光触媒は紫色の光や紫外線で活性化する
光触媒は、光であれば何でも良いわけではなく、光の波長の相性があります。酸化チタンが光触媒としての強い機能が発揮されるのは、紫色の光や紫外線の波長の光が当たったときだけです。
つまり、紫色の光や紫外線が当たらない場所では、酸化チタンが光触媒としての機能が発揮されないのです。
紫色の光や紫外線が強い光源とは太陽です。太陽光に当たると日焼けをしますが、その光によって酸化チタンが活性化するのです。
室内や地下室では酸化チタン光触媒は効果がない!?
室内では、太陽光の光が弱いですし、最近のガラスには紫外線防止の効果があり、ガラスを等かしてくる光の紫外線量は少なくなっています。また、地下室では、蛍光灯やLEDの光が主な光源です。蛍光灯は多少紫外線が出ていますが、酸化チタン光触媒が除菌や消臭の効果を発揮させるためにはエネルギーが弱いです。
そのような理由で、室内や地下室のような場所では、除菌や消臭をしたいと思っても、紫色の光や紫外線が著しく少ないので、効果が出ません。
室内用光触媒コーティング剤を製造しているメーカーの中には、可視光でも活性化する酸化タングステンを利用したものもあります。ところが、酸化タングステンは光触媒の効果が弱いので、カビが発生してクレームになることもあるそうです。
弊社が開発した銅ドープ酸化チタンの可視光応答型光触媒とは?
酸化チタン光触媒は、紫外線の元では光触媒の効果がとても高いのですが、室内や地下室では効果がないという問題がありました。
そこで、弊社では20年ほど前に「酸化チタンでも可視光で高い光触媒効果が出ないだろうか?」ということで、効果の高い可視光応答型酸化チタン光触媒の開発を開始しました。可視光応答型光触媒とは、蛍光灯やLEDライトにも反応する光触媒のことです。
そのころには、窒素を添加すると酸化チタンが可視光応答することが知られており、「何かを添加すること良い」と考えました。窒素ドープ酸化チタンの試作、銀や亜鉛、白金、ニッケルなどの金属を担持させた酸化チタンの試作を経て、さまざまなアイデア出しと実験を繰り返した結果、「銅を添加したら可視光でも酸化チタンが活性化する」ということを世界で初めて発見しました。
それを元に生み出されたのが、室内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
新築マンションの壁紙クロスに光触媒コーティングをして、除菌・防カビ・防臭をするクロスコーティングというものがあります。今までクロスコーティングに他社製品を使っていて、「冬にカビが発生した」とクレームになっていた企業が、弊社の室内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を使用し始めたら、それ以来クレームが1件も出なくなったそうです。
酸化チタン光触媒に銅を添加し、「可視光で反応しにくい」という問題を克服し、特許を取得しました。
酸化チタン光触媒の問題2
「そのままでは塗装面に定着させにくい」
酸化チタン光触媒は「そのままでは塗装面に定着しにくい」という問題があります。なぜなら酸化チタンはナノサイズであっても粒子だからです。また、酸化チタンは定着させる材料を分解する可能性もあります。
樹脂で酸化チタンを定着させることができるのか?
酸化チタンの定着材として、樹脂を使っているメーカーがあります。弊社としては、そういった光触媒コーティング剤は、効果もしくは耐久性に問題があると思います。
酸化チタンの配合を多くしたら、光触媒の効果が高くなります。すると、定着材である樹脂を分解してしまうのです。そうすると耐久性が悪くなります。
反対に、酸化チタンの配合を少なくして樹脂が分解されにくくしたら、今度は光触媒の効果が弱くなってしまうので、「効果がない」と思われてしまいます。
酸化チタン光触媒を定着させる材料は酸化チタン!?
