光触媒で室内の空気浄化で求められる効果は、除菌と消臭です。
光触媒を使った室内の空気を浄化する方法には、いろいろな方法があります。その代表的なものとしては、次のものが挙げられます。
- 室内全体の光触媒コーティング塗装
- 光触媒を使った空気清浄機の利用
- 光触媒加工された人工観葉植物の利用
この記事では、これら3つの方法を比較するので、室内の空気浄化をしたいとお考えの方は、どの方法で行うべきなのかの判断材料になればと思います。また、それぞれの事業を取り入れたい方には、良い商品を開発したり扱ったりするためのヒントになればと思います。
光触媒の性質
最初に光触媒の性質を解説いたします。ここでご紹介する性質を理解しておかないと、まったく効果のない場合もあるからです。
光触媒の除菌や消臭の効果の高さは、次の3種類によって決まります。
- 光触媒成分の種類と光の波長
- 光の強さ
- 光触媒と空気が接触する頻度
これらについて、少し解説します。
光触媒成分の種類と光の関係
光触媒成分の種類によって、光触媒成分が発揮する効果の高さが異なります。一般的に市販されている光触媒成分の中で、最も効果が高いものは酸化チタン光触媒です。
酸化チタンは紫外線のみに反応
ところが、酸化チタンは紫外線が当たらないと光触媒の効果を発揮しません。ですから、室内の蛍光灯やLED照明の光を使って空気を浄化したい場合には、酸化チタンではまったく効果がありませんから、何かの工夫が必要となります。
その工夫とは、次のどちらか、もしくは両方を組み合わせることになります。
- 紫外線を照射する
- 紫外線でなくても効果を発揮する光触媒成分を利用し、強い光を当てる
室内の光でも効果を発揮する可視光応答型光触媒
室内の光でも効果を発揮する光触媒成分のことを、可視光応答型光触媒といいます。可視光応答型光触媒は、可視光でも光触媒の効果を発揮しますが、あえて紫外線を照射すると、光触媒の反応が強くなるものが多いです。紫外線は光の中でもエネルギーの強い光なので、紫外線が当たると効果が高くなるのです。
そして、光の強さです。基本的に、強い光を当てると、光触媒の効果も高まります。紫外線を当てなくても、可視光応答型光触媒に強い光を当てると、空気浄化の効果が高まります。
唯一例外の特集な光触媒「銅ドープ酸化チタン」
室内の空気の高い浄化能力を得るためには、光触媒の効果の高い成分を使って、その成分が光触媒の効果を発揮する光を当て、なおかつ空気が浄化されるほどの光触媒効果を発揮する強さの光を当てることです。
光が当たらなくても効果のある特殊な光触媒「銅ドープ酸化チタン」
ところが、光触媒成分の中で、唯一例外とも言える成分があります。
それは「銅ドープ酸化チタン光触媒」です。
銅ドープ酸化チタン光触媒は、室内の弱い光でも、強い光触媒効果を発揮する成分です。また、驚くべきことに光が当たらなくても触媒の効果を発揮する成分です。
多くの光触媒は、光が当たらないと効果がありませんが、銅ドープ酸化チタン光触媒のみ光が当たらなくても、空気浄化能力があるのです。もちろん、それに光を当てると、より高い浄化能力が発揮されます。
銅ドープ酸化チタンは、酸化タングステンの5~7倍以上の効果の高さ
よく利用されている可視光応答型光触媒は酸化タングステン光触媒ですが、酸化タングステン光触媒と銅ドープ酸化チタン光触媒を同じ条件の光を当てて試験すると5~7倍、もしくはそれ以上の効果を発揮します。もちろん、光を当てていない状態では、酸化タングステンは効果を発揮しません。
銅ドープ酸化チタン光触媒は、最近の用語を使うとするならば、チート的とも言える性能を持った成分です。
光触媒と空気が接触する頻度
光触媒が空気を浄化するためには、汚れた空気が光触媒に接触しなければなりません。効率良く部屋の空気を浄化するためには、
- 効果の高い光触媒成分を使うこと
- なるべく広い面積・大きな面積に光触媒を塗ること
- 部屋の空気を循環させて光触媒に空気が当たるようにすること
部屋全体に光触媒コーティング塗装をしておくと、空気を強制的に循環させなくても、人の動きだけで空気が動き、雑菌や臭い成分が光触媒に接触すると思います。
空気清浄機のように、内部にファンを持っている装置を利用すれば、強制的に空気が循環されるので、効率的に空気を光触媒に接触させられます。
光触媒を使った室内の空気を浄化する方法
光触媒を使った室内の空気を浄化する方法をそれぞれ解説いたします。
室内全体の光触媒コーティング塗装による空気浄化
光触媒コーティング塗装とは、光触媒コーティング剤を部屋の壁や天井、カーテンなどに直接塗装する方法です。
広範囲に光触媒を塗装できるので空気浄化されやすい
