新築の戸建てやマンションに入ると、部屋が化学物質の臭いで充満していることがあります。この臭い成分は、揮発性有機化合物(VOC)と言われるものです。
この化学物質は、建物の建材に使用されている塗料や接着剤から揮発したものです。家具や家電製品からも出てきます。
VOCは、新築の部屋の臭いが気になるだけであれば良いのですが、シックハウス症候群の原因物質とも言われるので、喉の痛みや鼻炎などの症状が出る人もいるそうです。
この記事では、新築の化学物質の種類や対策、光触媒の性質や、化学物質対策に効果的な光触媒成分、光触媒コーティング塗装について解説します。
化学物質の種類と建材
新築での主なVOCは、次のようなものがありますが、その種類は100を超えています。
- ホルムアルデヒド
- アセトアルデヒド
- トルエン
- キシレン
- スチレン
これらの中でホルムアルデヒドは、F☆☆☆☆の基準というものがあり、規制対象となっていますが、それ以外のVOCについてはほとんど規制の対象となっていません。ですので、ホルムアルデヒドの揮発が少ないF☆☆☆☆の建材を使ったとしても。それ以外の化学物質が揮発してきます。また、建材にはなるべく天然素材の材料を使用したとしても、新しい家具や家電製品を入れたら、そこからも化学物質が溶け出しているので、化学物質の臭いがすることがあります。
そういったことからも、化学物質に敏感な方は、新築では化学物質対策が欠かせません。
化学物質対策は、基本は24時間換気です。24時間換気とは、部屋の中を24時間換気できる装置を導入して、常に部屋の空気を入れ替えることです。新築戸建てでは、24時間換気が当たり前となっていますが、マンションでは装置の導入が難しいので、24時間換気装置のあるマンションは少ないことと思います。
そこで、マンションでは換気以外の方法で、化学物質対策をすることになりますし、24時間換気を導入している新築戸建てでも化学物質に敏感な方がいたら、何らかの化学物質対策が求められます。
新築の化学物質対策
新築の化学物質対策には、主に次のものがあります。
- 部屋の加熱による化学物質の揮発の加速化
- 活性炭、漆喰、珪藻土などによる化学物質の吸着
- 紫外線、マイナスイオン・活性酸素、光触媒などによる分解
部屋の加熱による化学物質の揮発の加速化
化学物質は建材や家具、家電製品から揮発しますが、その揮発量は部屋の温度と関係があり、部屋の温度が高いとよく揮発するようになります。そこで、石油ストーブや電気ファンヒーターなどで、部屋の温度をサウナのように熱くして、化学物質の揮発を加速させます。
部屋を加熱し、何時間か放置をしておいて、建材などから化学物質がある程度放出されたら、部屋の空気を換気します。
化学物質が出きったら、それ以上化学物質が出てくることはありませんが、この方法では、完全に化学物質を出し切ることは難しいと思います。例えばキシレンの沸点は139℃ですので、化学物質によっては沸点が高いものがあり、部屋を加熱したくらいで化学物質を出し切ることが難しいからです。
活性炭、漆喰、珪藻土などによる化学物質の吸着
次に、化学物質を吸着する方法を解説します。化学物質を吸着する素材としては、昔から知られているのが活性炭、漆喰、珪藻土などの天然素材です。
これらはナノサイズの孔がたくさん空いている多孔質の物質なので、その孔に化学物質が吸着される性質を利用し、化学物質対策をします。
漆喰や珪藻土は壁材として利用されます。活性炭は、壁材の下地として塗装するものがあったり、活性炭そのものを床下に敷き詰めたり、畳の中に活性炭が仕込まれたものもあります。
吸着された化学物質はいずれ自然分解されていくと思うので、分解されたらさらに多くの化学物質を吸着することができます。
これから新築を建てようとされる方であれば、これらの建材を用いて化学物質対策が可能です。すでに新築が建ってしまっている場合には、これらの建材の利用は現実的ではありません。
紫外線、マイナスイオン・活性酸素、光触媒などによる分解
化学物質の揮発、吸着を解説しましたが、最後に化学物質の分解について解説いたします。部屋の中に揮発してきた化学物質の分解には、主に紫外線、マイナスイオンや活性酸素、光触媒による分解があります。
ホルムアルデヒドは紫外線が当たると簡単に分解されます。部屋の中に紫外線ランプを設置して、化学物質の分解をします。しかし、部屋中に紫外線ランプを設置するわけにはいきませんし、紫外線では分解されにくい化学物質も多く存在します。
また、マイナスイオンや活性酸素によって分解もできます。マイナスイオンや活性酸素は確かに化学物質を分解できるのですが、新築の場合には大量のマイナスイオンや活性酸素を部屋中にばらまかないと消臭ができないので、高額な装置が必要になります。
光触媒は、光が当たると触媒の効果を発揮する成分です。光触媒に光が当たると、光触媒の表面に強力な活性酸素が発生し、そこに触れた化学物質を分解します。
すでに新築が建ってしまっている場合の化学物質対策は、光触媒コーティングが現実的だと思います。しかし、光触媒は成分によってまったく効果のないものもあるので、どのような成分を選ぶかが、化学物質対策の可否を大きく左右します。
以下、化学物質対策に効果的な光触媒コーティングについて解説します。
どのような光触媒コーティング剤を採用すべきか?
