酸化チタン光触媒の効果とは？

抗菌・防カビ効果

抗菌効果とは、病原菌やカビ菌などの菌類を殺菌してくれる効果のことです。酸化チタンは、紫外線が当たるとOHラジカルやスーパーオキシドアニオンという活性酸素を発生させます。OHラジカルの強い酸化力によって、菌類を分解してくれます。

除菌や防カビをしたい箇所に酸化チタンを蒸着させておけば、そこに紫外線が当たれば除菌や防カビができます。

「紫外線が当たらない場所は？」と思われたかもしれません。確かに、酸化チタンは紫外線が当たる場所でしか除菌・防カビ効果がありません。紫外線でなくても除菌・防カビ効果のある光触媒を選ぶと良いのですが、それについては後述いたします。

消臭・防臭効果

汗の臭いや加齢臭、ペットの臭いなど、臭い成分の多くは有機物です。酸化チタンが光触媒活性すると、抗菌・防カビのところで解説したように、OHラジカルが発生します。これによって、有機物が酸化されて分解されます。

室内の有機物の臭いとしては、アンモニアなどのトイレの臭い、加齢臭、ペット臭、化学物質などがありますが、臭い成分を消臭できます。また、カビの臭いについては、上記の防カビ効果によって消臭ができます。もちろんカビの胞子も分解できます。

ただし、臭い成分によってはOHラジカルでは酸化されない成分もあります。そういった成分の消臭はできません。

コケ防止効果

湿気っぽい外壁には、苔が繁茂し、緑色や黒色などに変色することがあります。コケ防止とは、そういった外壁の苔の繁茂を抑制し変色を防ぐ効果のことです。

酸化チタンから発生したOHラジカルは、苔や苔の胞子も分解してくれます。外壁に酸化チタンコーティングをしておけば、その性質によってコケ防止ができます。この効果によって、外壁の劣化を抑えられ、清掃するコストや手間を抑えられます。建物に苔が生えると見栄えが悪くなりますが、それを光触媒が防いでくれます。

光触媒によるコケ防止効果の詳細は、「外壁のコケの発生を防止できる光触媒コーティングとは？」をご参照ください。

VOC等の化学物質の分解

VOCとは、揮発性有機化合物のことで、シックハウス症候群の原因ともいわれています。酸化チタンによって、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドといったVOCを分解することができます。

ただし、酸化チタン単体では分解が難しいVOCも存在します。例えば、トルエンやキシレン、スチレンは、酸化チタンでは分解が難しいとされています。

光触媒によるVOCの分解については、「揮発性有機化合物(VOC)を分解できる光触媒成分とは？」をご参照ください。

セルフクリーニング効果（防汚効果）

セルフクリーニング効果とは、掃除をしなくても汚れが落ちていってくれる効果のことです。

酸化チタンには親水性があります。これは水に馴染む性質のことです。酸化チタンを外壁や窓ガラスに塗装しておけば、雨水が外壁や窓ガラスに馴染んで、そこに付着している汚れを浮かせて落としてくれる効果です。

外壁や窓ガラスの汚れは、空気中の油汚れが付着し、それにPM2.5などの汚れが付着していって、汚れが目立ちます。光触媒が油汚れを分解してくれ、雨水でいっしょにながしてくれるので、勝手に汚れが落ちていきます。

このメカニズムによるセルフクリーニング効果によって汚れが自動的に落ちていく効果や、外壁に苔が繁茂しなくなることでの防汚効果によって、外壁や窓ガラスを清掃するコストや手間を削減することができます。

もし雨が当たらない場所であれば、セルフクリーニング効果は得られませんが、高圧洗浄で水をかけたり、拭き掃除をすることで簡単に汚れを落とすことができます。

セルフクリーニング効果の詳細は、「光触媒のセルフクリーニングとは？」をご参照ください。

酸化チタンは紫外線が当たると効果を発揮

先ほど述べたように、酸化チタンは紫外線が当たることで、上記の効果を発揮します。紫外線のみですが、紫外線が当たりさえすれば効果が強く出ます。ですので、酸化チタン光触媒は直射日光が当たる屋外用として利用されます。

ところが、紫外線以外の光には、まったくと言ってよいほど反応しません。ですので、酸化チタン光触媒を室内で利用すると、上記の効果はありません。室内で除菌や防カビ、消臭ができたら酸化チタン光触媒の利用価値がとても高いのですが、酸化チタン光触媒はそのままでは利用できません。

「酸化チタンは紫外線にしか効果が無いのか？」ということですが、答は「はい」であり「いいえ」です。先ほど、酸化チタンは紫外線にしか反応しないことを述べましたが、「そのままでは紫外線にしか反応しない」ということです。

酸化チタンに別の物質を担持させて可視光応答型酸化チタンにする方法

酸化チタンを、紫外線以外の光でも反応させる方法は、何かの物質を担持させることです。担持とは、何かの物質に別の物質を固定化させることです。

現在、数種類の成分を酸化チタンに担持させて、紫外線以外の光でも活性化することが確認されています。可視光応答型酸化チタンとして実用化されている成分は、次の2種類です。

1. 銅
2. 窒素

酸化チタンは紫外線が当たれば、さまざまな光触媒成分と比べて、強い触媒効果を発揮します。しかし、紫外線以外の光では、光触媒の効果を発揮しません。上記の物質を酸化チタンに担持させることによって、可視光でも光触媒としての効果を発揮することが発見されています。

酸化チタンを何かの方法によって可視光でも光触媒の効果を発揮するようにしたものを、可視光応答型酸化チタンと言います。

最も効果のある可視光応答型酸化チタンとは？

可視光応答型酸化チタンの中で、もっとも触媒効果を発揮するものが「銅」です。銅を担持させた酸化チタンのことを、銅ドープ酸化チタンと言います。この成分は、弊社が世界で初めて発見しました。

なぜ銅を担持させたものがもっとも効果的なのか、それは驚くことに「光がなくても触媒の効果を発揮するから」です。

光触媒は、通常であればその成分が活性化する光が当たらないと、光触媒としての効果を発揮しません。ところが、銅ドープ酸化チタンに加えられた銅は、ナノサイズの酸化銅として存在し、どうやらこの成分が強い触媒効果を発揮しているようなのです。

このときの除菌効果は、除菌効果が高いとされている銀イオンよりも強いことを、弊社の試験で確認しています。

暗所でも触媒の効果を発揮しますが、光を当てると相乗効果でより強い触媒効果を発揮することが、弊社の研究で分かりました。また、酸化チタンでは分解ができなかったVOC成分をも分解できることを確認しました。

酸化チタンではなく、銅ドープ酸化チタンを用いることで、紫外線が当たらない場所でも上記の効果を得ることができます。

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。