光触媒製品に使われている成分には、「銅ハイブリッド酸化チタン」というように「ハイブリッド」という言葉が用いられたものがあります。
ハイブリッドに似た言葉で、「ドープ(担持)」というものもあります。
「ハイブリッド」と言われたら、何やら効果が高そうに思えるかもしれませんが、例えば「銅ハイブリッド酸化チタン」と「銅ドープ酸化チタン」を比較すると、銅ドープ酸化チタンの方が圧倒的に高い効果と長い持続期間を持ちます。
このように、同じような意味でもまったく性質が異なる場合があります。
この記事では、ハイブリッド光触媒の意味やドープとの違いを解説いたします。
ハイブリッド光触媒とは?
ハイブリッドとは複数のものを組み合わせたもののことです。ハイブリッド光触媒とは、複数の光触媒成分や、光触媒成分と別の成分を組み合わせた光触媒のことです。
例えば、「銅ハイブリッド酸化チタン」という製品であれば、酸化チタン光触媒に銅を混ぜたものになります。
酸化チタンに銅イオンを混ぜることによって、紫外線が当たる場所であれば酸化チタンが防カビ効果を発揮し、紫外線が当たらない場所であれば銅イオンが防カビ効果を発揮します。ですので、紫外線が当たっても当たらなくても、どちらに使用しても防カビが出来ます。
しかし、銅イオンが溶けだしてしまって、酸化チタンのみになってしまったら、紫外線が当たらない場所では効果がなくなってしまいます。ですから、室内用途の場合には防カビの持続期間が。1~2年ほど、長くても3年ほどと、短期間であると思います。
弊社の光触媒製品で言えば、ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)は、酸化チタンに酸化タングステンをドープした「タングステン・ドープ酸化チタン光触媒」を用いています。酸化チタンの親水性を高めつつ、透明性を高めています。
ハイブリッドとドープの違い
「ハイブリッド」と同じような意味で「ドープ」という用語もあります。ドープとは、日本語では「加えた」とか「添加した」という意味ですが、光触媒でのハイブリッドとドープは意味が少し異なります。
ハイブリッドでは、何か別の製品を混ぜたらハイブリッドになりますが、ドープの場合はどちらかと言えば「混ぜた」というよりも「担持させた」という意味になります。
担持とは?
担持とは、「結合させた」と意味です。基材となる成分に別の成分を結合させて、異なる性質を出させたという意味になります。
例えば、「銅ドープ酸化チタン」であれば、酸化チタンに銅を担持させて、酸化チタンを可視光活性させるという、酸化チタンそのものの機能をアップさせています。銅担持酸化チタンという名称で呼ばれることもあります。
銅ハイブリッド酸化チタンのように、銅を混ぜることは同じ意味なのですが、酸化チタンに銅を担持させているかどうかの違いになります。ですので、銅イオンを混ぜた酸化チタンよりも、銅を担持させた酸化チタンの方が、圧倒的に高性能になります。
担持(ドープ)させたものは効果の持続期間が圧倒的に長い
銅イオンを混ぜただけであれば、銅イオンが存在する期間が効果が持続する期間です。先ほど、効果の持続期間は長くても3年ほどとご説明しました。
それに対して銅ドープ酸化チタンは、銅の成分が酸化チタンと結合しているので、銅イオンが溶けだしていくことはほとんどありませんから、光触媒成分そのものの機能は半永久的に持続します。
光触媒コーティング剤の場合、銅ドープ酸化チタンは半永久的ですが、銅ドープ酸化チタンを塗装面に接着させる成分「接着成分(バインダー)」の耐久性によって持続期間が決まります。
市販品の光触媒コーティング剤を調べていたら、3~5年、長くても10年が一般的のようです。弊社の光触媒コーティング剤は、持続期間がとても長く、10年~20年も効果が持続します。環境によってはそれ以上持つ場合もあります。
ハイブリッドにしないで、すべてドープにしたらいいのでは?
「銅ドープ酸化チタンは高性能なのだらから、銅イオンを入れるだけでなく、銅を担持させたいいのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それが出来る製造技術力を持った企業は、世界中でも少ないのです。
ハイブリッド光触媒は、酸化チタン光触媒の液剤に銅イオンを混ぜているだけですから、比較的簡単に製造ができます。
それに対して銅ドープ酸化チタンは、酸化チタンと酸化銅を結合させる製造工程が必要となります。銅ドープ酸化チタンの製造方法は、弊社の特許技術であることからも判るように、特殊な製造技術や装置などを要します。
そういったことで、すべての光触媒液剤を銅ドープ酸化チタンにすることは難しいのです。
ハイブリッドとドープの位置づけと認知度
銅ハイブリッド酸化チタンと銅ドープ酸化チタンの区分
ハイブリッドとは、「別の成分を混ぜた」という意味ですから、「ドープ」も別の成分を混ぜていることには変わり有りませんから、次の図のように、ハイブリッドの中にドープが含まれます。
しかし、ハイブリッドされたものと、ドープされたものでは、光触媒の性質が明らかに異なるため、それらは区別されるべきだと考えます。
銅ハイブリッド酸化チタンは、銅と酸化チタンのそれぞれの成分が別々に機能を発揮します。それに対して、銅ドープ酸化チタンは酸化チタンの機能を銅が補って、銅そのものでも機能を果たしつつも、可視光が当たっても触媒の効果を発揮するという機能を持つようになります。
あえて「銅ハイブリッド光触媒」と言う場合もある
先ほどから何度も、「ドープ」という言葉が出てきていますが、この記事をご覧になられている一般消費者の方の多くは、「ドープという言葉を初めて聞いた」と思われたことでしょう。それに対して、「ハイブリッド」という言葉であれば、何度も耳にしたことがあります。
ハイブリッドは自動車でよく耳にします。ハイブリッド車と言えば、原動力にエンジンとモーターが組み合わされた自動車です。
そういったことから、銅ドープ酸化チタンと聞いても、パッとしません。
そこで、消費者に分かりやすくするために、銅ドープ酸化チタンを使っている製品でも、あえて「銅ハイブリッド酸化チタン」という名称を採用している場合もあります。
弊社にて開発し一般販売されている銅ドープ酸化チタンを使った、除菌・消臭スプレー「アキュートクリーン」は、裏面の説明に「酸化チタン+銅のハイブリッド」と記載しています。
ちなみにこの製品は、銅ドープ酸化チタンを採用しているので効果は高いのですが、光触媒コーティング剤ではございませんので耐久性という概念はありません。
以上、光触媒で用いられる用語として、「ハイブリッド」の意味やドープとの違いを解説いたしました。
光触媒コーティング剤には、銅をハイブリッドすることによって酸化チタンの弱点を補った光触媒製品をよく見かけますが、「効果の高さや持続期間の長さを求めるのであれば、銅ドープ酸化チタンを選ぶべきである」ということを覚えておいてください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。