光触媒成分が空気と触れる面積が圧倒的に広いため、もっとも除菌・消臭効果が高くなります。製品によっては効果が持続する期間は、10年以上と長いものがあります。
ただし、先ほど解説したように、室内でも効果を発揮する光触媒成分を用いることが必須です。紫外線にしか反応しない光触媒成分ですと、室内ではまったく効果がありません。
チート的な能力を持つ銅ドープ酸化チタン光触媒を用いた光触媒コーティング塗装では、酸化タングステンなどといった他の光触媒成分の数倍以上の除菌・消臭、防カビの効果を発揮します。それだけでなく、室内の空気中に含まれるVOCをも分解してくれます。また、塗装面の防カビ効果も得られます。しかも、夜間の消灯時でも空気を浄化してくれます。
塗装は専門業者に依頼
光触媒コーティング塗装には、専用の塗装機械とスプレーガンを用います。弊社では、ABAC温風低圧塗装機と専用のスプレーノズルの利用を推奨しています。そのような装置を用いて塗装するため、専門の業者に施工を依頼することになります。
また、家具などを移動させて塗装面を清掃してから塗装するので、その分、さらに施工費用が高くなります。部屋全体を光触媒コーティングするなら、引っ越しする前や、新築を建てた直後に行うと費用を安く抑えることができます。
光触媒を使った空気清浄機の利用による空気浄化
光触媒空気清浄機は、空気清浄機の内部に光触媒コーティングされた部品を用います。プラスチックのフィルターを光触媒コーティングする方法が一般的かと思います。
光触媒を使った空気清浄機の形状
形状は、一般的に市販されている空気清浄機のような床置きタイプ、マイナスイオン発生器のようなペットボトルサイズのものなど、形状はさまざまです。
空気清浄機には微粒子を吸着するフィルターや集塵装置などが組み込まれているものがありますが、そういった箇所に光触媒コーティングする構造のものや、エアコンフィルターのような荒い網目状のフィルターを用いるものもあります。
光触媒空気清浄機では、内部にランプを設置して強い光を照射できるので、酸化タングステンといった光触媒の効果が弱い成分でも光触媒の効果を高めることができます。除菌・消臭効果もある程度は得られます。空気清浄機の内部に紫外線ランプを設置し、光触媒に紫外線を照射できるものがあれば、特に効果が高くなります。
ただし、紫外線を照射すると、強い光触媒効果によって、光触媒コーティングされたプラスチックが劣化しやすくなります。その場合は、ステンレスメッシュなどの金属に光触媒コーティングをして、紫外線を照射することをおすすめします。
手軽に光触媒を導入できるが、電源と設置場所、メンテナンスが必要
装置を安価に抑えつつ、高い効果を得る方法は、光触媒成分に銅ドープ酸化チタン光触媒を用いることです。
光触媒空気清浄機は、製品を購入して部屋に設置するだけです。手軽に光触媒で室内の空気を浄化できます。空気清浄機に設置してあるファンによって空気が循環するので、室内の空気を連続的に浄化してくれます。
デメリットとしては、空気清浄機を稼働させるために電源が必要であり、電気代がかかります。また、装置が壊れたら終わりであることや、フィルターの掃除や効果が必要になる機器もあること、装置を置いておくため場所を取ることもデメリットとなります。
光触媒加工された人工観葉植物の利用による空気浄化
人工観葉植物とは、布製やプラスチック製の造花のことです。これに光触媒加工されたものが、光触媒人工観葉植物です。それを室内に置いておくことで、室内の空気を浄化できます。
手軽に光触媒を導入できることが大きなメリットです。
銅ドープ酸化チタンを使った人工観葉植物がおすすめ
光触媒人工観葉植物で空気を浄化するためには、もちろん室内の弱い光でも光触媒の効果を発揮する成分で加工されていることが条件となりますから、銅ドープ酸化チタン光触媒を使ったものでないと、効果が圧倒的に弱いと言えます。
光触媒の効果をさらに高めるためには、光触媒加工された面の面積が大きい方が良いわけですから、大きな葉の人工観葉植物を選ぶと良いでしょう。トイレのような狭い部屋であれば、小さめのものでも良いと思いますが、効果を求めるのであれば、少し大きなものを利用したり、ジャングルのような状態でなくても、少し多めに人工観葉植物を設置すると良いでしょう。
少し多めに人工観葉植物を設置したら、光が当たらない部分も出てくるので、銅ドープ酸化チタンを使った人工観葉植物を利用すると空気浄化の効果がさらに高くなります。
