臭いが気になる場所は室内が多いと思います。室内の臭いを消臭する方法の一つに、光触媒コーティングがあります。
光触媒コーティングとは、光触媒成分を部屋の中にコーティングする施工のことです。
光触媒コーティングによって消臭できる臭いは、次のようなものがあります。
- トイレの臭い/尿やアンモニアの臭い
- ペットの臭い
- カビ臭
- タバコの臭い
- 油の臭い
- 生ごみの臭い
- 揮発性有機化合物(VOC)の臭い
- 加齢臭
- 靴や下駄箱の臭い
これらの臭いに共通することは、臭い成分が有機物であることです。光触媒は、有機物を分解する効果があるので、それによってこれらの臭いが消臭されます。
ただし、室内に光触媒コーティングをする場合は、光触媒コーティング剤に用いられている光触媒成分によっては、高い消臭効果を発揮しますが、まったく消臭効果の無いものもあります。
この記事では、光触媒が消臭するメカニズムや室内の消臭に効果的な光触媒成分、新車の臭いや揮発性有機化合物(VOC)の消臭を解説いたします。部屋の臭いが気になる方、消臭効果の高い光触媒コーティング剤を探している方は、しっかりお読みください。
光触媒が消臭するメカニズム
光触媒の意味と光触媒が臭いを消臭するメカニズムを解説します。
光触媒とは?
光触媒とは、光が当たると有機物を分解する性質を持つ成分で、さらには有機物を分解した後も成分が変性しないものです。ですので、光が当たり続けると、半永久的に有機物を分解し続けることができます。
臭いの成分は有機物ですから、光触媒に光が当たると、それに触れる臭いが酸化分解されて消臭されます。
臭いには有機物と無機物があります。冒頭でお伝えした有機物の臭いは、光触媒が活性化することで分解できます。アンモニアは光触媒で簡単に分解できますが、金属の臭いなどの無機物の臭いは、光触媒で分解することはできません。
光触媒が臭いを消臭するメカニズム
光触媒が臭いを消臭するメカニズムを具体的に説明いたします。次の図をご覧ください。
光触媒に光が当たると、光触媒から励起電子が飛び出してきます。励起電子は、他の物質と結合しやすい性質があります。
飛び出した励起電子が空気中の酸素分子O2と結合したら、O2–という陰イオンに変化します。これ自体も強い酸化力を持つ物質なので、臭い成分を酸化分解することもあります。これが臭い成分と結合しないで、空気中の水分子H2Oと結合すると、H2O2に変化します。
H2O2は、すぐに2個に分裂して、・OH(ヒドロキシルラジカル)が2個発生します。また、励起電子が飛び出した後には正孔が残りますが、これによっても・OHが発生します。これも強力な酸化力を持つ物質で、臭い成分と結合して、臭い成分を酸化分解してくれます。
そのようにして臭い成分が分解されて、消臭されていきます。
室内の消臭に効果的な光触媒成分
光触媒成分はたくさんの種類があります。「どの光触媒でも消臭効果があるのか?」ということですが、あることはあるのですが、効果の高さに差があります。条件によっては、消臭効果がまったく無い場合もあります。
光触媒が臭いを酸化分解できる条件
光触媒が臭いを酸化分解できるようになるためには、条件があります。その条件とは、もちろん光が当たることですが、どのような光でも良いわけではなく、光触媒の種類によって活性化する光エネルギーが異なります。
例えば、酸化チタン光触媒であれば、紫外線が当たると強い消臭効果が現れます。その効果の高さは、ほとんど最強クラスです。
ところが、臭いを消臭したい場所は、ほとんどの場合が屋内です。屋内では、直射日光が射しこんでいる箇所以外では、紫外線がほとんどありませんから、室内では酸化チタン光触媒は消臭効果がないとお考えください。
室内の光でも臭い成分を分解できる光触媒は、可視光応答型光触媒といわれる成分です。可視光応答型光触媒とは、人の目に見える光、つまりは蛍光灯やLED照明の光でも触媒の効果を発揮する成分です。
室内の臭いを分解したい場合は、可視光応答型光触媒を使用することが必須条件となります。
室内用光触媒コーティング剤として実用化されている光触媒成分
室内用光触媒コーティング剤として実用化されている可視光応答型光触媒の成分は、弊社が把握しているところでは、次の種類があります。
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 鉄ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
