光触媒を内装に塗装すると、室内の除菌や消臭、アレルゲンの分解、塗装面の防カビといった効果が期待できます。
光触媒コーティング剤の塗装は、専用の塗装機械とスプレーガンを用いて塗装をします。
この記事では、これから光触媒コーティング塗装を事業として取り入れたいとお考えの方に向けて、内装用の光触媒コーティング剤を塗装するときに使用する液剤や塗装できる箇所、塗装機材、塗装方法などを解説します。
内装の光触媒コーティング施工全体の流れを知りたい方は、「室内用光触媒コーティング剤BX01-AB1の塗装方法や注意点」をご参照ください。
内装に使用する光触媒コーティング剤とプライマー
室内の内装に使用する光触媒コーティング剤は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。この液剤は、銅ドープ酸化チタンを使った可視光応答型光触媒のコーティング剤です。
室内でも、除菌や防カビ、消臭などで高い効果を発揮します。
内装にて光触媒コーティング塗装できる箇所
内装に光触媒コーティング塗装ができる箇所は、次のような箇所です。
- 内壁や天井などの壁紙クロス
- 漆喰や珪藻土の内壁
- システム天井の天井板
- ペンキ塗装された箇所(マンションのゴミ置き場など)
- テーブルやこたつ、机の天板
- カーテンやソファー、布団、カーペット、バスマットなどの布地
- 風呂場のタイルや樹脂パネル、バスタブ
- 木目調の合板パネル
- 樹脂やペンキが塗装された箇所
- シーリングライトのプラスチックカバー
- トイレの便座
- 窓ガラスのシーリング
- 打ちっ放しコンクリート
- 押し入れやクローゼットの中
- エアコン内部やフィルター、扇風機やサーキュレータの羽根
- キッチンパネル
- レンジフードやフィルター
- プラスチック製のゴミ箱
- 人工観葉植物
施工業者様は、ご依頼者様には、これらの内装のうち、どこに光触媒コーティング塗装をしてもらいたいのかを確認します。そこから塗装面積を割り出して、工事の工程や費用が算出されます。
光触媒コーティング液剤を何リットル用意したらいいのか?
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装する量ですが、内装塗装では、50m2/Lを基本としています。
6畳の部屋1つであれば、天井と内壁を合わせて、窓の部分を差し引くと、おおよそ40~50m2ですので、1Lほど使用することになります。
そのようにして必要な量を計算し、弊社にご発注ください。弊社では、光触媒コーティング剤を1L単位で販売しております。
プライマーとは?
プライマーとは、下地剤のことです。光触媒コーティング剤を塗装する前に、ある条件の箇所には、あらかじめプライマーを塗装しておく必要があります。
その条件とは、直射日光が当たる箇所のことです。
光触媒は、基本的に光の強さが強いほど、光触媒の効果が強くなります。そのようなことから、開閉窓や採光窓から直射日光が射しこんでくる箇所は、光触媒の効果が強くなるので、塗装面を劣化させてしまう恐れがあります。
プライマーを塗装しておけば、光触媒成分が下地に直接触れることがなくなり、光触媒が下地を劣化することを防いでくれます。
室内用のプライマーは、屋内用プライマー(AS01)です。
屋内用プライマー(AS01)の塗装は、光触媒コーティング剤の塗装と同じように、専用の塗装機械を用いて行います。専用の塗装機械については、後ほど解説いたします。
光触媒コーティング塗装の工程作成や見積もりのときに、プライマーの施工も考慮に入れてください。
内装用の光触媒コーティング剤や
プライマーを塗装する機材
内装用の光触媒コーティング剤やプライマーを塗装するときは、塗装用の基材を用います。塗装機材は、次の通りです。
- ABAC温風低圧塗装機と光触媒コーティング専用ノズル
- 不織布
ABAC温風低圧塗装機とは?
