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光触媒による消臭を徹底解説

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光触媒による消臭を徹底解説

光触媒とは、光エネルギーを受けると有機物を分解する力を発揮する成分です。工業用だけでなく、一般家庭にも広く利用されています。

光触媒は、除菌や消臭、防汚といった効果があります。

この記事では、光触媒の消臭力に特化して、光触媒でどのような消臭ができるのか、光触媒による消臭のメカニズム、光触媒で消臭ができる製品、室内でも消臭効果の高い光触媒成分について、VOCなどの化学物質の消臭方法など、光触媒の消臭について全般的に解説します。

光触媒の消臭について詳しく知りたい方、光触媒を研究されている方、光触媒を使った製品を開発したい方はぜひご覧ください。

光触媒でどのような臭いが
消臭ができるのか?できないのか?

まずは、光触媒でどのような臭いが消臭できるのか、できないのかを解説します。

消臭できる臭い

光触媒で消臭ができる成分は、次のような有機物の臭いです。有機物とは、炭素や窒素などを含む化合物のことです。

  • 生ごみの臭い
  • カビの臭い
  • 油の臭い
  • タバコの臭い
  • 加齢臭
  • ペットの臭い
  • ホルムアルデヒドなどの石油系の化学物質の臭い
  • 新築物件の室内の臭い
  • 新車の車内の臭い
  • アンモニア臭
  • 特殊清掃後に残ってしまった臭い

ただし、光触媒が臭いを消臭ができるためには条件があります。それは、もちろん光が当たっていることが条件の一つですが、他にも「室内の光でも消臭効果を発揮する成分を用いること」という条件もあります。それらの条件に合致しない場合には、消臭の効果がまったく無い場合もあります。その条件については、後ほど解説します。

消臭できない臭い(消臭し切れない場合)

光触媒で消臭できない臭いは、無機物の臭いと、臭いの発生量が多くて分解が追い付かない場合です。

  • 金属の臭いなど、無機物の臭い
  • 臭いの発生量が多く、分解し切れない場合

光触媒は有機物を分解できる性質を持っているのですが、臭いの発生量があまりにも多いときには、その臭いを分解し切れないために、臭いが残ったように感じることがあります。ただし、臭いを分解する時間の制限が無くなれば、いずれは消臭ができます。

また、光触媒によって臭いの発生源を分解することができますが、臭いの発生源の大きさによって、分解しきれない場合もあります。

光触媒による消臭のメカニズム

光触媒が臭いを消臭するメカニズムを解説します。少し専門的な話になるので、読み飛ばしていただいてもかまいません。要するに、光触媒に光が当たると活性酸素が発生し、それによって臭いが分解されるということです。

光触媒に光が当たると活性酸素「OHラジカル」が発生

光触媒に光が当たり、光エネルギーを吸収すると、そのエネルギーが電子を飛び出させます。飛び出した電子のことを、励起電子といいます。励起電子は、強いエネルギーを持っているので、空気中の酸素分子(O2)と結合して、O2マイナスに変化させます。これはマイナスイオンの一種です。

O2マイナスは、空気中の水(H2O)と結合して、過酸化水素(H2O2)に変化します。過酸化水素は、強い酸化剤として知られている成分で、怪我をしたときに利用される消毒液オキシドールという名称でも有名です。

過酸化水素は水素原子が2個、酸素原子が2個結合したもので、さらにはそれが2つに分離して、OHラジカル(ヒドロキシルラジカル)という強い酸化力を持つ成分に変化します。

光触媒の消臭成分OHラジカルが発生するメカニズム

また、励起電子が飛び出した後には、正孔が残りますが、この正孔も空気中の水と反応して、OHラジカルを発生させます。

OHラジカルが臭い成分を酸化分解

OHラジカルは、強い酸化力を持っているのですが、一瞬で別の物質と結合してしまうので、すぐに消えてしまいます。それだけ酸化力が強いのです。

その一瞬の間に、臭い成分と結合したら、臭い成分が一瞬で酸化分解されます。OHラジカルと結合すると、水と二酸化炭素に変化していきます。水や二酸化炭素は無臭ですから、臭いが消臭されるわけです。

