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光触媒から活性酸素が発生する仕組み

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光触媒から活性酸素が発生する仕組み

光触媒は、光が当たると空気中の酸素や水と反応して、活性酸素を発生させます。

その活性酸素の作用によって、抗菌や消臭ができます。

光触媒から発生する活性酸素は、次の3種類です。

  • OHラジカル(・OH)
  • スーパーオキシド(O2
  • 過酸化水素(H2O2

これらの3種類の活性酸素の中で、OHラジカルがもっとも酸化力の強い活性酸素です。主に、OHラジカルの酸化力によって、抗菌や消臭ができるようです。

光触媒から活性酸素が発生する仕組み

光触媒から活性酸素が発生する仕組みは、次の通りです。

光触媒に光が当たってOHラジカルが発生する仕組み

光触媒に、光触媒が持っている特有のバンドギャップを超える強さの光エネルギーが加わると、表面に電子(e)が飛び出してきます。電子が飛び出した後には、ホール(h+)ができます。

電子e-が空気中の酸素(O2)と反応して、スーパーオキシド(O2)が生まれます。これが最初に生まれる活性酸素です。

スーパーオキシド(O2)は、空気中の水(H2O)と反応して過酸化水素(H2O2)が発生します。過酸化水素(H2O2)も、活性酸素の一種です。空気中に発生した過酸化水素(H2O2)は不安定ですから、2つに分離してOHラジカル(・OH)になります。

また、ホール(h+)が空気中の水(H2O)と反応してもOHラジカル(・OH)が発生します。

このようにしてOHラジカルが発生します。

光触媒から活性酸素が発生する条件

光触媒から活性酸素が発生する条件は、光触媒から電子が飛び出したときです。電子が飛び出す条件は、光触媒が持っている特有のバンドギャップがあり、それを超える強さの光エネルギーが加わったときです。

バンドギャップとは、聞きなれない言葉だと思います。分りやすく説明すると、コップの中に電子が入った状態をお考えください。

酸化チタンのバンドギャップを器に例えた例。紫外線なら電子が器から飛び出す。

コップの中に光が入ってくると、電子に当たって弾かれます。光エネルギーが弱いと、電子がコップの外に飛び出すことができません。光エネルギーが強いと、電子がコップの外に飛び出して、空気中の酸素と反応することができます。

光エネルギーの強い光は、紫外線です。紫外線は、どのような光触媒に当たっても、電子が飛び出します。

蛍光灯やLEDから出る可視光は、紫外線と比べると弱いので、室内で光触媒を利用する場合には、可視光でも電子が飛び出す光触媒の種類を選ぶ必要があります。そのような光触媒のことを、可視光応答型光触媒といいます。

光触媒から発生する活性酸素で酸化分解できるもの

光触媒から発生した活性酸素で分解できるものは、次のようなものがあります。

  • 細菌類
  • ウイルス
  • 匂い成分
  • アレルゲン
  • 化学物質

こういったものが活性酸素によって酸化分解されるので、抗菌や消臭といった効果があります。酸化分解できるものは、有機物や窒化物などの酸素と反応しやすいものに限ります。

光触媒によって酸化分解されるものは、細菌類や匂い成分に限られると良いのですが、それらだけでなく、光触媒を塗布した箇所も酸化分解してしまう可能性があります。

例えば、外壁のペンキが塗られた箇所に光触媒を利用すると、ペンキが酸化分解されて、色あせやヒビ割れが起こることが知られています。光触媒を扱うメーカーや施工業者の中には、この問題を乗り越えられなくて、光触媒事業から撤退するところもあります。

光触媒の活性酸素が酸化分解できるサイズの限界

光触媒から発生する活性酸素によって、細菌類やウイルス、アレルゲン、化学物質などが酸化分解されることはお伝えしましたが、酸化分解するのにもサイズの限度があります。

酸化チタン光触媒はナノサイズの大きさですが、それに比べると例えば大腸菌であれば、寸法が1,000倍も大きなものになります。体積はその3乗ですから、100万倍になります。そのようなことで、OHラジカルが大腸菌を完全に酸化分解するためには、膨大な時間がかかることは、容易に予想できます。

これはまるで、ツルハシを使って巨大な岩山を叩いて壊し、平坦な土地にしようとするようなものです。

ですが、光触媒で抗菌ができることは事実です。その理由は、大腸菌全体ではなく、大腸菌の表面の物質や突起、細胞壁などの一部を酸化分解し、大腸菌の活動を抑制したり、死滅させたりするので、抗菌力が出ているようです。

他にも、光触媒では花粉やダニなどのアレルゲンを分解できるとされていますが、花粉やダニそのものを分解するためには、大腸菌を分解するよりも膨大な時間がかかるはずです。花粉やダニのアレルゲンは、アレルゲンそのものが完全に分解されるのではなく、アレルゲンの一部が分解されて、不活性化(身体と反応しにくくなること)が報告されています。

光触媒から発生する活性酸素は身体に安全か?

光触媒から発生する活性酸素は、身体に安全かどうかは、ときどき聞かれることです。

OHラジカルは、強い酸化力を持ちますから、身体に触れたら身体を酸化分解するので、身体に悪いように思います。

ところが、光触媒から発生するOHラジカルは、酸化力が強いため、細菌類や匂い成分に触れなければ、すぐに空気中の成分と結合してしまい、水に戻ってしまいます。

また、指先にOHラジカルがあったとしても、人の指は、大腸菌や花粉と比べたらさらに大きなものになります。

弊社では、光触媒事業に携わって20年以上の人も在籍していますが、今現在のところ身体に不調はありませんし、光触媒をご利用になられている方の健康被害などは聞いたことがございません。

ただし、世の中には絶対はありませんし、光触媒をどのように利用されるのかも個人差があります。そういったことで、何があるか分かりませんから、お身体が敏感な方や神経質な方は、光触媒のご利用を避けられた方が良いでしょう。

この記事の著者/責任者

島田幸一

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)

私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。

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