光触媒を外壁に塗装すると、外壁の防汚や防カビ・防苔の効果が期待できます。
光触媒コーティング剤の塗装は、専用の塗装機械とスプレーガンを用いて塗装をします。
この記事では、これから光触媒コーティング塗装を事業として取り入れたいとお考えの方に向けて、外壁用の光触媒コーティング剤を塗装するときに使用する液剤や塗装できる箇所、塗装機材、塗装方法などを解説します。
外壁の光触媒コーティング施工全体の流れを知りたい方は、「屋外用光触媒コーティング剤BX01の塗装方法や注意点」をご参照ください。
外壁に使用する光触媒コーティング剤とプライマー
外壁に使用する光触媒コーティング剤は、次の2種類です。
前者の液剤は、酸化チタンを使ったコーティング剤です。主に直射日光が当たる箇所に塗装します。後者は可視光応答型光触媒「銅ドープ酸化チタン」を使ったコーティング剤です。屋内用と記載されていますが、外壁にも利用できます。
後ほど解説いたしますが、屋外でも直射日光が当たりにくい場所、暗い場所では、カビや苔が発生しやすいです。そのような場所に屋外用光触媒コーティング剤(BX01)を利用すると、光触媒の効果が発揮されないため、カビや苔が発生する恐れがあります。
そのような場所には、薄暗くても触媒の効果を発揮する屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を用いてください。
屋外用光触媒コーティング剤(BX01)と屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の使い分けについては、「家の外壁に発生する苔を防止できる光触媒成分」をご参照ください。
外壁にて光触媒コーティング塗装できる箇所
外壁にて光触媒コーティング塗装ができる箇所は、次のような箇所です。
- ペンキ塗装の外壁(看板を含む)
- 樹脂製のサイディング
- 漆喰や珪藻土の外壁
- 石膏ボード
- タイル
- 打ちっ放しコンクリート外壁
施工業者は、ご依頼者様に光触媒コーティングしてもらいたい場所や、その面積を確認します。塗装面積や足場の有無などに応じて、工事の工程や費用が算出されます。
光触媒コーティング液剤を何リットル用意したらいいのか?
屋外用光触媒コーティング剤(BX01)を塗装する量ですが、外壁塗装では、50m2/Lを基本としています。
例えば、家の外壁に光触媒コーティング塗装するとして、その外壁の面積が窓の面積を差し引いて150m2だったとすると、液剤を3Lほど使用することになります。
そのようにして必要な量を計算し、弊社に液剤をご発注ください。弊社では、光触媒コーティング剤を1L単位で販売しております。
プライマーとは?
プライマーとは、下地剤のことです。光触媒コーティング剤を塗装する前に、ある条件の箇所には、あらかじめプライマーを塗装しておく必要があります。その条件には、次の2種類あります。
- 塗装面が有機物の場合
- 塗装面が打ちっ放しコンクリートの場合
塗装面が有機物の場合 ⇒ 屋外用プライマー(ASS01)を用いる
その条件の1つ目は、直射日光が当たる箇所で、なおかつ塗装面が有機物であることです。
光触媒は、基本的に光の強さが強いほど、光触媒の効果が強くなります。そのようなことから、直射日光が当たる箇所は、光触媒の効果が強くなるので、塗装面が有機物だとそれを劣化させてしまう恐れがあります。
有機物の外壁とは、ペンキが塗装された箇所や樹脂製の外壁です。光触媒の効果によって、それらに色あせが起きたり、劣化したりします。
プライマーを塗装しておけば、光触媒成分が下地に直接触れることがなくなり、光触媒が下地の色あせや劣化から守ってくれます。
外壁用のプライマーは、屋外用プライマー(ASS01)です。
屋外用プライマー(ASS01)の塗装は、光触媒コーティング剤の塗装と同じように、専用の塗装機械を用いて行います。専用の塗装機械については、後ほど解説いたします。
塗装面が打ちっ放しコンクリートの場合 ⇒ コンクリート用プライマー(セラミックプライマー)を用いる
外壁の打ちっ放しコンクリートの天敵は水です。水があると、コンクリートを劣化させ、内部の鉄器を腐食させて、ひび割れが起こります。光触媒には、コンクリートの天敵となる水分を呼び寄せてしまう、親水性という効果があります。
打ちっ放しコンクリートは、その質感を活かした外壁が多く存在します。その質感を活かしたまま、コンクリートの防汚や防カビ・防苔を光触媒コーティングで行う場合には、コンクリートを湿気対策するためのプライマーを利用します。
打ちっ放しコンクリート用のプライマー委は、コンクリート用プライマー(セラミックプライマー)です。
セラミックプライマーは、コンクリートにクリア塗装ができ、水を弾く性質があるので、その上から光触媒コーティングをしても、コンクリートに水がしみ込んでいくことを防いでくれます。
セラミックプライマーの塗装は、ペイントローラーで行います。塗装方法は、ペンキと同じなので、ここでは詳しくは述べないこととします。
光触媒コーティング塗装の工程作成や見積もりのときに、プライマーの施工も考慮に入れてください。
外壁用の光触媒コーティング剤や
プライマーを塗装する機材
外壁用の光触媒コーティング剤やプライマーを塗装するときは、塗装用の基材を用います。塗装機材は、次の通りです。
- ABAC温風低圧塗装機と光触媒コーティング専用ノズル
- ペイントローラー(セラミックプライマーを塗装する場合)
ABAC温風低圧塗装機とは?
