光触媒塗装ができる材料には、光触媒塗料と光触媒コーティング剤があります。
光触媒塗料とは、顔料や樹脂が入った塗料の中に光触媒成分も入った塗料です。光触媒コーティング剤とは、塗料の上から塗装して、表面をクリアコーティングする液剤のことです。大きな違いは、塗料と液剤の違いです。
光触媒塗料と光触媒コーティング剤の違いを、塗料の見た目や塗装したときの色、塗装場所、耐久性、塗装方法など、さまざまな面から比較しながら解説いたします。
塗料の粘性での比較
光触媒塗料は、とても粘性が高いので、ドロッとしています。一般の方には、「ペンキのような粘性」と言ったら分かりやすいと思います。臭いは、有機溶剤の臭いがするものがほとんどです。光触媒塗料は粘性が高いので、ハケやロールで塗ります。
それに対して、光触媒コーティング剤は水のような粘性の低い、サラサラした液体です。光触媒コーティング剤の臭いは、無臭です。光触媒コーティング剤は、クリア塗装が求められる場所では、ハケやロールで塗ることはできません。スプレーガンを用いて塗装します。
施工方法については、後ほど解説します。
塗装したときの色での比較
光触媒塗料を塗装すると、それに含まれる顔料の色が壁に付きます。光触媒塗料の色の選択肢は、光触媒塗料メーカーが用意した色から選びます。メーカーや品種にも寄りますが、色の選択肢はあまり多くありません。
光触媒コーティング剤は、クリア塗装ができるので、塗装面の色がそのまま出ます。クリア塗装とは透明な塗装のことです。塗装面の色は、もともとの色がそのままです。そのため、色の制限がありません。光触媒コーティングはコンクリート打ちっ放しにも塗装ができるので、コンクリート打ちっ放しの景観を損ねることなく、光触媒を塗装できます。
塗料の色がそのまま出るものが光触媒塗料、クリア塗装ができるものが光触媒コーティング剤です。
塗装箇所での比較
光触媒塗料は、外壁や内壁などの壁に塗装するものです。ペンキのように塗ることができ、塗装面を覆ってしまうので、何にでも塗装ができます。しかし、トイレの便器やシンクといったものに塗装することはできません。塗装してもすぐに剥がれ落ちてしまうと思います。
光触媒コーティング剤は、外壁や内壁だけでなく、パネル建材や家具、トイレの便器、窓ガラスなど、いろいろなものに塗装できます。光触媒コーティング剤の接着成分は、何にでも強固に定着します。
ただし、光触媒コーティング剤は、それぞれの塗装場所によって専用の光触媒コーティング剤があるので、使い分けをします。例えば、窓ガラスにはガラス用を、外壁には屋外用といった具合です。それぞれ光触媒成分が異なったり、クリア塗装ができるように成分調整されているからです。
耐久性の比較
耐久性とは、光触媒塗料や光触媒コーティング剤が、塗装面に付着している長さや見栄えの変化、光触媒効果の持続性があります。
光触媒塗料は、メーカーによって耐久性は異なります。一般的には、光触媒によって顔料が分解されてしまうことがあるので、数年で色あせが発生することもあります。また、接着剤(バインダー)に有機成分を用いている場合は、光触媒で劣化して、ひび割れたりすることもあり得ます。
以前に、大手メーカーが光触媒塗料を大々的に販売しておきながら、5年ほどで販売中止にしたことがありました。原因を調べて見たら、5年ほどで色あせが起きてしまって、クレームがたくさん入ってきていたようです。
それに対して光触媒コーティング剤は、耐久性はとても高いです。弊社の製品では、屋内用が10年以上効果が持続しています。また、外壁用光触媒コーティングは、20年経過しても光触媒の防汚効果を維持できている建物があるくらいです。
光触媒コーティングによる色あせについては、色あせや劣化をしそうな条件の箇所に光触媒コーティングをするときに、事前に下地材を塗装しておけば、塗装面の色あせや劣化を防ぐことができます。
塗装方法の比較
光触媒塗料の塗装方法は、ロールやハケで塗装をします。一般的な外壁や内壁塗装と同じ要領です。光触媒塗料をスプレーガンで塗装することもありますが、光触媒塗料は粘性が高いので、高圧のエアーでスプレーガンのノズルには大口径のものを利用します。
光触媒コーティング剤は、専用の塗装機械(温風低圧塗装機)とスプレーガンを用いて行います。光触媒コーティング剤の粘性は低いことや、クリア塗装をするために、ナノサイズの薄膜を形成することから、スプレーガンのノズル口径は、φ0.3mmやφ0.5mmといった小口径のものを使用します。
光触媒塗料は粘性が高いので、高圧エアーと大口径のスプレーガンを用いますが、光触媒コーティング剤は水のような粘性ですので、低圧エアーと小口径のノズルを用います。
下地剤(無機プライマー)の有無
光触媒塗料の塗装は、塗料の重ね塗りはあるかもしれませんが、塗料を塗るだけOKですから、塗装は手軽です。
それに対して、光触媒コーティング塗装は少し複雑です。と言うのも、先ほど耐久性のところで解説したように、光触媒コーティング剤によって下地が劣化する場合があるからです。
光触媒コーティング剤は、直射日光が当たる場所は外壁用を用い、室内や直射日光が当たらない場所には屋内用を用います。また、塗装面が光触媒効果によって劣化する可能性がある場合は、先に下地剤(無機プライマー)を塗装する必要があります。
下地剤(無機プライマー)は、光触媒コーティングによって塗装面の塗料などの有機物が分解されないようにするために、塗装面と光触媒コーティング剤が接触しないようにし、かつ光触媒によって分解されにくい成分でできています。
以上、光触媒塗料と光触媒コーティング剤の違いを、さまざまな面から比較しながら解説いたしました。
弊社は、光触媒コーティング剤メーカーです。光触媒コーティング剤をお求めの塗装業者様から、光触媒コーティング塗装をしてもらいたい一般のお客様まで、弊社までお気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。