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紫外線以外の光で効果のある光触媒とは?

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紫外線以外の光で効果のある光触媒とは?

光触媒は光が当たることで触媒効果を発揮する成分のことです。

一般的に利用される光触媒は酸化チタンです。酸化チタンは、紫外線が当たることで効果があります。

光触媒にはいろいろな種類がありますが、紫外線以外の光でも効果がある光触媒が存在します。

この記事では、光触媒の種類や、どのような光が当たることで、どのような効果があるのかを解説しつつ、紫外線以外の光で効果のある光触媒の利用方法までご紹介したいと思います。

光触媒が応用されている場面

近年、光触媒は水から水素を発生させることで注目を集めています。まだ産業応用として実用化されているわけではありませんから、これからの研究が期待されます。

光触媒が産業応用されている場面は、次の用途になります。

  • 室内や乗り物内での抗菌・抗ウイルス、防カビ、消臭
  • 外壁や屋根の防汚や防カビ、防苔
  • 窓ガラスや太陽光パネルのセルフクリーニング
  • 化学物質の分解、消臭

これらの中で、室内や乗り物内で利用される場合には、紫外線以外の光で反応する光触媒の利用が求められます。

紫外線で効果を発揮する光触媒の種類

紫外線が当たることで効果を発揮する光触媒の種類は、「すべての種類」です。すべての光触媒が、紫外線が当たることで効果を発揮します。

光触媒の性質

光触媒は光が当たることで触媒効果を発揮する成分の総称です。

光触媒によって得られる触媒効果は酸化分解です。光触媒は、光が当たるとそれに触れているものを酸化させる性質があります。しかし、光触媒自体は酸化分解されずにずっと残るため、触媒と言われるゆえんです。

どのような種類の光触媒でも、一部の例外を除いて、光が当たることで触媒効果を発揮します。後ほど、光が当たらなくても触媒効果を持つ、一部の例外についてもご説明いたします。

さて、光触媒は、光であれば何でも良いわけではありません。光触媒は種類によって、どの程度のエネルギーの高さのある光が当たるのかによって、触媒効果を発揮するのかが異なります。

光の種類

光は、エネルギーの高さによって目に見えるかどうかの性質が異なります。次の図をご覧ください。

光の波長と色の関係

エネルギーの高い光は紫外線です。図では左側です。紫外線が肌に当たることで日焼けをしますが、それはエネルギーの高い光から身体を守ろうとする性質が働くからです。

紫外線よりもエネルギーが低くなると、紫色や青色の光として目で見ることができます。このような目に見える光のことを、可視光といいます。可視光は、水色(シアン)、緑色、黄色、橙色、赤色と七色として見ることができます。

赤色よりもエネルギーが低い光は、赤外線となります。図では右側です。

このように、光と言ってもたくさんの種類がありますが、どの光の種類によって光触媒が反応し、効果を発揮するのかは、光触媒の種類によって異なります。

すべての光触媒は紫外線に反応する

すべてと言っても、産業用として実用化されている光触媒に限られますが、すべての光触媒は紫外線に反応します。その理由を、扉を開ける小さな子供と大人で例えたいと思います。

子どもと大人が扉を開ける例え

開くことが困難な重たい扉があったとします。小さな子供は、力が弱いのでその扉を開くことができません。ところが大人であれば、力が強いので簡単に開くことができます。

次に、開くことが簡単な軽い扉があったとします。大人はもちろんのこと、力の弱い小さな子供でも簡単に開くことができます。

力の弱い小さな子供がエネルギーの低い光で、力の強い大人がエネルギーの高い紫外線です。そして、扉が光触媒です。光触媒の種類によって、扉の重さが異なります。

つまり、エネルギーの高い紫外線にしか反応しない光触媒もあれば、エネルギーの低い光でも反応する光触媒もありますが、エネルギーの低い光で反応する光触媒は、紫外線でも反応するわけです。

