酸化チタン光触媒は、光が当たると抗菌や消臭ができる効果を発揮します。
酸化チタン光触媒を使ったコーティング剤を塗装することを、酸化チタンコーティングといいます。
一般的な酸化チタンコーティングは、室内ではまったく効果がありません。なぜなら、酸化チタンは紫外線にしか反応しないからです。室内には紫外線がほとんどありませんから、酸化チタンは効果を発揮しません。
酸化チタンが室内で効果の無い理由は、「酸化チタン光触媒が室内で効果がない理由とは？」をご覧ください。
ある方法で酸化チタンを、室内の光でも反応するようにできたら、その酸化チタンコーティングは、室内でも強力な抗菌力や消臭力を発揮します。
この記事では、室内でも抗菌力や消臭力のある酸化チタンコーティングを解説いたします。
酸化チタンコーティングとは？
酸化チタンコーティングとは、酸化チタン光触媒を使ったコーティング剤を塗装することです。
酸化チタン光触媒は、紫外線が当たるとOHラジカルという強力な活性酸素を発生させ、それに触れたマイクロサイズ以下の小さな有機物を分解する性質があります。
マイクロサイズ以下の小さな有機物には、次のようなものがあります。
- 雑菌やカビ菌
- ウイルス
- アレルゲン
- 動物や植物、カビなどの生物から発生する臭い成分
- 揮発性有機化合物（VOC）
室内に酸化チタンコーティングをして、これらの効果が発揮できるとしたら、とても魅力的です。この効果は、一般家庭だけではなくオフィスや食品工場、自動車、ペットショップ、有機溶剤を使用する工場などでも効果的です。
一般的な酸化チタンコーティングは
室内では抗菌・消臭効果なし
酸化チタンコーティングには、一つ致命的な問題があります。それは、「紫外線にしか反応しない」ということです。
その理由は、酸化チタンは紫外線にしか反応しないことにあります。上記の効果を得たい場面は、ほとんどが室内のことです。室内には紫外線がほとんどありませんから、上記のような効果はほとんど得られません。
酸化チタンコーティングが室内でも効果を発揮するためには、紫外線ランプ（ブラックライトなど）をコーティングされた箇所に照射する必要があります。そして、紫外線を照射しているときにしか効果を発揮しません。
一般家庭では、部屋中に紫外線を照射し続けることは現実的ではありません。
そこで、「酸化チタンが室内の光でも効果を発揮するようにできないか？」と考えますが、その方法はあります。
酸化チタンを紫外線以外でも活性化させる方法
酸化チタンを紫外線以外でも活性化させる一般的な方法は、酸化チタンに何か別の物質を担持させることです。
光触媒の活性とは、光触媒成分に光が当たって光触媒の効果を発揮する状態のことです。担持とは、簡単に述べるならば結合させることです。
例えば、酸化チタンには銅を担持させることによって、紫色や青色、シアンの光にも反応するようになります。すると、蛍光灯やLED照明、白熱球などでも抗菌力や消臭力を発揮するようになります。
銅を担持させた酸化チタンのことを、銅担持酸化チタンとか銅ドープ酸化チタンと呼びます。弊社では、後者の「銅ドープ酸化チタン（銅担持酸化チタン）」と呼んでいます。
室内の光、目に見える光にも活性化し、効果を発揮することを、可視光活性といいます。そして、そのような光触媒のことを、可視光活性光触媒といいます。酸化チタンに担持させると可視光活性する物質は、たくさんの種類がありますが、室内用の光触媒コーティング剤として実用化されているものは、弊社が把握しているものでは次の3種類です。
- 銅（銅ドープ酸化チタン）
- 窒素（窒素ドープ酸化チタン）
- 鉄（鉄ドープ酸化チタン）
これらの中で、「どの酸化チタンがもっとも効果が高いのか？」ということですが、それは銅ドープ酸化チタンです。
なぜ銅ドープ酸化チタンが
