キシレンとは、ベンゼン環にメチル基が2つ結合したものです。化学式はC6H4(CH3)2です。
環境省ホームページにキシレンの詳細がPDFで公開されています。そのページはこちらです。
キシレンの用途は、顔料や溶剤、接着剤などに利用されています。私達が生活をする上で、なくてはならない物質です。しかし、シックハウスなどの原因物質ともいわれているため、室内においては濃度の上限が設けられています。
キシレンは、空気中の酸素に触れて、少しずつ分解されていくようですが、完全に分解されるまで、何週間もかかる場合があります。そのため、キシレンを扱う工場や、シックハウス症候群で悩む方は、キシレンを早急に分解・除去することが求められます。
キシレンの分解について、いくつもの論文で紹介されていますが、光触媒による分解については、あまり研究がなされていません。その理由としては、「キシレンは、光触媒で分解されにくい」といわれているためです。
しかし、酸化チタン光触媒に、身近にも存在する、ある成分を加えたものに紫外線ランプを当てると、キシレンを急速に分解・除去することを発見しました。
また、この光触媒成分は、キシレン以外にもトルエンやスチレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどでも試験して、分解ができることを確認しました。これらの分解については、各コラムをご参照ください。
- トルエンの分解
⇒ トルエンを光触媒で分解する方法 - スチレンの分解
⇒ スチレンを光触媒で分解・除去する方法 - ホルムアルデヒドの分解
⇒ 光触媒でホルムアルデヒドが分解できる!?
この記事では、酸化チタン光触媒ではキシレンを分解できないことや、ある成分を加えた光触媒がキシレンを急速に分解していく試験結果をご覧いただきたいと思います。そして、キシレンの分解・除去は光触媒でもできることをご理解いただけたらと思います。
酸化チタン光触媒に「ある成分」を
添加したらキシレンが分解できた
効果の高い光触媒として知られている成分は、酸化チタンです。ただし、酸化チタンが光触媒の効果を発揮するためには、紫外線を当てないといけません。紫外線に近い紫色の光や紫外線の波長の光に反応して、光触媒の効果が出ます。
弊社では、20年以上前から、「酸化チタン光触媒を、可視光でも活性化させられないだろうか?」と研究を行い、世界で初めて室内の光でも除菌・消臭効果の高い可視光応答型酸化チタン光触媒を発明しました。
その成分として添加したものは、「銅」です。
銅は、財布の中の10円玉や、電気を伝える電線など、身近に存在しているものです。ご自宅で、銅鍋を利用されている方もいらっしゃるかもしれません。
銅は、抗菌作用があるので、たまたま「酸化チタンに加えたら、抗菌力が高まる光触媒ができるのではないか?」と思って実験していたところ、その成分が可視光でも光触媒の性質が出ることを世界で初めて発見しました。この可視光応答型酸化チタン光触媒を特許申請して発表したところ、多くの研究機関や企業から反響をいただきました。
この成分は、銅ドープ酸化チタン光触媒と名付けられました。
「キシレンは光触媒では分解ができない」といわれる化学物質ですが、銅ドープ酸化チタンであれば、キシレンを分解・除去することができました。
光触媒によるキシレンの分解効果の試験方法
試験や分析は、日本食品分析センター様に依頼して行っていただきました。キシレンの分解試験は、次の3種類の条件で試験しました。
- 光触媒なし(無塗布)
- 酸化チタン光触媒あり
- 銅ドープ酸化チタン光触媒
試験方法は次の手順にて行いました。
- 光触媒を塗布したタイルと、何も塗布していないタイルを用意
- 光触媒を塗布したタイル、無塗布のタイルを、それぞれ別の袋に入れ、ヒートシールを施す
- 袋に3Lの空気を入れ、濃度が100ppmとなるようにキシレンを添加
- 袋の中央部の紫外線強度が1mW/cm2になるようにブラックライトを照射し、試験を開始
- 定時にガス検知管により、キシレンの濃度を測定(30分後、1時間後、2時間後、3時間後、24時間後の5回)
酸化チタン光触媒のみによるキシレンの分解試験結果
一般的に「光触媒の性質がもっとも強い」として知られている光触媒の成分は、酸化チタン(アナターゼ型)です。まず、酸化チタンだけでキシレンが分解できるのか試験いたしました。
次のグラフは、酸化チタン光触媒を塗布したタイルと、無塗布のタイルで、キシレンの濃度変化を比較したグラフです。
上側の△のプロットのグラフが何も塗布していない無塗装タイル、下側の□のプロットのグラフが酸化チタン光触媒を塗布したタイルの結果です。
キシレンの濃度を測定した時間は、試験開始から30分後、1時間後、2時間後、3時間後、24時間後の5回です。
試験開始から3時間までは、無塗装タイルと酸化チタン塗装タイルでは、濃度に違いがありませんでした。24時間経過すると、無塗装タイルよりも酸化チタン塗装タイルの方が、若干キシレンを分解していることが分かります。しかし、これでは分解したとはあまり言えません。
酸化チタンは、紫外線が当たると高い光触媒の効果があるのですが、キシレンは分解できませんでした。これが「光触媒ではキシレンが分解できない」と誤解されている理由でもあります。
厳密には、酸化チタンのみの光触媒ではキシレンは分解できないということがわかりました。
