戸建てやマンションなど、新築住宅の玄関を入ると、新築特有の化学物質や接着剤のような臭いがします。
その臭いによって、シックハウスになり頭痛がする人や気分が悪くなる人がいます。
この臭い主な成分は、ホルムアルデヒドなどの化学物質の臭いです。
このような新築の臭いを消臭する方法としては、換気をすることが推奨されます。最近では、24時間換気が当たり前となった理由も、そこにあります。
ですが、使われている建材から新築特有の臭いが出続けるのであれば、換気以外の方法でも消臭することが求められます。その方法の一つに光触媒があります。
光触媒は、正しい成分を選ぶと新築の臭いを消臭してくれますが、間違ったものを選べば、消臭効果がまったくありません。
この記事では、新築特有の臭いを消臭できる光触媒成分について解説いたします。
新築の臭いの原因とは?
新築の臭いの原因は、使用されている建材から出てくるガスです。建材には、さまざまな化学物質が利用されています。その化学物質が少しずつ揮発してきて、新築の臭いとなります。
このガスのことを、揮発性有機化合物(VOC)といいます。VOCには100種類以上とも200種類以上ともいわれていますから、ホルムアルデヒドを使用していない建材を利用したとしても、新築の臭いがします。
最近の住宅は機密性が高くなったので、新築の臭いがこもりやすくなっています。
Fフォースター建材で立てた家でシックハウスに罹った事例
以前に、「F☆☆☆☆(Fフォースター)の認定を受けた建材だけで家を建てたが、シックハウス症候群に罹ってしまった」という人の話を聞いたことがあります。
家主は、その家に住むことができませんし、シックハウス症候群が理由で新築を売却しようとしたら、まったく売れなかったため、新築の家を解体して新しく建て替えました。
Fフォースターの基準は、シックハウスの主な原因物質といわれているホルムアルデヒドが、部屋の中に揮発して出てくる濃度によって決まります。Fフォースターの建材とは、ホルムアルデヒドがほとんど出ない建材です。
国土交通省のホームページの「シックハウス対策に係る技術的基準(政令・告示)について(PDF)」をご参照ください。
まず、「なぜFフォースターの建材を使ったのに、なぜシックハウスに罹ってしまったのか?」ということですが、建材にはホルムアルデヒド以外の成分が利用されているということです。Fフォースターの建材は、確かにホルムアルデヒドが揮発してきませんが、その他の化学成分が揮発してきて、そのガスによってシックハウスに罹ってしまったと思われます。
また、シックハウスで住めなくなったので、その住宅を売ろうとしましたが、買い手が現れませんでした。「なぜ建てたばかりの新築なのに売れないのか?」ということですが、家を売却するときには、その理由を明示しなければいけないからです。「売却理由は、シックハウスに罹ってしまったからです」と言われて、その家を誰が買うのでしょうか?
結局、その人は家を解体して、新しい家を建て直しました。
VOCの出ない家を建てることはほぼ不可能
健康に気を遣われる方は、「完全に新築の臭いが出ない建材で家を建てたい」とお考えの人もいらっしゃると思います。しかし、現在ではVOCが出ない建材を利用した家を建てることは、ほぼ不可能だと思います。
VOCは、プラスチックから出てきますから、システムキッチンやユニットバスを導入したらVOCが発生します。壁紙クロスを貼った部屋では、その接着剤からもVOCが出てきます。VOCが出ない接着剤は、でんぷん糊です。しかし、接着力を考えると、現実的ではありません。
新築に新しい家具を入れても、家具からVOCが出てきます。
新築の臭い対策
新築の臭い対策としては、基本は換気です。現在は、新築を建てると24時間換気が義務付けられていますが、シックハウス対策が義務付けられた理由です。24時間換気されていても、新築の臭いがする場合があります
換気以外の新築の臭い対策としては、次の方法があります。
- VOCを吐出させる(部屋の加熱)
- VOCを吸着する(活性炭などの利用)
- VOCを分解する(光触媒コーティング)
VOCを吐出させる(部屋の加熱)
部屋の加熱は、締め切った部屋の中にストーブなどの過熱装置を設置して、部屋の中の温度を高め、VOCを吐出させる方法です。化学物質は、加熱されると揮発しやすくなりますが、部屋の温度を高めることによって、なるべく揮発させて換気する方法です。
この方法はある程度は効果があると思います。しかし、すべてのVOCを揮発させ切ることは難しいと思います。
VOCを吸着する(活性炭などの利用)
VOCを吸着させる方法とは、活性炭やアパタイトなどの多孔質のものを置いておき、VOCを吸着させて、新築の臭いを抑えるものです。
下駄箱の中に備長炭を入れて消臭をしている人もいらっしゃると思います。それと同じ効果で、VOCを吸着させます。吸着されたVOCは、また揮発してくることもありますが、吸着している間に分解されて、臭いが無くなっていきます。
この方法も効果があると思います。吸着剤には吸着できる限界があるので、それを超えないように吸着材をたくさん設置しておくことが大事です。また、部屋の中に設置しておけばなお良いです。そうすることで、新築の臭いを無くすことができるかもしれません。
漆喰や珪藻土を部屋に塗装することでも、VOCを吸着してくれる効果があるので、部屋中を漆喰や珪藻土で覆う方法もあります。
VOCを分解する(光触媒コーティング)
部屋中を光触媒コーティングして、VOCを分解する方法があります。
光触媒とは、光エネルギーを受けると、有機物を分解する性質を持ちます。VOCも有機物の一種ですから、光触媒で分解される対象となります。
光触媒成分には、いろいろな種類があり、新築の臭いが分解できない光触媒成分も存在するので、どのような光触媒成分を選んでコーティングするのかによって、効果に大きな差があります。
新築の臭いが分解できない光触媒成分とは?