ABAC温風低圧塗装機は、光触媒コーティング塗装に最適な塗装機械です。次の図は、ABAC温風低圧塗装機SG-91です。
装置本体から温風が出るので、光触媒コーティング剤が乾燥しやすいため、塗装の作業効率が上がります。また、SG-91は小型で持ち運びが便利ですから、脚立を使った外壁の光触媒コーティングにも向いています。
SG-91には、外壁の光触媒コーティング塗装に最適なPN-2Aスプレーガンが付属します。
PN-2Aスプレーガンの塗着効率と液剤の使用量
外壁の光触媒コーティングは、とても難しいとされています。その理由は、光触媒コーティング剤は塗料と比較して塗布量が少なく、少しでも風が吹いていたら、噴霧した光触媒コーティング剤が風で流されてしまって、塗着効率が極端に低くなるからです。
次の図をご覧ください。ABAC温風低圧塗装機SG-91に付属するPN-2Aスプレーガンは、噴霧された光触媒コーティング剤を包み込むように、エアカーテンが噴き出ます。
このエアカーテンによって、噴霧された光触媒コーティング剤が飛び散ることを防いでくれるので、多少の風でも問題なく均一な塗装ができます。そのため、塗着効率が約70%と、他のエアスプレーと比べると圧倒的な高さとなります。
塗着効率が高いと、それだけ光触媒コーティング剤の量が少なくて済みます。
先ほど、光触媒コーティング剤の使用量は50m2/Lであることをお伝えしましたが、これはABAC温風低圧塗装機を用いたときの量です。もし、一般的な外壁塗装の塗着効率25%前後のスプレーガンを利用した場合は、光触媒コーティング剤の必要量は、ABACを使ったときと比べて、約3倍の150m2/Lほどを使用することになります。
光触媒コーティング専用ノズルの口径
光触媒コーティング専用ノズルとは、ノズル口径がφ0.3mm~φ0.5mmといった小口径のノズルを用います。
それよりも大きなスプレーノズルを利用した場合、光触媒コーティング剤を吹き付け過ぎてしまって、塗りムラが生じてしまう場合があります。
塗装に慣れないうちは、φ0.3mmのスプレーノズルを利用して、丁寧に行うようにしてください。
外壁に光触媒コーティングをする前の準備
外壁に光触媒コーティングをする場合は、次の準備を行います。塗装機械の動作確認は、現場への移動前に行なっておいてください。
- 足場の設置
- 光触媒コーティング剤が掛かってはいけない箇所への養生
- 光触媒コーティング塗装箇所の清掃
外壁塗装では、たいていの場合、高い位置まで塗装することになりますから、足場が必要になることが多いです。脚立で届く範囲であれば足場は必要ありません。足場を設置するとコストがかかるので、光触媒コーティングのタイミングは、外壁のメンテンナンスのタイミングに合わせると効率的です。
電灯やコンセント、窓ガラス、近隣の自動車などといった、光触媒コーティング剤がかかってはいけない箇所には、養生シートで養生をします。
光触媒コーティング塗装をする箇所は、入念に清掃することが大事です。汚れをしっかり落としておかないと、汚れの上から光触媒コーティングをすることになるので、汚れが分解されて落ちていくと同時に、光触媒コーティング剤も落ちていくことになります。
外壁にカビや苔が発生している場合には、専用の洗浄剤を利用します。洗浄剤を使用した後は、よく洗い流したり、洗浄剤で変化したpHを中性に戻すなどといった措置をしてください。
入念な清掃が、光触媒の効果が持続する期間を延ばすことにつながります。
外壁に光触媒コーティング塗装をする前は、これらのことを行う必要があるので、見積もりを作成するときは、この作業費用も盛り込んでおいてください。
塗装面の清掃方法については、「光触媒コーティング塗装前の清掃方法」をご参照ください。
外壁への光触媒コーティング剤の塗装方法