カビの臭いは、OHラジカルがカビそのものを分解して臭いを消臭します。

このように、光触媒からOHラジカルが発生すると消臭ができますが、光触媒成分からOHラジカルが発生するための条件があります。その条件を次に解説いたします。

光触媒で消臭ができる条件

光触媒は、光エネルギーを吸収するとOHラジカルを発生させ、有機物の臭い成分を分解する性質がありますが、そのような反応を示すためには、条件があります。

光触媒が臭いを分解できるかどうかは、次の2つの条件で決まります。

  1. 光触媒が活性化する光が当たっているか?
  2. 臭い成分を分解できるほどの強い光が当たっているか?

もちろん、臭い成分が光触媒に接触することも条件の一つとなりますが、基本的にはこの2点がすべて満たされているときに、光触媒が消臭効果を発揮します。この2点について解説いたします。

1.光触媒が活性化する光が当たっているか?

光触媒の活性化とは、光触媒が光エネルギーを吸収して、活性酸素を発生させることです。光には波長があり、どの波長によって光触媒が活性化するのかは、光触媒成分によって異なります。

例えば、酸化チタンであれば、紫外線が当たると活性化します。また、酸化タングステンは、紫外線で活性化することはもちろんのこと、青色に見える光の波長でも活性化します。

光の波長とは?

光の粒子である光子はエネルギーの高さに応じて振動する性質を持っており、秒速約30万kmという移動速度と振幅によって波長が決まります。光の波長は、その長さによって、見える色が異なります。光の波長と見える色の関係は、おおよそ次の図の通りです。

可視光線の波長
  • 380nmよりも短い波長=紫外線
  • 450nm=青色
  • 500nm付近=シアン
  • 550nm付近=緑色
  • 600nm付近=黄色
  • 650nmからそれ以上の長い波長=赤色
  • 780nmよりも長い波長=赤外線

このように光の波長によって見える色が異なります。そして、光触媒成分によって、どの波長の光を吸収できるのかが異なります。

酸化チタン(アナターゼ型)のバンドギャップと活性化する光の波長

光エネルギーの公式は、「E=hc/λ」です。hはプランク定数、cは光の速度、λ(ラムダ)は波長です。つまり、波長の長さに反比例して光エネルギーが強くなります。光触媒成分は、バンドギャップと言われるそれぞれの固有の反応するエネルギー値があり、そのエネルギー値よりも強い光のエネルギーを受けると、光触媒が活性化します。

まとめますと、光触媒で消臭をしようとしたら、どのような成分を使用するかによって、どのような光を照射するべきかが異なります。

酸化チタンは、紫外線を当てると活性化することを述べましたが、結晶構造がアナターゼ型と言われる酸化チタンのバンドギャップは3.23eVですので、おおよそ380nmよりも波長の短い光を当てると活性化します。酸化タングステンは、おおよそ460nmよりも短い波長の光を当てると活性化します。

消臭効果を求める場所は部屋の中

さて、消臭効果を求める場所は、どこでしょうか? それは、間違いなく「部屋の中」です。

光触媒は、その成分が持つ特有のバンドギャップよりも強い光エネルギーを吸収すると、消臭効果を発揮することを解説しました。そして、部屋の中の光は、蛍光灯やLED照明といった、紫外線を含まない光が主流です。部屋の中で紫外線ランプを用いている場所は、特殊な場所だけです。

さて、部屋の中で光触媒成分が活性化するためには、蛍光灯やLED照明の光で活性化する成分を用いないといけません。

次の図は、一般的なLED照明のスペクトル分布です。横軸が波長の長さ、縦軸は光の強さです。光の波長に合わせて、目で見える色に塗ってあります。

一般的な白色LEDから出る光の波長

LED照明から出ている光の波長は、目で見える400nmから700nmまでの光のみですから、この波長の光に反応する光触媒成分を用いないと、部屋の中では消臭効果はありません。

