新築マンションを購入されたり、戸建て住宅を新築された方は、そこに入居するときにホルムアルデヒドが気になることと思います。新築の部屋に入ると、新築特有の化学物質の臭いがするからです。
国土交通省では、ホルムアルデヒドの発散速度に基準を設け、F☆☆☆☆(エフフォースター)という制度を設けています。
最高ランクのF☆☆☆☆の基準を満たす建材を用いたとしても、ホルムアルデヒドは微量に出ていることがありますし、ホルムアルデヒド以外の化学物質が用いられていることが現状です。
新築のホルムアルデヒド対策には、いろいろな方法があります。その代表的な方法は、次の通りです。
- ホルムアルデヒドを使っていない建材を用いる
- 部屋を換気してホルムアルデヒド濃度を下げる
- ホルムアルデヒドを吸着させる
- ホルムアルデヒドを分解する
新築を建てるときにホルムアルデヒドを
使っていない建材を用いる
ホルムアルデヒドを使用していない建材を用いると、もちろん新築の部屋の中にホルムアルデヒドが揮発してくることはありません。その基準として、国土交通省がF☆☆☆☆(エフフォースター)という基準を設けていることは、冒頭で述べました。
F☆☆☆☆の基準とは?
F☆☆☆☆の基準は、ホルムアルデヒドが揮発する速度(放散速度)によって、次のようなランク分けがあります。
- 5μg/m2h以下 ⇒ F☆☆☆☆
- 5μg/m2h~20μg/m2h ⇒ F☆☆☆
- 20μg/m2h~120μg/m2h ⇒ F☆☆
- 120μg/m2h超⇒表示なし
国土交通省が公開している資料「快適で健康的な住宅で 暮らすために」がわかりやすいです。
家を建てるときに、F☆☆☆☆のランク基準に適合した建材を用いることで、揮発してくるホルムアルデヒドが少なくなります。
F☆☆☆☆の建材を利用した新築でも化学物質の臭いがする理由
さて、ここでF☆☆☆☆の建材は、「ホルムアルデヒドの放散速度が5μg/m2h以下」ということですので、ホルムアルデヒドを使用していないとは限らないことをご留意ください。そして、対象となる化学物質がホルムアルデヒドだけですので、建材には他の化学物質が使用されていることがほとんどです。
他の化学物質の主な種類としては、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、スチレンなどです。
また、ホルムアルデヒドを使用していない建材を用いた住宅であったとしても、家具は別です。家具の接着剤などにホルムアルデヒドが使用されていることもあります。
ですので、ホルムアルデヒドを使用しない建材を用いたとしても、ホルムアルデヒド対策や他の化学物質対策をしておくことが大事です。
なるべく化学物質を使用していない建材を用いて新築を建てたい場合
なるべく化学物質を使用していない建材を用いて新築を建てたい場合は、そういった建材を扱っている工務店に依頼することになります。
大手ハウスメーカーは、たいていは「特定の建材メーカーのものしか利用しない」ということですので、F☆☆☆☆の建材を勧めてくると思います。しかし、そのF☆☆☆☆のものは、ホルムアルデヒド以外の化学物質が使用されていることがほとんどです。
なるべく化学物質を使用していない建材を用いた家を建てる工務店は、「健康住宅」という名称で建築サービスを提供しているので、ネット検索してみてください。
新築の完成直後に部屋を換気して
ホルムアルデヒド濃度を下げる
ホルムアルデヒド対策の基本が換気です。新築が完成した直後に部屋を換気して、新鮮な外気を取り込むことで、揮発して部屋に出てきたホルムアルデヒドを除去することができます。
24時間換気が基本
新築では、常にホルムアルデヒドなどの化学物質が揮発しているため、換気だけでホルムアルデヒド対策をするとなると、24時間換気が基本となります。
ホルムアルデヒドを発散する建材を使用しない場合でも、家具からホルムアルデヒドが発散することもあるため、原則として全ての建築物に機械換気設備の設置が義務付けられています。住宅の場合、換気回数が2時間ですべての部屋の空気が入れ替わるくらいの風量で換気することが必要です。最近の新築では24時間換気が標準設備となっていますが、この制度が理由です。
24時間換気は、春や秋などの中間期では部屋の温度が気になりませんが、夏の冷房や冬の暖房をしているときには、エネルギーがもったいないです。そこで、全熱交換器のついた24時間換気システムを導入している新築もあります。
一般的な新築マンションでは、24時間換気や全熱交換器が導入されることはまずありませんので、換気だけでのホルムアルデヒド対策は、現実的ではありません。
また、ホルムアルデヒドに敏感な方であれば、24時間換気をしてもホルムアルデヒドを完全に排気することはできませんので、24時間換気を行いつつも別の対策も取り入れたいところです。
部屋を加熱してホルムアルデヒドを揮発させる方法
建材に含まれるホルムアルデヒドは、部屋の温度が上がると揮発しやすくなります。そこで、ストーブやヒーターなどで部屋の温度を上げてホルムアルデヒドの揮発を加速させ、換気する方法があります。
