日本は水が豊かな国ですが、工業国でもあるので、水の汚染で苦しんだ時代もありました。
現在では水質浄化の方法が開発され、地下水汚染も浄化ができるようになりました。
微生物や化学物質で汚染された池や地下水を浄化する方法はいくつもあります。
化学物質を使って浄化する方法もあれば、環境負荷を抑えた方法として例えば微生物を使って水質浄化するバイオレメディエーションという方法もあります。
この記事では、環境負荷の低い方法の一つ、光触媒を使った装置で水質浄化をする方法を解説いたします。
光触媒による水質浄化の原理
光触媒による水質浄化の原理と水質浄化方法、水質浄化に最適な光触媒成分を解説いたします。
光触媒の性質
光触媒は、光エネルギーを受けると、表面にOHラジカルやスーパーオキシドアニオンを発生させます。OHラジカルは強い酸化力を持っているので、それによって有機物を分解することができます。光触媒で分解ができる有機物は、微生物や化学物質です。もちろん、石油系の汚染も浄化ができます。
例えば、池の水が藍藻で緑色に変色している場合には、色だけでなく臭いも強くなっていることと思います。薬剤で藍藻を除去すると、環境負荷も考えられますし、薬剤の効果が切れたらまた藍藻が発生します。光触媒による水質浄化装置でしたら、藍藻はもちろんのこと、藍藻が餌とする成分をも分解することができます。
この光触媒の性質を利用して、水質浄化ができます。
光触媒による水質浄化の方法
光触媒で水質浄化する方法は、浄化したい水をくみ上げて、その水の中に光触媒を入れて光を当てるだけです。そのような簡単な構造で、水質浄化ができます。
池の水や地下水をポンプでくみ上げて、光触媒の水質浄化装置の中を通し、その水を元の場所に戻すだけです。
地下水を浄化する方法は、地下から汚染された地下水をくみ上げて光触媒で浄化し、その水を地下に戻します。石油の汚染のときは、水を戻すときにバイオレメディエーションと組み合わせると効果的です。
この方法に基づいた水質浄化装置については、後ほど解説します。
水質浄化に最適な光触媒成分
水質浄化装置に用いる光触媒は酸化チタン、もしくは銅ドープ酸化チタンが望ましいです。
酸化チタンや銅ドープ酸化チタンは、紫外線に強く反応して、高い抗酸化力を発揮する成分です。水の中の藍藻などの微生物や化学物質を強力に分解してくれます。
銅ドープ酸化チタンとは、酸化チタンに銅を担持させた成分です。酸化チタンのみですと、紫外線にしか反応しませんが、銅ドープ酸化チタンは紫外線ではもちろんのこと可視光でも水質浄化の効果を発揮します。
また、銅ドープ酸化チタンを発見した弊社でも驚きの効果があります。それは、暗所でも触媒の効果を発揮することです。
銅ドープ酸化チタンは、ナノサイズの酸化銅が含まれていますが、通常は高温にまで加熱しないと触媒の効果を発揮しない酸化銅が、ナノサイズですと常温でも高い触媒の効果を発揮するようなのです。
銅ドープ酸化チタンは、酸化チタンでは分解が難しいとされるベンゼン環を持つ化学物質をも分解する効果があります。
このようなことから、水質浄化にはできれば銅ドープ酸化チタンを用いることをおすすめします。
光触媒による水質浄化装置の構造
光触媒による水質浄化装置の構造の概略は次の図の通りです。とても簡単な構造です。
水槽の中に光触媒コーティングされたフィルターと紫外線ランプを設置します。その中に、浄化させたい水を循環させます。
水質浄化装置を開発するときは、紫外線ランプが組み込まれたカートリッジ式の光触媒フィルターを製作しておき、水質の汚染度に応じて光触媒フィルターを複数設置できるようにしておくと、実用的です。
くみ上げた水に泥などの異物が混ざる場合には、水槽に水を供給する前に、ストレーナーなどのフィルターを設置すると良いでしょう。
光触媒フィルターの構造
光触媒フィルターは、ステンレスメッシュのフィルターを用いると良いと思います。ステンレスは光触媒で劣化しませんし、光触媒成分を多く定着させられるので、効果が高まります。また、光触媒を焼結させられるので、耐久性が高くなります。
酸化チタン光触媒をステンレスに焼結させる技術は、弊社で特許取得済ですので、弊社にお任せください。
池の水を浄化させる場合には、不織布は目詰まりしやすいので不向きです。地下水の場合には不織布を用いることは可能ですが、耐久性は悪いと思います。
レースカーテンのようなナイロン製の光触媒フィルターの開発も可能ですが、紫外線ランプを当てると光触媒の効果が強く出るので、ナイロンが劣化しやすいです。
なお、不織布やナイロン製のフィルターであっても、雑菌が繁殖する心配はありません。なぜなら、雑菌は光触媒で分解されるからです。
水質浄化装置の稼働方法
ポンプや紫外線ランプの電源をONにしたら浄化が開始されます。どちらも、太陽光発電などで電源供給できたら、電源の配線が必要ないため、山奥などの水質浄化も可能です。
なお、紫外線ランプが切れたとしても、銅ドープ酸化チタンでしたら効果が弱まるものの触媒の効果があるので、水質浄化をし続けます。
以上、簡単にですが光触媒による水質浄化の方法と水質浄化装置の検討と題して述べてきました。
池や河川の水の浄化、地下水の浄化など、光触媒を使った水質浄化装置の開発なら、弊社までお気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。