
新築の建物に入居するときに、誰もが気にされるホルムアルデヒド。
新築の建物に入ると新築特有の臭いがしますが、建材に利用された有機溶剤などが揮発する、ホルムアルデヒドなどの化学物質の臭いです。
当社は、光触媒で化学物質を分解する事業も行っている関係から、一般の方から「壁紙からホルムアルデヒドが出ているのではないか」、「部屋が化学物質の臭いがする」ということでご相談をいただくことがあります。
この記事では、壁紙のホルムアルデヒド除去方法を解説いたします。
壁紙の接着剤
壁紙を壁に接着させるための糊には、いろいろな種類があります。壁紙の種類や下地の種類によって、接着剤を使い分けます。
接着剤に利用されている成分は、でんぷんや酢酸ビニル樹脂が多いと思います。
酢酸ビニル樹脂は、水と混ぜて乳化したものですから、水分が蒸発することで固化します。
その水分が酸っぱい臭いがするので、「ホルムアルデヒドが出ている」と勘違いされる場合もあります。
ホルムアルデヒドが使用されている接着剤は、少ないと思います。
接着剤の成分の記載を見ると、「主成分」と書かれていることが多く、一般消費者はどのような溶剤を利用しているのか知ることができません。Fフォースター(F☆☆☆☆)の認定を受けている接着剤を利用したとしても、ホルムアルデヒド以外の溶剤が利用されていることもあります。
ともあれ、壁紙からホルムアルデヒドが出ていることを想定して、その対策を解説いたします。
ホルムアルデヒド除去の基本は換気

ホルムアルデヒド除去の基本は換気です。新築戸建て住宅を建てたら24時間換気を導入することが法律で義務付けられています。24時間換気を行い、部屋の空気を入れ替えて、ホルムアルデヒド対策を行ってください。
ホルムアルデヒドが揮発していくと、いずれ揮発し切ってしまうので、ホルムアルデヒド対策としてずっと換気し続ける必要はなくなると思います。しかし、4~5年ほどの長期間出続けるとも言われているので、別の対策も検討したいものです。
ホルムアルデヒドは、次亜塩素酸水を噴霧することでも分解が可能だと思いますが、4~5年間も噴霧し続けることは、現実的ではありません。
また、壁紙を加熱してホルムアルデヒドをあぶり出す方法もあります。今から25年ほど前にそのような業者がありましたが、今では見ることはありません。部屋を加熱しても、壁紙の内側まで高温になるのに、時間がかかりすぎるためです。
オゾンによる分解

オゾンとは、酸素の一種です。通常の酸素は、酸素原子が2個くっついている状態です。オゾンはそれが3個くっついているものです。
オゾンは活性酸素の一種で、それに触れたものを酸化分解する性質があります。オゾンは、オゾン発生機を部屋の中に設置して、オゾンガスを発生させます。
オゾン発生装置の構造は簡単です。空気中の酸素に高電圧を加えたらオゾンが発生します。ですから、装置自体は数千円から数万円程度で購入できます。
オゾンの酸化力はそれほど強くありませんから、空気中に浮遊します。すると空気中のホルムアルデヒドに接触すれば、それを酸化させ水と二酸化炭素に分解してくれます。
ただし、壁紙からホルムアルデヒドが出続けている状態であれば、オゾン発生機をずっと起動させておく必要があります。そして、オゾンは活性酸素ですから、身体に悪いとも言われています。
費用で選ぶのであればオゾンがおすすめです。効果で選ぶのであれば、後ほどご紹介する光触媒がおすすめです。
活性炭による吸着

換気以外にも活性炭によってホルムアルデヒドを吸着する方法があります。
活性炭とは、炭を加工したもので、微細な孔が無数に空いた多孔質の黒い塊です。その孔にホルムアルデヒドが入っていく性質を利用して、除去できます。
活性炭による吸着は、ホルムアルデヒドが活性炭に接触する必要がありますから、部屋の中に活性炭を置いただけではなく、部屋の空気を循環させる必要があります。また、活性炭の量も相当量用意しないといけません。
部屋の片隅に活性炭を置いておくくらいでは、効果が実感できないと思います。活性炭がホルムアルデヒドを吸着したら、そのホルムアルデヒドが分解されるまで、次のホルムアルデヒドを吸着できなくなるからです。
活性炭に、次にご説明する光触媒を加工することで、連続的にホルムアルデヒドを吸着分解できる活性炭もあります。しかし、活性炭の利用は、活性炭を壁に練り込む方法や、活性炭を床下に敷き詰める方法もありますが、すでに建ってしまった住宅では、活性炭の利用は難しくなります。
ともあれ、壁紙からホルムアルデヒドが出続けているのであれば、床下に活性炭を敷き詰めたとしても、部屋の中に発生しているホルムアルデヒドを除去し切れるものではありません。
光触媒による分解
換気と併用していただきたいホルムアルデヒド対策は、光触媒です。ホルムアルデヒドは、光触媒(ひかりしょくばい)によって簡単に分解できることが知られています。
光触媒とは、光が当たることで触れているものを分解する性質のある物質です。主な成分は、酸化チタンです。酸化チタンは、光の種類の中でも紫外線が当たることで、表面にOHラジカルと言われる強力な活性酸素が発生します。それがホルムアルデヒドに触れると、強力に酸化分解してくれます。
光触媒が入ったコーティング剤を、壁や天井といった部屋全体の壁紙にスプレーして、光を当てることで、部屋に漂うホルムアルデヒドや壁紙から揮発してくるホルムアルデヒドを分解してくれます。