目に見える波長の光で活性化する光触媒のことを、「可視光応答型光触媒」といいます。

部屋の中の消臭をしたいのであれば、可視光応答型光触媒を用いることが必須条件となります。

酸化タングステンは、おおよそ460nmよりも短い波長の光を当てると活性化するので、可視光応答型光触媒の一種です。

2.臭いを分解できるほどの強い光が当たっているか?

さらに突っ込んで解説したいと思います。可視光応答型光触媒を使用しても、臭いが消臭できない場合があります。それは、光が弱い場合です。

人が臭いを感じるときというのは、空気中に一定量以上の臭い成分が存在しているときです。厳密には、その量の変化を感じたときですが、そのことはさて置き、臭い成分の濃度が影響します。

つまり、空気中の臭いの成分量が一定量以上あると、人はそこに臭いがあるものと感じるのです。

ですから、可視光応答型光触媒によって部屋の臭い成分を分解していたとしても、分解量よりも臭い成分の発生量が多ければ、部屋が臭ってしまいます。光触媒が臭いを分解できるかどうかだけでなく、臭いをどれくらいの速度で消臭できるかも、消臭ができるかどうかの条件になります。

光触媒が臭いを分解する速度は、光触媒が活性化する波長の光が当たることはもちろんのこと、その波長の光がどれくらいの強さで照射されるのかによっても決まります。

光触媒に当たる光が強ければ強いほど、光触媒が活性化しやすいので、それだけ消臭ができます。光が弱ければ、臭い成分の分解が進みにくいので、人が臭いを感じてしまいます。

酸化チタンと酸化タングステンの消臭力比較

酸化チタンと酸化タングステンの消臭力の比較から解説します。

2つに紫外線を照射したときの比較

先ほど、酸化チタンは紫外線を照射しないと活性化しないことを述べました。また、酸化タングステンは、青色やそれよりも短い波長でも活性化することを述べました。

では、酸化チタンと酸化タングステンに同じ紫外線を同じ量だけ照射したら、どちらの方が消臭力があるのでしょうか?

弊社では実験をしていませんが、おそらく酸化チタンの方が消臭できます。なぜなら、酸化チタンの方が、紫外線を効率よく吸収できるからです。

光エネルギーを吸収するとOHラジカルが発生して消臭効果が出ますが、波長別の光エネルギーの吸収のしやすさは、光触媒成分によって異なります。酸化チタンの方が、紫外線を吸収しやすい性質があります。

2つに青色の光を照射したときの比較

では、酸化チタンと酸化タングステンに同じ青色の光を照射したら、どちらの方が消臭力があるのでしょうか?

それは、もちろん酸化タングステンです。酸化チタンは、青色の光をほとんど吸収できないので、光触媒の効果がありませんから、消臭ができません。それに対して、酸化タングステンは青色の光を吸収できるので、消臭効果があります。

弊社では試験をしていませんが、その差は30倍もあるといわれています。

ただし、この30倍の数値は、酸化チタンと酸化タングステンに可視光を照射して比較したものです。酸化チタンを可視光活性化させた、特殊な酸化チタンと比較すると、その限りではありません。

酸化チタンを可視光活性させた特殊な酸化チタンについては、後ほど解説します。

酸化チタンに紫外線、酸化タングステンに青色の光を照射したら?

最後に、酸化チタンに紫外線を、酸化タングステンに青色の光を照射したら、どちらの方が消臭力があるのでしょうか?

