
光触媒には、光が当たることで親水性の効果が出ます。
光触媒成分の入ったコーティング剤を外壁やガラスに塗布することで、外壁やガラスが親水性を持つようになります。
この記事では、親水性コーティングの意味や、用途別に最適な光触媒の種類をご説明いたします。
親水性コーティング施工をされている企業様は、この記事を参考にされ、最適な光触媒をお選びください。
親水性コーティングとは?
最初に親水性コーティングの意味をご説明します。すでにご存じの方は、読み飛ばしてください。
親水性とは?

親水性とは、水と馴染む性質のことです。親水性の反対が撥水性です。窓ガラスに水滴が付くと、水滴が流れ落ちていきます。これは窓ガラスが水を弾いているからです。蓮の葉はよく水を弾きますが、強い撥水性があるからです。
その反対に親水性が出ると、水が水滴にならずに平べったくなり、ガラス面に伸びていきます。雨傘で例えたいと思います。購入したばかりの新しい雨傘は撥水コーティングされているので、雨水を弾いて流れ落ちていきます。これが撥水性です。
何ヶ月か使用していると、少しずつ撥水コーティングが落ちていくので、水を弾かなくなって、雨傘の表面に雨水がべっとりと付着するようになります。これが親水性です。
親水性コーティングをする理由はセルフクリーニングのため
親水性コーティングは、外壁や窓ガラスに行なうわけですから、外壁や窓ガラスが水を弾かなくなってしまいます。外壁や窓ガラスが水を弾いた方が、汚れが付着しにくいように思ってしまいますが、外壁や窓ガラスは親水性が求められるのです。
その理由は、外壁や窓ガラスに付着する雨水ではなく、汚れが問題になるからです。
空気中には、目に見えないほどの大きさの油分が浮遊しており、それが外壁や窓ガラスに付着すると、トリモチのように汚れを付着させてしまうのです。
外壁や窓ガラスを親水性コーティングしておけば、雨が降ったときに親水性コーティング面と汚れの間に雨水が入り込み、汚れを浮かせて落ちるようになります。このように、親水性コーティングをしておくと、雨水だけで汚れを自動的に落とす効果が出ます。

この効果のことを、セルフクリーニングといいます。
光触媒の効果
親水性コーティング剤には、いろいろな種類があります。その中で、光触媒コーティング剤だけが、他の親水性コーティング剤には無い、特殊な性質があります。その特殊な効果によって、光触媒コーティング剤が選ばれる理由です。
その特殊な効果とは、汚れを分解する効果ことです。
光触媒は、直射日光の強い光が当たると、それに触れている有機物を分解する性質があります。外壁や窓ガラスに付着した油分は有機物ですから、光触媒によって分解されます。すると、汚れが落ちやすい状態となるので、セルフクリーニング効果が高いのです。
光触媒の種類と求められる効果
光触媒にはたくさんの種類があります。光触媒の種類を選ぶ場合には、親水性の高さ以外にも光の屈折率や有機物の分解を行うべきかなどを考慮して、最適な成分を選ぶ必要があります。
また、親水性コーティングをする塗装面の材質によって、光触媒コーティング剤の調合する成分が異なるので、施工業者は施工箇所に応じて最適な光触媒コーティング剤を選ぶ必要があります。
以下、次の3種類の塗装面に最適な光触媒コーティング剤をご紹介いたします。
- ガラス(窓ガラスや太陽光パネル)
- 外壁(タイルや窯業系サイディング、コンクリートなど)
- 鏡面仕上げされた石材(墓石や御影石外壁、噴水など)
ガラスの親水性コーティング
ガラスの親水性コーティングについてご説明いたします。主に、窓ガラスや太陽光パネルに利用されます。限定的な利用になりますが、銭湯の鏡にも利用できます。
ガラスの親水性コーティングはタングステン担持酸化チタン

ガラス面は凸凹の無いツルッとした面であることと、透過性があることが特長です。ガラス面の防汚に求められる光触媒の性質は、触媒効果よりも親水性の高さと、ガラス面の見栄えです。
酸化チタンですと、紫外線によって油分が分解されやすいのですが、親水性にやや難点があります。また、酸化チタンは光の屈折率が高いので、ガラスを見る角度によっては、酸化チタン特有の虹色の模様が出てしまう場合があります。
このようなことから、ガラスの親水性コーティングでは触媒効果を少し犠牲にしつつも、親水性が高く屈折率が低い成分を選ぶことが大切です。その成分はタングステン担持酸化チタンです。
弊社にて開発した、タングステン担持酸化チタンを使った親水性コーティング剤は「ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)」です。
ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)の特徴
ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)は、タングステン担持酸化チタンを使った、世界初のガラス用親水性コーティング剤です。
酸化チタンよりも高い親水性があり、ガラス面に塗装しても酸化チタン特有の虹色が出にくいため、ガラス面にクリア塗装がしやすいです。
製品のページには、耐久性は10年以上と記載していますが、実際には20年以上あります。
先日、施工してから20年以上経過した建物を見に行ったのですが、建物の管理会社様によると「一般的な建物よりも窓ガラス清掃の頻度を半分程度にしているが、美しさを保っている」とのことでした。
外壁の親水性コーティング
次に外壁の親水性コーティングについてご説明いたします。外壁には、タイルと窯業系サイディング、打ちっぱなしコンクリート、吹き付け塗装などがあります。御影石の外壁の場合には、後ほどご説明する石材用を用いた方が良い場合もあります。
外壁の親水性コーティングは酸化チタン

