光触媒コーティングによる劇場の抗菌・消臭コーティングをご紹介いたします。
弊社の光触媒コーティング剤は、いくつか有名な劇場でもご利用いただいており、抗菌・消臭の実績を積み重ねています。
この記事では、光触媒コーティングとはどういったものか、なぜ光触媒で抗菌や消臭ができるのかを、少し技術的なことに踏み込んで解説しつつ、劇場のどういた課題が解決されるのかを事例でご紹介します。
ご紹介する事例は、弊社の光触媒コーティング製品をご利用いただいている施工代理店、フューチャーアンドエコロジー株式会社です。この施工代理店は、東京都や神奈川県、千葉県にある劇場やテーマパークだけでなく、オフィスや一般のご家庭などの光触媒コーティングも行っています。
劇場でのお悩み
劇場では、次のような悩みをお持ちのことと思います。
- 舞台幕がカビる
- 空調機の吹き出しから出る空気が臭う
- バックヤードが臭う
- シャワー室がすぐにカビる
- 座席や手すりなどを抗菌したい
舞台幕は、クリーニングが難しいため、カビてしまったら大変です。劇場のバックヤードやシャワー室がカビていたら、役者さんやスタッフさんが気持ちよく利用しにくいと思います。
空調機から臭いがしてきたら、お客様が気になって舞台に集中できませんし、健康にも悪そうです。クリーニングに費用がかかりますし、「あの劇場は臭い」と悪評が立ってしまい、利用頻度が下がる恐れもあります。
空調機の臭いを消臭し、座席や手すりを抗菌して、それをPRすることで、お客様に安心感を持ってもらえます。
そういったお悩みに、光触媒による抗菌・消臭コーティングが解決します。
光触媒による抗菌・消臭のメカニズムについては、後ほど詳しくご説明いたしますが、簡単には光触媒成分に光が当たることで、触媒の効果を発揮し、菌類や臭い成分を分解してくれます。
抗菌と消臭はそれぞれ抗菌剤や消臭剤といった別々の製品を利用することが多いのですが、光触媒であればコーティングであれば両方に効果があります。室内でも効果のある光触媒コーティング剤を塗装しておけば、抗菌と消臭の両方が行えます。オゾン脱臭のような特別な装置を設置する必要も必要ありません。
ここで、「室内でも効果のある光触媒コーティング剤を・・・」と述べたのには理由があります。光触媒は、光が当たると効果を発揮しますが、劇場は基本的に暗いので、一般的な光触媒コーティング剤では、ほとんど効き目がありません。当たり前のことですが、基本的に光がないと光触媒は機能しません。
ところが、世の中には例外があります。
後ほど、ご紹介いたしますが、「銅ドープ酸化チタン」と言われる光触媒成分は、光が当たるところはもちろんのこと、暗闇でも触媒の効果を発揮し、抗菌や消臭をしてくれるのです。
光触媒成分と抗菌・消臭のメカニズム
暗所でも触媒の効果を発揮する「銅ドープ酸化チタン」をご紹介の前に、光触媒コーティングのメカニズムについて解説いたします。
光触媒コーティングとは?
そもそも光触媒コーティングとは何でしょうか?