もっとも抗菌や消臭の効果が高いのか？
銅ドープ酸化チタンがもっとも抗菌や消臭の効果が高い理由は、次の通りです。
- コーティング剤に添加する量を多くできる
- OHラジカルが発生しやすい
- 暗所でも効果を発揮する
コーティング剤に添加する量を多くできる
光触媒コーティング剤に光触媒成分を多く添加することができたら、それだけ抗菌や消臭の効果が高くなります。しかし、多くし過ぎると光触媒成分が液剤にうまくなじまず、結晶が出てきて沈殿してしまいます。また、粘性も高くなってしまいます。
古くなったハチミツは糖の結晶が出てきてしまいますが、そのようなイメージです。
このように結晶が出てきてしまう現象のことを、「析出（せきしゅつ）」といいます。また粘性が高まる現象のことを、「ゲル化」といいます。
光触媒コーティング剤になるべく多く光触媒成分を入れたいのですが、析出やゲル化が起こってしまい、クリア塗装が出来なくなったり、均一な塗装ができなくなったり、耐久性が悪くなったりするのです。
多くの銅ドープ酸化チタンをコーティング剤の中に添加していくと、析出してしまいますが、析出しない程度の分量を添加すると、銅ドープ酸化チタンは他のものよりも高い効果を発揮します。コーティング剤の中に入れる、銅ドープ酸化チタンとバインダー成分のアモルファス酸化チタンを合わせた添加量は、重量比で1％未満です。
OHラジカルが発生しやすい
光触媒が抗菌や消臭といった効果を発揮する理由は、光が当たったときに、OHラジカルという活性酸素を発生させるためです。
OHラジカルは、菌類に触れると菌類の表面の成分や細胞壁などを酸化分解する性質があり、菌類の活動を抑制したり死滅させたりします。また、アンモニアやホルムアルデヒドなどの臭い、有機物の臭いの成分も同様に、OHラジカルによって酸化分解され、消臭ができます。
光触媒は、同じ波長や明るさの光を当てたとしても、OHラジカルが発生する量が異なります。
銅ドープ酸化チタンは、可視光を当てたときにもっともOHラジカルを発生させる成分であると思われます。
暗所でも抗菌・消臭効果を発揮する
さらに、銅ドープ酸化チタンは他の光触媒には無い性質があります。それは、光が当たらない場所でも触媒の効果を発揮するという性質です。
一般的な光触媒は、少なくとも光が当たらなければ抗菌や消臭の効果を発揮しません。これは当たり前のことです。ですから、光触媒コーティングをしても、消灯をした夜間、地下やロッカーの中などの暗所では、抗菌や消臭の効果を発揮しません。
ところが、銅ドープ酸化チタンだけが暗所でも触媒の効果を発揮するのです。
これらのことから、室内でも抗菌力や消臭力のある酸化チタンコーティングは、銅ドープ酸化チタンを使ったものだと言えます。
以上、室内でも抗菌力や消臭力のある酸化チタンコーティングについて解説いたしました。
まとめると、一般的な酸化チタンコーティングは紫外線が当たる箇所でしか効果を発揮しません。可視光応答をさせた酸化チタンコーティングを利用すると、室内でも効果を発揮します。可視光応答させた酸化チタンの中で、もっとも効果の高い成分は銅ドープ酸化チタンです。
銅ドープ酸化チタンは、消灯をした夜間や地下室、ロッカーの中といった暗所でも効果を発揮します。
銅ドープ酸化チタンを使った酸化チタンコーティングをご希望の方は、弊社もしくは弊社の光触媒製品を扱う施工業者までご相談ください。施工業者一覧は、「室内の光触媒コーティング施工業者」をご覧ください。
また、銅ドープ酸化チタンを使った酸化チタンコーティング剤をお探しの塗装業者様は、イリス製品をご検討ください。
皆様からのご連絡をお待ちしております。
この記事の著者／責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。