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光触媒では花粉を完全に分解できません

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光触媒では花粉を完全に分解できません

光触媒で花粉を分解できるのか、ときどき議論になることがありますが、見出しの通り、光触媒で花粉を分解することはできません。

その理由は、光触媒と比べて花粉の大きさがあまりにも大き過ぎるからです。

ただし、花粉のアレルゲンでしたら分解ができると思います。光触媒メーカーの各社も、アレルゲンを分解した試験結果を公表しています。

この記事では、光触媒では花粉を分解できないこと、アレルゲンなら分解ができることを、その理由を交えて解説いたします。ただし、光触媒コーティングなどによって花粉のアレルゲンは分解できると思いますが、花粉症が軽減するかどうかは述べられません。花粉症については医師にご相談ください。

光触媒の性質

光触媒は、光エネルギーを受けると、表面に活性酸素を発生させ、それによって有機物を酸化分解させる性質を持っています。酸化分解が進むと、いずれは二酸化炭素と水などの無害な物質にまで分解していきます。

このような性質があるので、「花粉も有機物だから、光触媒で花粉が分解できるのではないか?」「花粉症に効果があるのではないか?」と期待される方がいらっしゃるわけです。

光触媒で花粉は分解できない

1mm、1μm、1nmの比較

光触媒で分解できる有機物の大きさは、ナノサイズのものです。ナノサイズとは、1mmの1000分の1が1μm(マイクロメートル)、それをさらに1,000分の1が1nm(ナノメートル)です。

確かに花粉は有機物ですが、冒頭でもお伝えした通り、光触媒の大きさと比べて、花粉の大きさはとても大きいため分解できません。スギ花粉の大きさは、直径30~40μmと言われています。酸化チタン光触媒の粒形である10nmと比較すると、3千倍~4千倍の大きさです。

この差は、サーフボードと石油タンカーで大きさを比較しているようなものです。

さらには、「光触媒で身体が分解されるのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、身体は花粉よりももっと大きいので安全です。

とは述べたものの、光触媒は有機物を少しずつ分解していくことは、事実としてあります。花粉がずっと光触媒のところにあり、強い光を照射し続けたら、長い時間はかかりますが、いずれは分解できるかもしれません。

光触媒には、細菌類に対して抗菌効果がありますが、これも細菌自体を分解し切るのではなく、細菌の表面にある突起や細胞壁を破壊するなどして、増殖を抑えたり害を無くしたりすることができるものと考えます。

花粉のアレルゲンなら分解できる

そのように花粉のような大きなものを分解することはできませんが、花粉に含まれるアレルゲンのような小さなものであれば、分解ができます。

フナコシ株式会社のホームページ「日本スギ花粉抗原・抗体 (Cry j 1、Cry j 2)」によると、花粉の表面に付着しているアレルゲンは、Cry j1という分子量が約40kDaの塩基性タンパク質で、花粉の表面に付着している直径は約0.7μmのユービッシュ小体に含まれます。ユービッシュ小体とは、スギ花粉の表面に付着している金平糖のような形状のものです。

花粉の内部にあるアレルゲンは、Cry j2という分子量が約37kDaの塩基性タンパク質ですから、Cry j1よりもサイズは若干小さくなります。

ユービッシュ小体のサイズは、花粉本体よりも直径は約50分の1、体積では約10万分の1になります。これくらいの小さなものであれば、光触媒でも十分に分解しできるかもしれませんし、分解し切れなかったとしても、それに含まれるアレルゲンであれば、ユービッシュ小体よりもさらに小さいはずですので分解できると思います。

以上、光触媒が花粉を完全に分解できないことを解説しつつ、アレルゲンであれば分解できることを示唆いたしました。

花粉症の方で、ご自宅の光触媒コーティングを検討されている方もいらっしゃると思います。玄関や室内全体を光触媒コーティング塗装することなどによって、家の中に入ってきた花粉のアレルゲンは分解できると思います。花粉症が軽減しそうかどうかは医師にご相談ください。

この記事の著者/責任者

島田幸一

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。

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