光触媒成分は、いろいろな種類があります。どのような光触媒成分を使った光触媒コーティングをするかによって、化学物質対策の効果が大きく異なります。
光触媒成分の種類と性質
最初に、光触媒成分の種類と性質を解説いたします。光触媒コーティング剤に使用されている主な光触媒成分には、次のようなものがあります。
- 酸化チタン
- 酸化タングステン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 銅ドープ酸化チタン
光触媒コーティングに期待される効果は、屋外では防汚や防カビ、室内では除菌や防カビ、消臭、化学物質の分解です。これらの光触媒成分を、屋外での効果、室内での効果、化学物質の分解の効果を、それぞれ比較すると、次の表のようになります。
光触媒成分 | 屋外での効果 | 室内での効果 | 化学物質分解 |
---|---|---|---|
酸化チタン | ◎ | × | △ |
酸化タングステン | △ | △ | △ |
窒素ドープ酸化チタン | 〇 | 〇 | △ |
銅ドープ酸化チタン | 〇 | ◎ | ◎ |
×効果なし、△少し効果あり、〇効果あり、◎強い効果あり
これらの中で最も効果のあるものが銅ドープ酸化チタンと言われる光触媒成分です。光触媒コーティングによって化学物質対策をするのであれば、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を選ぶことが大切です。
銅ドープ酸化チタンであれば、化学物質対策だけでなく、室内の除菌や防カビ、消臭にも効果があるので、一石二鳥です。
銅ドープ酸化チタンとは?
さて、銅ドープ酸化チタンはどういった光触媒成分なのかを解説いたします。
銅とは、10円玉の材質でもある銅です。ドープとは、「添加された」とか「加えられた」という意味です。酸化チタンは、金属であるチタン(Ti)が酸化したものです。酸化チタンには、いろいろな種類の結晶構造があり、アナターゼと言われる結晶構造の酸化チタンが最も光触媒の効果が高いことが知られています。これに銅が添加されたものが、銅ドープ酸化チタンです。
銅ドープ酸化チタンは、20年ほど前に弊社が発見した成分で、業界に衝撃がありました。
それは、酸化チタンは本来なら紫外線にしか光触媒活性を示さなかったのですが、蛍光灯やLED照明の光にも反応し、その効果は他の光触媒成分の効果をも凌駕しており、なおかつ暗所でも触媒の効果を発揮することが発見されたからです。この性質は、今現在のところ銅ドープ酸化チタンのみ唯一です。
光触媒成分 | 室内での効果 | 暗所での効果 |
---|---|---|
酸化チタン | × | × |
酸化タングステン | △ | × |
窒素ドープ酸化チタン | 〇 | × |
銅ドープ酸化チタン | ◎ | 〇 |
銅ドープ酸化チタンの光触媒コーティング剤の効果
銅ドープ酸化チタンは、すぐさま光触媒コーティング剤になり、その効果を検証いたしました。製品名は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
紫外線や可視光線が当たったときはもちろんのこと、暗所でも化学物質が分解されることがわかりました。
新築の室内に揮発する化学物質の中でホルムアルデヒドは、紫外線でも簡単に分解されるだけあって、どのような光触媒成分でも簡単に分解ができます。ところが、トルエンやキシレン、スチレンといった化学物質は、なかなか分解ができません。
では、銅ドープ酸化チタンならどうでしょうか?
