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酸化チタン光触媒が室内で効果がない理由とは?

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酸化チタン光触媒が室内で効果がない理由とは?

酸化チタンは、光触媒の金属の中で最も効果があります。業務用では光触媒コーティング塗装によって、除菌やウイルス対策、防カビ、消臭、防汚、化学物質(有機化合物)の分解などの効果が期待できます。酸化チタンの光触媒スプレーなども市販されています。

ところが、酸化チタンを使った光触媒コーティング剤や消臭スプレーは、室内では効果が無い場合があります。効果を期待して光触媒コーティング塗装をしたり、光触媒スプレーを使ったところ、効果が無くてガッカリする人もいます。

酸化チタンを使った光触媒コーティング剤が室内で効果がない理由や、室内でも効果の高い可視光応答型光触媒についてご説明いたします。

酸化チタン光触媒が室内で効果がない理由

酸化チタンは、光触媒の効果が高いことで知られていますが、効果の出る光の性質に弱点があります。

光の波長

酸化チタンが室内で光触媒としての効果がない理由をご説明する前に、光の波長についてご説明したいと思います。少し難しい話になるかもしれませんが、酸化チタンが室内で効果のない理由につながるので、少しお付き合いください。

光には波長があります。その波長によって人が感知できる色の違いが出てきます。

人が見ることが出来る色の光のことを、「可視光線」と言います。可視光線には、青色や緑色、赤色などがありますが、これらの色の違いは、光の波長の違いでもあります。光の粒子は同じであっても波長が違うと、異なる色で見えるのです。

紫色は波長が380nm程度と、可視光線の中でも最も波長の短いものです。ちなみに、nmの「n」はナノ(10億分の1)です。赤色は800nm程度と、波長の長い色になります。

光の波長と光の色の関係は、おおよそ次のようになります。

  • 380nm=紫色
  • 450nm=青色
  • 500nm=水色
  • 550nm=緑色
  • 580nm=黄色
  • 600nm=橙色
  • 650nm=赤色
可視光線の波長

紫色よりも波長の短い光、例えば350nmの光を人は見ることができません。紫色よりも波長の短い色の光のことを、紫外線と言います。紫色の外の光線です。また、赤色の波長よりも長い光も同様で、例えば850nmの波長の光を人は見ることができません。そのような光のことを、赤外線と言います。赤色の外の光線です。

光触媒は、いろいろな波長の光を受けて光触媒の効果が出てくるのですが、物質によって効果の出やすい光の波長と出にくい光の波長があります。

酸化チタンの活性と室内で効果が出ない理由

酸化チタンが最も光触媒としての効果が出やすい波長が、380nmよりも短い波長の光です。つまり、酸化チタンは紫色や紫外線の光によってのみ、光触媒の効果が出るということになります。

室外では、太陽の光が降り注いでいます。太陽の光は白く見えますが、これはいろいろな色の光が重なったときに白く見えます。太陽光には可視光線以外にも、紫外線や赤外線も含まれています。

私達が外出するときは、日焼け止めクリームを塗りますが、紫外線から肌を守るためです。太陽光に当たると、たくさんの紫外線を受けることになります。

ところが、室内にいるときは日焼け止めクリームは塗りません。つまり、室内では酸化チタンが光触媒の効果を発揮する紫外線や紫色の光が、外と比べて著しく少ないのです。

そのため、酸化チタンだけを用いた光触媒コーティング剤は、室内では効果が出ないことがあるのです。

可視光線でも効果のある光触媒は無いのか?

ここで、「可視光線でも効果のある光触媒は無いのか?」と思われたことでしょう。もちろんございます。その代表的な成分が酸化タングステンです。

酸化タングステンだと光触媒の効果は低い

酸化タングステンを用いた光触媒コーティング剤は、一時期、「可視光領域の光でも効果がある光触媒だ」ということで、光触媒製品の製造メーカーから、酸化タングステンのみや、酸化チタンと酸化タングステンのハイブリッドのものが販売されたことがありました。

室内の可視光線では、確かに酸化チタンよりも光触媒の効果はあるものの、満足のいくような結果が得られず、とても注目されましたが、その製造メーカーは一部を除いて撤退してしまいました。

可視光線でも効果のある光触媒のことを、「可視光応答型光触媒」と言いますが、酸化タングステンではあまり効果がありませんでした。

世界で初めて効果の高い可視光応答型光触媒を開発

弊社では、2000年頃に「酸化チタンを用いた可視光線でも効果の高い光触媒コーティング剤を開発できないだろうか?」と考えました。

そこで、他の光触媒コーティング剤メーカーに、「可視光線でも効果のある酸化チタンの光触媒を開発できないか」と問い合わせてみましたが、どのメーカーでも、開発を断られてしまいました。

そこで、自社で開発することにしました。

数々の実験を繰り返し失敗の山を築いて、2年ほど経過した2002年11月頃、たまたま「銅を加えたら、効果があるのではないか?」と思い至り、実験しました。すると、夢にまでも見た可視光線でも高い効果のある酸化チタン光触媒ができました。すぐさま特許を取得し発表しました。

そのときは、なぜ銅を入れたら可視光線でも効果が高いのか判りませんでしたが、その後に東京大学などが理由を解明してくださいました。

まとめ

酸化チタン光触媒が室内では効果が無い理由は、酸化チタンが光触媒の効果が出やすい紫外線や紫色の光が、室内では少ないからです。

室内では可視光線の光は多いので、可視光線でも光触媒の効果のある酸化チタン光触媒があれば、除菌や防カビ、消臭などが可能です。

そこで、弊社がそのような光触媒の開発に取り組み、2年の研究の末、世界で初めて可視光線でも高い効果のある銅ハイブリッドの酸化チタン光触媒を開発しました。

弊社が開発した可視光応答型光触媒は、業務用光触媒コーティング剤「屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)」や一般向けの除菌・消臭スプレー「アキュートクリーン」などに用いられています。

可視光線でも効果の高い光触媒コーティングなら、弊社までご相談ください。

この記事の著者/責任者

島田幸一

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。

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