それは、圧倒的に酸化チタンに軍配が上がります。その理由はこうです。

例えば、酸化チタンに紫外線ランプを照射し、酸化タングステンに青色LEDの光を照射したとしましょう。どちらも、同じ光の強さ(光束密度)だったとします。

先ほど、光エネルギー強さは、波長に反比例することを解説しました。紫外線ランプから出る紫外線の波長は365nmほどです。青色LEDから出る波長は460nmほどです。

この2種類の光エネルギーを比較すると、紫外線ランプの方が25%ほどエネルギーが強いと言えます。ですから、単純計算でも酸化チタンに紫外線を照射した方が、消臭力があります。

また、それぞれの光の吸収効率も考慮すると、おそらくは酸化タングステンに可視光を照射するよりも、酸化チタンに紫外線を照射した方が、何倍もの消臭力を発揮します。

比較まとめ

酸化チタンと酸化タングステンは、紫外線が当たる環境では酸化チタンが、可視光が当たる環境では酸化タングステンの方が、消臭力が高いです。

しかし、消臭力が高いと言っても、本当に消臭し切れるのかどうかは、別の話になります。室内の光でも光触媒が活性化したとしても、室内の光はとても弱いので、消臭効果も弱くなり、臭いが残ってしまいます。

また、室内の環境でも酸化タングステンよりも消臭力が高い、特殊な酸化チタン光触媒も存在します。酸化タングステンの室内での効果をPRするのであれば、その特殊な酸化チタンと比較してもらいたいものです。

室内の光でも臭いを強力に消臭できる
特殊な酸化チタンとは?

臭いが気になる場所は、ほとんどの場合で室内です。室内は、光触媒が活性化しやすい紫外線はほとんどありませんし、光の強さも弱いです。ですから、可視光応答型光触媒を用いたとしても、臭いが消えない場合もあることを解説いたしました。

続いて、室内の光でも強力な消臭効果を持つ光触媒成分について解説いたします。

酸化タングステンは、室内の弱い光でも消臭ができるのか?

光の強さを表す単位の一つに、「ルクス」があります。記号は「lx」です。ルクスは、光の明るさを表す単位です。光触媒に当たる光の強さは、ルクスの数値でも知ることができます。

直射日光が当たる場所では50,000~70,000lx、もしくはそれ以上の明るさがありますが、夜の室内での明かりでは、50~200lx程度しかありません。

単純計算で、直射日光と比べたら1/300ほどの明るさです。それにより、相対的に光触媒の性能も落ちてしまいます。

そのような室内の弱い光の中で、光触媒で部屋の消臭をしたい場合は、「室内の光でも臭いが分解できる光触媒成分を用いること」が大切です。つまり、数ある可視光応答型光触媒の種類の中でも、可視光でも強い酸化力を発揮する成分を用いることです。

酸化タングステンの非現実的な広告

以前に、酸化タングステン光触媒を使った製品のPR広告を見たときのことです。その広告には、「部屋の光で除菌・消臭効果を確認」と書いてありましたが、試験で照射されていた光の明るさは、1,000lxほどでした。

1,000lxとは、手術室と同じくらいの明るさです。一般のご家庭が200lxほどですから、その5倍以上の明るさで試験をして「除菌・消臭ができた」と小さな文字で記載されていました。

そのような明るい光での試験で、「除菌・消臭ができた」と言われても、一般家庭では現実的ではありませんし、弊社からすると「そのような強い光では、除菌や消臭ができて当たり前だ」と感じました。

もしかしたら、手術室で使用されることを想定していたのかもしれませんが、そのような製品をコンシューマ向けに販売することは、詐欺に近いと言えます。

室内の弱い光でも強力に消臭できる光触媒は「銅ドープ酸化チタン」

たいへんお待たせしました。室内の弱い光でも、臭いを強力に分解できる光触媒は、銅ドープ酸化チタンです。

先ほど、「酸化チタンは紫外線にしか反応しないから、室内では消臭効果が無い」と解説しました。ですが、銅ドープ酸化チタンは、室内の弱い光でも強力に触媒の効果を発揮して、臭い成分を強力に分解してくれるのです。