この方法は、新築の引っ越し前に行います。部屋を閉め切ってストーブやヒーターなどを家の部屋すべてに設置し、部屋を一斉に加熱させます。部屋を加熱することで、ホルムアルデヒドなどの化学物質が揮発するので、その後に換気します。
部屋を加熱する方法ですと、効果があると思いますが、引っ越し後の家具からホルムアルデヒドが出ることを考えると、あまり効果が感じられないと思います。
ホルムアルデヒドを吸着させる
ホルムアルデヒドをなるべく使用していない建材を用い、24時間換気を導入しても、新築のときはホルムアルデヒドやその他の化学物質が室内に揮発することを述べました。さらなるホルムアルデヒド対策として、ホルムアルデヒドを吸着させる物質を用いる方法があります。
吸着によってホルムアルデヒドを除去する方法は、次の3つのものが有名です。
- 活性炭
- 漆喰
- 珪藻土
活性炭による吸着
空気中のホルムアルデヒドを吸着させることで、排気と組み合わせて効果的にホルムアルデヒドの濃度を下げることができます。吸着剤として一般的に使用されるものが活性炭です。
活性炭は、表面に微細な孔がたくさんある炭です。一般的な炭にもホルムアルデヒドを吸着させる効果はありますが、その炭を賦活(ふかつ)と言って、化学物質の吸着力を高める処理をします。
活性炭は、換気装置の周りに敷き詰めたり、活性炭が入った塗料を壁面の下塗り剤として使用したりします。最近では床下換気の住宅が増えてきましたが、そういった住宅では床下に活性炭を敷き詰めます。
「活性炭にホルムアルデヒドを吸着させていったら、いずれは飽和して吸着しなくなるのではないか?」と思われるかもしれません。ホルムアルデヒドは自然に分解されるので、活性炭がホルムアルデヒドでいっぱいになることはありません。しかし、他の物質で活性炭の吸着限界を迎えることはあります。
活性炭以外の吸着材は有効か?
活性炭以外にもアパタイトセラミックスやゼオライトなどがありますが、それらは孔の大きさが均一になりやすいので、ホルムアルデヒドに対応した孔の大きさのものを選びます。
そうすると、ホルムアルデヒドの吸着には効果的なのですが、ホルムアルデヒドとは分子の大きさが異なる他の化学物質が吸着できなくなります。
そのようなことから、住宅のホルムアルデヒド対策をする場合でも、活性炭を使用することをおすすめします。
また、活性炭の方が安価ですし、炭ですから簡単に焼却できるので、交換するときの廃棄費用も安価になります。
漆喰による吸着
漆喰も活性炭と同様に多孔質ですから、ホルムアルデヒドやその他の化学物質も吸着してくれます。
漆喰の成分に消石灰があります。消石灰はホルムアルデヒドと化学変化を起こして、別の物質へと変化させられることが知られています。漆喰の多孔質がホルムアルデヒドを吸着させ、漆喰の成分によってホルムアルデヒドが別の物質に変化します。
漆喰の多孔質は、ホルムアルデヒド以外の化学物質も吸着してくれるので、「漆喰の部屋は新築特有の臭いがしない」といわれています。
以前に、建材になるべく天然素材のものを使う健康住宅の完成見学会で、内壁に漆喰が使用された部屋に入ったことがありましたが、化学物質の臭いはまったくしませんでした。
漆喰の塗装は、内壁に壁紙を貼らずに、漆喰を塗装します。すでに壁紙を貼っている部屋であれば、その上から漆喰を塗装することもできます。
珪藻土による吸着
ホルムアルデヒドは水に溶けやすい水溶性の気体です。空気中の水分に溶けて、珪藻土の調湿効果によって、珪藻土の中に水分として取り込まれていって、ホルムアルデヒドを吸着する仕組みです。
珪藻土は、部屋の湿度が70%以上になると吸湿し、湿度が40%以下になると放湿する性質があるようですが、日本の気候では部屋の湿度が70%を超えることがよくあるので、珪藻土がホルムアルデヒドを含む水分を吸湿してくれたり、珪藻土の水分にホルムアルデヒドが溶け込んだりすることは、考えられることです。
ホルムアルデヒドは自然に分解されやすい成分ですから、珪藻土の中でホルムアルデヒドが分解されるまで待っていたら良いわけです。
珪藻土によって水溶性のホルムアルデヒドの吸着はできたとしても、油溶性の他の化学物質は吸着が難しいことでしょう。
活性炭塗料を下塗りした後に、珪藻土を上から塗ると、合わせ技でホルムアルデヒドやその他の化学物質の吸着効果を高めてくれると思います。また、油分が吸着できるゼオライトを練り込んだ珪藻土もあるようです。
ホルムアルデヒドを分解する
ホルムアルデヒド対策として、ホルムアルデヒドを分解する方法があります。意外にも、ホルムアルデヒドは簡単に分解されます。
ホルムアルデヒドを分解する方法はいろいろありますが、次のような方法があります。
- 紫外線による分解
- マイナスイオンによる分解
- 光触媒による分解
紫外線による分解
ホルムアルデヒドは紫外線が当たると分解させることが知られています。部屋のカーテンを開けておいて、部屋に直射日光が入るようにしておくと、日光に含まれる紫外線で、ホルムアルデヒドが分解されます。
