
火事後の部屋の焦げた臭い、煤の臭いは、厄介な問題です。臭いのあるままでは生活ができません。
火事が発生し、消火が終わった後は、部屋をスケルトン状態にして、煤を取り除きます。
それでも火事の臭いがうっすらと残ってしまいますが、その消臭には、いろいろな方法があります。火事の後の消臭によく利用される方法としては、
- オゾン脱臭
- 消臭剤の散布
- 光触媒コーティング
オゾン脱臭が一般的ですが、光触媒コーティング施工だと工期が短くなり、トータルコストが安くなる場合があります。弊社では、火事の消臭に光触媒コーティングをおすすめしています。その理由をご紹介したいと思います。
これらの方法のメリットとデメリットを考慮しつつ、火事の後の消臭方法をご検討ください。
光触媒コーティングとは?
最初に光触媒コーティングとはどのようなものかを解説いたします。
光触媒の消臭メカニズム
光触媒とは、光が当たることでそれに触れているものを酸化分解し続けてくれる成分のことです。主に酸化チタンが用いられています。
酸化チタンは紫外線が多く当たることで、たくさんのOHラジカルを発生させます。OHラジカルは強い酸化力を持っているので、煤の臭いや、臭いの元を酸化分解してくれる性質があります。
この解説から、火事の消臭では酸化チタンは効果が無いことを、見抜かれた方もいらっしゃることでしょう。酸化チタンは紫外線が当たらないと消臭効果がほとんどありませんから、室内で発生する火事の消臭には不向きです。

室内の消臭にもっとも効果的だと言える光触媒成分は「銅ドープ酸化チタン」と言われるものです。この成分については、後ほど解説いたします。
光触媒コーティング塗装ができる液剤
光触媒は金属の微粉末ですから、そのままでは利用できません。光触媒の微粉末をコーティング塗装ができる液剤にしたものを利用します。この液剤のことを、光触媒コーティング剤といいます。
光触媒コーティング剤には、光触媒成分と接着成分が入っており、スプレーガンなどを使って塗布します。
酸化チタンは室内の火事の消臭にはほとんど効果が無いことをお伝えしました。そのため、酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を使用しても、意味がありません。また、接着成分にも条件があるので、これも後ほど解説いたします。
このように、火事の消臭を行いたい場合には、光触媒コーティング剤の選択を正しくすることで、オゾン脱臭や消臭剤よりもメリットが大きくなるわけです。
光触媒コーティング剤に使用される光触媒成分の種類
先ほどのご説明をもう少し詳しく解説いたします。要するに、「火事の消臭には銅ドープ酸化チタンが入った光触媒コーティング剤を選ぶこと」が大切です。
酸化チタンは消臭効果なし
光触媒は、いろいろな種類があります。研究室で研究されているものを含めたら、数えきれないくらいの種類があります。それらの中で、光触媒コーティング剤として実用化されている光触媒の種類には、主なものとして次のものがあります。
- 酸化チタン
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 鉄ドープ酸化チタン
- タングステン担持酸化チタン
- 酸化タングステン
先ほど解説したように、酸化チタンは紫外線が当たらないとほとんど効果がありませんから、室内用途としては不向きです。
名称の中で出てくる「ドープ」や「担持」とは、「結合させた」という意味です。銅ドープ酸化チタンは、酸化チタン結晶の表面にナノサイズの酸化銅を結合させた成分です。銅や窒素などをドープすることで、酸化チタンが可視光にも反応するようになり、室内でも消臭効果を持つようになります。
酸化チタン以外の光触媒成分は、主に室内で利用される光触媒成分です。どれも可視光に反応するので、蛍光灯やLED照明といった電灯の光によって消臭効果が出ます。このような、室内の光で効果のある光触媒成分のことを、可視光応答型光触媒といいます。