「光エネルギーの強さと消臭力の関係」のところで、「酸化チタンを可視光活性させた成分の方が、室内の光を当てたときでも消臭力が圧倒的に高くなる場合もある」と述べましたが、銅ドープ酸化チタンがその成分の一つです。

弊社では厳密に試験したわけではありませんが、銅ドープ酸化チタンと酸化タングステンに可視光を照射したときに、消臭効果にどれくらいの差があるかを調査したところ、銅ドープ酸化チタンは酸化タングステンよりも5~7倍ほどの消臭力がありました。

銅ドープ酸化チタンとは?

銅ドープ酸化チタンの「ドープ」とは、「添加した」とか「加えた」という意味です。銅ドープ酸化チタンは、酸化チタンに銅を加えた成分です。別名では、「銅担持型酸化チタン」とも言われます。

酸化チタンは紫外線にしか反応しませんが、銅を担持させることによって、青色の光を吸収できるようになり、光触媒活性が起こります。ですので、銅ドープ酸化チタンは、可視光応答型光触媒の一種です。青色の光で反応するということは、蛍光灯やLED照明の光の波長で反応するわけですから、部屋の消臭が可能です。

先ほど、一般的な白色LEDのスペクトル分布をご紹介しましたが、それに酸化チタンと銅ドープ酸化チタンが吸収できる光の波長の幅を矢印で加えたものが、次の図です。

銅ドープ酸化チタンは白色LEDの光で活性化する

酸化チタンは380nmまでの波長の紫外線にしか反応しませんが、銅ドープ酸化チタンは、480nmまでの波長の光、シアン色の光のまで反応するので、部屋の光でも消臭効果を発揮します。

しかも、酸化タングステンよりも光を吸収しやすいようで、酸化タングステンよりも5~7倍の消臭効果があります。

銅ドープ酸化チタンは暗所でも消臭効果を発揮

光触媒は「光エネルギーを受けて、励起電子が発生して、OHラジカルが発生して・・・」と解説しましたが、銅ドープ酸化チタンは例外的なチート的な能力を持っているようです。

それは、「暗所でも消臭が可能」という能力です。しかも、常温の暗所でも消臭ができるのです。

酸化タングステンは部屋の光でも多少は消臭効果がありますが、電灯を消灯してしまったら、消臭効果はまったくありません。それに対して、銅ドープ酸化チタンは消灯をした暗所でも、消臭効果を発揮するのです。

弊社ではそのメカニズムを詳細に解析していませんが、その理由を簡単に解説いたします。

暗所でも触媒効果を発揮する理由は、添加された銅にあります。銅は、それ単体でも触媒として利用されていますが、数百度にまで加熱しないと触媒の効果を発揮しません。ところが、酸化チタンにナノサイズの銅を添加すると、酸化チタンと銅の間で電子をやり取りするようになるらしく、それによってOHラジカルを発生させているようなのです。

また、ナノサイズの酸化銅は、それ単体でも触媒の効果を発揮するようで、それによっても消臭効果を発揮しているものと思われます。

銅ドープ酸化チタンの暗所での消臭については、「暗所でも除菌・消臭効果の高い光触媒は銅ドープ酸化チタン」をご参照ください。

銅ドープ酸化チタンの発見したのは弊社のラボ

ちなみに、銅ドープ酸化チタンを世界で初めて発見したのは、弊社のラボです。酸化チタンを可視光活性させる研究を行い、2年もの歳月、失敗の山を築き上げていった結果に発見した成分です。

