光触媒コーティングをすると、塗装面に除菌や防カビ、消臭などといった、さまざまな機能を付加することができます。
光触媒の機能には、セルフクリーニングによる防汚効果もあります。セルフクリーニングとは、光触媒が自分自身の力で汚れを落としてくれる機能のことです。
この機能は水の流れによって汚れが落ちるので、外壁や窓ガラスに利用されます。
外壁や窓ガラスを光触媒コーティングしておけば、セルフクリーニング効果によって、掃除をしなくても雨水によって汚れが落ちていきます。塗装面に水滴の跡が残りにくくもなります。
この記事では、セルフクリーニングのメカニズムを解説しつつ、光触媒の防汚効果や、光触媒コーティングをしても汚れが目立つ場合の原因を説明いたします。どのような塗料を外壁や窓ガラスに塗装したら良いのか、検討するための知識にもなると思います。
光触媒によるセルフクリーニングのメカニズム
セルフクリーニングを説明する前に、外壁や窓ガラスが汚れる原因をご説明します。
空気中には、目に見えないくらいの油分が浮遊しています。自動車の排気ガスに含まれる油分や、料理をしたときの蒸発した油分が主なものだと思います。
それらが外壁に付着すると、その粘性によって、空気中の汚れをくっつけてしまいます。そのために、飲食店の換気扇の排気口のところは黒くなっています。
セルフクリーニングとは、自ら汚れを落としてくれる光触媒の機能の一つです。汚れが落ちるメカニズムは、次の図をご覧ください。
1.光触媒塗装面に雨水が馴染む
光触媒は水と馴染む性質があります。水と馴染むということは、水をはじくことと反対の性質です。この性質のことを、「親水性」といいます。
光触媒は、親水性だけでなく、有機物を分解する効果もあります。塗装面に付着した目に見える汚れを分解するほどの強さはありませんが、目に見えないくらいの汚れでしたら分解されます。
また、さきほどご説明した汚れの原因となる油分を少しずつ分解してくれます。すると、汚れが落ちやすい状態になります。
2.光触媒塗装面と汚れの間に雨水が入り込む
光触媒の塗装面に馴染んだ水が、光触媒と汚れの接触面に流れ込みます。すると、汚れが浮き上がってきます。
油汚れが壁面やガラス面に付着すると、汚れを落とすことは困難です。もともと光触媒の効果によって分解されていた汚れなので、水の流れだけで浮き上がってきます。
3.雨水といっしょに汚れが落ちていく
浮き上がった汚れは、そのまま雨水の流れといっしょに落ちていきます。
光触媒を塗装しておくと、汚れが勝手に落ちてくれるので、この機能のことを「セルフクリーニング」という名称で呼ばれています。
ここで、雨水が無いと汚れが落ちないことにご留意ください。
光触媒によるセルフクリーニングのメリット
セルフクリーニングが求められる箇所は、外壁や窓ガラスです。光触媒によるセルフクリーニングのメリットをまとめると、次のようなことです。
- 光触媒の塗装面の汚れが雨水といっしょに落ちていく
- 光触媒の親水性によって水が塗装面に馴染むので、雨水が乾いても水滴の跡が付きにくい
- 光触媒の菌類を分解する効果によって、カビが発生しにくい
- 外壁や窓ガラスの清掃頻度が少なくて済み、清掃のコストを抑えられる
高層ビルやタワーマンションなどの、外壁や窓ガラスの清掃が難しい場所では、清掃の費用が高くなりがちです。そういった場所の清掃コストの削減には、光触媒コーティングがおすすめです。
光触媒コーティングをしても
汚れが目立つ場合の原因とは?
