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光触媒は光がないと効果ないの?銅担持酸化チタンのみ効果があります

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光触媒は光がないと効果ないの?銅担持酸化チタンのみ効果があります

一般的な光触媒は、光が当たることで抗菌や消臭といった効果が発揮されます。

ところが、中には光が当たっていなくても、抗菌や消臭ができる光触媒があります。

そのような光触媒の中で、コーティング剤として実用化されている成分は、銅担持酸化チタン(銅ドープ酸化チタン)と言われるものです。

担持の読み方は「たんじ」で、「結合させた」という意味です。

この記事では、光触媒の抗菌や消臭のメカニズム、一般的な光触媒が効果を発揮する光の種類について、また光がなくても効果を発揮する銅担持酸化チタンとその利用方法について解説いたします。

光触媒を使って、室内を抗菌や消臭をしたい方、効果の無い製品を選びたくない方は、ぜひ最後までご覧ください。

光触媒の抗菌・消臭メカニズム

最初に光触媒によって抗菌や消臭ができるメカニズムを解説いたします。

光触媒とは?

そもそも光触媒とは何でしょうか?

光触媒とは、光が当たることで触媒効果を発揮する成分のことです。触媒効果とは、触れているものを化学変化させる性質がありますが、成分そのものは化学変化しないものです。そのため、半永久的な効果が期待できます。

光触媒による触媒効果は、酸化分解です。光触媒に光が当たり、活性化すると、それに触れているものを酸化分解します。

例えば、細菌類であればその表面の成分や突起、細胞壁などが酸化分解されて、細菌類の活動が抑制されたり、死滅したりします。

臭いの消臭も同様です。臭い成分は細菌類よりも微細な成分ですから、光触媒によって瞬時に酸化分解されることがあります。ただし、光触媒によって分解されやすい臭いと、されにくい臭いがあることを、述べておきたいと思います。

光触媒での抗菌・消臭はOHラジカルの効果

光触媒によって抗菌や消臭ができる理由は、光触媒の表面に発生するOHラジカルによるものです。OHラジカルは強い酸化力を持つ活性酸素で、それに触れるものを酸化分解する性質を持ちます。

光触媒からOHラジカルが発生するメカニズムは、次の図をご覧ください。

光触媒の消臭成分OHラジカルが発生するメカニズム

光触媒に光が当たることによって、励起電子が放出され、それが空気中の酸素分子と結合します。それ自体が活性酸素としても機能しますが、空気中の水分子と結合して過酸化水素(H2O2)が発生します。

過酸化水素は空気中ではすぐに2つに分離して、OHラジカル(・OH)に変化します。このようにして、OHラジカルが発生します。

一般的な光触媒は光が当たらないと効果なし

一言で光触媒と言っても、たくさんの種類があります。代表的な光触媒成分である酸化チタンをはじめ、酸化チタンに重金属を結合させた成分や酸化タングステンといったものもあります。それぞれ性質が異なりますから、それぞれの用途に適した光触媒成分を選ぶことが大切です。

酸化チタンには紫外線

代表的な光触媒成分の酸化チタンは、紫外線が当たることで活性化し、OHラジカルが発生します。紫外線は、直射日光に多く含まれ、室内環境では紫外線ランプなどを用いなければ、ほとんど存在しません。

酸化チタンが効果を発揮する場所は屋外になります。

室内用途として酸化チタンを使った光触媒製品も存在しますが、純粋な酸化チタンであれば室内はほとんど効果がありません。酸化チタンを特殊加工されたものであれば、室内でも効果があるものも存在します。

酸化チタンは紫外線でないとほとんど反応しない

可視光で活性化する可視光応答型光触媒

室内で効果のある光触媒は、蛍光灯やLED照明といった電灯の明かりによって反応する光触媒成分です。電灯の明かりは、目に見える光ということで、可視光と言われています。可視光で活性化して効果を発揮する光触媒のことを、可視光応答型光触媒といいます。

光触媒製品を使って室内の抗菌や消臭をしたい場合には、最低でも可視光応答型光触媒を利用することが大切です。可視光応答型光触媒でないと、室内では効果がほとんど無いからです。

可視光応答型光触媒の種類

市販されている光触媒製品として実用化されている可視光応答型光触媒の種類は、主に次のものがあります。

  • 銅担持酸化チタン
  • 窒素担持酸化チタン
  • 鉄担持酸化チタン
  • 酸化タングステン

ここで「担持(たんじ)」とは、「結合させた」という意味です。銅担持酸化チタンは、アナターゼ酸化チタン結晶の表面にナノサイズの酸化銅を結合させた光触媒です。酸化チタンは紫外線にしか反応しませんが、銅を担持させることによって紫色や青色、水色(シアン)といった可視光にも反応し、抗菌や消臭といった効果を発揮するようになります。

酸化タングステンは、それそのままで可視光応答型光触媒です。

可視光応答型光触媒の中でどれがもっとも効果が高いのか?