光触媒成分によっては、部屋の中のVOCを分解できない場合があります。その理由は、次の2つです。
- 部屋の中では触媒の効果を発揮しない光触媒成分がある
- VOCを分解できない光触媒成分がある
部屋の中では触媒の効果を発揮しない光触媒成分とは?
部屋の中では触媒の効果を発揮しない光触媒成分の代表は、酸化チタンです。酸化チタンは、光触媒成分としてもっとも利用されているものです。酸化チタンは、紫外線を吸収することで、強い触媒の効果を発揮し、ホルムアルデヒドなどを分解します。
ところが、部屋の中にある明かりには、紫外線がほとんど含まれていません。また、窓際で直射日光が入る部屋があったとしても、時間が限定されてしまいます。
VOCが分解できない光触媒成分とは?
光触媒成分によっては、光が当たって活性化しても、VOCが分解できない場合がります。その理由は、次の2つです。
- 光触媒成分の効果が弱い
- VOCの種類によっては分解できないものがある
光触媒といっても、たくさんの種類があります。酸化チタンは紫外線が当たれば強い酸化力を発揮しますが、部屋の中では紫外線が少ないので効果がありません。部屋の中でも効果のある代表的な光触媒成分は、酸化タングステンです。酸化タングステンは、確かに蛍光灯やLED照明の光でも、触媒の効果を発揮し、ホルムアルデヒドといった分解が簡単な成分であれば分解できますが、その効果は弱いです。
また、VOCの種類によっては、酸化チタンに紫外線を当てたとしても分解できない成分もあります。トルエンやキシレン、スチレンといったベンゼン環を持つ成分です。
部屋の中でも新築の臭いが消臭できる光触媒成分とは?
先ほど、いろいろな光触媒成分があることを述べましたが、酸化チタンでも分解できないトルエンやキシレン、スチレンといったVOCを分解できる成分があります。
その成分の名前は、「銅ドープ酸化チタン」です。
銅ドープ酸化チタンとは?
銅ドープ酸化チタンとは、酸化チタン(アナターゼ型)に銅を結合させた成分です。酸化チタンは紫外線にしか反応しませんが、銅を結合させた銅ドープ酸化チタンは、部屋の中の光でも強力に触媒の効果を発揮します。
そして、酸化タングステンと比べて、銅ドープ酸化チタンの消臭効果は、同じ環境であれば数倍ほど高いと思われます。
そして、さまざまなVOCを強力に分解できる、数少ない光触媒成分の一つであり、光触媒コーティング剤としても市販されているものです。
銅ドープ酸化チタンの特性
銅ドープ酸化チタンを世界で初めて発見したのは、弊社の技術チームです。発見した当初は、あまりにもの性能の高さに、発見した本人が疑ったほどです。
紫外線に反応させたら、いろいろなVOC成分を、ぐんぐんと分解していくことが判りました。この試験結果については、「揮発性有機化合物(VOC)を分解できる光触媒成分とは?」をご参照ください。
さらには、驚くべき特性があることも発見しました。それは、光が当たっていないときでも、触媒の効果を発揮することです。
光触媒は、その名の通り光が当たっていないと効果がありません。ところが、銅ドープ酸化チタンは、光触媒としての性質を持ちつつ、光が当たっていない暗所でも、触媒の効果を発揮します。
部屋の中のVOCを分解したくても、夜間には効果がなければ、寝るときにVOCの臭いで苦しむことになるかもしれません。銅ドープ酸化チタンを使えば、夜間でもVOCを分解できます。
新築の臭いが分解できる
光触媒コーティング塗装ならイリス
また弊社は、世界で初めて、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を開発しました。その製品は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
銅ドープ酸化チタンを部屋の壁や天井などに塗装しておけば、部屋の空気中に含まれるVOCを分解消臭できますし、壁面から吐出しようとしているVOCをその場で分解ができます。
ホルムアルデヒドなどのVOCによる新築特有の臭いの消臭なら、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティングをぜひご利用ください。
光触媒コーティング剤の塗装は、専用の塗装装置とスプレーガンを用いるため、弊社の製品を扱う施工代理店にご依頼いただくことになります。施工代理店一覧はこちらのページです。
施工のご依頼は、弊社もしくは弊社の製品を扱う施工代理店までご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。