いよいよ外壁への光触媒コーティング剤の塗装です。スプレーガンに接続されている塗料カップに、光触媒コーティング剤やプライマーを入れて塗装していきます。
スプレーガンの操作方法
スプレーガンと塗装面の距離や、スプレーガンの移動速度や移動方法を解説します。これを守る事によって、塗りムラを無くして、美しく塗装することができます。
30cm離して塗装
スプレーガンを塗装面の距離は30cmほど離して行ってください。20cm以下に近づけると、濃く塗装してしまう箇所と薄く塗装してしまう箇所が現れて、塗りムラが出来る可能性があります。
移動速度は1m/s
スプレーガンの移動速度は、1秒で1mほどの速度での移動をしてください。この移動速度は、ずっと維持することで、塗りムラを防ぐことができます。
塗装面に対して平行移動させる
スプレーガンは、手首を固定して塗装面に対して平行に移動させます。図の右側の間違った動かし方のように、手首を使って円弧を描くように塗装すると、塗りムラが発生しやすくなります。
光触媒コーティング剤の塗装
1m×1mを目安に塗装
スプレーガンを塗装面の前に構え、次の図のように、1m×1mほどの面積を目で確認して、その間を左右、上下と塗装します。
慣れていたら、1m×1mよりも広い範囲を塗装してもかまいませんが、2m×2mですと、端の方がスプレーガンを塗装面に垂直に向けることが難しくなるので、その当たりを考慮しながら、塗装効率が最大になるように考えます。
最初は1m×1mが目安です。
スプレーガンの移動は端で折り返す
上図をもう一度ご覧ください。最初に左右を塗装し、続いて上下を塗装しますが、それぞれスプレーガンが端まで行ったら、図の矢印のように折り返して連続的に塗装します。
左右、上下で全面を塗ったら、これを1セットとします。
外壁塗装の場合は、これを2セット繰り返します。1m×1mの塗装1セットが終わったら、次の場所に移動して次の1セットの塗装を行い、全面に達したら最初の場所に戻って、2セット目を塗装し始めます。このようにして、同じ箇所に上下左右の塗装を2回ずつ行います。
上下、左右でパターン形状を変更
スプレーノズルのパターン形状とは、噴霧される光触媒コーティング剤の形状のことです。次の図をご覧ください。ABAC温風低圧塗装機のスプレーノズルは、先端のフロースリーブを回転させることによって、パターン形状を変えられます。
スプレーガンを左右に移動させて塗装する場合は、フロースリーブを横向きにして、縦吹き形状にします。スプレーガンを上下に移動させて塗装する場合は、フロースリーブを縦向きにして、横吹き形状にします。
フロースリーブの回転は、クランプナットを手で緩めて回転させ緩めて行います。フロースリーブを、上下や左右といった必要な角度に調整したら、クランプナットを締めて固定します。
なお、光触媒コーティング塗装では、斜めの丸吹きは利用しません。
以上、これから光触媒コーティング塗装を事業として取り入れたいとお考えの方に向けて、外壁用の光触媒コーティング剤を塗装する液剤や塗装できる箇所、塗装機材、塗装方法などを解説いたしました。
塗装方法を文章で読んだだけ施工することは、パソコンの操作マニュアルを読んだだけでパソコンを仕事に利用するようなものです。実際に光触媒コーティング塗装を体験してから、お仕事として受注するようにした方が良いことは、述べるまでもありません。
弊社では、光触媒コーティング塗装の実習ができる、光触媒コーティング施工講習会を開催しています。弊社の工場にご来場いただいての講習、もしくは御社にて出張開催もいたします。
施工講習会についての詳細は、弊社までお問い合わせください。
ご不明なことがございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。