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酸化チタンによる抗菌を徹底解説

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酸化チタンによる抗菌を徹底解説

国内でもっとも一般利用されている光触媒は、酸化チタンです。

酸化チタンがこれらの効果を発揮するためには条件があります。

ネット検索で調べていると、「光触媒は効果が無い」とか「光触媒は嘘だ」と言われています。そのような書き込みの中には少なからず、酸化チタンを間違った使い方でご利用になられ、条件が満たされていない場合もあることでしょう。

この記事では、酸化チタンによる抗菌を徹底解説いたします。少し難しい用語も出てきますが、光触媒をご利用になられる方は、効果のない施工をして失敗する前に、酸化チタンの性質をご理解いただくことで、光触媒を正しく選ぶことができることと思います。

酸化チタンが利用されている場面

酸化チタンは、私たちの身近なもので次のような場面で利用されています。

  • 除菌・消臭スプレー
  • 抗菌・消臭コーティング
  • 防カビコーティング
  • 防汚コーティング

酸化チタンひとつで、除菌や抗菌、消臭、防カビ、防汚といった効果があります。

ただし、酸化チタンがこれらの効果を発揮するためには条件があります。後ほど解説いたしますが、それらの条件が満たされない場合には、酸化チタンを用いても効果がほとんどありません。

酸化チタン光触媒の結晶

アナターゼ型酸化チタンの結晶構造

酸化チタンとは、金属のチタンが酸化したものです。酸化チタンは次の3種類の結晶構造があります。

  1. アナターゼ型(アナタース型)
  2. ルチル型
  3. ブルッカイト型

この中で光触媒として利用されるものは、アナターゼ型です。アナターゼ型の酸化チタンのことを、私は「アナターゼ酸化チタン」と呼んでいます。(以下、酸化チタンと書かれたものは、すべてアナターゼ型を指します。)

光触媒として利用する酸化チタンは、チタンのハンコや指輪といった大きさの金属の塊ではなく、ナノサイズの微粉末を利用します。ナノサイズとは、1mmを1/1,000したものを、また1/1,000にしたサイズです。弊社の光触媒製品に利用されている酸化チタンは、おそらく100nm(ナノメートル)以下のサイズと思われます。

この酸化チタンの微粉末を室内や外壁などに利用します。

酸化チタンが抗菌効果を発揮する条件

酸化チタンが抗菌効果を発揮するための条件は、次のすべてが満たされた場合です。これらが満たされない場合には、ほとんど抗菌効果を発揮することはありません。

  • 酸化チタンがナノサイズの微粒子であること
  • 紫外線が当たり活性化すること
  • 活性化状態で細菌類やウイルスが触れること

酸化チタンの活性化とは?

酸化チタンは、半導体の一種です。半導体とは、導体と比べて電気を通しにくい物質ですが、絶縁体よりも電気を通します。半導体は、外部からエネルギーが加わると自由電子が飛び出してきます。

酸化チタンは、光が当たることで自由電子が飛び出します。このように自由電子が飛び出すことを、「活性化」といいます。光には、紫外線、可視光、赤外線の3種類があり、酸化チタンは紫外線が当たることで活性化します。

光が当たって活性化し、触媒効果を発揮するので、光触媒の一種に分類されます。

酸化チタンによる抗菌のメカニズム

酸化チタンに紫外線が当たると、どのように抗菌ができるのかのメカニズムは、次の図をご覧ください。

酸化チタンの抗菌メカニズム。紫外線が当たることでOHラジカルが発生し抗菌ができる。

酸化チタンに紫外線が当たると自由電子が飛び出すことは、先ほど述べた通りです。この自由電子が空気中の酸素や水と反応して、また自由電子が飛び出した場所が空気中の成分から電子を奪って、OHラジカルが発生します。

OHラジカルは強い酸化力を持つ活性酸素です。

このOHラジカルに細菌類やウイルスが接触すると、それらの表面の成分や突起、細胞壁などを酸化分解し、それらの活動を抑制したり、死滅させたりできます。このようにして、酸化チタンによって抗菌ができるわけです。

酸化チタンによる抗菌のメリット

除菌剤にはいろいろな種類のものが市販されています。アルコールスプレーや次亜塩素酸もそうです。漂白剤でも除菌ができます。これらの除菌剤は、細菌類などを除菌したら、成分が変質してしまうので、除菌効果が持続しません。