次のグラフをご覧ください。これらは、トルエンやキシレン、スチレンの分解を、酸化チタンと銅ドープ酸化チタンで比較試験したものです。
左がトルエン、中央がキシレン、右がスチレンです。酸化チタンはほとんど分解できていませんが、銅ドープ酸化チタンはこれらの化学物質を分解できていることが分かります。
試験方法や試験結果の考察は、「揮発性有機化合物(VOC)を分解できる光触媒成分とは?」をご覧ください。
この試験結果は、紫外線を照射したときの試験結果ですが、室内の光や暗所でも効果があります。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の持続期間は?
気になることは、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の耐久性です。耐久性が悪ければ、せっかく光触媒コーティングをしても、効果がすぐに切れてしまって、化学物質の臭いが漂い始めてしまいます。
一般的な室内塗装用の光触媒コーティング剤の効果の持続期間は、メーカーによって異なりますが、短いもので1年ほど、長いもので3年ほどのものが多いです。そして、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の持続期間は、驚くべきことに10年以上あります。
なぜ、ここまで持続期間に差があるのでしょうか?
そこには、塗料をたくさん売りたいメーカーと、施工回数を多くしたい施工店の思惑があります。10年以上も効果が持続する光触媒コーティング剤は、実は施工業者からすると、塗装する頻度が少なくなるので、儲けが少なくなるため、採用しにくい製品なのです。
弊社としても、なるべく施工代理店に儲けてもらいたいと考えていますが、消費者からすると、持続期間が長く、メンテナンスの手間が少ない方が良いはずです。新築の化学物質は何年も出続ける可能性がありますし、家具や家電製品を買い足したり、刷新したりすると、また化学物質が出てきます。そこで、「日本で最も効果のあり、最も耐久性のある光触媒コーティングを開発する」ということを旨として、製品開発に取り組んできました。
どの程度の面積を光触媒コーティングすべきか?
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤「屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)」を室内に塗装することで、新築の化学物質対策になることが分かりました。そして、持続期間が長いことも判りました。
では、「どの程度の範囲をコーティングしたら良いのか?」ということになります。コーティングする面積が広ければ広いほど、化学物質が光触媒に接触する頻度が高まり、化学物質を分解できます。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗装箇所
室内で、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装できる箇所は、次の通りです。
- 壁紙クロス
- 天井
- 家具
- プラスチック製品
- ソファーなどの布製品の製品
- 椅子などの合皮の製品
床とガラス面を除いたほとんどすべての箇所に塗装ができます。
部屋全体の塗装が理想的
もちろん、部屋全体の塗装が理想的です。部屋全体に光触媒コーティングをしておくと、化学物質が壁などから揮発してくる瞬間に分解ができます。
光触媒コーティングされた幅1mほどの和紙を見かけることがありますが、それを部屋に貼っておいたとしても、ほとんど効果が無いものと思います。(そもそも、その和紙に銅ドープ酸化チタンが塗装されていなければ、効果はほとんどありませんが。)
部屋全体に銅ドープ酸化チタンを使った屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装することで、部屋全体の化学物質を分解できます。さらには、除菌、防カビ、消臭もできます。
ちなみに、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装は、冷蔵庫の中にも塗装できるので、冷蔵庫の中の除菌、防カビ、消臭もできます。
もちろん、部屋全体に塗装をするためには、費用がかかります。新築を建てたり購入したりした直後の引っ越し前に光触媒コーティングをすることが、ベストタイミングです。引っ越し後や数年住んだ家ですと、家具の移動や清掃作業などの手間が別途必要になり、費用が高くなるからです。
もし、部屋全体を塗装する費用が高いとお感じの方は、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒の観葉植物を置いたり、光触媒のご家庭用除菌・消臭スプレーを使用すると良いでしょう。
光触媒コーティングならイリスにご相談ください
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤「屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)」で、新築の化学物質対策をしたいと思われた方は、弊社もしくは弊社の施工代理店までご相談ください。
弊社の光触媒コーティング製品を扱う施工代理店の一覧は、新築一戸建ての光触媒コーティング施工代理店や新築マンションの光触媒コーティング施工代理店をご覧ください。
皆様からのご連絡をお待ちしております。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。