ホテルの個室のバスルームには、たいていシャワーカーテンがあります。
ホテルのご利用者様が、シャワーを浴びるときに、シャワーカーテンの下の方が、黒色やピンク色をしていたら、嫌な気分になるものです。
シャワーカーテンは消耗品のようなもので、普段は洗濯をしますが、カビ汚れが目立ってきたら交換します。
現在は、資材の価格が上がってきていることもあり、シャワーカーテンを防カビコーティング加工して、なるべく交換しないようにしているホテルもあることでしょう。
シャワーカーテンの防カビコーティング加工の一つとして、光触媒コーティング加工があります。光触媒コーティング加工は、塗料の選択を誤ると、まったく効果がないばかりか、シャワーカーテンがカビる原因になることさえあります。
この記事では、シャワーカーテンの防カビで光触媒コーティング加工を選ぶメリット、効果の高い光触媒コーティング塗料の種類、防炎シャワーカーテンに光触媒コーティング加工するときの注意点などをご説明します。
シャワーカーテンのカビ対策
シャワーカーテンの目的は、バスタブの外にシャワーの水が飛散しないようにすることが、主な目的です。
他にも、水蒸気がバスルーム全体に拡がらないようにして、バスルームの結露を抑えたり、バスタブの保温効果を高める目的もあります。
カビの発生原因は、高い湿気とカビの栄養源です。シャワーカーテンは、バスタブが使用される度に湿気が付着しますし、お風呂場は汚れが付きやすいので、シャワーカーテンの防カビは必須となります。
シャワーカーテンの防カビには、カーテンの素材に防カビ素材を用いたり、撥水コートや防カビコートをしたり、頻繁に漂白剤で洗濯をしたり、バスルームをよく換気して湿気を取り除いたりする方法があります。
それでも、防カビには限界があるので、いずれはカビが発生してしまいます。そうなったら、シャワーカーテンを交換するタイミングです。
ホテルを利用するお客様は、カビが生えた部屋は利用したくないはずです。お客様に繰り返しご利用いただくためにも、シャワーカーテンのカビには敏感になっておきたいものです。
光触媒コーティング加工によるシャワーカーテンの防カビ
シャワーカーテンの防カビ方法の一つとして、光触媒コーティング加工があります。
光触媒コーティング加工とは、カビ菌を分解・除菌してくれる光触媒成分をシャワーカーテンに塗装して、シャワーカーテンを防カビする方法です。
光触媒がカビ菌を分解・除菌するメカニズム
光触媒は、光が当たるとその表面にある水分や酸素が反応し、OHラジカルやスーパーオキシドアニオンという活性酸素に変化します。OHラジカルは高い酸化力を持つ物質です。それに触れた有機物は、すぐに分解されてしまいます。
カビ菌のような微細な有機物は、光触媒の性質によって、すぐに分解・除菌されます。
また、光触媒はカビ菌を分解・除菌しても、成分そのものは変質しません。光触媒成分が接着し続けたら、半永久的に防カビをし続けてくれます。
光触媒コーティング加工で、この性質をシャワーカーテンに付与することで、シャワーカーテンを長期間防カビしてくれるのです。
光触媒コーティング加工のメリット
光触媒は、有機物を分解する効果があるので、防カビ以外にもメリットがあります。それは、除菌や消臭、防汚です。
光触媒はカビ菌を分解・除菌してくれるのですから、カビ菌以外の菌も分解・除菌してくれます。
また、臭いの成分は有機物でできています。カビ菌の臭いも胞子の臭いですし、アンモニアや体臭、香水の臭いも有機物です。それらの臭いも光触媒で分解が可能なので、消臭ができます。
シャワーカーテンだけでなく、バスルームや個室全体を光触媒コーティング加工しておけば、個室の防臭ができます。
光触媒には、「親水性」と言われる性質があります。この性質は、水と馴染む性質です。この性質によって、シャワーカーテンに付着した汚れが、水分によって浮き上がり、シャワーの水といっしょに流れ落ちていくのです。このようなメカニズムで、シャワーカーテンの防汚ができます。
光触媒の親水性によるデメリット
シャワーカーテンに撥水コートをしていると、水をはじいて、シャワーカーテンに水が付着することを防いでくれます。すると、カビが発生する要因の一つである水分が、シャワーカーテンから落ちていきやすいので、防カビができます。
ところが、シャワーカーテンを光触媒コーティング加工すると、その親水性によって水と馴染んでしまうので、湿気がシャワーカーテンに付着しやすくなります。すると、カビに水分を与えることになり、防カビとしてはマイナスの効果となります。
光触媒コーティング加工によってシャワーカーテンに水が付着するようになったとしても、カビ菌を分解・除菌してくれる機能が働いたら、結果的に防カビになります。
光触媒はバスルームの光でも効果があるのか?
光触媒は光を受けて、カビ菌を分解・除菌してくれる性質があることを述べました。
少し驚きの見出しですが、もしバスルームの光で光触媒効果がなければ、シャワーカーテンを光触媒コーティング加工しても、親水性の効果だけが出てしまって、カビが発生することになります。
ホテルのバスルームの光は、LED照明であることが多いと思います。LED照明で光触媒の効果が出るかどうかがポイントになります。
またバスルームは、ずっと照明を点灯しているわけではないので、短い時間の明かりでも防カビ効果があることが求められます。
酸化チタン光触媒はLED照明で効果が出るのか?
