お一人でお住まいの方が、最期を迎えられても、何日も気付かれずに過ぎることもあります。
そういった物件では、たいてい臭いが酷くなっているので、後に内装の完全なリフォームや特殊清掃を行います。それで臭いが消えてしまったら良いのですが、臭いが消えないで残ることがあります。
特殊清掃でも消臭できない臭いが残るときは、銅ドープ酸化チタン光触媒をお試しいただきたいのが、この記事の趣旨です。
この記事では、銅ドープ酸化チタンの性質やそれを使った光触媒製品を解説しつつ、弊社の光触媒製品が特殊清掃で活躍した事例をご紹介します。
銅ドープ酸化チタンとは?
表題にもあります「銅ドープ酸化チタン」とは、光触媒の一種です。光触媒とは、光エネルギーを受けると、有機物の臭いの成分を分解し、消臭・防臭してくれる効果を発揮します。
最初に、銅ドープ酸化チタンといわれる光触媒が、どういったものなのかを解説いたします。
光触媒の「ドープ」とは?
光触媒の名称で使用される「ドープ」の意味は、「添加された」とか「加えられた」という意味です。ですので、銅ドープ酸化チタンは、「銅が加えられた酸化チタン」という意味になります。
銅以外にも、「窒素ドープ酸化チタン」とか「炭素ドープ酸化チタン」といった具合に、酸化チタンをベースとして、他の物質を加えて、その物質を酸化チタンに担持させたもの、つまり、酸化チタンの分子構造に銅をくっ付けたものになっているわけです。
酸化チタンだけでも優秀な光触媒ですが、「なぜ、わざわざ別の物質をくっ付けているのか?」ということですが、それは「酸化チタンに別の物質をくっ付けると、酸化チタンが室内でも光触媒の性能を発揮する場合がある」という特性からです。
ドープと似た用語に、「ハイブリッド」というものがあります。これも別の成分を加えたものですが、ニュアンスとしては「ドープは結合させたもの。ハイブリッドは単に入れただけのものも含まれる」という意味で使われています。ハイブリッド酸化チタンといわれる光触媒成分には、ドープされたものと、単に入れただけのものがあるのです。
もちろん、酸化チタンの性能を高めたものは「ドープ」になります。
「酸化チタン」と「銅ドープ酸化チタン」の光触媒の性質の違い
光触媒は、種類によって吸収できる光の種類(光の波長)が異なります。光には、紫外線や可視光、赤外線といったいろいろな種類があります。
酸化チタン光触媒は、光の種類の中でも、紫外線が照射されると触媒の性質を発揮し、臭いの成分を分解してくれます。
ここで、紫外線が当たる環境というのは、家の外で太陽が出ているとき、もしくは室内にて紫外線ランプなどで紫外線を照射しているときです。特殊清掃後に消臭したい場所とは室内のことですから、室内に酸化チタン光触媒を塗装しても、消臭効果を発揮しません。室内に紫外線ランプを設置し、ずっと照射し続けることは、現実的ではありません。
それに対して銅ドープ酸化チタンは、紫外線にしか反応しなかった酸化チタンが、青色の光にも反応して触媒の効果を発揮し、臭い成分を酸化分解します。
室内の蛍光灯やLED電球の光には、青色の光が含まれているので、紫外線でなくても光触媒が反応し、臭いを分解してくれます。
室内の光を照射 | |
---|---|
酸化チタン | 消臭効果なし |
銅ドープ酸化チタン | 強力に消臭できる |
銅ドープ酸化チタン光触媒の特長
もう少し、銅ドープ酸化チタンの特長を詳しく述べたいと思います。銅ドープ酸化チタンは、室内の光によって消臭効果を発揮することはもちろんのこと、次のような特長もあります。
- 他の光触媒成分と比較しても高い消臭効果がある
- 暗所でも消臭効果を発揮
- コーティング塗装をしたら、継続的に消臭し続けてくれる
- 身体に安全
どれも室内の特殊清掃をしたときに要求される特長です。少し解説したいと思います。
他の光触媒成分と比較しても高い消臭効果がある
室内の光でも消臭効果を発揮する光触媒成分は、他にも存在します。先ほどドープのところで出てきた窒素ドープ酸化チタンもそうですし、よく利用されるもので酸化タングステンという成分もあります。
それらの室内の光でも触媒の効果を発揮する成分と比較しても、銅ドープ酸化チタンは数倍もの消臭効果を発揮することが知られています。
