
光触媒コーティング剤とは、光触媒による抗菌や消臭、防カビといったコーティング塗装ができる液剤です。
光触媒コーティング剤に利用されている光触媒は、酸化チタンが主なものですが、他にもいろいろな種類があります。
酸化チタンを使った光触媒コーティング塗装をして、「効果が無かった」とか「白っぽいシミになってしまった」ということを聞くことがあります。本来なら酸化チタン以外のものを利用しないと効果が無い場面で、あえて酸化チタンを使ってしまうと、効果が感じられなかったり、シミになったりするデメリットがあります。
この記事では、酸化チタン以外の光触媒の種類と、室内で光触媒コーティング剤を使用する場合に効果的な光触媒の種類をご説明いたします。
酸化チタン光触媒とは?
まず、酸化チタン光触媒についてご説明いたします。酸化チタン以外の光触媒について知りたい方は、この節を読み飛ばしてください。
酸化チタン光触媒は、金属であるチタンが酸化したものではありますが、ナノサイズの微粉末のものを利用します。酸化チタンには結晶構造があり、アナターゼ型と言われる結晶構造のものを、光触媒として利用しています。その酸化チタンのことを、アナターゼ型酸化チタンと呼んでいます。光触媒の業界では、酸化チタンと言うと一般的にはアナターゼ型酸化チタンのことを指します。
アナターゼ型酸化チタンは、紫外線が当たることで活性化し、それに触れているものを酸化分解するという、触媒効果を発揮します。
そのような効果のあるアナターゼ型酸化チタンの微粉末を液剤にして、コーティング塗装ができるようにしたものを、酸化チタン光触媒コーティング剤とか酸化チタンコーティング剤などといいます。
酸化チタン以外の光触媒
それでは、酸化チタン以外の光触媒についてご説明いたします。
光触媒コーティング剤に利用される酸化チタン以外の光触媒
一般的に利用されている光触媒コーティング剤に用いられる酸化チタン以外の光触媒には、次のものがあります。
- 銅担持酸化チタン
- 窒素担持酸化チタン
- 鉄担持酸化チタン
- タングステン担持酸化チタン
- 酸化タングステン
これらの中で、弊社は銅担持酸化チタンとタングステン担持酸化チタンの製造特許を取得しています。
担持とは?
上記の光触媒の種類の中で、酸化タングステン以外のものは、「担持」という言葉が共通で使われています。担持とは、「結合させた」という意味になります。別名「ドープ」ともいいます。例えば、窒素担持酸化チタンは「窒素ドープ酸化チタン」とも呼ばれています。
どの名称にも「酸化チタン」が入っていますが、基材となるアナターゼ型酸化チタンに、銅や窒素、鉄などの補触媒となる成分を担持させています。そうすることによって、可視光にも反応し、抗菌や消臭などの効果を発揮するようになります。
なぜ酸化チタン以外の光触媒が必要なのか?
酸化チタンに銅や窒素などを担持させる理由は、酸化チタン単体では、室内ではほとんど効果が発揮されないからです。
酸化チタン光触媒は、紫外線によって活性化させることができると、たくさんのOHラジカルを発生させ、とても高い抗菌力や消臭力などを得ることができますが、紫外線が当たらない環境では酸化チタンでは効果がほとんど発揮されません。

室内でも抗菌や消臭といった効果を発揮させるために、酸化チタン以外の光触媒を用いるわけです。
酸化チタン以外の光触媒は可視光応答型光触媒
上記の酸化チタン以外の光触媒は、すべて可視光応答型光触媒と言われる成分になります。
可視光応答型光触媒とは?