可視光応答型光触媒でも火事の消臭に不向きな理由
可視光応答型光触媒を使用したら、火事の消臭が出来そうに思います。ところが、よく考えて見たら、可視光応答型光触媒だからと言って安心はできません。その理由は、火事の消臭ではスケルトンの状態で消臭をした後に、その上から壁紙クロスを貼ったり什器を置いたりするからです。
可視光応答型光触媒を使った光触媒コーティングで、火事の臭いが消えると思います。それで安心してリフォームをしたら、光触媒コーティングの上に壁紙クロスを貼るわけですから、光触媒に光が当たらなくなってしまいます。すると、火事の臭いが消臭できなくなるので、壁からジワジワと臭いが出てきてしまう恐れがあるのです。
火事の消臭もっとも適したものは「銅ドープ酸化チタン」だけ
上記の光触媒の種類の中で、唯一光が当たっていなくても消臭効果を発揮してくれる光触媒成分があります。先ほどから何度か出てきた成分ですが、「銅ドープ酸化チタン」です。
銅ドープ酸化チタンは、担持されたナノサイズの酸化銅が触媒効果を発揮し、光が当たっていなくても消臭効果を発揮します。
つまり、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤をスケルトンの状態で塗装しておけば、火事の臭い成分を昼間でも夜間でも24時間消臭し続け、臭いの元となる成分も分解し続けてくれます。その効果がリフォーム後も続くのです。
光触媒コーティング剤の選び方
銅ドープ酸化チタンがとても有効であることをご理解いただけたと思います。
火事の消臭では、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を選ぶことは最低限としても、「銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤であれば何でも良い」というわけでもありません。
接着成分にアモルファス酸化チタンを使っている製品を選ぶ
先ほど、光触媒コーティング剤には光触媒成分と接着成分が入っていることをお伝えしました。接着成分とは、光触媒成分を塗装面に接着させるための成分です。別名として「バインダー」と呼ばれています。
光触媒成分には銅ドープ酸化チタンを選ぶことが大切です。では、接着成分には何を使ったものを選ぶと良いのでしょうか?
光触媒コーティング剤に利用される接着成分には、主に次の2種類があります。
- フッ素樹脂
- アモルファス酸化チタン
フッ素樹脂は、焦げ付きにくいフライパンにも利用されており、一般的です。アモルファス酸化チタンとは、非結晶の酸化チタンのことです。火事の消臭に利用する場合は、アモルファス酸化チタンを使ったものをお選びください。
その理由はこうです。
フッ素樹脂は何でも弾いてしまう性質があります。スケルトンの状態で塗布した後に、その上から壁紙クロスを貼り付けるわけですが、その糊を弾いてしまって、壁紙クロスが剥がれやすい可能性があるのです。
それに対してアモルファス酸化チタンは、糊を弾くことはありませんから、壁紙クロスを貼っても問題ありません。
そのようなことで、火事の消臭には、光触媒成分には銅ドープ酸化チタンを、接着成分にはアモルファス酸化チタンを使った光触媒コーティング剤をお選びください。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の特長
弊社では、光触媒成分には銅ドープ酸化チタンを、接着成分にはアモルファス酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を製造しています。名称は屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。

屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、コンクリートや合板、石膏といったいろいろなものに塗装ができます。また、クリア塗装ができるので、塗装面に色が付着することはありません。成分は完全に無機成分ですから、防炎規制のある介護施設やホテル客室の火事の消臭でも容易にご利用いただけます。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、もともと室内の抗菌や防カビ、消臭のためのコーティング剤として開発したものです。火事の消臭などの特殊清掃でも試験させていただき、高い効果があったため、大手マンション管理会社様にはどうしても消臭できない場合の最終手段としてご利用いただいています。
本音を言えば、最終手段として利用されるくらいもっとも効果をご実感いただいているわけですから、大手マンション管理会社様には、最初の手段としてご利用いただきたいと思っています。
光触媒コーティング塗装の流れ

屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を使った光触媒コーティング塗装の流れは次の通りです。
- スケルトンの状態にする(施工業者様にご依頼ください)
- 臭気を測定する
- 塗装面の清掃を行う
- 光触媒コーティング塗装を行う
- 施工直後に臭気測定を行う
- 1週間後に臭気を測定する
- リフォーム工事(リフォーム業者様にご依頼ください)
- 再度、光触媒コーティング塗装を行う(必要であれば)
塗装機械とスプレーガン
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗装には、専用の塗装機械とスプレーガンを用います。弊社が推奨している装置は、ABAC温風低圧塗装機です。
次の図は、火事の消臭を行ったときの、施工前と施工直後の臭気を測定したものです。