銅ドープ酸化チタンとは、酸化チタンをベースとして銅を添加した成分になります。ドープとは、光触媒の世界では「結合させた」という意味になります。専門用語では「担持」という言葉を使います。酸化チタンを光触媒の基材として、銅を助触媒として担持させたものが、銅ドープ酸化チタン(銅担持酸化チタン)です。
銅や窒素、鉄などを担持させると、今まで紫外線にしか活性化しなかった酸化チタンが、可視光でも活性化し、可視光応答型光触媒に変化します。
酸化タングステンは、それそのままで可視光応答型光触媒です。
光触媒は、成分によって活性化の強さが異なるため、「これらの種類のどれを使用しても良い」というわけにはいきません。「これらの中で、どの成分がもっとも消臭効果が高いのか?」ということになります。
これらの中で消臭効果の高い成分は銅ドープ酸化チタン
結論から述べると、もっとも消臭効果の高い光触媒は、銅ドープ酸化チタンです。
窒素ドープ酸化チタンや酸化タングステンでも臭いを消臭できますが、効果があまり感じられない場合もあります。銅ドープ酸化チタンは、窒素ドープ酸化チタンや酸化タングステンと比べて、数倍の効果の高さがあります。
もう一つの鉄ドープ酸化チタンは、確かに可視光応答型光触媒なのですが、弊社が試作して試験したときは、効果はほとんどありませんでした。実用化されている鉄ドープ酸化チタンは、何か特別な加工がなされていて、効果が高められていることと信じたいです。
さて、銅ドープ酸化チタンは、可視光下でもっとも消臭効果が高いのですが、もちろん紫外線が当たると、さらに高い消臭効果を示します。
銅ドープ酸化チタンは暗所でも消臭ができる
さらには、暗所でも消臭効果があります。通常、光触媒は光が当たらないと消臭効果を発揮しませんが、銅ドープ酸化チタンは暗所でも消臭効果を発揮するのです。
その理由はまだ解明できていませんが、おそらくナノサイズの酸化銅が常温でも強い触媒の効果を発揮しているためだと考えます。
靴の中や下駄箱の中を消臭しようとしたら、そこは暗闇になりますから、銅ドープ酸化チタンでしか消臭ができません。
また、エアコンフィルターに光触媒加工をして、室内の臭いを消臭したい場合にも、暗所でも消臭効果のある銅ドープ酸化チタンの利用が最適です。
化学物質の臭いの分解
銅ドープ酸化チタンのさらなる魅力について解説いたします。
化学物質の臭い成分とは?
新築住宅では、室内に入ると化学物質の臭いがします。この臭いによって、頭痛やめまいがする人もいるようです。そのような症状を、シックハウスといいます。
シックハウス対策としては、ホルムアルデヒドが揮発しにくい建材を使ったり、24時間換気をしたりといったことをしていますが、過敏な方はもっと対策をしたいことでしょう。なぜなら、シックハウスの原因は、ホルムアルデヒドだけではないからです。
代表的なものとしては、アセトアルデヒドやトルエン、キシレン、スチレンといった成分です。こういった化学物質が揮発して、シックハウスの原因となるようです。
このような揮発してくる化学物質のことを、揮発性有機化合物(VOC)といいます。VOCは有機物ですから、光触媒によって分解対象となります。
VOCの分解も銅ドープ酸化チタン
VOCの分解で光触媒を利用しようとする方は、少なからずいらっしゃいます。しかし、可視光応答型光触媒でも成分によって効果の差があるように、光触媒成分によってVOCの分解能力にも差があります。
トルエンやキシレンなどといったベンゼン環を持つVOCは、酸化チタンに紫外線を照射しても分解が難しいとされています。酸化チタンに紫外線を照射すると、VOC以外の臭いは強力に分解できるのですが、VOCの分解は苦手なようです。
それに対して、銅ドープ酸化チタンであれば、ベンゼン環を持つVOCでも簡単に分解してします。銅ドープ酸化チタンによるVOCの分解については、「揮発性有機化合物(VOC)を分解できる光触媒成分とは?」をご参照ください。
新車の臭いの消臭で利用できる光触媒コーティング剤
VOCは何も新築住宅だけではありません。新車の臭いもVOCが原因です。
新築住宅であれば、銅ドープ酸化チタンを使った屋内用光触媒コーティング剤を塗装したら良いのですが、自動車の場合には屋内用光触媒コーティング剤が利用できない場合があります。その理由は、自動車の車内は黒色の内装だからです。