ABAC温風低圧塗装機は、光触媒コーティング塗装に最適な塗装機械です。ABACは、「アバック」と呼びます。次の図は、ABAC温風低圧塗装機SG-91です。
装置本体から温風が出るので、光触媒コーティング剤が乾燥しやすいため、塗装の作業効率が上がります。また、SG-91は小型で持ち運びが便利ですから、内装の光触媒コーティングに向いています。
PN-2Aスプレーガンの塗着効率と液剤の使用量
次の図をご覧ください。ABAC温風低圧塗装機SG-91に付属するPN-2Aスプレーガンは、噴霧された光触媒コーティング剤を包み込むように、エアカーテンが噴き出ます。
このエアカーテンによって、噴霧された光触媒コーティング剤が飛び散ることを防いでくれるので、塗着効率が約70%と、他のエアスプレーと比べると圧倒的な高さとなります。
塗着効率が高いと、それだけ光触媒コーティング剤の量が少なくて済みます。
先ほど、光触媒コーティング剤の使用量は50m2/Lであることをお伝えしましたが、これはABAC温風低圧塗装機を用いたときの量です。もし、一般的な塗着効率35%前後のスプレーガンを利用した場合は、光触媒コーティング剤の必要量は、100m2/Lで計算します。
光触媒コーティング専用ノズルの口径
光触媒コーティング専用ノズルとは、ノズル口径がφ0.3mm~φ0.5mmといった小口径のノズルを用います。
それよりも大きなスプレーノズルを利用した場合、光触媒コーティング剤を吹き付け過ぎてしまって、塗りムラが生じてしまう場合があります。
塗装に慣れないうちは、φ0.3mmのスプレーノズルを利用して、丁寧に行うようにしてください。
不織布を利用する場面
テーブルなどの平面への塗装であれば、ABACを用いますが、複雑な形状の箇所には均一な塗装が難しくなります。
不織布は、ニスなどの樹脂コーティングされた光沢のある個所で、複雑な形状の箇所に塗装するときに利用します。プライマーを利用するときも同様です。
内装に光触媒コーティングをする前の準備
内装に光触媒コーティングをする場合は、次の準備を行います。
- 家具の移動
- 光触媒コーティング剤が掛かってはいけない箇所への養生
- 光触媒コーティング塗装箇所の清掃
内壁に塗装するときは、家具の移動が必要となります。そして、電灯やコンセント、窓ガラスや鏡、家電や家具などといった、光触媒コーティング剤がかかってはいけない箇所には、養生シートで養生をします。
屋内では目地の部分にカビが生えやすいので、目地付近を養生をするときは、目地が養生で隠れないようにご注意ください。
光触媒コーティング塗装をする箇所は、入念に清掃することが大事です。壁紙クロスは10年も経過すると、けっこう汚れているものです。汚れをしっかり落としておかないと、汚れの上から光触媒コーティングをすることになるので、汚れが分解されて落ちていくと同時に、光触媒コーティング剤も落ちていくことになります。
入念な清掃が、光触媒の効果が持続する期間を延ばすことにつながります。
内装に光触媒コーティング塗装をする前は、これらのことを行う必要があるので、見積もりを作成するときは、この作業費用も盛り込んでおいてください。
塗装面の清掃方法については、「光触媒コーティング塗装前の清掃方法」をご参照ください。
内装への光触媒コーティング剤の塗装方法
いよいよ内装への光触媒コーティング剤の塗装です。スプレーガンに接続されている塗料カップに、光触媒コーティング剤やプライマーを入れて塗装していきます。
スプレーガンの操作方法
スプレーガンと塗装面の距離や、スプレーガンの移動速度や移動方法を解説します。これを守る事によって、塗りムラを無くして、美しく塗装することができます。
30cm離して塗装
スプレーガンを塗装面の距離は30cmほど離して行ってください。20cm以下に近づけると、濃く塗装してしまう箇所と薄く塗装してしまう箇所が現れて、塗りムラが出来る可能性があります。