光触媒を塗装するためには、光触媒が添加された塗装製品を用いるわけですが、それには次の2種類あります。
- 光触媒塗料
- 光触媒コーティング剤
光触媒塗料とは、ペンキのような顔料の入った粘性の高い塗料に光触媒成分が添加されたものです。光触媒塗料を塗装すると、ペンキのような色が付着しますから、舞台幕や座席などの布地に塗装することはできません。室内の塗装には光触媒塗料は不向きです。光触媒塗料の詳細は、「光触媒塗料とは?」をご覧ください。
光触媒コーティング剤とは、水のような透明な液剤に光触媒が添加された塗料です。専用の塗装機械とスプレーガンを用いて吹き付け塗装します。透明な液剤ですから、塗装面にクリア塗装ができるので、舞台幕や座席などの布地はもちろんのこと、壁紙や金属製の手すり、ユニットバスなどの樹脂パネルなど、いろいろなものにクリア塗装ができます。
光触媒コーティング剤に用いられている光触媒成分
光触媒とは、光が当たるとそのエネルギーによって菌類や臭い成分を酸化分解する性質を持つ材質のことです。光触媒コーティング剤に用いられている主な光触媒成分は、酸化チタンと酸化タングステンです。
酸化チタンとは、チタンといわれる金属が酸化したものです。酸化とは、酸素と結びつくことです。鉄が錆びると赤くなりますが、それは鉄が酸化したためです。チタンやタングステンといった金属も、酸素と結びついて酸化します。光触媒コーティング剤には、それらの酸化金属の粒子が添加されています。
酸化チタンは金属ですから、それを塗装したら金属の色が着いてしまうと思われるかもしれません。光触媒コーティング剤に添加している光触媒成分は、ナノサイズという微細な粉末ですから、クリア塗装ができます。
ナノとは、補助単位の一つです。ミリメートルの1/1,000をさらに1/1,000にしたサイズが1nm(ナノメートル)です。推定ですが、光触媒コーティングをした塗装面に付着する光触媒成分の厚みは、せいぜい10nmほどと考えます。これくらいの厚みですと、光を透過するので透明に見えるわけです。
先ほどご紹介した銅ドープ酸化チタンとは、酸化チタンに銅を結合させた成分です。ドープとは「結合させた」という意味です。
光触媒コーティング剤に用いられている光触媒成分には、他にもたくさんの種類があります。どの光触媒成分を塗装するかによって、抗菌や消臭の効果が大きく異なりますから、後ほど詳しく解説します。
光触媒による抗菌・消臭のメカニズム
光触媒成分に光が当たると、その表面にOHラジカルといわれる強い酸化力を持つ活性酸素が発生します。OHラジカルに触れた有機物は酸化分解され、最終的には水や二酸化炭素などといった、無機物に変化します。
OHラジカルは、大腸菌やカビ菌などの微細な生物の表面の成分や突起、細胞壁などを酸化分解し、それらを無力化や殺菌をしてくれます。ウイルスのサイズは、細菌よりも1/10~1/100程度と、さらに小さなものですから、光触媒で分解されやすいものと考えます。
劇場内で人が出入りすると、菌類などが持ち込まれます。人から出てきた菌類やウイルスが、光触媒コーティングされた箇所に触れると、それらが無力化されるわけです。また、バスルームや控室などでは、湿気がこもりやすいので、カビ菌が繁殖しやすい環境です。壁面に付着したカビ菌や胞子も、光触媒コーティングされた壁であれば無力化されるわけです。
臭いの成分の多くは有機物です。身体から出る体臭、排泄物の臭い、カビの臭いや揮発性有機化合物(VOC)、動物の臭いも有機物です。これらの臭い成分も、光触媒コーティングされた箇所に触れると、光触媒から発生したOHラジカルによって分解され、無臭の無機物へと変化します。
このようにして、光触媒によって抗菌や消臭ができるわけです。
劇場内でも効果の高い光触媒コーティング剤とは?