酸化チタンの性質

紫外線にしか反応しない光触媒の代表は、酸化チタンです。酸化チタンにはいくつかの結晶構造があり、その中でもアナターゼ型と言われる結晶構造をしたものを、光触媒として利用されることが多いです。

紫外線にしか反応しない理由を、もう少し詳しく科学的にご説明します。

光触媒はすべて半導体に属し、それぞれバンドギャップと言われる、エネルギーの閾値を持っています。バンドギャップを電子が超えることができたら、触媒としての効果を発揮するようになります。

電子がバンドギャップと言われる壁を超えるためには、外部からエネルギーが供給されなければいけません。その外部からのエネルギーが、光触媒の場合には「光エネルギー」というわけです。そして、アナターゼ酸化チタンのバンドギャップを超えるためには、紫外線といったエネルギーの高い光を当てないといけないわけです。

次の図をご覧ください。これは酸化チタンのバンドギャップを器に例えた例です。

酸化チタンのバンドギャップを器に例えた例。紫外線なら電子が器から飛び出す。

器の深さがバンドギャップで、バンドギャップの大きな物質ほど、外部から強いエネルギーが加わらないと、電子が飛び出しません。エネルギーの強い光「紫外線」が当たると、電子が器からはじき出されて、電子が飛び出すことができます。

飛び出した電子でOHラジカルが発生

光触媒から電子が飛び出すことをご説明しましたが、飛び出した電子が空気中の酸素や水と反応してOHラジカルを発生させます。OHラジカルは強い酸化力を持つ活性酸素で、それに触れるものを酸化分解する性質があります。

OHラジカルが発生するメカニズムは、次の図をご覧ください。

光触媒の消臭成分OHラジカルが発生するメカニズム

光触媒が反応する光が当たると、表面に電子が飛び出します。この電子のことを励起電子と言います。励起電子は空気中の酸素と結合して、スーパーオキシドアニオンO2になります。O2はそれ自体で活性酸素ですから、抗菌や消臭といった効果を発揮します。それが水H2Oと結合すると、過酸化水素H2O2になります。H2O2は空気中では長くとどまることができませんから2つに分離して、OHラジカル(・OH)ができるわけです。

酸化チタンの活用方法

酸化チタンは、紫外線が当たらないと効果が発揮されないわけですから、次のどちらかの環境にて効果が発揮されるわけです。

  • 直射日光が当たる場所
  • 紫外線ランプが照射されている場所

直射日光が当たる場所と言えば外壁です。酸化チタンは外壁の防汚としてとても有効です。また、紫外線ランプが照射されている場所でも効果があります。例えば、食品工場では天井に向かって紫外線ランプが照射されていることがあります。そういった場所の天井に使用すると効果があります。

それ以外の場所では、効果がほとんどありませんから、利用するだけムダになります。

半導体には、トンネル効果と言ってエネルギーの低い光が当たっても電子が飛び出す場合もあるので、そういった効果もあって酸化チタンは紫外線以外の光が当たっても効果がほんの少し出るようですが、その効果を期待するくらいなら、別の種類の光触媒を使った方が良いと言えます。

紫外線以外で効果のある光触媒

市販されている光触媒の種類の中で、紫外線以外でも効果のある光触媒の種類をご紹介したいと思います。紫外線以外の光と言えば可視光です。可視光で効果が出る光触媒は、紫外線でも効果があります。

可視光で効果のある光触媒=可視光応答型光触媒

可視光で効果のある光触媒のことを、総称して「可視光応答型光触媒」といいます。光触媒スプレーや光触媒コーティング剤として実用化されている可視光応答型光触媒の種類は、主に次のものがあります。

  • 銅ドープ酸化チタン
  • 窒素ドープ酸化チタン
  • 鉄ドープ酸化チタン
  • 酸化タングステン

これらの名称の中に「ドープ」とあります。ドープとは、「添加した」とか「結合させた」という意味です。銅ドープ酸化チタンは、アナターゼ酸化チタン結晶の表面に、ナノサイズの酸化銅を結合させた光触媒です。結合させることを「担持(たんじ)」ともいいますから、銅担持酸化チタンと言われることもあります。弊社では、銅担持酸化チタンと言っています。

