窓ガラスの外面は、きれいに掃除をしても、時間とともに空気や雨水の汚れが付着して、汚れていきます。窓ガラスが汚れたら、それを清掃したら、またきれいになるわけですが、高層ビルなどでは容易に清掃できませんし、低層ビルであったとしても、清掃の予算を捻出する必要があります。
そういった窓ガラスの清掃のコストを下げることができるのが、光触媒コーティング塗装です。
窓ガラスに光触媒コーティングをすると、ガラス面に汚れが付着しにくくなり、雨水によって汚れが流れ落ちるようになります。
この記事では、窓ガラスに光触媒コーティングをする方法の他、使用する機材や光触媒コーティング剤、注意点などをご説明いたします。
窓ガラスの光触媒コーティング塗装の流れ
窓ガラスに光触媒コーティング塗装する流れですが、施工全体の流れでご説明いたします。
1.機材などの事前準備
窓ガラスを清掃したり、光触媒コーティング剤を塗装するための機材が必要です。それらの機材を準備します。窓ガラスの面積に合わせて光触媒コーティング剤も手配します。
また、高所作業になる場合は足場や高所作業車、安全帯などの準備もしてください。
塗装するためのおすすめ装置は、ABAC温風低圧塗装機です。スプレーノズルは、φ0.3mmのものを推奨しています。ガラス面は塗装し過ぎたら塗りムラが目立ってしまうので、このような小口径のものを用います。
弊社が製造・販売しているガラス用光触媒コーティング剤は、「ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)」です。光触媒コーティング剤の分量は、弊社製品であれば1Lに対して、50m2の塗装が目安量です。メーカーにご確認ください。
塗装するための機材は、あらかじめ動作チェックをお願いします。また、現場の電源や水道、休憩場所についても確認しておいてください。場合によっては、近隣への説明も必要となります。
窓ガラスが高い位置にある物件は、足場を必要とすることもあります。その場合は、警察署で事前に道路使用許可を得ることが必要になります。
作業当日は、施工場所の1Fの地面には、窓ガラス清掃や塗装の機材が落下して、通行人に当たって怪我がないようにするために、コーンを設置したり、ガードマンで通行人の誘導をしたりする必要もあります。
2.天候の確認
作業は、雨や雪が降っていない日に行います。雨や雪の日は塗装作業ができませんので、別の日に変更します。
雨や雪は降っていなくても、風の強い日があります。多少の風の強い日は、ABAC温風低圧塗装機を用いていたら問題なく塗装できると思います。気象状況に合わせて作業を行ってください。
また、気温が氷点下になる場合には、光触媒コーティング剤が凍結することも考えられます。光触媒コーティング剤が凍結すると、液剤の組成が変化してしまって、品質が劣化する恐れがあります。特に冬場の塗装は、ご注意ください。
3.近隣の自動車などに養生(マスキング)
光触媒コーティング剤を塗装したときに、液剤が飛び散って近隣の自動車などに付着し、問題になることもあります。それを防ぐために、液剤が飛び散ってかかりそうな場所に養生(マスキング)します。その場合は、工事日の数日前に近隣へのご挨拶をして、工事の許可を得ておきます。
4.窓ガラスの入念な清掃
次に光触媒コーティング塗装を行う窓ガラスを入念に清掃します。窓ガラスの汚れ、油膜、シーリング材から出るシリコーンオイルを洗浄します。
光触媒の効果によって、窓ガラスの汚れが落ちるわけですから、すでに付着している汚れも落ちるように思われるかもしれません。しかし、窓ガラスに汚れや油膜が付着している状態では、光触媒コーティング剤が汚れや油膜といっしょに落ちてしまうため、光触媒による防汚効果が失われてしまいます。
洗剤には、中性洗剤やアルコールを用います。窓ガラスの清掃は、清掃業者に依頼する場合もありますが、その場合は清掃業者に洗浄液もしっかり落とすことをお願いしてください。
5.機材や光触媒コーティング剤の準備
窓ガラスを清掃している間に、光触媒コーティング塗装を行うための準備をします。
準備の内容は、塗装するための装置とガラス用光触媒コーティング剤、装置を動かすための電源です。
塗装機器に電源を接続し、装置のカップにガラス用光触媒コーティング剤に入れて準備完了です。弊社では、塗装作業中は念のため防塵マスクや防塵メガネの着用を推奨しています。
6.塗装の実施
温風低圧塗装機にて、窓ガラスにガラス用光触媒コーティング剤を塗装します。
塗装の方法は、ペンキをスプレーで塗装する要領と同じようなものですが、うまく塗装するコツとしては、薄く均一に塗装し、塗布し過ぎないことです。塗装方法を学びたい方は、弊社の施工講習会をご利用ください。
窓ガラスは透明であることが求められますが、うまく塗装しないと、塗りムラができたり、一部に塗り過ぎがあると、その部分が虹色のまだら模様になってしまい、景観を損ねてしまいます。窓ガラスへの塗装はテクニックが必要です。