光触媒コーティング剤は、粒子の酸化チタンの効果を引き出しつつ耐久性を高めるためには、どのように塗装面に定着させるのか。それは、定着材として、酸化チタンを使います。
酸化チタンを定着させるために酸化チタンを使用することは、不思議な感じがあります。その答えはこうです。
酸化チタンは、いくつか結晶構造の種類があります。光触媒の効果がもっとも高い結晶構造が、アナターゼといわれるものです。そして、それを塗装面に定着させるための定着材に、アモルファスを用います。アモルファスとは、非結晶のことです。
アモルファス酸化チタンを定着材として使用すると、アナターゼ酸化チタンが強固に定着するようになります。
アナターゼとアモルファスの最適な配合
原理は簡単なのですが、難しいのは「均一に定着させること」です。酸化チタン光触媒コーティング剤を拭きつけたときに、塗装面に酸化チタンが均一に塗装されないと、塗装面が白くなったり、虹色が出たりする場合があります。
そのような色が出ない塗装のことを「クリア塗装」といいますが、弊社ではクリア塗装ができる業務用光触媒コーティング製品を開発するために、アナターゼとアモルファスの最適な配合に苦労しました。
クリア塗装をするためには、もちろん施工者の技術力の高さも大事です。しかし、すべての施工者がベテランとは限りません。そこで、弊社ではベテラン施工者でなくても、なるべくクリア塗装ができるように、アナターゼとアモルファスだけでなく、添加材も最適な配合をしています。
酸化チタン光触媒の問題3
「酸化チタンの白色が出てしまう」
酸化チタンの色は白色ですので、塗装面が白色になってしまう場合があります。白色が出るくらいに塗装したら、酸化チタンがたくさん塗装されたことになるので、それだけ光触媒の効果が高くなりますが、装飾性が失われてしまいます。
そこで、塗料ではなるべくクリア塗装ができるような成分の配合が大事ですし、塗装をするときに光触媒コーティング剤専用の塗装装置とスプレーガンを用いることを推奨します。そうすることで、酸化チタンを塗装したときに白色が出てしまうことを、防ぐことができます。
白色が目立つ場所に塗装するときは、特に注意が必要です。例えば、自動車の車内に光触媒コーティング剤を塗装する場合、シートの色は黒色が多いですが、塗料の白色がすぐに目立ってしまいます。すると、光触媒の効果は実感できるかもしれませんが、自動車の装飾性が失われてしまいます。
そういったこともあり、自動車用の光触媒コーティング剤は、光触媒の効果を出しつつ、なおかつクリア塗装ができるような塗料の配合がとても難しいのです。
酸化チタン光触媒の問題4
「塗装面を劣化させてしまう」
酸化チタン光触媒は、紫色の光や紫外線のエネルギーを受けて光触媒の効果を発揮すること、有機物を分解することは、先ほど述べた通りです。
つまり、酸化チタン光触媒を塗装すると、塗装面の有機物を分解してしまい、塗装面を劣化させてしまうという問題が発生するのです。
塗装面を劣化させる酸化チタン光触媒は耐久性が低い
塗装面が劣化すると、酸化チタン光触媒が落ちてしまい、光触媒の効果もなくなります。
塗装面が有機物でなければ、このような問題は起こりませんが、ペンキなどの有機物は酸化チタン光触媒によって分解され、劣化して白く変色していきます。化学繊維の場合ですと、焦げたような臭いが発生することもあります。
塗装面が劣化すると、見栄えが悪くなるだけではありません。酸化チタン光触媒が塗装面から隔離して落ちてしまいます。つまり、酸化チタン光触媒の効果がなくなります。
そこで、光触媒コーティング剤のメーカーの中には、光触媒の効果を下げて、塗装面が劣化しないようにしているところもあります。すると、カビが発生するなどしてクレームになります。反対に効果を高めてしまったら、塗装面が劣化してクレームですし、耐久性も低いです。
一般的な酸化チタン光触媒は、効果と耐久性が反比例します。弊社は、もちろんその問題を克服しています。
塗装面の劣化防止はプライマーが決め手
このような問題に対処するために、弊社では酸化チタン光触媒と塗装面の間に、「プライマー」といわれる緩衝材を開発しました。
酸化チタン光触媒を塗装する前に、先にプライマーを塗装し、その上から酸化チタン光触媒を塗装します。すると、酸化チタン光触媒と塗装面が離れているので、酸化チタン光触媒が塗装面を劣化させることがありません。
このプライマーの開発にも研究を要しました。メーカーによっては、プライマーが開発できなかったところもあるようで、そういったメーカーの光触媒コーティング剤は、先ほどご説明したように、耐久性が悪いのです。
弊社の製品は、プライマーがあるので酸化チタン光触媒の効果を最大限引き出すことができます。
酸化チタンの問題点を克服した
効果的な光触媒コーティング施工
酸化チタン光触媒は、可視光で反応しないこと、塗装面に定着させにくいこと、塗装面を劣化させることの3つの問題点がありました。弊社の業務用光触媒コーティング製品は、それらの問題点を克服しました。
弊社の光触媒コーティング剤の性質をまとめると、次のようになります。
- 可視光応答型光触媒で、室内でも高い効果が得られる
- アモルファス酸化チタンによる強固に定着する
- クリア塗装ができる
- 光触媒から塗装面を守るプライマーが存在する
さらに、最近の研究により室内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)をベースに改良を加えた、水をはじく性質を持つプラスチックにも塗装ができる製品も発売いたしました。
光触媒コーティング塗装を事業として取り入れているが、クレームになって困っている企業様は、ぜひ弊社の業務用光触媒コーティング製品をご利用ください。詳細は光触媒コーティング施工代理店募集のご案内をご覧ください。
また、弊社の光触媒コーティングを行って欲しい企業様や個人の方は、施工代理店にて施工をさせていただきます。施工代理店によって対応できる地域もあるので、詳細は光触媒コーティング塗装の施工代理店一覧をご覧ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。