また、部屋に紫外線ランプを設置しておくことで、ホルムアルデヒドを分解できます。厨房などで紫色の蛍光灯が上向きに設置されていることや、屋外に虫対策の紫色の蛍光灯を見たことがあると思います。それらは、紫外線が多く出る蛍光灯です。
しかし、化学物質はホルムアルデヒドだけではなく、紫外線では分解できない化学物質も多く存在します。そのため、紫外線ランプを室内に設置することはあまり現実的ではありません。
マイナスイオンによる分解
マイナスイオン発生器を設置してホルムアルデヒドを分解する方法があります。マイナスイオンによって、ホルムアルデヒドが分解されることが知られています。
大手メーカーから、プラズマクラスターイオン発生器という名称で製品が販売されているものが有名です。空気清浄機の製品によっては、マイナスイオンを発生させるものもあります。
この装置は、高電圧の電極からの放電によって、空気中の水分を水素イオンと酸素イオンに分解します。このときに発生する酸素イオンがマイナスイオン(O2-)です。
光触媒コーティングによる分解
ホルムアルデヒドは、光触媒で簡単に分解できる成分です。光触媒は、光エネルギーが当たると表面にOHラジカルやスーパーオキシドアニオンという活性酸素を発生させます。OHラジカルは、ホルムアルデヒドを強力に酸化させて分解する効果があります。
マイナスイオン発生器と光触媒コーティングされたフィルターを使った小型装置で、でどちらがホルムアルデヒドをより分解できるか、弊社にて試験したところ、光触媒コーティングされたフィルターの方が、高性能でした。
光触媒コーティングは、フィルターのみならず、室内全体を塗装することもできます。部屋全体の光触媒コーティング施工によって、いろいろな方法と比較して、ホルムアルデヒドを圧倒的に分解除去できます。
光触媒コーティングは効果のあるものを選ぶこと
光触媒にはいろいろな成分があります。成分によって、どのような光でどれくらいのホルムアルデヒドを分解する効果が得られるのかが異なります。室内のホルムアルデヒドを分解するわけですから、室内の光でも触媒効果が発揮される光触媒成分を選ばないといけません。
酸化チタンは室内では効果なし
室内で効果のない光触媒成分の代表例が、酸化チタン光触媒です。酸化チタンは紫外線に反応して、強い光触媒効果を発揮します。しかし、室内では紫外線はほとんどありませんので、酸化チタン光触媒コーティング剤は、室内のホルムアルデヒドが分解できません。
室内の光でも効果のある光触媒成分
室内の光で反応する光触媒のことを、可視光応答型光触媒と言います。その代表が酸化タングステンです。酸化タングステンは室内の光でもホルムアルデヒドを分解する効果があることは、各社光触媒メーカーにて調査されています。
酸化タングステンは、確かに室内の光でもホルムアルデヒドを分解するのですが、その効果が弱いことは、あまり伝えられていません。
銅ドープ酸化チタンがおすすめ
ここで、酸化タングステンよりもホルムアルデヒドを強力に分解し、なおかつ部屋の光を消してもホルムアルデヒドが分解できる光触媒成分を解説したいと思います。
その成分とは、「銅ドープ酸化チタン」と言われる光触媒成分です。
銅ドープ酸化チタンは、部屋の光デモ強い触媒効果を発揮し、なおかつナノサイズの酸化銅の効果によって、光を当てていなくても触媒効果を発揮します。しかも、酸化タングステンでは分解が難しいトルエンやキシレン、スチレンなどの化学物質も強力に分解できる成分です。
活性炭や漆喰に銅ドープ酸化チタンをコーティングすると、強力なホルムアルデヒド対策になるばかりか、さまざまな化学物質を分解してくれます。
銅ドープ酸化チタンは防カビや除菌、消臭の効果も、他の光触媒成分と比べて非常に高いので、「新築のうちに防カビコーティングをしたい」とお考えのお客様も多いです。
気になる耐久性ですが、銅ドープ酸化チタンを使った屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、実績で10年以上効果が持続するケースが多いです。
以上、新築のホルムアルデヒド対策としてホルムアルデヒドを使っていない建材を用いる方法、部屋を換気してホルムアルデヒド濃度を下げる方法、ホルムアルデヒドを吸着させる方法、ホルムアルデヒドを分解する方法を解説しました。
これらの方法の中で、どれか一つを取り入れるということではなく、組合せて対策することが大事です。弊社がおすすめする組合せは、24時間換気はもちろんのこと、漆喰壁と銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティングの組み合わせです。
光触媒を使った業務用コーティング剤が、弊社を含めいろいろなメーカーから製造・販売されています。それを施工業者に依頼して、部屋に塗装してもらいます。弊社製品を使って室内の施工を行っている施工業者一覧は、室内の光触媒コーティング施工代理店をご覧ください。
光触媒コーティング施工のタイミングは、新築が建った直後の引っ越し前です。新築を建てるときに、「シックハウス対策をしっかりと行いたい」とお考えの方は、ぜひご検討ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。