クリーンルームは、雑菌やカビ菌などの増殖を抑えることが大事であることは、述べるまでもありません。
クリーンブースも同様です。
クリーンルームを利用すると、人や検査体などによって外部から雑菌やカビ菌、それらの胞子が持ち込まれてしまいます。また、クリーンルームの湿度が高ければ、雑菌やカビ菌が増殖しやすくなります。
HEPAフィルターやULPAフィルターなどを使って洗浄された空気を入れていても、人や検査体などからカビ菌などの雑菌、塵や埃が出てきますから、定期的に掃除が必要です。
掃除はマニュアルに沿って行われますが、それでも人によって掃除のレベルが異なり、清浄度を高いレベルで保てない場合もあります。清浄度を高いレベルで保つ方法の一つとして、光触媒コーティング塗装をおすすめします。
この記事では、クリーンルームで抗菌力を発揮する光触媒コーティングの選び方や施工方法などについて解説いたします。
光触媒コーティングとは？
光触媒コーティングとは、光触媒でコーティング加工する施工のことです。光触媒成分が含まれたコーティング剤を塗装します。
光触媒は、光エネルギーによって雑菌やカビ菌の活動を停止させたり殺菌したりできるので、それをクリーンルーム内にコーティングしておけば、侵入してきた菌類の抗菌ができます。クリーンルームは、比較的明るい部屋が多いので、高い抗菌力を発揮する場合があります。
ただし、高い抗菌力を発揮するためには、クリーンルームでも効果を発揮する光触媒コーティング剤を選んだ場合のみです。
このことは、当たり前のように思いますが、光触媒コーティング剤によってはこの当たり前が実現できない製品もあります。
本当にクリーンルーム内でも抗菌力を発揮するのか？
ここで、光触媒の知識をお持ちの方であれば、「クリーンルームに使用されているLED照明では、光触媒の効果は無いのでは？」とお考えになられるかもしれません。
確かに、光触媒として一般的に利用されている「酸化チタン光触媒」は、紫外線でしか抗菌力を発揮しませんから、そのように考える方もいらっしゃいます。
光触媒には、酸化チタン以外にもたくさんの種類があり、LED照明や蛍光灯といった光でも抗菌力を発揮するものがあります。
光触媒コーティング剤として実用化され、クリーンルームの光でも抗菌力を発揮する光触媒成分「可視光応答型光触媒」は、次のものになります。
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 鉄ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
可視光応答型光触媒とは、私達の目に見える光でも抗菌力を発揮する光触媒のことです。可視光応答型光触媒は、紫外線はもちろんのこと、可視光でも抗菌力を発揮します。
ちなみに、酸化チタンは紫外線にしか反応しませんから、紫外線応答光触媒といわれます。
どの光触媒がクリーンルームでもっとも抗菌力を発揮するのか？
上記の光触媒の中で、「どの光触媒を用いたら良いのか？」ということですが、クリーンルームでもっとも抗菌力を発揮する光触媒は、「銅ドープ酸化チタン」です。
銅ドープ酸化チタンは、光触媒コーティング剤として利用した場合、他の光触媒よりも数倍の抗菌力を発揮します。その理由は、
- 可視光下で他の光触媒よりも抗菌効果が最も高い
- 暗所でも抗菌力を発揮する
光触媒コーティング剤の中には光触媒成分が混ぜてありますが、あまり多くの量を添加すると、液剤の中で結晶化して析出してしまったり、ゲル化して粘性が高まったりして、液剤が利用できなくなります。銅ドープ酸化チタンは、酸化チタンにドープした銅の粒子が非常に小さいため添加量を比較的多くできるので、それが銅ドープ酸化チタンの効果を高めている原因の一つと思われます。
また、銅ドープ酸化チタンは、他の光触媒には無い、特別な性質があります。それは、「暗所でも抗菌力を発揮する」という性質です。
通常、光触媒は光が当たらないと抗菌力を発揮しませんが、銅ドープ酸化チタンだけ光が当たらない暗所でも抗菌力を発揮する成分なのです。その理由は、酸化チタンに結合したナノサイズの酸化銅が、常温でも触媒の効果を発揮しているためだと思われます。
銅ドープ酸化チタンを使った弊社の液剤は、「屋内用光触媒コーティング剤（BX01-AB1）」です。