発見したのは今から20年以上前で、発見と同時に製造方法で特許申請しました。銅ドープ酸化チタンの製造方法で特許を取得したのは、弊社が世界初となります。

その後、銅ドープ酸化チタンを使ってさまざまなものを分解する試験を繰り返したところ、暗所でも消臭効果があることを発見しました。

銅ドープ酸化チタンの開発エピソードは、「光触媒効果の高い可視光応答型酸化チタンの開発」をご覧ください。

消臭を目的とした光触媒製品の利用方法

光触媒によって消臭ができる光触媒成分やメカニズムなどを解説してきましたが、実際に部屋の消臭に利用される光触媒製品の形状を解説します。

市販されている製品は、次の2種類です。

  • 光触媒コーティング加工
  • 光触媒スプレーの利用

光触媒コーティング加工

光触媒コーティング加工は、光触媒成分が含まれた液剤でコーティング加工する方法ですが、次の方法があります。

  • 部屋全体を光触媒コーティング加工する方法
  • 光触媒コーティング加工された製品を利用する方法

部屋全体を光触媒コーティング加工する方法

部屋全体の光触媒コーティング加工では、専用の塗装装置を使って、壁や天井、家具などを光触媒コーティングする方法です。光触媒コーティング施工は、専用業者に依頼することになります。

光触媒コーティング加工された製品としては、主に光触媒空気清浄機と光触媒人工観葉植物があります。

部屋全体を光触媒コーティング加工すると、臭い成分がどこから発生してもすぐに消臭できるので、消臭効果が高く、臭いの発生源をも消臭してくれますが、塗装工事が必要となるので費用が高くなります。

光触媒コーティング加工された製品を利用する方法

光触媒コーティング加工された製品を利用する方法は、手軽に光触媒消臭を導入できますが、効果が限定されます。空気中の臭いを分解するだけですから、臭いの発生源にまでアプローチはできません。

光触媒コーティング加工をする箇所には、弊社の実例から、次のようなものがあります。

  • 室内の壁紙やカーテン
  • 自動車の車内
  • エアコンフィルターやエアコン内部
  • 大型空調機用の不織布フィルター
  • お風呂場やキッチンのパネル
  • トイレの便器などの衛生陶器
  • ペット用トイレといったペット用品
  • 空気清浄機のフィルター部品
  • 人工観葉植物

さて、今までの解説からも判るように、どのような光触媒成分をコーティングするかによって、消臭効果に大きな差があります。

工場などから出る排気ガスの消臭を目的とする場合にも、光触媒コーティング加工を用いると良いと思います。この方法については、後ほど解説いたします。

光触媒スプレーの利用

光触媒スプレーは、光触媒成分が入った液剤を臭いが発生している箇所や、部屋の中にスプレーして消臭する方法です。

光触媒によって臭い成分そのものを分解するので、「香りで臭いを包んで消臭」といったものではなく、根本的に臭いを消臭できるので、ドラッグストアで市販されている消臭スプレーと比べたら、圧倒的に消臭効果が高いです。

また、室内の光触媒コーティング加工や、光触媒コーティング加工された製品を用いるよりも、安価で手軽に部屋の消臭ができます。

光触媒スプレーに用いられている光触媒成分によって、消臭効果がピンキリですから、どのような成分を使っているのかを確認してから購入することをおすすめします。

弊社が開発した、銅ドープ酸化チタンを使ったご家庭向け光触媒スプレーは、「アキュートクリーン」です。アキュートクリーンはOEM提供もしている製品ですので、消臭効果の高い光触媒スプレーの市販をお考えの企業様にもご利用いただけます。

アキュートクリーンには、銅ドープ酸化チタンを配合しているので、暗所でも消臭効果があります。衣類や布団などの布製品にもご利用いただけます。

光触媒によるVOCなどの化学物質の臭いの消臭方法

一般的な光触媒では、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドであれば、簡単に分解ができますが、光触媒では分解が難しいとされるVOCもあります。その代表例が、トルエン、キシレン、スチレンです。新車や新築住宅の中に入ったときに感じる臭いは、VOCの臭いです。