塗装をしたら、すぐに乾きますが、これで塗装は完了です。
7.乾燥後に仕上がりをチェック
ガラス面の光触媒コーティング剤が乾いたら、仕上がりを確認してください。美しく仕上がったら、何も塗装していない状態と同じように透明なガラスに見えるはずです。
虹色になっている部分があれば、そこは塗り方を失敗した箇所になります。光の当たり方や加減によって、どうしても虹色に出てしまうこともあります。
弊社のガラス用光触媒コーティング剤「ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)」は、ガラスに強固に定着するので、塗装に失敗した場合は、コンパウンドで磨かないと落ちないほど耐久性があります。窓ガラスへの塗装は、特に丁寧に施工することが大事です。
8.養生の撤去と塗装装置の清掃
塗装が完了したら、養生や足場を撤去します。温風低圧塗装機は、水でタンクとスプレーノズルをすすいだ後に、専用の洗浄液(純水)を通して洗浄します。
スプレーノズルの洗浄を怠ると、ノズルの先端に光触媒の成分が付着して固まってしまい、ノズルが詰まってしまったり、次回以降の塗装に影響する場合があります。スプレーノズル洗浄は必ず行ってください。φ0.3mmという小口径のノズルを洗浄するために、φ0.3mm以下の細さの針金を用います。
弊社にて、ABAC温風塗装機のスプレーガンに用いるφ0.3mmのスプレーノズルと、洗浄用の針金(ノズル清掃針)を販売しているので、どうぞご利用ください。
窓ガラスの光触媒コーティング塗装で
使用する機材
窓ガラスに光触媒コーティング塗装をする場合は、次の機材や薬剤を用います。
- 窓ガラスの清掃用具
- 窓ガラス用光触媒コーティング剤
- 温風低圧塗装機と専用ノズル
- 電源コード
- ヘルメット、安全帯、防塵マスク、防塵メガネ、安全靴、空調ベスト
窓ガラスの清掃用具について
窓ガラスの清掃用具が必要なのは、光触媒コーティング塗装を行う前に窓ガラスの入念な清掃が必要だからです。
窓ガラスの汚れで、特にシーリング材からしみ出してくるシリコーンオイルを完全に落とすことが大事です。よくマンションやテナントビルなどで、清掃業者が窓ガラスをさっと拭いて清掃していますが、あの程度では汚れを完全に落とすことはできないことをご留意ください。
清掃業者に依頼した場合は、清掃用具はいりませんが、清掃のご担当者様に、窓ガラス用洗剤をしっかり洗い流してもらえるようにもお願いしてください。
窓ガラスを製造しているメーカーが、製造工程で光触媒コーティングを行う場合は、窓ガラスが汚れていないので清掃は必要ありません。
窓ガラス用の光触媒コーティング剤について
光触媒コーティング剤は、窓ガラス用を用いてください。外壁用や屋内用とは成分が異なり、窓ガラスに光触媒が定着したり、親水性を高めるための成分が含まれていることや、ガラス面の仕上がりが良くなるように光触媒の量を調整しているからです。
なお、窓ガラスの塗装前は、プライマーは使用しなくてかまいません。ガラスは無機物ですので、光触媒によって劣化しないからです。
ABAC温風低圧塗装機と専用スプレーノズルについて
光触媒コーティング剤の塗装は、専用の塗装機で行ってください。弊社では、ABAC温風低圧塗装機を推奨しています。
ABAC温風低圧塗装機は、スプレーノズルから噴霧された液剤の外側をエアーで保護しているので、光触媒コーティング剤が飛散しにくくガラス面に付着しやすくなります。塗着効率は約70%です。
また、弊社ではABAC温風低圧塗装機に装着できる、光触媒コーティング塗装専用のスプレーノズルの使用を推奨しています。ペンキを塗装するためのスプレーノズルよりも小口径なので、光触媒コーティング剤を塗装しやすくなっています。
窓ガラス用のスプレーノズルの口径は、φ0.3mmを推奨しています。
ABAC温風低圧塗装機と専用スプレーノズルの詳細は、業務用光触媒コーティング塗装に最適なスプレーガンと塗装装置をご覧ください。
弊社にて、ABAC温風低圧塗装機や光触媒コーティング塗装専用のスプレーノズルを販売しています。ABAC温風低圧塗装機の詳細は、ABAC温風低圧塗装機SG-91をご覧ください。
電源コードについて
電源コードは、温風低圧塗装機を稼働させるための電源を供給するために使用します。電源コードの最大電流値にご注意ください。送風圧量の強いABAC温風低圧塗装機「SG-2500」の電流は15A、小型のSG-91の電流は11.3Aを必要とします。
電源コードが使用できない場合は、AC電源装置を使用できるかもしれませんが、この場合も温風低圧塗装機の最大電流値と稼働時間にご注意ください。
安全帯、防塵マスク、防塵メガネ