ちなみに、銅ドープ酸化チタン光触媒を使った光触媒人工観葉植物を製造しているメーカーは、今現在、弊社が把握しているところでは花緑の楽園のみです。(「わが社の製品も銅ドープ酸化チタンを使っている」という企業様がおられましたら、弊社までご連絡ください。ホームページに追記させていただきます。)
光触媒の人工観葉植物の利用方法
光触媒人工観葉植物には、置いていたら表面にホコリが付着していきます。光触媒はホコリのような大きなものを分解することができないので、ときどきウェットティッシュなどで拭いて取り除いてあげてください。光触媒人工観葉植物を水洗いしても良いと思います。その程度の掃除では、光触媒コーティングが落ちてしまうことはありません。
光触媒工観葉植物のメリットは、電気や水がいりませんし、手間がかかりませんし、電気代もかかりません。デメリットとしては、場所を取ることや、光触媒の面積も小さいことから空気を循環させないと効果がどうしても弱くなることが挙げられます。
光触媒を使った室内の空気を浄化する方法の比較まとめ
上記の3つの方法の比較をまとめると、次のようになります。
光触媒コーティング | 空気清浄機 | 人工観葉植物 | |
効果 | 高い | 低い | さらに低い |
塗装面積 | 大きい | 小さい | 小さい |
工事 | 必要 | なし | なし |
費用 | 高い | ピンキリ | 安い |
メンテナンス性 | メンテナンスなし | フィルター掃除や交換が必要 | 表面の掃除が必要 |
電気 | いらない | 必要 | いらない |
持続期間 | 3年~10年以上 | 5年以上 | 3年~10年以上 |
設置場所 | 取らない | 必要 | 必要 |
持続期間の長さは、使用する製品によって異なります。ちなみに弊社の屋内用光触媒コーティング剤は、10年以上効果が持続します。
どの方法を選べば良いのか?
部屋全体の光触媒コーティング塗装、光触媒空気清浄機、光触媒人工観葉植物のどれを選べば良いのかは、手間や費用、求める効果の高さで選ぶことになります。
効果の高さで選ぶ
もちろん、光触媒成分に銅ドープ酸化チタン光触媒を選ぶことです。そして、それを部屋全体に塗装することです。さらには、それに、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒空気清浄機と組み合わせて、24時間稼働させておくことで、空気が循環して、常に部屋の空気を至る所で浄化してくれます。
部屋全体の光触媒コーティング塗装と光触媒空気清浄機のどちらかを選ぶとするならば、部屋全体の光触媒コーティング塗装です。部屋全体を光触媒コーティング塗装すると、空気清浄機よりも圧倒的に広い面積に光触媒が塗布されるので、高い効果が得られます。
メンテナンスフリーで選ぶ
メンテナンスフリーで室内の空気を浄化する方法を選ぶのであれば、部屋全体の光触媒コーティング塗装です。光触媒人工観葉植物もメンテナンスフリーかもしれませんが、ホコリが溜まってきたら、掃除が必要となります。
部屋全体の光触媒コーティングは、最初の塗装時に業者に工事をしてもらうという手間がありますが、長期間放置していても部屋の空気を浄化し続けてくれます。また、壁紙に光触媒コーティングをしておくと、壁紙の防カビもできます。
ちなみに、銅ドープ酸化チタンを使って部屋全体を光触媒コーティング塗装してくれる業者の一覧は、こちらのページをご覧ください。
導入の手軽さで選ぶ
手軽に導入できるものは、やはり光触媒人工観葉植物です。光触媒空気清浄機の場合、どのメーカーや機種を選んだら良いのか迷ってしまいますが、光触媒人工観葉植物でしたら、銅ドープ酸化チタンを使ったメーカーの製品であれば、どれでも良いわけです。
あとは、見た目と大きさです。広い部屋の場合は、パキラなどの葉の面積が大きなものを選ぶと良いでしょう。トイレの窓辺に置いておくタイプのものは、アイビーなどの小さなものが良いでしょう。
価格の安さで選ぶ
室内の空気浄化を、価格の安さで選ぶならば、光触媒人工観葉植物です。数千円から購入ができます。
空気浄化の効果の高さや、メンテナンスフリー、持続期間の長さといったことを考慮すると、部屋全体の光触媒コーティング塗装が、費用対効果が高いと思います。光触媒コーティング塗装は、工事費は高いのですが、あとは10年以上放置したままでも、室内の空気を浄化し続けてくれます。
以上、光触媒で室内の空気浄化ができる、部屋全体の光触媒コーティング塗装、光触媒空気清浄機、光触媒人工観葉植物を解説いたしました。
できましたら、市販されている光触媒成分でもっとも効果の高い銅ドープ酸化チタンを使用されることをおすすめします。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。