光触媒成分の代表格は、酸化チタンと言われる成分です。金属のチタンが酸化した成分です。この成分は紫外線を吸収することで、カビを強力に分解・除菌効果を発揮します。
酸化チタン光触媒は、紫外線があると強い防カビ効果を発揮するわけですから、LED照明から紫外線が出ていたら、シャワーカーテンを強力に防カビができます。
次の図は、LED照明の光のスペクトル分布です。虹色のところが、LED照明から出ている光の波長で、縦軸はその強度です。
酸化チタンが防カビ効果を発揮する光の波長は、380nm以下の紫外線領域の光ですが、LED照明からは、紫外線領域の光は出ていません。そのため、シャワーカーテンに酸化チタン光触媒をコーティング加工しても、防カビ効果はありません。
では、「LED照明の光でも防カビ効果のある光触媒成分は無いのか?」ということですが、ございます。
酸化タングステンや窒素ドープ酸化チタンなどの効果は?
LED照明の光でも光触媒効果のある成分は、酸化タングステンや窒素ドープ酸化チタンといった光触媒成分が一般的に知られています。これらの光触媒成分はLED照明の青色などに反応して、光触媒の効果が出ます。
しかし、酸化タングステンや窒素ドープ酸化チタンにもデメリットがあります。それは、カビを分解・除菌してくれるだけの光触媒効果が出にくいというものです。
酸化タングステンや窒素ドープ酸化チタンなどの光触媒成分を調べていると、LED照明と同じような可視光を照射して、抗ウイルスや抗菌効果があるようなグラフを見かけることがあります。その試験で使用している光を確認すると、LED照明の5倍~10倍もの明るさの光を照射していることがあります。
「5倍~10倍の光の強さだと、抗菌効果もあることだろうけれども、室内やバスルームの光は、その光の強さの1/5~1/10程度ですよ」と言いたくなります。
また、酸化タングステンは親水性の効果が高いので、水を余計に引き寄せてくれるのです。酸化タングステンを使った光触媒コーティング加工は、カビ菌の分解・除菌効果が弱く、水を余計に引き寄せてくれるので、防カビとして使用するおとは、おすすめできません。
「シャワーカーテンにLED照明で反応する光触媒コーティング加工をしてもらった」としても、その加工が酸化タングステンを使ったものでしたら、逆効果になる場合があるのです。
では、「酸化タングステンのように、LED照明の光の波長で、高い防カビ効果のある光触媒は無いのか?」ということですが、ご安心ください。その光触媒成分の名前は、銅ドープ酸化チタンです。
銅ドープ酸化チタンの高い防カビ効果
銅ドープ酸化チタンとは、先ほど解説した酸化チタンに銅を加えた成分です。この成分は、酸化タングステンと同じようにLED照明の光でも、光触媒の効果を発揮し、なおかつ酸化チタンのように強力な防カビ効果を実現します。
次の図は、先ほどの図に銅ドープ酸化チタンが効果を発揮する光の波長領域を加えたものです。
銅ドープ酸化チタンは、480nmの波長の光まで、防カビ効果を発揮します。LED照明から出ている青色の光が、銅ドープ酸化チタンを活性化させて、シャワーカーテンを防カビしてくれます。
また、銅ドープ酸化チタンに含まれている銅は、抗菌作用があります。その作用によって、LED照明の光が当たっていないときでも、シャワーカーテンを防カビしてくれます。そして、LED照明の光が当たれば、カビ菌を強力に分解・除菌します。
シャワーカーテンに防カビ効果の高い光触媒コーティング加工をするなら、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング塗料をご利用ください。
弊社の製品であれば、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)をご利用ください。
防炎シャワーカーテンの光触媒コーティング加工について
ホテルのシャワーカーテンは、防炎素材のものや防炎加工され、消防法に合致し防炎マークの付いたものを利用していると思います。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、防炎シャワーカーテンにも塗装は可能です。
理由は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)に使用している成分は、「酸化チタン、銅、水」のみの無機系ですので、消防法の対象外なのです。
以上、シャワーカーテンの防カビに最適な光触媒コーティング加工について、ご説明いたしました。シャワーカーテンの防カビに最適な光触媒成分は、銅ドープ酸化チタンです。
ホテルでシャワーカーテンのカビ対策でお困りなら、光触媒コーティング加工をお試しください。
銅ドープ酸化チタンを用いた光触媒コーティング塗料は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。製品の詳細は、こちらのページをご覧ください。
この塗料は、シャワーカーテンのみならず、バスルームやホテルの室内の壁紙、カーペット、厨房などといった場所の防カビ、除菌、消臭にご利用いただけます。
シャワーカーテンの防カビコーティングや、ホテルの室内の光触媒コーティング施工なら、弊社もしくは弊社の光触媒製品を扱う施工代理店まで、お気軽にご相談ください。施工代理店一覧は、こちらのページです。
また、銅ドープ酸化チタンを光触媒コーティングするのではなく、ホテルの除菌スプレーや消臭スプレーとして利用したい方は、光触媒の業務用消臭剤(BRE025-AB2)もございます。一般のご家庭の方は、ご家庭用除菌・消臭スプレー「アキュートクリーン」をご利用ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。