光触媒は光が当たると触媒の効果を発揮します。ところが、劇場内は基本的に暗い環境です。閉館しているときは真っ暗です。基本的には、劇場内では光触媒は効果を発揮してくれません。
次に、光触媒の種類と性質について、劇場内の暗い環境でも触媒の効果を発揮する光触媒成分「銅ドープ酸化チタン」の魅力を解説いたします。
光の波長
光触媒コーティング剤の選び方を解説する前に、光の波長について解説をいたします。なぜなら、光触媒成分が触媒の効果を発揮することと、光の波長には大きな関連性があるからです。高校物理で習った光の波長を思い出していただきたいと思います。
光には波長があります。その波長によって見える光の色が異なります。次の図は、光の波長と色の関係を表したものです。
図の数値は、光の波長の長さです。単位はnmです。1nmは、1mmを1/1,000してさらに1/1,000した長さでした。光は振動しながら光速で移動していますが、光は色によって1回振幅したときの進む距離が異なるわけです。
光の波長が380nm~400nmのものは、紫色になります。480nm付近ではシアン色です。700nm~780nmでは赤色です。これらの目に見える光のことを可視光といいます。
380nmよりも波長の短い光は、目に見えない光となり、紫色よりも外の光ということで、「紫外線」といわれています。化粧品や日焼け止めクリームで「UVカット」という言葉を見かけますが、このUV(ultraviolet)のことです。反対に、赤色の波長の光よりも波長の長い光は、赤色の外の光ということで、「赤外線」といわれています。
このように、光には波長によって見える色が異なり、目に見えない光として紫外線や赤外線が存在します。
光触媒成分にはいろいろな種類があることをご説明しましたが、光触媒成分によって触媒の効果を発揮する、つまりOHラジカルを発生させる光の波長が異なります。ここでは、「可視光」と「紫外線」の意味を覚えておいてください。
酸化チタン光触媒は劇場内では効果なし
光触媒コーティング剤で、一般的によく利用されている光触媒成分に、「酸化チタン光触媒」があります。
酸化チタン光触媒は、紫外線が当たると反応し、強力な酸化力を発揮する成分です。しかし、紫外線以外の光、青色や緑色、赤色の光といった波長の光では、まったく触媒の効果を発揮しないのです。
もし、劇場内に酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を塗装したら、劇場内に紫外線が照射されていると、高い抗菌効果や消臭効果を発揮します。先ほどもご説明したように、劇場内は紫外線どころか、電球の光も暗いものです。
酸化チタン光触媒は、屋外の直射日光が当たる場所では高い効果を発揮しますが、劇場内では効果がありません。
劇場内の防カビや消臭といった効果を期待して、酸化チタン光触媒コーティングをしても、まったく効果が無いので、ご注意ください。
劇場内でも効果のある光触媒成分とは?
劇場で使用されているライトは、現在ではLED照明がほとんどだと思います。LEDライトの光はほぼ可視光のみが出ているわけですから、可視光に反応して触媒の効果を発揮する光触媒成分をコーティングする必要があります。
このように、可視光に反応する光触媒成分のことを、可視光応答型光触媒といいます。
室内用の光触媒コーティング剤として実用化されている可視光応答型光触媒には、次のような種類があります。
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 鉄ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
銅ドープ酸化チタンなどの「ドープ」とは、「添加した」という意味ですが、光触媒では「結合させた」という意味の方が適切です。専門用語では、「担持させた」といいます。銅ドープ酸化チタンは、酸化チタンに銅を結合させた成分です。ですから、銅担持酸化チタンという場合もあります。
酸化チタン単体では紫外線にしか反応しませんでしたが、銅や窒素といった別の成分を結合させることで、可視光でも応答するようになります。
「ドープ」と似た言葉に、「ハイブリッド」があります。例えば、銅ハイブリッド光触媒といわれるものは、酸化チタンに銅を担持させたものではなく、単に銅イオンを混ぜただけのものです。ですので、酸化チタンそのものは紫外線にしか反応しませんから、可視光応答型光触媒とは言えません。銅ドープ酸化チタンと銅ハイブリッド光触媒は、まったくことなる成分です。
酸化タングステンは、それそのままでも可視光応答型光触媒です。
どの可視光応答型光触媒を用いたら良いのか?
光触媒コーティングとして実用化されている可視光応答型光触媒には、何種類かありますが、「これらの可視光応答型光触媒ならどれでも良いのか?」と訊かれたら、「いいえ」と言わざるをえません。なぜなら、光触媒成分によって効果の高さが異なりますし、光触媒コーティング剤にしたときに、クリア塗装や均一な塗装ができる添加量の限界があるからです。
光触媒成分を光触媒コーティング剤に多く添加したら、それだけ効果が期待できますが、添加し過ぎたら、析出と言って、成分の色が出て白っぽくなってしまい、クリア塗装ができなくなるのです。また、添加量が多くなるとゲル化と言って、コーティング剤の粘性が高まり、正しく塗装が出来なくなります。
それらのことを考慮すると、光触媒コーティング剤にしたときに、劇場内でもっとも触媒の効果を発揮する成分は、銅ドープ酸化チタンです。
劇場を消灯しても効果を発揮する銅ドープ酸化チタンの魅力
銅ドープ酸化チタンが反応する光の波長は、次の図のように、紫外線はもちろんのこと、紫色からシアン色までの光、380nm~480nmの光でも触媒の効果を発揮します。つまり、LED照明の光でも触媒の効果を発揮します。
さらに、銅ドープ酸化チタンには、その他多くの光触媒成分には存在しない性質があります。それは、「暗所でも触媒効果を発揮する」という性質です。一般的な光触媒は、光が当たることで触媒の効果を発揮しますが、銅ドープ酸化チタンは暗所でも抗菌や消臭の効果を発揮するのです。
その理由は、おそらくですが酸化チタンに結合させたナノサイズの酸化銅が、常温でも触媒の効果を発揮しているものと考えます。
劇場内では、観客席の照明は演劇の前後や休憩時間にしか点灯させません。演劇中や営業時間外では真っ暗になります。銅ドープ酸化チタンなら、その間でも抗菌や消臭の効果を発揮してくれます。シャワー室の防カビも同様です。シャワー室を使っていないときは、常に消灯していますが、銅ドープ酸化チタンなら防カビをし続けてくれるのです。
このように銅ドープ酸化チタンは、劇場の抗菌・消臭コーティングとして最適です。
劇場内のどういった箇所を
光触媒コーティングできるのか?
