
室内のホルムアルデヒド濃度には、さまざまなところで指針値が設定されています。
その主なものとしては、厚生労働省の指針値と、国土交通省の認定でF☆☆☆☆(エフ・フォースター)とかFスター認定と言われるものがあります。
この2つの基準値が、ホルムアルデヒドの基準値として利用されることが多いので、ご説明したいと思います。
また、ホルムアルデヒドの室内濃度が基準値を超えてしまったときの対策についても解説いたします。
厚生労働省の指針値
厚生労働省のホルムアルデヒド濃度の指針値は、厚生労働省ホームページ「室内空気中化学物質の室内濃度指針値について」に記載されています。
それによると、ホルムアルデヒド濃度の指針値は、「100μg/m³(0.08ppm)」です。
この単位について解説しますと、部屋の空気1m3当たりに、ホルムアルデヒドの質量が100μgあると指針値に達します。μは、「マイクロ」と言って、ミリの1/1,000の補助単位です。100μgは、0.1mgです。とても低い濃度が指針値になっています。
また、ppmは微量な濃度の単位で利用されるものです。ppmは100万分の1です。0.08ppmとは、空気を1とするとホルムアルデヒドの割合が、ガスの状態で0.08/1,000,000という濃度です。
ガスの濃度は室温によって膨張したり収縮したりしますが、空気とホルムアルデヒドの膨張率はことなりますから、ppmでの表示の場合は、「25℃換算」という具合に、25℃で0.08ppmとされています。
国土交通省のF☆☆☆☆
国土交通省のF☆☆☆☆とかFスター制度という認定制度も、ホルムアルデヒドと関連する基準値です。
建物を建てるときに、ホルムアルデヒドが揮発する恐れのある建材(ホルムアルデヒド発散建築材料)を使用した場合に、その建材がどれくらいの速度でホルムアルデヒドが揮発してくるのかの「ホルムアルデヒドの発散速度」によって、☆の数で評価され、認定が付与されます。
詳細は、国土交通省ホームページの資料「シックハウス対策に係る技術的基準(政令・告示)について」をご参照いただきたいのですが、その評価をまとめると、次の表の通りです。
| ホルムアルデヒドの発散速度 | 認定 |
|---|---|
| 0.12mg/m2h超 | 無等級(使用禁止) |
| 0.02mg/m2h超、0.12mg/m2h以下 | F☆☆ |
| 0.005mg/m2h超、0.02mg/m2h以下 | F☆☆☆ |
| 0.005mg/m2h以下 | F☆☆☆☆ |
発散速度の単位「mg/m²h」の意味は、建材1m2の面積から1時間当たりに、何mgのホルムアルデヒドが揮発してくるかを表す数値になります。
ホルムアルデヒドの発散速度が0.12mg/m²hを超える建材は、使用禁止となっています。
そして最高等級のものがF☆☆☆☆ですが、「0.005mg/m²h以下」となっていることから、ホルムアルデヒドが揮発してくるものであっても、揮発速度がゆっくりであれば最高等級が認定されるわけです。
トータルでどれくらいの量のホルムアルデヒドが出てくるかは認定の対象外ですし、ホルムアルデヒド以外の化学物質を使っていても、F☆☆☆☆が認定されるというツッコミもあります。
ホルムアルデヒド対策の方法
部屋の中のホルムアルデヒド濃度が高い場合の対策には、いくつも方法があります。有効かそうではないかは別として、その方法を列挙すると、
- 換気
- 吸着
- 分解
- 空気清浄機
換気は、もっともオーソドックスな方法です。室内のホルムアルデヒド濃度の高い空気を排気して、新鮮な外気を取り入れ、ホルムアルデヒド濃度を下げる方法です。
吸着には、主に活性炭や吸着剤を使用する方法があります。部屋の中に吸着剤を置いたり、敷き詰めたりして、ホルムアルデヒドが吸着剤に触れることによって吸着され、室内の濃度を下げることができます。
ホルムアルデヒド濃度をしっかりと下げたい場合には、吸着剤とホルムアルデヒドが接触する機会を増やす必要があります。具体的には、吸着剤を床下に敷き詰めたり、活性炭を室内の壁の中に塗布したりする方法があります。住宅の床下に活性炭を大量に敷き詰めるケースもあります。
分解には、オゾンや光触媒などによる分解があります。オゾンも光触媒も、ホルムアルデヒドを酸化分解する性質があります。
オゾンを利用する方法は、オゾン脱臭器を利用します。ところが、放電を利用してオゾンを発生させるオゾン脱臭器からは、オゾンと一緒に窒素酸化物も発生するため、ホルムアルデヒドが分解できても、窒素酸化物の濃度が高まるので、あまり良いとは言えません。しかも、オゾンはホルムアルデヒドを分解する速度は遅いです。
空気清浄機は、活性炭を利用しているものと、光触媒で分解するものがあります。効果の高い空気清浄機を利用すると、ホルムアルデヒド濃度を効率的に下げることができます。活性炭フィルターは、定期的に効果が必要ですし、電気も使うのでランニングコストがかかります。
弊社では、ホルムアルデヒド対策は換気と光触媒の組み合わせが良いと考えています。
光触媒による分解
光触媒と言ってもいろいろな種類があり、ホルムアルデヒドを分解する性質が高いものから、まったくと言ってよいほど効果の弱いものもあります。
効果の弱い光触媒=酸化チタン
ホルムアルデヒドを分解する効果の弱い光触媒は「酸化チタン」です。
なぜ酸化チタンがホルムアルデヒドを分解する効果が弱いのかといいますと、それは紫外線にのみ反応して効果を発揮するためです。
ホルムアルデヒド濃度を下げたい場所とは、室内のことです。室内には紫外線がほとんどありませんから、酸化チタンを使ったとしても効果を発揮しません。
室内にて酸化チタンに効果を発揮させるためには、南の窓際の直射日光が入ってくる場所か、紫外線ランプを設置して紫外線を照射し続けるかのどちらかになります。
可視光応答型光触媒の利用
可視光応答型光触媒とは、蛍光灯やLED照明といった目に見える光によって効果を発揮する光触媒のことです。室内の光でホルムアルデヒドを分解するためには、可視光応答型光触媒を利用することが必須条件となります。
可視光応答型光触媒といっても、これもいろいろな種類があります。主なものとしては、
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
これら以外にも可視光応答型光触媒は存在しますが、あまりにも効果が弱いため、本音で語ると「なぜこのような光触媒が実用化されたのか?」と疑問に思ってしまうものもあります。
これらの中で、もっともホルムアルデヒドを分解するものは銅ドープ酸化チタンです。
しかも、銅ドープ酸化チタンには他の光触媒には無い、特殊な性質もあります。
銅ドープ酸化チタンによる特殊な性質
銅ドープ酸化チタンの特殊な性質は、次の3点です。
- 他の可視光応答型光触媒よりも10~20倍以上の高い効果がある
- ホルムアルデヒド以外のいろいろな種類の化学物質の分解もできる
- 夜の無光状態でもホルムアルデヒドを分解できる
光触媒の知識があり銅ドープ酸化チタンの存在をご存じない方が、この3点の特性を見たならば、驚かれることと思います。可視光下で高い効果があることはもちろんですが、一般的な光触媒ではいろいろな化学物質の分解ができないからです。
銅ドープ酸化チタンで分解を確認した化学物質の種類は、次のものがあります。
- ホルムアルデヒド
- アセトアルデヒド
- アンモニア
- トルエン
- キシレン
- スチレン
- エチレン
- 酢酸
- 2-ノネナール
- イソ吉草酸
- トリメチルアミン
- イソプロピルアルコール
- メチルメルカプタン
これらの中で、トルエンやキシレン、スチレンの分解ができることが、他の光触媒と大きく異なるものです。これら3種類は、芳香族化合物と言って炭素結合の強いベンゼン環を持つ化学物質です。
これらもシックハウス症候群の原因物質として、厚生労働省の指針値が定められているものですが、銅ドープ酸化チタンであれば芳香族化合物を分解できることが、大きな特徴です。
ホルムアルデヒドを含む、いろいろな種類の化学物質を対策したい場合は、銅ドープ酸化チタンをご利用ください。
銅ドープ酸化チタンの利用方法
銅ドープ酸化チタンの利用方法には、次の2種類ございます。
- 光触媒スプレーの利用
- 光触媒コーティング施工
触媒スプレーの利用