可視光応答型光触媒とは、目に見える光である「可視光」に反応して、触媒効果を発揮する光触媒のことです。酸化チタンは紫外線にしか反応しませんから、紫外線応答型光触媒と言われます。
上記の可視光応答型光触媒は、紫外線にも反応し、なおかつ可視光にも反応する成分です。
光エネルギーの高さでは、可視光よりも紫外線の方が高いわけですから、可視光応答型光触媒といえども、紫外線を当てたときの方が効果が高くなります。
可視光応答型光触媒の利用場面
可視光応答型光触媒が反応する光は可視光ですから、蛍光灯やLED照明といった室内の明かりに反応します。つまり、室内を抗菌や防カビ、消臭などを行いたい場合には、可視光応答型光触媒を使わなければ、効果がほとんどありません。
「酸化チタン光触媒を使った室内用コーティング剤」というものも市販されていますが、ほとんど効果がありませんから、酸化チタンを多量に添加されています。そのような光触媒コーティング剤を塗布すると、塗布面が白くなったりシミが出来たりする場合が多いです。室内利用の場合には、酸化チタンコーティング剤はおすすめできません。
酸化タングステンは?
酸化タングステンは、何も担持させなくても可視光応答型光触媒です。酸化タングステンを利用したら、わざわざ酸化チタンに銅や窒素などを担持させたものを利用する必要は無いとも思えてしまいます。
なぜ酸化タングステンを利用しないで、銅担持酸化チタンを利用する必要があるのか。それは酸化タングステンは効果が弱いからです。
酸化タングステンは黄色い色をしているので、塗装面が黄色くなる可能性があります。そのため、酸化タングステンを使った光触媒コーティング剤は、酸化タングステンの濃度を抑える必要があります。
酸化タングステンは他の可視光応答型光触媒と比べて効果が弱い上に、光触媒コーティング剤にしたときに酸化タングステンを多く添加できないため、さらに効果が弱くなってしまうのです。
もっとも効果の高い可視光応答型光触媒は?
さて、可視光応答型光触媒の中で効果が高く、光触媒コーティング剤にしたときでも高い効果が出せる成分は、「銅担持酸化チタン」です。銅担持酸化チタンは、弱い光でも高い抗菌力や防カビ力、消臭力を発揮する成分です。
例えば、200lxほどの薄暗い光であれば、他の可視光応答型光触媒と比較すると、10~20倍ほどの効果を発揮します。薄暗い光では、酸化チタンは効果はほとんどありません。

暗所でも効果のある光触媒とその利用場面
銅担持酸化チタンは、暗所でも触媒効果を発揮します。つまり光触媒なのに、光が当たっていなくても抗菌や消臭ができます。この効果は、酸化チタンをはじめ他の可視光応答型光触媒も持っていない特殊な効果です。
室内で一般的な可視光応答型光触媒を利用した光触媒コーティング塗装を行った場合、蛍光灯やLED照明の光が当たっているときには、効果はとても弱いですが、多少なりとも抗菌や消臭ができると思います。しかし、明かりを消灯してしまったら、効果はありません。
それに対して、銅担持酸化チタンを利用した光触媒コーティング塗装をすると、明かりを消灯しても効果を発揮するのです。ご家庭やオフィスなどでは、夜は消灯しますから、その間も抗菌や消臭などをし続ける光触媒「銅担持酸化チタン」のご利用をおすすめします。
防カビをしたいお風呂場では、お風呂を利用するときしか明かりを点灯させませんから、他の可視光応答型光触媒では効果が皆無と言えます。押し入れの中や地下室も同様です。銅担持酸化チタンを用いれば、高い効果が期待できます。
室内を抗菌や防カビ、消臭したい場合には、銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を利用することをおすすめします。
以上、酸化チタン光触媒以外の光触媒を解説いたしました。室内を光触媒コーティング施工したい場合には、酸化チタンコーティング塗装では都合が悪いことをご理解いただけたことと思います。
せっかく光触媒コーティング施工を行うのであれば、銅担持酸化チタンを使った光触媒コーティング剤をお選びいただきたいと思います。
室内でも効果の高い光触媒コーティング施工をご希望の方は、弊社までお気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。