劇場内のどういた箇所に銅ドープ酸化チタン光触媒をコーティング塗装できるのかをご説明いたします。弊社が考える塗装箇所は、次のような箇所になります。
- 座席
- 壁や天井
- 床カーペット
- 舞台幕
- トイレ
- 控室
- シャワー室
- 階段などの手すり
- エレベータ内
- 喫煙所
- 空調機のフィルターや吹き出し口
フューチャーアンドエコロジー株式会社の
光触媒コーティング施工
劇場内の光触媒コーティングで実績のあるフューチャーアンドエコロジー株式会社をご紹介いたします。フューチャーアンドエコロジー株式会社は、弊社の光触媒製品を使って施工している施工代理店の一つです。
ハイブリッド光触媒と銅ドープ酸化チタンの違いは?
先ほど、銅ドープ酸化チタンと銅ハイブリッド光触媒は、まったく異なる成分であることを解説いたしました。
フューチャーアンドエコロジー株式会社のホームページを見ると、「ナノ粒子の酸化チタンに銅イオンをハイブリッドすることにより・・・」と書かれていますが、弊社の光触媒コーティング剤を使用しているので、ここで述べられているハイブリッド光触媒と銅ドープ酸化チタンは同じ意味です。
一般的には、銅ハイブリッド酸化チタンは酸化チタンに銅イオンを混ぜただけのものです。それに対して銅ドープ酸化チタンは、酸化チタンに酸化銅を結合させたものです。
フューチャーアンドエコロジー株式会社が使用している光触媒コーティング剤は、厳密には酸化チタンに銅イオンをハイブリッドしているだけでなく、酸化チタンに酸化銅を結合させたものです。多少は銅イオンも含まれていると思いますが、抗菌や消臭の効果を長期間発揮し続ける成分は銅ドープ酸化チタンです。
消費者からすると、「ドープ」という言葉は馴染みがないですし、「ハイブリッド光触媒」と記載した方が、なんだか効き目がありそうに思えるので、ホームページには「ハイブリッド光触媒」として記載されたのだと思います。
フューチャーアンドエコロジー株式会社が使用している光触媒コーティング剤は、弊社が開発した銅ドープ酸化チタンを利用されているので、ご安心ください。
光触媒コーティングで実績のある建物
フューチャーアンドエコロジー株式会社では、劇場だけでなく、次のような物件でも施工実績があります。
- 一般住宅(一戸建て、マンション)
- 賃貸マンション
- 病院・介護施設
- 店舗
- 公共施設(劇場など)
- テーマパーク
- 乗り物(自動車、タクシー、バス、鉄道など)
- オフィス
営業エリアは、一般住宅では東京都と神奈川県です。企業や公共施設といった大規模の物件では、東京都、神奈川県に加え千葉県も営業エリアとなっています。
東京やその近辺の劇場などの光触媒コーティング施工のご依頼は、フューチャーアンドエコロジー株式会社にお気軽にご相談ください。それ以外の地域では、弊社までお問い合わせください。お近くの施工代理店をご紹介させていただきます。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。