可視光応答型光触媒はいくつかの種類がありますが、どれも同じ効果ではありません。上記の種類の中で、もっとも効果が高い成分は銅担持酸化チタンです。

銅担持酸化チタンと他の光触媒を、室内の明るさの光を当てて比較すると、次の図のように比べものにならないくらいの差があります。

銅担持酸化チタンの効果を100としたときの他の光触媒との効果比較

銅担持酸化チタンだけ光がなくても効果あり

銅担持酸化チタンだけ、特別に高い抗菌力や消臭力を持っているわけですが、その理由は光が当たっていなくても触媒効果を発揮するからです。

銅担持酸化チタンとは?

酸化チタン結晶にナノサイズの酸化銅を結合

ここで、もう少し詳しく銅担持酸化チタンについて解説したいと思います。銅担持酸化チタンという難しい用語ですが、ぜひとも覚えてもらいたいからです。

酸化チタンには、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型といった結晶構造があります。それらの中でアナターゼ型が光触媒製品によく利用されています。

アナターゼ酸化チタンは、先ほど解説したように「紫外線以外はほとんど反応しない」という性質があります。アナターゼ酸化チタンが活性化したら、強い抗菌や消臭といった効果が発揮されるわけですから、なんとか室内の光でアナターゼ酸化チタンが活性化しないか、20年以上前に光触媒の業界で研究されました。

当時としては、夢のような研究でしたが、弊社はその研究にいち早く取り組みました。その結果、弊社が銅担持酸化チタンを世界で初めて開発し、製造特許を取得しました。

光触媒製品に利用されるアナターゼ酸化チタンは、ナノサイズの微粉末を利用します。その微粉末を液剤にしたものに銅を加え、特殊製法にてアナターゼ酸化チタンの表面にナノサイズの酸化銅を結合させることに成功しました。その成分は、可視光でも強い反応を示すことが判りました。

銅担持酸化チタンを使った光触媒液剤を発表したところ、さまざまな研究機関から反響があり、銅担持酸化チタンの効果の高さやメカニズムが解明されました。当時の銅担持酸化チタンの研究については、東京大学のホームページ「光触媒の新世界、市場との対話が生んだブレークスルー」が参考になります。

銅担持酸化チタンが持つ高い性能

さて、弊社が銅担持酸化チタンを開発し、さまざまな試験を行っておりますが、その効果の高さに開発をした私自身も驚いてしまったことがあります。それは、弱い光でも抗菌や消臭が出来るという効果だけでなく、次のような性質があったからです。

  • 光が当たっていない暗闇でも抗菌や消臭ができる
  • 酸化チタンでも分解が難しい化学物質を分解できる
直射日光、明るい部屋、薄暗い部屋、消灯した部屋のそれぞれの部屋で効果のある光触媒の種類

これらの性質から、本当にたくさんの用途が考えられます。そして、これまで室内の抗菌や抗ウイルス、防カビ、消臭といった用途の光触媒コーティング剤を開発したり、大手自動車メーカー様からのご依頼で車内用抗菌・消臭コーティング剤を開発したり、化学メーカー様からの化学物質の分解をご依頼いただいたりと、さまざまなご要望にお応えしてきました。

銅担持酸化チタンにて分解できることを確認した化学物質や臭い成分は次のようなものがあります。

  • アンモニア
  • ホルムアルデヒド
  • アセトアルデヒド
  • エチレン
  • トルエン
  • キシレン
  • スチレン
  • イソプロパノール
  • 酢酸
  • トリメチルアミン
  • メチルメルカプタン
  • アルコール類
  • 2-ノネナール(加齢臭)
  • スパイスやニンニクの臭い
  • 香水の臭い

他にもたくさんございますが、これらの中にはベンゼン環を持つVOCも含まれていますから、ベンゼン環を分解できるということは、芳香族系なら何でも分解できることを示唆します。

銅担持酸化チタンの利用方法

銅担持酸化チタンを利用する方法は、次の3種類が主な方法となります。

  • 光触媒コーティング塗装
  • 光触媒スプレー
  • 光触媒加工

ちなみに銅担持酸化チタンが入った光触媒塗料は、今現在のところ存在しません。光触媒塗料とは、ペンキのような顔料の入った塗料に光触媒成分が添加された製品のことです。

光触媒コーティング塗装

光触媒コーティング塗装とは、光触媒コーティング剤を塗装する施工方法です。光触媒コーティング剤とは、光触媒成分と接着成分(バインダー)が入った、クリア塗装ができる液剤のことです。

銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティング剤は、弊社の製品であれば、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を使用します。

屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の1Lボトル、5Lまたは10Lバロンボックス

光触媒コーティング塗装は、主に室内に利用されます。よくご利用いただく部屋としては

  • 戸建てやマンションのトイレ、バスルーム、キッチン、リビング、玄関、下駄箱、押し入れ、地下室
  • オフィスの部屋やトイレ、更衣室
  • ホテルの客室や厨房
  • 飲食店のトイレやテーブル
  • 学校の教室や給食室
  • 病院やクリニックの診察室や病室、待合室

次のような施工箇所にもよくご利用いただいています。

  • エアコン内部
  • 遮光カーテンやレースカーテン、シャワーカーテン
  • ソファーやクッション
  • テーブル
  • タイルカーペット
  • マットレスや枕
  • ブーツや革靴、スポーツシューズの中
  • 剣道の小手やボクシンググローブ

屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の耐久性は、10年以上です。天井などの摩擦のない場所であれば、20年以上効果が持続した実績もあります。

特殊な用途としては、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を外壁に利用されることもあります。外壁でも北側の外壁や、隣の建物が隣接していて、外壁にカビやコケが発生する場所に利用されます。そういった外壁は、直射日光が当たりませんから、酸化チタンコーティングをしても効果がありませんので、銅担持酸化チタンが用いられます。

外壁への銅担持酸化チタンコーティングのご利用は、「外壁の緑汚れの原因と光触媒コーティングによる防止策」をご参照ください。

光触媒スプレー

光触媒スプレーのアキュートクリーンとアキュートクリーン詰め替え(リフィル)

光触媒スプレーとは、銅担持酸化チタンなどの光触媒成分が入った液剤がスプレーボトルに入った製品です。光触媒コーティング剤とは異なり、接着成分が入っていませんから、ご家庭でも手軽に除菌や消臭ができます。

室内でのご利用では、銅担持酸化チタンを使用した光触媒スプレーを選ばれることは、述べるまでもありません。

弊社の製品は、光触媒スプレー「アキュートクリーン」という名称で販売しております。

アキュートクリーンの特長は次の通りです。

  • ご家庭でも手軽に利用できるスプレータイプ
  • 銅担持酸化チタンを使っているので、室内でも高い除菌・消臭効果を発揮
  • 液剤が臭い成分を包み込み、銅担持酸化チタンが無臭の成分に分解する
  • ノンアルコール、無香料
  • スリムボトルで落ち運びにも便利
  • 光触媒コーティング剤をする前に銅担持酸化チタンの効果を手軽に試すことができる

ドラッグストアにはいくつもの種類の消臭スプレーが市販されています。光触媒スプレーは、臭いそのものを分解するので、そのような臭いを包み込むだけの芳香剤の入った消臭スプレーよりも、圧倒的に消臭効果が高いと言えます。

光触媒加工

光触媒加工とは、光触媒コーティング塗装と似ていますが、加工をして製品を製造するイメージです。

光触媒加工された製品でよくあるものが、光触媒観葉植物です。人工観葉植物の表面を光触媒加工した製品です。光触媒観葉植物は、室内で利用するものですから、もちろん銅担持酸化チタンを加工したものが、消臭効果を期待できるわけです。

光触媒加工には、他にも化学物質の分解で利用されることがあります。弊社にて取り組んだ実績のあるものは、VOCやアルコール類を分解できるフィルターや光触媒加工された活性炭の製造です。銅担持酸化チタンは、先ほどご説明したようにトルエンやキシレン、スチレンといったベンゼン環を持つVOCをも分解できる性質があるので、化学メーカー様や塗料を利用される企業様からよくお問い合わせをいただきます。

ステンレスメッシュなどに銅担持酸化チタンを加工したものを、排気チャンバーの中に設置して、紫外線ランプを照射することで、VOCの分解が容易に行えます。VOC脱臭装置への応用も可能です。

銅担持酸化チタンによるVOCの分解については、「揮発性有機化合物(VOC)を分解できる光触媒成分とは?」をご参照ください。

活性炭は、VOCの吸着などに利用されますが、活性炭に光触媒加工したものを利用すると、活性炭が半永久的に利用できるという、禁断の活性炭になります。ご要望があれば、弊社でも光触媒活性炭を製造いたしますので、お気軽にご相談ください。

以上、光がなくても効果のある銅担持酸化チタンについて解説いたしました。

光触媒は用途に応じて効果のある成分が異なります。ここでご紹介したように、屋内利用やVOCの分解では、銅担持酸化チタンをご利用ください。

弊社では、銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティング剤の販売や施工、光触媒スプレーの販売、光触媒加工の請負を行っております。光触媒コーティング施工のご依頼は、弊社もしくは弊社の製品を扱う施工代理店にご相談ください。

銅担持酸化チタンを使った室内コーティング塗装に対応する施工代理店一覧は、こちらのページになります。ご連絡をお待ちしております。

この記事の著者/責任者

島田幸一

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。

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