黒色の内装に、光触媒コーティング塗装をしたら、液剤の種類によっては黒色のところに光触媒成分の白色が出てしまって、自動車の装飾性が損なわれてしまいます。
また、自動車の車内は、紫外線カットガラスが用いられていても、直射日光という強い光が入りますから、光触媒の性質が強く出過ぎてしまいます。すると、臭いの分解だけでなく、有機物であるプラスチック類をも分解し劣化させてしまう恐れがあります。
新車の臭いを消臭したい場合には、あらかじめ下地を光触媒による劣化から防止する下地材(プライマー)を塗装してから、銅ドープ酸化チタンを使った自動車用光触媒コーティング剤を塗装してください。
光触媒コーティング施工の方法
光触媒コーティング施工は、光触媒コーティング剤を専用の塗装装置を使って、部屋の中に塗装します。そのため、ご自宅を光触媒コーティング施工したい場合は、専門業者に依頼することになります。
弊社では、専用の塗装装置としてABAC温風低圧塗装機と小口径のスプレーノズルの利用を推奨しています。
光触媒コーティング剤の塗装は、次のような箇所に行ないます。
- 壁紙
- 天井
- トイレ
- ユニットバスのパネル
- 下駄箱の中
- 押し入れやクローゼットの中
- カーテン
これらの中で直射日光が当たる箇所には、あらかじめ下地剤(プライマー)を塗装しておきます。その理由は、新車の消臭のところで解説したように、光触媒によって塗装面が劣化しないようにするためです。
施工方法の詳細やプライマーの利用については、「【内装の光触媒塗装】光触媒コーティング剤の塗装方法」をご参照ください。
工場から出るVOCの臭いを分解したい場合
工場から出るVOCの臭いを分解したい場合は、銅ドープ酸化チタンを使ったVOC消臭フィルターやVOC消臭装置をご検討ください。
排気ダクトのVOC消臭ならVOC消臭フィルターの設置
VOC消臭フィルターの構造は簡単です。ステンレスメッシュに銅ドープ酸化チタンをコーティング加工します。それを排気ダクトのチャンバーに挿入し、紫外線ランプを設置します。
銅ドープ酸化チタンは、暗所でもVOCを分解してくれますが、紫外線を照射したら、より効率的にVOCを分解してくれるようになります。
VOC消臭フィルターではなく、銅ドープ酸化チタンを加工した活性炭でもかまいません。弊社は、活性炭の表面を光触媒コーティングする特許技術を持っているので、お気軽にご相談ください。
工場内のVOC消臭ならVOC分解装置の設置
工場内のVOC消臭であれば、銅ドープ酸化チタンを使ったVOC分解装置を設置すると良いでしょう。
その装置の構造は、いたって簡単です。箱の中に銅ドープ酸化チタンで加工されたVOC消臭フィルターや活性炭を入れ、紫外線を照射し、そこに工場内の空気を循環させるだけです。
市販されている触媒を使ったVOC分解装置では、触媒を高温に加熱したり、VOC消臭剤を噴霧したりして、ランニングコストがかかってしまいます。
それに対して銅ドープ酸化チタンを使ったVOC分解装置は、コストは送風機と紫外線ランプの電源のみです。
以上、光触媒による臭いの分解について解説いたしました。光触媒による消臭は、銅ドープ酸化チタンを使うことが、もっとも効果的であることを、ご理解いただけたと思います。
弊社が製造している銅ドープ酸化チタンを使った業務用光触媒製品は、次の3種類です。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、室内の臭いの消臭に最適です。除菌や防カビもできます。この製品の施工ご依頼は、弊社もしくは弊社製品を扱う塗装業者にご依頼ください。室内塗装に対応してくれる塗装業者一覧は、室内の光触媒コーティング施工代理店をご覧ください。
車用光触媒コーティング剤(BXR02-C)は自動車の内装用に開発したものです。某自動車メーカーの高級車にも純正品として採用されている実力です。自動車への施工のご依頼は、弊社もしくは自動車内装の光触媒コーティング施工代理店にある塗装業者にご相談ください。
業務用消臭剤(BRE025-AB2)は、コーティングではなく臭いが気になる箇所に手軽にスプレーできる製品です。
製品のお問い合わせやご購入、施工依頼は、弊社までお気軽にご連絡ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。