さて、酸化チタンは紫外線にしか反応しませんでしたが、銅や窒素、鉄などを担持させることにより可視光応答するようになります。酸化タングステンは、そのままで可視光応答型光触媒です。

それぞれの光触媒は反応する光の種類は、次の通りです。

光触媒反応する光の種類
銅ドープ酸化チタン紫外線、紫色、青色、水色
窒素ドープ酸化チタン紫外線、紫色、青色
鉄ドープ酸化チタン紫外線、紫色、青色
酸化タングステン紫外線、紫色、青色、水色

赤外線に反応する光触媒もある

一般的に市販されているところは見たことがありませんが、赤外線に反応する光触媒もあるようです。そのような光触媒のことを、「赤外線応答型光触媒」といいます。

赤外線はエネルギーが低いので、飛び出してくる電子のエネルギーも低いと思われます。その電子によってOHラジカルを発生させることは難しいと思われるので、室内利用をする場合には、何らかの工夫が必要だと思います。

可視光応答型光触媒の室内での利用方法

可視光応答型光触媒を室内利用する方法は、次の3種類になります。

  1. 光触媒コーティング塗装
  2. 光触媒コーティング加工された製品の利用
  3. 光触媒スプレー

光触媒コーティング塗装

光触媒コーティング塗装とは、光触媒成分が入った液剤を塗布して、コーティング塗装する施工方法です。光触媒コーティング剤には、接着成分が入っているので、光触媒コーティング塗装を行うことで、可視光応答型光触媒が長期間塗装面にとどまる性質があります。

一般的な光触媒コーティング剤であれば、室内の壁紙や天井、カーペット、カーテン、ソファーなど何にでも塗装ができます。

光触媒コーティング塗装をするときに選ぶ液剤は、最低でも可視光応答型光触媒が使用されたものを選ぶ必要があります。間違っても酸化チタンのものを選ばないようにしてください。先ほどご説明した通り、酸化チタンですと、紫外線にしか効果がありませんから、室内利用には不向きです。

光触媒コーティング加工された製品の利用

光触媒コーティング加工された製品を利用する方法としてポピュラーなものは、人工観葉植物(フェイクグリーン)への利用です。光触媒コーティング加工された人工観葉植物のことを、光触媒観葉植物と言われることもあります。

光触媒観葉植物を室内に設置するときは、可視光応答型光触媒を使った製品を選ぶことは述べるまでもありません。

光触媒スプレー

光触媒スプレーとは、光触媒コーティング剤と似ていますが、接着成分が入っていなものです。除菌や消臭をしたい場所に手軽に利用できることがメリットです。

光触媒スプレーを選ぶときは、もちろん可視光応答型光触媒を利用したものを使わないと、室内ではほとんど効果がありませんから、ご注意願います。

光がなくても触媒効果を発揮する例外の光触媒

銅ドープ酸化チタンだけが持つ性質

光触媒は、基本的には光が当たらないと効果が発揮されません。そして、光触媒の種類によって、紫外線にしか反応しないのか、それとも可視光が当たっても効果があるのかが異なります。

ところが、市販されている光触媒の中で1種類だけ、光が当たらなくても触媒効果を発揮するものがあります。それは、上記の可視光応答型光触媒の1つですが、銅ドープ酸化チタンです。

銅ドープ酸化チタンは、アナターゼ酸化チタン結晶の表面にナノサイズの酸化銅を結合させた成分です。もちろん、光が当たることで強い抗菌効果や消臭効果などを発揮します。そして、補触媒であるナノサイズの酸化銅が、光がなくても触媒効果を発揮するようです。

この効果によって、室内利用したときに酸化チタンや他の可視光応答型光触媒よりも、10倍以上の高い効果を発揮することが知られています。

銅ドープ酸化チタンの効果を100としたときの他の光触媒との効果比較

銅ドープ酸化チタンが消臭できる臭いの種類

銅ドープ酸化チタンは、他の光触媒では強い光を当てても分解が難しいとされるベンゼン環を持つ臭いをも消臭ができます。銅ドープ酸化チタンが消臭できる臭いの種類は、次のようなものがあります。