この製品は、世界で初めて銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤で、20年以上の歳月をかけて改良し、効果の高さと耐久性を両立させた製品です。耐久性は、10年以上あります。
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1が塗装できる材質
屋内用光触媒コーティング剤（BX01-AB1）はさまざまな材質に塗装ができます。例えば、クリーンルームのこういった箇所に塗装ができます。
- 樹脂パネル
- 防塵塗料
- プラスチック容器やシート
- ステンレス製の容器やダクト
- 金属の手すりやドアノブ
- クリーンルームウェアやシューズ
光触媒コーティング塗装は、バインダー成分のアモルファス酸化チタンによって、強力に固化します。しかし、塗装面が平たんな場合は、摩擦や衝撃で傷が付いてしまいます。そういったことから、ステンレス容器などのよく使用するものは、単に塗布しただけでは耐久性が5年程度しか持ちません。
ステンレス製品の小物は、光触媒コーティングをした後に200℃くらいに加熱処理をすると、耐久性が上がります。
屋内用光触媒コーティング剤BX01-AB1は、プラスチックに塗装ができますが、プラスチックは水を弾きやすい性質があるため、均一に塗装できない場合もあります。プラスチックに均一に光触媒コーティング塗装したい場合は、「プラスチック用光触媒コーティング剤」をご利用ください。
プラスチック用光触媒コーティング剤は、塩化ビニルなどといった極端に水を弾く性質のあるプラスチック製品には利用できませんが、FRPやポリカーボネートといったプラスチックに、均一に塗装ができます。
これらの以外の材質に塗装をご検討されている場合は、弊社までお気軽にご相談ください。
クリーンルームに光触媒コーティングをするときの費用は？
施工費用は、塗装面積に応じて異なる塗装費、施工準備等を行う諸経費、現場までの移動の交通費の合算です。宿泊が必要となる場合は、宿泊費の実費がかかります。
5m×5mの窓がないクリーンルームであれば、高さが2.5mとして、四方と天井に光触媒コーティングをすると、塗装面積は、75m2です。1m2当たりの単価は、2,500円～3,000円が相場です。単価が2,500円だとすると、塗装費は18.8万円程度になります。
諸経費は1日当たり6万円ほどで、交通費は実費となります。工事が1日で終われば宿泊費はかかりませんが、施工範囲が広く、工事が複数日に渡る場合は、宿泊費の実費が必要となります。
5m×5mのクリーンルームの施工費用は、概算で30万円前後と思います。詳細なお見積もりは、弊社までご連絡いただき、場所や床面積などをお教えください。
クリーンルームの光触媒コーティング施工の流れ
クリーンルームの光触媒コーティング施工は、次の流れで行います。
- クリーンルームの片付け、清掃
- 施工機材の滅菌
- 光触媒コーティング塗装
- 乾燥
クリーンルームの清掃は、普段から行っているように清掃してください。
施工機材の滅菌は、ルールに従って行います。脚立などの大きな機材もあるので、そういった機材の滅菌方法をご指示ください。クリーンルームの施工前に、塗装機材を光触媒コーティング塗装するようにしています。
光触媒コーティング塗装は、ABAC温風低圧塗装機を用います。塗装後は乾燥まで待って終了です。乾燥には、夏であれば30分ほどです。冬であれば2時間ほどですが、エアコンを利用していただければ、1時間ほどで乾燥すると思います。
「左右塗装をしたら乾燥させ、上下塗装したら乾燥させて」を繰り返します。
クリーンルームの清浄度をさらに高いレベルにしたい場合には、クリーンルームの空調ダクト内や入り口付近、掃除機具などにも光触媒コーティングをしておくことです。
滅菌箱といったステンレス製の容器やクリーンルームウェアやシューズなどにも光触媒コーティングが可能です。
以上、クリーンルームの光触媒コーティングについて全体像を解説いたしました。クリーンルームの光触媒コーティング施工なら、弊社もしくは弊社の施工代理店までお気軽にご相談ください。
この記事の著者／責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。