銅ドープ酸化チタン光触媒による
キシレンの分解試験結果
銅ドープ酸化チタンを使ったキシレンの分解試験結果は、次のグラフです。上記のグラフに、銅ドープ光触媒の試験結果を◇のプロットとして加えました。キシレンが驚くほどの早さで分解されていることがわかります。
試験が開始されてから30分後には、すでに10%ほどキシレンが分解・除去されています。その後もキシレンが分解・除去され続け、3時間後には60%まで減り、24時間後の測定ではガス検知管の検出限界を下回りました。
酸化チタンに銅を添加した「銅ドープ酸化チタン」を利用し、紫外線を照射すると、キシレンを分解・除去する効果が強力に出ることが実証されました。試験を担当された方は、「酸化チタン光触媒ではキシレンを分解できない」ということをご存じだったため、この試験結果に驚かれていました。
この試験結果のように、銅ドープ酸化チタンに紫外線を照射すればキシレンを分解できるのです。
キシレンを分解・除去できる光触媒液剤製品
キシレンを分解・除去できる銅ドープ酸化チタンを使った光触媒液剤製品は、次のものがございます。また、光触媒コーティング剤ではなく、キシレンを分解・除去ができる光触媒液剤の開発も可能です。
- 屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)
- 車用光触媒コーティング剤(BXR02-C)
- キシレンを分解・除去できる光触媒液剤の開発
それぞれの製品を簡単に解説したいと思います。詳細は、それぞれの製品ページをご覧ください。
屋内用光触媒コーティング剤
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、銅ドープ酸化チタンを使った世界で初めての光触媒コーティング剤です。もともと、酸化チタンを可視光応答させるために開発したものですので、室内の光でも光触媒の効果が強力に出ます。
そのため、他社の可視光応答型光触媒コーティング剤よりも効果が高く、耐久性も高いので、他社製品を使って効果が実感できなかったお客様からご好評いただいています。
屋内用光触媒コーティング塗装(BX01-AB1)すると、室内のキシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)の分解・除去以外にも、次のような効果が得られます。
- 雑菌や病原菌、ウイルスなどの除菌
- 防カビ
- ペット臭や介護の臭い、油の臭いなどの消臭
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗装には、専用の塗装装置とスプレーガンが必要ですので、塗装のご依頼は、室内塗装を行っている弊社の施工代理店にご連絡ください。
車用光触媒コーティング剤
車用光触媒コーティング剤(BXR02-C)は、自動車の内装用光触媒コーティング剤です。世界を代表する大手自動車メーカーの高級車に「室内消臭・抗菌コート」という名称で純正品として採用されています。
酸化チタン光触媒を黒色のシートや床に塗装すると、酸化チタンの白色が出てしまい、白い粉を吹きつけたようになってしまいます。
車用光触媒コーティング剤(BXR02-C)は、酸化チタンの白色が出ないようにしつつも、光触媒の効果を最大限引き出すように成分調整しています。
車用光触媒コーティング剤(BXR02-C)の塗装も、専用の塗装装置とスプレーガンが必要ですので、塗装のご依頼は、自動車の塗装を行っている弊社の施工代理店にご連絡ください。
キシレンを分解・除去できる光触媒液剤の開発
弊社では、光触媒製品のOEM/ODM製造にも対応しており、キシレンを分解・除去できる光触媒液剤の開発も可能です。
弊社の製品には、光触媒の業務用消臭剤(BRE025-AB2)は、世界で初めて銅ドープ酸化チタン光触媒を使用した業務用消臭剤があります。この製品は、コーティング剤ではなく除菌・消臭を目的として開発しましたため、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)よりは光触媒成分の濃度を薄くしています。
業務用消臭剤(BRE025-AB2)の光触媒の濃度を濃く調整して、キシレンの分解試験で使用した光触媒と同等の液剤の開発も可能です。
キシレンを分解・除去できる光触媒液剤の開発をご希望の企業様は、お気軽にご相談ください。
以上、酸化チタン光触媒で分解できないキシレンですが、銅ドープ酸化チタン光触媒で素早く分解できることを解説いたしました。また、キシレンが分解できる光触媒製品も解説させていただきました。
キシレンなどの有機化合物を分解・除去したい企業様は、ぜひ弊社の銅ドープ酸化チタン光触媒が用いられた製品をお試しください。
弊社では、活性炭などに光触媒コーティング剤を塗装して、活性炭が揮発性有機化合物を吸着する能力を飛躍的に高める技術も持っています。もちろん、不織布やステンレスなどといった材質にも光触媒コーティングをする技術を持っています。
銅ドープ酸化チタンやこれらの塗装技術で、キシレンの分解・除去装置の開発も可能です。光触媒を使ってのキシレンの分解・除去でしたら、弊社までご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。