移動速度は1m/s
スプレーガンの移動速度は、1秒で1mほどの速度での移動をしてください。この移動速度は、ずっと維持することで、塗りムラを防ぐことができます。
塗装面に対して平行移動させる
スプレーガンは、手首を固定して塗装面に対して平行に移動させます。図の左側の間違った動かし方のように、手首を使って円弧を描くように塗装すると、塗りムラが発生しやすくなります。
光触媒コーティング剤の塗装
1m×1mを目安に塗装
スプレーガンを塗装面の前に構え、次の図のように、1m×1mほどの面積を目で確認して、その間を左右、上下と塗装します。
慣れていたら、1m×1mよりも広い範囲を塗装してもかまいませんが、2m×2mですと、端の方がスプレーガンを塗装面に垂直に向けることが難しくなるので、その当たりを考慮しながら、塗装効率が最大になるように考えます。
最初は1m×1mが目安です。
スプレーガンの移動は端で折り返す
上図をもう一度ご覧ください。最初に左右を塗装し、続いて上下を塗装しますが、それぞれスプレーガンが端まで行ったら、図の矢印のように折り返して連続的に折り返して塗装します。
左右、上下で全面を塗ったら、これを1セットとします。
内装塗装の場合は、これを2セット繰り返します。1m×1mの塗装1セットが終わったら、次の場所に移動して次の1セットの塗装を行い、全面に達したら最初の場所に戻って、2セット目を塗装し始めます。このようにして、同じ箇所に上下左右の塗装を2回ずつ行います。
上下、左右でパターン形状を変更
スプレーノズルのパターン形状とは、噴霧される光触媒コーティング剤の形状のことです。次の図をご覧ください。ABAC温風低圧塗装機のスプレーノズルは、先端のフロースリーブを回転させることによって、パターン形状を変えられます。
スプレーガンを左右に移動させて塗装する場合は、フロースリーブを横向きにして、縦吹き形状にします。スプレーガンを上下に移動させて塗装する場合は、フロースリーブを縦向きにして、横吹き形状にします。
フロースリーブの回転は、クランプナットを手で緩めて回転させ緩めて行います。フロースリーブを、上下や左右といった必要な角度に調整したら、クランプナットを締めて固定します。
なお、光触媒コーティング塗装では、斜めの丸吹きは利用しません。
ルミテスターでの施工前後の確認
ルミテスターとは、カビなどの生物汚れを数値化できる装置です。数値が低いと、生物汚れが少ない状態ですから、衛生的と言えます。
光触媒コーティング塗装を予定している箇所の中で、代表的な1箇所を、清掃前にルミテスターで測定します。
清掃を終え、光触媒コーティング塗装をして乾燥させた後に、もう一度、同じ箇所をルミテスターで測定します。
光触媒コーティング塗装を美しく仕上げたら、光触媒コーティング塗装をしたのかどうかが、見た目ではわかりません。そこで、光触媒コーティング塗装前後で、生物汚れがどのように変化したかをお客様に見ていただくことで、光触媒コーティング塗装の効果をご実感いただけます。
以上、これから光触媒コーティング塗装を事業として取り入れたいとお考えの方に向けて、内装用の光触媒コーティング剤を塗装する液剤や塗装できる箇所、塗装機材、塗装方法などを解説いたしました。
塗装方法を文章で読んだだけで施工することは、自動車のマニュアルを読んだだけで運転するようなものです。実際に光触媒コーティング塗装を体験してから、お仕事として受注するようにした方が良いことは、述べるまでもありません。
弊社では、光触媒コーティング塗装の実習ができる、光触媒コーティング施工講習会を開催しています。弊社の工場にご来場いただいての講習、もしくは御社にて出張開催もいたします。
施工講習会についての詳細は、弊社までお問い合わせください。
ご不明なことがございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。