高所作業でなければ安全帯は必要ございませんが、念のため準備しておいてください。防塵マスクや防塵メガネは、有機溶剤を使用していないので必要ないはずですが、念のため着用してください。
工事現場によっては、これらの装備がないと現場に入れてもらえない場合もあります。ご注意ください。
塗装の仕上がりを美しく塗装するための注意点
窓ガラスを光触媒コーティングするときに、仕上がりを美しく塗装するための注意点をご説明いたします。
窓ガラスの汚れや油膜をしっかり落とすこと
先ほどもご説明いたしましたが、光触媒コーティングをする前に、必ず窓ガラスにをしっかり清掃してください。
窓ガラスに汚れや油膜が付着したままですと、光触媒コーティング剤が窓ガラスに定着せず、汚れや油膜に塗布したことになります。汚れや油膜が流れてしまったら、それといっしょに光触媒コーティングも流れてしまうので、窓ガラスの防汚の耐久性が悪くなります。
また、窓ガラスの清掃のときは、清掃用の洗剤もしっかり洗い流してください。洗剤が付着していても、光触媒コーティング剤が窓ガラスに定着しない原因となります。特に、窓ガラスの清掃を業者に依頼する場合は、業者の方に洗剤も洗い流すことをお伝えください。
ガラス用光触媒コーティング剤を使用すること
窓ガラスを光触媒コーティングする場合の液剤は、光触媒コーティング剤であれば何でも良いわけではなく、必ずガラス用を用いてください。弊社のガラス用光触媒コーティング剤は、「ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)」です。
ガラス用光触媒コーティング剤の成分は、外壁用や屋内用のものとは成分が異なり、ガラス面に光触媒が定着しやすくなる成分や親水性が高まる成分が配合されています。弊社製品を塗装したら、10年以上、光触媒の効果が持続します。
光触媒コーティング剤を塗り過ぎないこと
最後の注意点は、ガラス用光触媒コーティング剤を塗り過ぎてしまわないことです。光触媒コーティング剤を塗り過ぎてしまったら、その部分の光の反射光が虹色になってしまい、景観を損ねてしまうからです。
光触媒の主成分である酸化チタンは、日焼け止めクリームや化粧品の白色の成分として入っています。どちらも白色に見えますが、それは光を乱反射しているからです。塗りむらがあると、塗装部が虹色に見えてしまうのです。
弊社の施工講習会でも、ガラス面の塗装を練習いたしますが、初めて窓ガラスに光触媒コーティング塗装をする場合は、本番前にガラス面の塗装を何度か練習することをおすすめします。
ビルの新築現場使用する窓ガラスに
あらかじめ塗装する場合
窓ガラスは高い場所に設置されるため、設置された後では光触媒コーティングが困難になります。そこで、窓ガラスのメーカーにて、製造された後工程で光触媒コーティング塗装をして、工事現場に持っていく場合もあります。
その場合は、移動途中や工事中に窓ガラスに触れる機会が多いと思いますが、そのときに「光触媒コーティング面を触ったら、光触媒が落ちてしまうのではないか?」と心配される方もいらっしゃいますが、ご安心ください。
弊社のガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)はガラスに強固に定着するので、触った程度では、光触媒コーティング剤が落ちることはありません。光触媒を落とそうとしたら、コンパウンドで塗装面を磨くぐらいのことをしないと落ちないほど定着します。
自動車の窓ガラスへの塗装は禁止
弊社の施工技術者になられたばかりの方が、自分の自動車の窓ガラスに施工したエピソードをご紹介いたします。
その方は、弊社からガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)を購入され、塗装の練習を兼ねて、自分の自動車の窓ガラスに塗装したそうです。すると、塗装に失敗して、自動車の窓ガラスがまだら模様に虹色に輝くようになってしまい、自動車の運転に支障をきたすようになってしまいました。
そのような状態での自動車の運転は危険です。この場合、自動車の窓ガラスをペースト状の研磨剤などのコンパウンドで研磨する必要があります。
弊社では、自動車の窓ガラスには、光触媒コーティング塗装を禁止としています。
光触媒コーティングを窓ガラスに塗装する方法や使用する機材、注意点などをご説明いたしました。
弊社は、光触媒コーティング剤のメーカーですが、塗装のご依頼を承っています。お気軽にご依頼ください。
また、これから光触媒コーティングを事業の一つとして取り入れたいとお考えの企業様には、各種光触媒コーティング剤を製造・販売していることはもちろんのこと、施工講習会にて施工方法をお教えしております。
光触媒コーティングのことなら、イリスにご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。