それに対して酸化チタンは、紫外線が当たり続けたら、自由電子が発生し続け、それによってOHラジカルも発生し続けます。つまり、酸化チタンは変質せずに除菌を半永久的に続けてくれるわけです。

そのゆに、酸化チタンは変質しないで除菌し続けてくれるので、「触媒」と言われています。そして、除菌を維持してくれるので、「抗菌」と言えます。

除菌とは細菌類などの数を減らせること、抗菌とは減らした細菌類などの数が増えないようにできることを指します。光触媒は、紫外線を当てて活性化させられたら、除菌もできるし抗菌もできるわけです。

酸化チタンで室内を抗菌する方法

酸化チタンで抗菌ができることがわかったところで、酸化チタンで室内を抗菌する方法を解説いたします。この部分が、この記事でもっとも大切なところですから、よく覚えておいてください。

光触媒コーティング剤を塗装する

酸化チタンを使って室内を抗菌する場合は、酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を利用します。光触媒コーティング剤とは、酸化チタンの微粉末と接着成分が混ざった液剤です。

光触媒コーティング剤はスプレーガンを使って塗布し、乾燥したら施工が完了です。塗装は専門業者に依頼なさってください。

酸化チタンを使った光触媒コーティングは、ネット通販で誰でも購入できますが、慣れていない人が塗装をすると塗りムラができ、見栄えが悪くなる場合があります。塗装は専門業者にお任せいただいた方が良いです。

塗装面に紫外線を照射する

先ほどご説明したように、光触媒コーティング剤を塗装しただけでは、酸化チタンは抗菌効果を発揮できません。酸化チタンが活性化するためには、何が必要だったでしょうか?

そうです。紫外線が当たらないと活性化し、抗菌力が出ませんでした。

酸化チタン光触媒コーティング剤を塗装した箇所に、紫外線を照射してください。紫外線が照射された箇所では抗菌ができます。

紫外線を照射する方法は、紫外線ライトや殺菌ライトを用います。紫外線は直射日光にも含まれているので、窓から差し込んだ直射日光が当たることでも、その部分では抗菌ができます。

紫外線が当たらない場所の抗菌はできないのか?

紫外線が当たらない場所では、効果はゼロではありませんが、ほとんど抗菌はできません。これが、「酸化チタンでは抗菌ができない」と言われるゆえんです。

酸化チタンは室内などの紫外線でないとほとんど反応しない

部屋の中に紫外線を照射し続けることは、現実的ではありません。

酸化チタンでも、ほんの少しは抗菌力があります。光触媒コーティング剤に添加されている酸化チタンの含有量を極端に増やしたら、多少は抗菌力が出ると思います。

しかし、そのような光触媒コーティング剤を塗布した箇所は、酸化チタンの白色に着色されてしまいます。白い壁紙にはそのような光触媒コーティング剤を塗布しても良いかもしれませんが、塗装面はシミが付いたようになり、見栄えが悪くなります。

酸化チタンで自動車の車内を抗菌できるか?

自動車の車内の抗菌・消臭コーティングとして酸化チタンが利用されていることがあります。酸化チタンを利用すると、自動車の車内の抗菌ができるのかをご説明いたします。

自動車は、地下駐車場やインナーガレージなどの屋根のある駐車場に駐車していると、自動車の中に直射日光が入ってきませんから、車内の抗菌はできません。

晴れの日に自動車を運転しているときや、日差しが当たる場所に駐車している自動車はどうでしょうか?

答えは、「抗菌はほとんどできない」です。

その理由は簡単です。ほとんどの自動車はUVカットガラスが利用されているからです。少なくとも90%以上UVカットされます。最近の自動車は99%以上カットされるガラスもあります。99%カットされるということは、紫外線量が1/100以下になるということです。

つまり、「抗菌力はほとんど無し」ということです。

車内の光はUVカットガラスで紫外線がほとんど無いので酸化チタンがほとんど反応しない

紫外線以外の光で抗菌ができる光触媒の種類

室内や自動車の車内を抗菌する場合、酸化チタンでは現実的ではありません。そこで、酸化チタンではなく、紫外線以外の光で抗菌ができる光触媒を選ぶことを、おすすめします。

室内や自動車の車内では紫外線以外の光で活性化する光触媒を利用すべき

室内には、LEDライトや蛍光灯、白熱球といった照明が利用されていますが、それらの照明からは紫外線がほとんど出ていません。自動車の車内では、UVカットガラスで紫外線がほとんど含まれない光が入ってきます。