施工直後でもほとんど臭いが消えていることが判ります。
1週間待つべきか?
光触媒コーティング塗装をしてから1週間ほど置いて、再度臭気測定をする理由ですが、光触媒は少しずつ臭いの元となる物質を分解し続けてくれるからです。1週間ほど放置しておけば、おおよそ臭いが消臭できていることが多いです。完全に臭いが消臭できたことを確認してからリフォームを行います。
リフォームをお急ぎの方は、臭いが完全に消臭できる前にリフォームを行っていただいてもかまいません。
リフォームが終えるまでは家族でホテル住まいをされる方もいらっしゃることでしょう。最近は、ホテルの値段が飛躍的に上がってきているので、「急ぎでリフォームしたい」という方もいらっしゃると思います。屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装しておけば、リフォーム後も壁の中で消臭し続けてくれているので安心です。
リフォーム後の再塗装もおすすめ
リフォームをした後に、壁紙クロスの上からも屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装する方法もあります。すると、火事の臭いを二重でブロックしてくれます。

また、壁紙クロスの表面に屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装しておけば、室内の抗菌・消臭ができます。室内で焼肉や鍋をしたときの臭いや、タバコの臭いといった、生活の臭いも消臭できます。
光触媒コーティング塗装の費用
光触媒コーティング塗装の費用ですが、オゾン脱臭のように装置を設置するだけの消臭方法と比べたら、手間がかかる分だけ費用は高くなります。
- 現調費用
- 養生費用
- 塗装費用(塗装面積に応じた金額)
- 機材準備等の諸経費
- 出張費
- 報告書費用(必要な場合)
現地調査では、施工前と施工直後、1週間後の臭気測定を行います。そのための費用です。
塗装費用の平米単価は5,000~7,000円/m2です。一般的な抗菌・消臭コーティングよりも、液剤の使用量が多いため、平米単価は2倍ほどになります。
施工が複数日に渡る場合は、宿泊費がかかります。
オゾン脱臭と光触媒コーティングの比較
オゾン脱臭も火事の消臭に効果があると思います。その理由は、多くの火事の後で利用されているからです。効果が無いものは利用されませんから、多く利用されていることで効果が証明されていると思います。
オゾン脱臭の特徴
オゾン脱臭を行う方法は、オゾン脱臭機を部屋の中に置いて、24時間稼働させます。装置からオゾンが発生して空気中に漂い、部屋の臭いを少しずつ消臭していってくれます。オゾン脱臭は、空気中に漂っている臭いの消臭にはとても効果的なのですが、壁に付着している臭いの元を消臭するためには、時間がかかります。火事の程度によりますが、一般的には2週間から1ヶ月ほどかかるものと思われます。
その間、定期的に臭いの消臭具合を点検することにもなるので、その人件費もかかります。オゾン脱臭は、装置を停止させたら消臭ができませんから、装置を止めるタイミングを見計る必要があります。
「リフォームをした後もオゾン脱臭機を使い続けたらいいのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。オゾンは空気中に漂っているので、人が吸い込んで危険だと言われています。私自身、オゾン脱臭をしている部屋に入ったときに咳き込んでしまったことがあり、オゾン脱臭をしているところで生活は健康に悪いと感じました。
光触媒コーティングの特徴
それに対して光触媒コーティング塗装では、消臭成分を壁面に塗布するので、臭いの元に覆いかぶさって直接アプローチできます。そのため消臭までの期間が短くて済みます。さらに無臭で安全な成分です。
オゾン脱臭で1ヶ月かかったとしたら、そこにお住まいの方は、別の住宅を購入して、火事のあった住宅を元に戻してから賃貸にしてしまうか、ホテル住まいで復旧するまで待つかのどちらかになります。どちらにしても、大きな費用がかかってしまいます。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)であれば、消臭の工期が短くなるので、最大で3週間ほど工期が短縮できる可能性があるわけです。
以上、火事の消臭に光触媒コーティング剤がおすすめの理由を解説いたしました。
光触媒コーティング剤には、光触媒成分に銅ドープ酸化チタンを、接着成分にアモルファス酸化チタンを使ったものを利用することが大切でした。光触媒コーティング塗装は、オゾン脱臭と比べて工期が短くなることや、消臭し続けてくれることがポイントでした。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を使った火事の消臭施工なら、弊社もしくは弊社の施工代理店まで、お気軽にご相談ください。施工代理店一覧は、火事の消臭の光触媒コーティング施工代理店をご覧ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。