銅ドープ酸化チタンならVOCの分解消臭が可能

この3成分は、酸化チタン光触媒に紫外線を照射しても分解しにくいことが言われていますが、弊社の試験でも同様の結果でした。

光触媒でも分解が難しいVOCを分解できる光触媒成分があります。それは、先ほどからご紹介している「銅ドープ酸化チタン」です。

銅ドープ酸化チタンは、可視光や暗所でも効果があることを述べてきましたが、銅ドープ酸化チタンに紫外線を照射すると、さらに強力なVOC分解の性能を発揮します。

トルエン、キシレン、スチレンの分解試験

次の図をご覧ください。次の図は、酸化チタン光触媒と銅ドープ酸化チタンに紫外線を照射して、トルエン、キシレン、スチレンの3成分が分解できるかを試験したものです。

銅ドープ酸化チタンによるトルエン分解の試験結果
銅ドープ酸化チタンによるキシレン分解の試験結果
銅ドープ酸化チタンによるスチレン分解の試験結果

試験方法は、酸化チタン触媒や銅ドープ酸化チタンを塗布したタイルと、何も塗布していないタイルを用意します。光触媒を塗布したタイル、無塗布のタイルを、それぞれ別の袋に入れ、ヒートシールで封印をします。この袋を3セット用意します。

袋に3Lの空気を入れ、濃度が100ppmとなるようにトルエン、キシレン、スチレンをそれぞれ添加します。すべての袋の中央部に、紫外線強度が1mW/cm2になるようにブラックライトを照射し、試験を開始します。

定時にガス検知管により、キシレンの濃度を測定します。測定する時間は、試験開始から30分後、1時間後、2時間後、3時間後、24時間後の計5回です。

試験結果はご覧の通りです。銅ドープ酸化チタンに紫外線を照射したら、トルエン、キシレン、スチレンを素早く分解し、24時間後にはすべて検出限界に達しています。

VOC処理装置の概案

VOC処理装置は、市販されている装置では、主にVOCを燃焼させる方法、吸着させる方法、白金などの触媒で分解する方法があります。これらの方法は、工業用に広く使用されている方法で、実績があり、信頼性は高いと思います。

弊社ではまだ試験したことがありませんが、おそらく、これらよりも導入費用やランニングコストが安い方法が、銅ドープ酸化チタンによる分解です。

排気チャンバー内に銅ドープ酸化チタンを塗装したステンレスメッシュフィルターを並べ、そこに紫外線ランプで紫外線を照射します。処理したいVOCの濃度に応じてフィルターの数量を調整します。

このVOC処理装置のメンテナンスは、次の2つしかありません。

  • 紫外線ランプやステンレスメッシュフィルターの定期清掃
  • 紫外線ランプの交換

また、必要なランニングコストは、紫外線ランプの電気代だけです。白金触媒のように加熱は必要ありませんし、活性炭のような頻繁な交換も必要ありません。

ステンレスメッシュフィルターは、そこに銅ドープ酸化チタンが付着していたら、半永久に使用可能です。ステンレスメッシュに銅ドープ酸化チタンを塗装して、200℃くらいの温度で焼結させたら、かなり強固に付着するので、おそらく、10年ほど利用可能かと思われます。

ちなみに、活性炭の表面に銅ドープ酸化チタンを塗装し、それを利用する方法もあります。すると、活性炭の寿命が何倍にも伸びます。

これらの方法は、VOC処理のみならず、排気ガスの消臭装置にも応用ができます。銅ドープ酸化チタンを使ったVOC処理装置や排気ガスの消臭装置の開発なら、弊社までご相談いただければ、ご支援いたします。

以上、光触媒による消臭について、全般的に解説いたしました。

光触媒の消臭について詳しく知りたい方、光触媒を研究されている方、光触媒を使った製品を開発したい方のご参考になれば幸いです。

銅ドープ酸化チタンを使った光触媒製品のご相談やOEM製造、消臭装置の開発、光触媒コーティング施工のご依頼などございましたら、弊社までお気軽にご相談ください。

この記事の著者/責任者

島田幸一

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。

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