  • トイレの臭い
  • カビの臭い
  • タバコの臭い
  • 生ごみの臭い
  • 厨房の臭いやスパイスやニンニクの臭い
  • ペットの臭い
  • トルエンやキシレンなどのVOCの臭い(新築や新車の臭い)
  • 火災の後の煤の臭い
  • 香水や芳香剤の臭い
  • 加齢臭
  • 介護の臭い

VOCとは、揮発性有機化合物のことです。他の光触媒では、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの分解は簡単にできます。しかし、トルエンやキシレン、スチレンといったベンゼン環を持つVOCの分解は難しいのですが、銅ドープ酸化チタンなら簡単に分解ができます。ベンゼン環を分解できるということは、ダイオキシン類をも分解できることを示唆しています。いずれ弊社でも試験したいと考えています。

銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤の室内利用

銅ドープ酸化チタンの屋内利用はとても有効です。

弊社にて製造・販売している、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。この製品は、業務用として弊社の施工代理店に販売しているものです。

銅ドープ酸化チタンを使っているので、暗所でも効果があるため、押し入れの中や地下室の防カビ、火災消臭にも利用されています。

この製品をご利用になられたい場合は、弊社の施工代理店に施工をご依頼いただくか、弊社の施工代理店になっていただくかのどちらかになります。

銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤の自動車での利用

銅ドープ酸化チタンは芳香剤やタバコの臭いを消臭できるということで、中古車販売をされているショップでもご利用いただいています。

自動車の車内は、UVカットガラスによって車内は紫外線がほとんどありませんから、酸化チタン光触媒は効果がありません。ですから、最低でも可視光応答型光触媒を使うべきなのですが、VOCやタバコ、芳香剤の臭いを強力に分解できる銅ドープ酸化チタンを使った方が良いと思います。

弊社製品であれば、車用光触媒コーティング剤(BXR02-C)です。

この光触媒コーティング剤は、自動車の黒いシートでも光触媒の白色が出にくいように成分の配合量を調整しています。

銅ドープ酸化チタンの光触媒スプレー

ご家庭用除菌・消臭スプレー「アキュートクリーン」とリフィル(詰め替え)

銅ドープ酸化チタンを使った光触媒スプレーも「アキュートクリーン」という名称で製造・販売しています。

アキュートクリーンは、コンシューマ向けに開発したもので、どなた様でもご購入いただけます。


品名アキュートクリーン®
型番AC01-01
JAN4580630840093
形状外観:スプレーボトル
内容物:液体
容量200mL
サイズ高さ:約21cm、幅:約6cm、厚み:約4cm
有効成分銅ドープ酸化チタン
その他水、界面活性剤
香り無香料
アルコール分ノンアルコール
材質容器,ボトルキャップ:プラスチック
ラベル:紙
価格¥2,200(税込)
(詰め替えは税込¥1,980)
保管方法常温(5~30℃)の暗所にて保管。
アキュートクリーン(スプレー)ネット通販。ご購入はこちら

「アキュートクリーン」を購入する

銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング塗装をする前に、「銅ドープ酸化チタンの効果を試したい」という方にもご利用いただいています。

以上、紫外線以外の光でも効果のある光触媒について、詳しく解説いたしました。

光触媒にはたくさんの種類があり、酸化チタンは紫外線にしか反応しませんから、室内利用には不向きです。光触媒を室内利用したい場合には、最低でも可視光応答型光触媒をご利用ください。

可視光応答型光触媒の中でも、銅ドープ酸化チタンがもっとも効果が高いこともお伝えしました。

銅ドープ酸化チタンを使った室内コーティング塗装や光触媒加工のご依頼、光触媒スプレーのご購入なら、弊社までお気軽にご相談ください。

この記事の著者/責任者

島田幸一

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。

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