外壁は、ガラス面とは異なり凸凹した構造になってので、汚れがひっかかって汚れが目立ってしまいます。また、光が透過しないため、親水性や屈折率よりも汚れの分解に重きが置かれます。
そのような外壁に最適な光触媒の種類は、酸化チタンです。酸化チタンは、直射日光に含まれる強い紫外線によって、外壁に付着した汚れを強力に分解してくれます。そして、親水性効果によって、汚れが落ちていきます。
弊社にて開発した、酸化チタンを使った親水性コーティング剤は「屋外用光触媒コーティング剤(BX01)」です。
屋外用光触媒コーティング剤(BX01)の特徴
屋外用光触媒コーティング剤(BX01)は、光触媒成分にアナターゼ酸化チタンを、バインダー成分にアモルファス酸化チタンを使った、完全な無機塗料です。
バインダーに樹脂などを使った有機塗料とは異なり、耐久性がとても高く、施工してから20年以上経過した外壁でも、防汚効果を発揮した実績があります。20年は加速試験ではなく、施工した実績です。
この写真は、駅の壁面に屋外用光触媒コーティング剤(BX01)を塗装し、20年経過したものです。清掃は一切行われていませんが、塗装した面は美しさが保たれており、未塗装の面との汚れの差は歴然です。

ジメジメした場所の外壁の防カビ・防苔には銅担持酸化チタンを利用すること

外壁の防汚では、空気中の汚れを落とすだけではなく、外壁に発生するコケやカビを抑制するという防汚もあります。
コケやカビが発生する箇所は、直射日光が当たりにくいジメジメした場所であることが多いです。そういった場所では、紫外線が当たらないので、屋外用光触媒コーティング剤(BX01)では効果が無い場合が多いです。
紫外線が当たらない場所で、コケやカビを防止したい場合には、弱い光でも防苔や防カビができる光触媒成分「銅担持酸化チタン」を使った、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)をご利用ください。
コンクリート外壁はセラミックプライマーを塗装すること
屋外用光触媒コーティング剤(BX01)でコンクリートの防汚をしたい場合には、下地剤としてセラミックプライマーを塗装しておき、その上から屋外用光触媒コーティング剤(BX01)を塗装してください。
光触媒は、親水性の効果があるので、水分を引き寄せる性質があります。コンクリートは湿気によって中性化が促進されてしまうため、実のところ光触媒と相性が悪いのです。
セラミックプライマーを塗装しておくことで、コンクリートを防水することができるので、光触媒によって引き寄せられた水分がコンクリート内部に吸収されることを防いでくれます。
鏡面加工された石材の親水性コーティング
鏡面仕上げされた石材の親水性コーティングについてご説明いたします。親水性コーティングが求められる石材には、墓石や御影石外壁、噴水などがありまます。
石材の親水性コーティングは酸化チタン

鏡面仕上げされた石材に光触媒塗装をすると、ガラスと同様に虹色が出やすいのですが、親水性よりも汚れの分解が求められます。そこで、酸化チタンを使いつつ、成分量を抑えた光触媒コーティング剤を用います。
また、石材は水を弾くものもあるので、親水性コーティング剤が均一に塗布できるようにするための成分を添加する必要があります。
弊社が開発した、鏡面仕上げされた石材の親水性コーティング剤は、「石材用光触媒コーティング剤(BXM01)」です。
石材用光触媒コーティング剤(BXM01)の特徴
石材用光触媒コーティング剤(BXM01)は、石材に塗装しても虹色が出にくく、石材に均一に塗装ができるように成分を調整してあります。
鏡面仕上げされたさまざまな石材に塗装ができます。
酸化チタンによって石材に付着した汚れを分解し、セルフクリーニング効果を発揮します。
光触媒を使った親水性コーティングの意味や、用途別に最適な光触媒の種類をご説明いたしました。ガラスにはタングステン担持酸化チタンを、外壁には酸化チタンをご利用ください。ただし、コケやカビを防止したい場合には銅担持酸化チタンを使用します。
石材には酸化チタンを利用しますが、石材にも均一に塗装ができるようにするための成分を添加したものを利用してください。
親水性コーティングでどの光触媒コーティング剤を利用したら良いのかご不明な方は、弊社までお気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。