銅ドープ酸化チタンは、銀イオンよりも消臭効果が高いことも知られています。
暗所でも消臭効果を発揮
銅ドープ酸化チタンは、光が当たっていないところでも消臭効果があります。弊社にてこの効果を発見したときは、その試験結果を疑ったほどです。
なぜなら、光触媒は一般的には光が当たっているところでないと、触媒の効果を発揮しないからです。
特殊清掃後に残った臭いは、昼間だけでなく夜間にも出てくるものです。一般的な光触媒ですと、昼間は消臭ができますが、夜間は消臭ができません。寝るときに電気を消したら臭いが漂い始めます。
それに対して銅ドープ酸化チタンであれば、光がなくても消臭してくれるので、夜間でも臭いが出て来なくなります。
コーティング塗装をしたら、継続的に消臭し続けてくれる
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を塗装しておいたら、継続的に消臭し続けてくれます。
光触媒成分は粉末ですので、消臭したい箇所に粉末を振りかけただけでは、掃除機を掛けたら吸い取ってしまい、消臭ができなくなります。銅ドープ酸化チタンはコーティング剤として開発されたものなので、塗装面に強固に固定化されるようにできています。
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を消臭したい箇所に塗装すると、そこに銅ドープ酸化チタンが固定されて、ずっと消臭し続けてくれるようになります。
部屋の消臭にはオゾン脱臭があります。オゾン脱臭は、オゾン脱臭機を起動させ続けていないと消臭し続けてくれません。オゾンを常に充満させていると身体に悪いので、そのようなことをすると、その部屋では生活が難しいと思います。
その点、銅ドープ酸化チタンは、塗装しておけば継続的に消臭し続けてくれるので、特殊清掃後の消臭にも実用的です。
ちなみに、銅ドープ酸化チタンを世界で初めてコーティング剤にしたメーカーは弊社です。それから20年以上経過していますが、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤の製造は難しいらしく、未だにあまり他社製品を見かけることはありません。
身体に安全
銅ドープ酸化チタンを室内で使うわけですから、身体にとって安全な成分であることも条件の一つです。
酸化チタンは、日焼け止めの成分として化粧品に含まれているもので、普段から肌に塗っているぐらいですから安全だと言えます。添加している銅は、純度の高いものは毒性が無いことで知られています。私たちが普段から使用している10円玉が安全なことは、よく知っていることです。
銅の安全性は、一般社団法人日本銅センター「銅の安全性」が参考になります。
弊社が開発した銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤は、第三者機関に調査していただき、身体に安全であることが確認されています。
このような特長のある銅ドープ酸化チタンは、特殊清掃でも消えなかった臭いの消臭に、高い効果を発揮します。
銅ドープ酸化チタン光触媒を使った光触媒製品
弊社が銅ドープ酸化チタンを使って開発した業務用光触媒製品は、光触媒コーティング剤と業務用消臭剤の2種類あります。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、室内の光触媒コーティング塗装を想定して開発した製品です。
塗装には専用の塗装機械とスプレーガンを用います。
この製品を塗装すると、塗装後は銅ドープ酸化チタンが塗装面に強固に付着し、10年以上効果が持続します。主に、屋内の除菌や消臭、防カビに用いられています。
品名 | 屋内用光触媒コーティング剤 | |
型番 | BX01-AB1 | |
形状 | 液体 | |
成分 | 光触媒 | 酸化チタン(アナターゼ) |
接着剤(バインダー) | 酸化チタン(アモルファス) | |
その他 | 銅、水 | |
pH | 弱塩基性 | |
臭い | 無臭 | |
塗装面積 | 50m2/L | |
サイズ(重量、容器) | 10L(約10kg、バロンボックス) | |