OHラジカルは酸化力が強いので、オゾンのように空気中に浮遊しませんから、光触媒が塗布された表面にしか発生しません。ですので、人に対して安全性が高いと言えます。
また、壁紙が貼られている部屋には紫外線がほとんど当たりませんから、酸化チタンでは効果がありません。
弊社がおすすすめする光触媒成分は、「銅ドープ酸化チタン」です。
銅ドープ酸化チタンとは?

銅ドープ酸化チタンとは、特許製法によってナノサイズの酸化チタン結晶の表面に、酸化銅を結合させた成分です。
酸化チタンは紫外線が当たることで、ホルムアルデヒドを分解してくれますが、銅ドープ酸化チタンは室内の蛍光灯やLED照明の光でもホルムアルデヒドを分解してくれます。
銅ドープ酸化チタンを使ったコーティング剤を、壁紙に塗布しておけば、部屋のホルムアルデヒドが除去されます。

壁紙に銅ドープ酸化チタンを塗布する方法
壁紙に銅ドープ酸化チタンを塗布する方法をご説明します。
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤

壁紙に塗布するコーティング剤は、銅ドープ酸化チタンが入った「光触媒コーティング剤」と言われるものを利用します。
弊社の製品であれば、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)という名称で業務用として業者販売しています。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の成分は次の通りです。
光触媒成分 | 銅ドープ酸化チタン |
---|---|
接着成分(バインダー) | アモルファス酸化チタン |
その他 | 水 |
有機溶剤はいっさい利用していませんから、ホルムアルデヒドといった化学物質除去にも最適なコーティング剤だと言えます。
この液剤を一般消費者向けに販売していない理由は、塗装方法に装置と技術を要するからです。
塗装方法
壁紙に屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗布する方法は、専用の塗装装置を用います。弊社が推奨する塗装装置は、ABAC(アバック)温風低圧塗装機です。
次の図は、ABAC温風低圧塗装機SG-91です。

この塗装装置は、ブロワーユニットとスプレーガンがセットになっています。この装置を使って塗装します。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、薄く均一に塗装しないと、壁紙にうっすらとまだら模様が出てしまうことがあります。ですから、ハンドスプレーなどでの塗布を禁止しています。
施工のご依頼
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗装によるホルムアルデヒド除去は、弊社の製品を扱う施工代理店にご依頼ください。弊社までご相談いただけましたら、お近くの施工代理店をご紹介いたします。

銅ドープ酸化チタンの効果を手軽に試したい
⇒ 光触媒スプレー

銅ドープ酸化チタンを壁紙にコーティング塗装すると、数万円~数十万円ほどの施工費用がかかります。
その費用をかける前に、「銅ドープ酸化チタンの効果を試したい」とお考えの方は、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒スプレー「アキュートクリーン」をご利用ください。
アキュートクリーンは、一般のご家庭向けに開発した抗菌・消臭スプレーです。これにも銅ドープ酸化チタンが入っているので、ホルムアルデヒドや部屋の新築の臭いを分解消臭してくれます。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)によるコーティング施工と、光触媒スプレー「アキュートクリーン」の違いは、次の通りです。
コーティング施工 | 光触媒スプレー | |
---|---|---|
銅ドープ酸化チタンの量 | 多い | 少ない |
接着成分 | 添加されている | 添加されていない |
耐久性 | 10年以上 | 数週間 |
施工方法 | 施工代理店に依頼 | 自分でできる |
費用 | 高い | 安い |
施工箇所 | 壁紙にコーティング塗装 | 壁紙や部屋にスプレー可能 |
アキュートクリーンは、壁紙に吹き付けることもできますが、天井に向けて部屋の中にスプレーすることで、部屋の中に浮遊するホルムアルデヒドの分解も可能です。
もちろん、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の壁紙へのコーティング施工と、光触媒スプレー「アキュートクリーン」を併用すると、高い効果が得られることと思います。

この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。