銅ドープ酸化チタンを使った光触媒スプレーは、弊社製品であれば「アキュートクリーン」です。
アキュートクリーンを、壁紙や天井、床、家具など、部屋全体にスプレーしておけば、ホルムアルデヒド対策ができます。
アキュートクリーンの成分は、銅ドープ酸化チタンと水だけで、アルコールや有機溶剤などを利用していませんから、ホルムアルデヒド対策に適しています。
| 原材料 | 酸化チタン、銅、水 |
|---|---|
| アルコール | 無添加(ノンアルコール) |
| 香料 | 無添加(無香料) |
| 容量 | 200mL(600回ほどスプレー可) |
| 価格 | 2,200円(税込) |

光触媒コーティング施工
光触媒コーティング施工とは、銅ドープ酸化チタンを使ったコーティング剤を部屋全体に塗布する方法です。
弊社製品であれば、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を利用し、それを専用のスプレー装置(ABAC温風低圧塗装機)で塗布します。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)には、接着成分としてアモルファス酸化チタンが添加されています。
アモルファス酸化チタンは、乾燥すると塗布面に強固に接着するので、銅ドープ酸化チタンが塗布面に定着し、耐久性も高いです。
| 光触媒成分 | 銅ドープ酸化チタン |
|---|---|
| 接着成分(バインダー) | アモルファス酸化チタン |
| その他 | 水 |
光触媒コーティング施工は、ABAC温風低圧塗装機と施工技術を要するため、弊社もしくは弊社の施工代理店にご相談ください。

この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。