5L(約5kg、バロンボックス) | ||
1L(約1kg、ボトル) | ||
使用期限 | 製造から1年以内 | |
保管方法 | 常温(5~30℃)の暗所にて保管。 |
光触媒の業務用消臭剤(BRE025-AB2)
光触媒の業務用消臭剤(BRE025-AB2)は、銅ドープ酸化チタン光触媒を使った業務用の消臭剤です。市販のスプレーボトルに移し替えて利用します。
この製品は、コーティング成分が添加されていないので、スプレーしたところに摩擦が生じると銅ドープ酸化チタンが取れてしまいますが、手軽に利用ができます。
主に、介護施設や厨房、車内の消臭に用いられています。
品名 | 業務用消臭剤 |
型番 | BRE025-AB2 |
形状 | 液体 |
サイズ(重量、容器) | 10L(約10kg、バロンボックス) |
5L(約5kg、バロンボックス) | |
1L(約1kg、ボトル) | |
成分 | 酸化チタン(アナターゼ)、銅 界面活性剤、アルコール、水 |
pH | 弱塩基性 |
臭い | 無臭 |
使用期限 | 製造から1年以内 |
保管方法 | 常温(5~30℃)の暗所にて保管。 |
どちらを利用したらいいのか?
光触媒コーティング剤と業務用消臭剤ですが、次の条件でお選びいただけたらと思います。
- 塗装面が継続して消臭されるようにしたい場合・・・屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)
- 消臭スプレーで手軽に消臭したい場合・・・光触媒の業務用消臭剤(BRE025-AB2)
特殊清掃後に臭いが消えない場合には、継続的に消臭したいと思われることが多いと思います。その場合は、光触媒コーティング剤をご利用ください。
部屋の空間消臭や壁紙や床などを、手軽にスプレーして消臭したい場合は、光触媒の業務用消臭剤をご利用ください。
特殊清掃での消臭事例
とある清掃業者様には、特殊清掃の後で屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)をときどきご利用いただいており、実績は多いと思います。
その業者様との出会いのきっかけは、ある賃貸物件での特殊清掃で臭いが消えずに困り、いろいろな消臭業者を調べている中で、弊社の施工代理店に問い合わせたことがきっかけでした。
その清掃業者様によると、「最期を迎えられた方が何日も発見されずに、床に臭いがしみ込んでいる状態」でした。その物件では、室内の床から壁紙からすべてリフォームし、特殊清掃を終えても臭いが床からこみ上げてくる状態だったそうです。
その消臭のために、専用の消臭剤やオゾン脱臭なども試されたようですが、それでも臭いが出てきてしまい、困っておられました。そのような状態でのご相談でした。
弊社としては初めてのケースだったので、「やってみないと消臭できるか判らない」とお伝えしての施工でした。
部屋全体に光触媒コーティング塗装をしつつ、床に多めに光触媒コーティング塗装をしました。
その結果、今まで消えなかった臭いがまったくしなくなったのです。
臭いが消えた理由は、床に多めに光触媒コーティングしたことです。銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤が、床の内部まで浸透して、臭いの元から分解してくれます。また、出てくる臭いも、床に達するまでに分解してくれるので、部屋の中には臭いが出てこなくなります。
その後、その清掃業者様からは、同じようなケースがあれば、弊社施工代理店にご依頼を頂くようになり、今なお実績を積み重ねています。
以上、銅ドープ酸化チタンの性質やそれを使った光触媒製品を解説しつつ、弊社の光触媒製品が特殊清掃で活躍した事例をご紹介いたしました。
特殊清掃で臭いが消えない場合は、弊社もしくは弊社の光触媒製品を扱う施工代理店までお気軽にご相談ください。弊社の室内用光触媒コーティング塗装を扱い施工代理店一覧は、室内の光触媒コーティング施工代理店をご覧ください。
ご連絡をお待ちしております。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。