室内や自動車の車内では、可視光で抗菌ができる光触媒を利用すべきです。

可視光とは、目で見ることができる光のことです。蛍光灯を点灯させると部屋が明るくなりますが、それは蛍光灯から出てくる光を目が感じることができます。そういった光のことを可視光といいます。

可視光で活性化する光触媒のことを、可視光応答型光触媒といいます。

可視光で活性化する光触媒の種類

光触媒コーティング剤として実用化されている可視光応答型光触媒の種類は、主に次のものがあります。

  • 銅ドープ酸化チタン
  • 窒素ドープ酸化チタン
  • 鉄ドープ酸化チタン
  • 酸化タングステン

これらの名称で使われている「ドープ」とは、「添加した」という意味ですが、光触媒の業界では「結合させた」という意味になります。

例えば、銅ドープ酸化チタンとは、ナノサイズの酸化チタン結晶の表面にナノサイズの酸化銅を結合させた光触媒です。銅や窒素、鉄といった成分を結合させることで、紫外線にしか反応しなかった酸化チタンが、可視光にも反応するようになります。

これらの可視光応答型光触媒が活性化する光の種類は、次の表の通りです。

銅ドープ酸化チタン紫色の光、青色の光、水色(シアン)の光
窒素ドープ酸化チタン紫色の光、青色の光
鉄ドープ酸化チタン紫色の光、青色の光
酸化タングステン紫色の光、青色の光、水色(シアン)の光

紫色や青色、水色の光は、LEDライトや蛍光灯、白熱球などの照明から出てくる光ですし、UVカットガラスを通過した光にも含まれています。可視光応答型光触媒を利用したら、室内や自動車の車内を抗菌できるわけです。

可視光応答型光触媒でも抗菌力に差がある

可視光応答型光触媒として、代表的な4種類をご紹介しましたが、これらの中のどれを利用しても良いというわけではありません。可視光で活性化することは同じでも、抗菌効果の高さは異なります。

例えば、酸化タングステンを使った光触媒コーティング剤をPRしているホームページを見ると、抗菌のエビデンスで「蛍光灯の光で抗菌ができた」と証明するグラフが記載されていることがあります。そのグラフの近くに、小さな文字で「1,000lxの蛍光灯の光を照射」とあります。

Lx(ルクス)とは、光の明るさの単位です。1,000lxとは、手術室ほどの明るい光ですから、日常とはかけ離れた明るさの光を照射しているのです。明るいオフィスで500~600lxほど、夜のリビングであれば300~400lxほど、薄暗い部屋では200lxほどです。

200lxと1000lxの明るさ比較。1,000lxは手術室並みの明るさ

非日常的な明るい光で抗菌試験を行い、「抗菌できました」と言われても、実際に家の中で使って抗菌ができるのか疑問です。

もっとも抗菌力の高い可視光応答型光触媒

上記の4種類の中で、もっとも抗菌効果が高い可視光応答型光触媒は銅ドープ酸化チタンです。

銅ドープ酸化チタンの効果の高さは、他の光触媒と比べて、10倍以上の抗菌力があります。200lxほどの薄暗い光の下でも抗菌ができます。

銅ドープ酸化チタンの効果を100としたときの他の光触媒との効果比較

そして、銅ドープ酸化チタンは添加されたナノサイズの酸化銅が、光が当たっていなくても触媒効果を発揮するようです。つまり、照明を消灯させても抗菌ができます。

細菌類は、光が当たっていなくても活動するので、一般的な可視光応答型光触媒では抗菌力が弱い上に、深夜では抗菌力はほとんどありませんから細菌類が繁殖する可能性があります。銅ドープ酸化チタンだけが、光が当たっているときはもちろんのこと、深夜も抗菌ができます。

直射日光、明るい部屋、薄暗い部屋、消灯した部屋のそれぞれの部屋で効果のある光触媒の種類

このように室内を抗菌したい場合は、酸化チタンは不向きです。

以上、酸化チタンによる抗菌について徹底解説いたしました。少し難しい用語がいくつか出てきましたが、要するに「酸化チタンを室内や自動車の車内に利用しても、ほとんど抗菌ができない」ということです。抗菌ができないということは、消臭もできません。

室内や自動車の車内を抗菌したい場合は、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を利用されることをおすすめします。

この記事の著者/責任者

島田幸一

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。

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