外壁や窓ガラスなどに光触媒コーティングをしても、汚れが目立つ場合があります。その原因は、次のパターンです。
- 雨が降らない
- 雨水が壁面に当たらない
- 使用した塗料の光触媒効果が弱い
- 日光が当たらない
- 光触媒の効果が弱まった
1.雨が降らない
1つ目は、雨が降らないのでセルフクリーニング機能が働かないパターンです。
雨が降らないと、光触媒コーティングをしていても、汚れが目立ってきます。この場合は、水で壁面をブラッシングで洗い流すことをしてください。
2.雨水が壁面に当たらない
2つ目は、光触媒コーティングした壁面に雨水が当たらないパターンです。
雨が降っても、塗装面に雨水が当たらなければセルフクリーニング効果が発揮されません。この場合も、汚れが目立ってきたら水をかけて、ブラッシングして洗い流してください。簡単に汚れが落ちると思います。
3.使用した塗料の光触媒効果が弱い
3つ目は、光触媒コーティング塗料の効果が弱いパターンです。
塗料によっては、光触媒の成分量を抑えて、塗装面を劣化させないように、わざと弱くしている塗料があります。そういった塗料を利用した場合は、セルフクリーニング効果が弱いために、汚れが落ちにくいです。
4.日光が当たらない
4つ目は、日光が当たらない場合です。
外壁用の光触媒コーティング剤には、主に酸化チタンが用いられています。酸化チタンは、日光が当たると汚れを分解する効果が強く発揮されるのですが、日光が当たらない場合には効果がまったく出ません。その場合は、セルフクリーニング機能が働きにくくなります。
また、日光が当たらない場所では、ジメジメした場所が多いので、カビやコケが発生して、そういった汚れが目立ってくることもあります。
5.光触媒コーティングの効果が弱まった
最後は、光触媒コーティングの効果が弱まってしまった場合です。
光触媒成分は基本的には、半永久的に効果が持続するものですが、光触媒コーティングではいずれ経年劣化していき、光触媒成分が少しずつ落ちていきます。そうすると、セルフクリーニング効果が弱まっていき、所々汚れが目立ってくることがあります。
その場合は、光触媒コーティングの塗り直しをします。建物の大規模改修のタイミングに合わせて、塗り直しをすることをおすすめします。
塗装場所別、光触媒コーティング剤の選び方
セルフクリーニングをしたい場所別に、どのような光触媒コーティング剤を選べばよいのかご説明します。
外壁のセルフクリーニングなら「酸化チタン」
外壁をセルフクリーニングさせたい場合は、酸化チタンを使った光触媒コーティング剤がおすすめです。
酸化チタンは、太陽光が当たる場所であれば、強い光触媒効果が得られるので、外壁を美しく保ってくれます。
次の写真をご覧ください。この写真は、タイルの外壁にて中央付近を境に、右側には酸化チタン光触媒コーティングを塗装した面、左側は塗装しなかった面で、10年が経過したものです。
この建物は海辺にある建物で、塩の影響もあって、無塗装側はかなり汚れが目立っています。ところが、右側の酸化チタン光触媒コーティング塗装をした面は、日光がよく当たることおあり、セルフクリーニング機能が働いて、汚れがあまり目立っていません。
弊社の製品は、屋外用光触媒コーティング剤(BX01)です。
この光触媒コーティング剤は10~20年、もしくはそれ以上の効果が持続する、高い耐久性を有している製品です。外壁塗装は足場を組んで行うので、光触媒施工単体ですと、施工費用が高くなります。耐久性が高い製品を、大規模修繕のタイミングに合わせて再塗装をすることをおすすめします。
窓ガラスのセルフクリーニングなら「酸化チタン+酸化タングステン」
窓ガラスは、部屋の中から明るい外を見るものなので、汚れが目に入りやすくなります。そのため、光触媒には高いセルフクリーニング効果が求められます。
酸化チタンだけですと親水性が若干弱いので、汚れが目立ってしまうことがあります。そこで、酸化チタンに酸化タングステンを加え、親水性を高めた光触媒コーティング剤を用いることをおすすめします。
酸化タングステンは、これも光触媒成分なのですが、酸化チタンと比べて有機物を分解する力が弱くなります。しかし、窓ガラスは外壁と比べて平らな面なので、汚れが付着しにくいため、親水性を高めた方が、防汚効果が高くなります。
弊社製品は、ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)です。
この製品は、10年以上の耐久性があります。太陽光パネルのガラス面にもこちらの製品をご利用ください。
日光が当たらない外壁の防汚なら「銅ドープ酸化チタン」
先ほど、外壁には酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を用いることをおすすめしましたが、酸化チタンは日光が当たらない場所では、光触媒効果がありません。
そのため、日光が当たらない外壁では、カビやコケが発生して、汚れが付着していってしまいます。
そこで、日光が当たらない外壁の防汚には、日光が当たらなくても高い光触媒効果を発揮する成分を用いた光触媒コーティング剤を使用します。その成分とは、「銅ドープ酸化チタン」です。
銅ドープ酸化チタンは、可視光でも高い光触媒効果を発揮するので、薄暗い場所でもカビやコケの発生を抑制してくれます。
銅ドープ酸化チタンを使った弊社の製品は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
屋内用という名称ですが、外壁にも使用できます。耐久性は、室内では10年以上の耐久性としていますが、外壁は触ったり掃除したりすることがないので、10年以上は効果が持続すると思われます。
以上、外壁や窓ガラスの光触媒コーティングによるセルフクリーニングについてメカニズムや光触媒コーティング剤の選び方などをご説明いたしました。
セルフクリーニングとは、光触媒の効果によって雨水で光触媒塗装面の汚れを落としてくれる効果のことです。雨水が当たらないとセルフクリーニング機能が働かないので、晴天が続くようであれば、汚れが付着したままになることもあります。その汚れを落としたい場合は、水をかけてブラッシングしてください。汚れがすぐに落ちると思います。
外壁や窓ガラスに効果の高い光触媒コーティング施工をご希望の方は、ぜひ弊社もしくは弊社製品を扱う施工代理店までご相談ください。施工代理店一覧は、こちらのページです
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。