
外壁に光触媒を塗装することで、外壁が汚れることを防止する効果が期待できます。
壁材の中には、出荷時にすでに光触媒コーティングされている製品も存在しますが、未塗装の外壁でも後から光触媒を塗装することができます。
外壁への光触媒塗装をする製品は、次の2種類あります。
- 光触媒塗料
- 光触媒コーティング剤
この2つは、期待できる効果は同じなのですが、特性や耐久性、それぞれの製品の選び方が大きく異なります。
この記事では、外壁の防汚コーティングをしたいとお考えの方、もしくは外壁の光触媒塗装を自社の事業として取り入れたいとお考えの企業様に、光触媒塗料と光触媒コーティング剤のどちらを選べば良いのかをご説明いたします。
外壁に光触媒塗装を利用する理由は防汚
外壁に光触媒塗装を行う理由は、外壁の防汚です。条件によっては、カビやコケの発生を抑えることも可能です。
外壁の防汚とセルフクリーニング
光触媒による外壁の防汚効果のメカニズムをご説明いたします。次の図をご覧ください。

光触媒を外壁に塗布すると、直射日光の紫外線によって外壁に付着した有機物を酸化分解する性質があります。光触媒と接触している部分が分解され、汚れが落ちていく場合があります。
また、光触媒には親水性の効果もあります。親水性とは撥水性の逆で、水と馴染む性質のことです。この親水性によって、外壁と汚れの間に水が入り込むことで、汚れを浮かせて落とす効果があります。
光触媒塗装された外壁が、普段から直射日光が当たっており、雨が降って水が流れていくときに、汚れが自動的に落ちていく効果が期待できるわけです。この効果のことを、セルフクリーニングといいます。雨水が当たらない場所であったとしても、高圧洗浄で汚れがすぐに落とせるはずです。
外壁の防カビ・防苔
条件にもよりますが、光触媒塗装をしておくことで、外壁の防カビや防苔が可能です。
光触媒は有機物の汚れを酸化分解する性質がありますが、カビやコケも有機物の一種ですから、分解の対象となります。光触媒の効果が発揮されたら、外壁の防カビや防苔といった効果も期待できるわけです。
この効果は、セルフクリーニングとは別の条件があるので、最後に詳しくご説明いたします。
光触媒塗料と光触媒コーティング剤の違い
外壁を防汚したり、セルフクリーニング効果を付与したりするための製品には、光触媒塗料と光触媒コーティング剤があります。この違いをご説明いたします。
光触媒塗料と光触媒コーティング剤の材質の違い
光触媒塗料とは、ペンキのような顔料の入った塗料に光触媒成分が添加されている製品で、ペンキのように塗ることができます。
光触媒コーティング剤とは、光触媒成分が入った水のような液剤のことで、クリア塗装ができる製品で、スプレーガンで塗装します。

どちらも光触媒成分が入っていることは同じなのですが、ペンキのような顔料の入った粘性の高い塗料なのか、水のような粘性の透明な液剤なのかの違いです。
光触媒塗料を塗装すると、外壁には光触媒塗料に含まれる顔料の色が付着します。それに対して光触媒コーティング剤を塗布すると、透明な塗装ができるので、外壁の色がそのまま表れます。
それぞれの塗装方法の違い
先ほど少し触れましたが、光触媒塗料と光触媒コーティング剤の塗装方法の違いをご説明いたします。
光触媒塗料は、ペンキと同じようなものですから、ペイントローラーで外壁に直接塗装ができます。外壁の目立つ汚れを落としてから塗装をしますが、肉厚なので少しばかり汚れが残っていたとしても、その上から塗装することができます。
下地と光触媒塗料の密着性を高めるため、先にシーラーを塗装する場合があるかもしれません。
光触媒コーティング剤は、水のような粘性の液剤ですから、ペイントローラーでの塗装ができません。専用の塗装装置とスプレーガンを用いて塗布します。塗装される液剤の塗膜厚は、おそらく100nm(ナノメートル)ほどと極薄です。ですから、下地が透過して見えます。
光触媒コーティング剤は、透明な塗装のため、下地が有機物であれば劣化させることがあります。下地を劣化させそうな場合には、下地保護剤(プライマー)を先に塗装します。これはとても重要なことですから、次に詳しくご説明します。
光触媒塗料と光触媒コーティング剤の劣化について
光触媒は有機物を分解する性質があることを述べました。その性質によって、光触媒塗料は光触媒塗料そのものが劣化する場合があります。光触媒コーティング剤を使用した場合には、下地を劣化させる場合があります。
この性質のことを深く理解しておかないと、お客様にご迷惑をかけることになりかねません。また、それぞれに劣化防止方法があるのでご安心ください。
光触媒塗料の劣化と防止方法
光触媒塗料には、顔料や硬化剤などに光触媒成分が添加されたものです。光触媒塗料を塗装すると、硬化剤が固まって顔料や光触媒成分が定着し、色が見えて防汚ができるわけです。
さて、光触媒成分は有機物を分解する性質があることをお伝えしました。
もし、顔料や硬化剤が有機物でできていたら、塗装された光触媒塗料はどうなるのでしょうか?
お察しの通り、顔料が分解されて色あせが起こり、硬化剤が分解されてひび割れなどが起こる可能性があるわけです。

そのような分解によって、光触媒塗料の表面に白い粉が吹き出したような現象が起こります。
この現象のことを、チョーキングといいます。まるで、チョークの粉が付着したかのようになり、チョーキングが発生した外壁を手で触れると、手に白い粉が付着します。
このような劣化を防止する方法として、光触媒塗料を選ぶときには、顔料や硬化剤に無機物を利用したものを選ぶことが大切です。無機物は光触媒によって分解されない成分ですから、顔料の色あせや硬化剤の劣化が起こりません。
具体的には、セラミック顔料やセラミック系の硬化剤が用いられた光触媒塗料を利用すべきです。
光触媒コーティング剤による下地の劣化と防止方法
光触媒コーティング剤には顔料が入っていませんから、光触媒コーティング剤そのものの色あせの心配はありません。ところが、光触媒コーティング剤を塗布した外壁が劣化する場合があります。
劣化する外壁の種類は、有機物の外壁です。例えば、ペンキが塗装された外壁、樹脂サイディング、木材といったものです。漆喰や窯業系サイディング、コンクリートといったものは劣化しません。
光触媒コーティング塗装による外壁の劣化を抑える方法は、下地保護剤(プライマー)を塗装しておき、その上から光触媒コーティング塗装を行います。すると光触媒成分が外壁に直接触れなくなり、光触媒成分による外壁の劣化を防止できます。
さらに、光触媒コーティング剤も光触媒塗料と同様に、接着成分(バインダー)に樹脂系のものを利用している製品があります。光触媒コーティング剤のバインダーには、主にアモルファス酸化チタンを使ったものとフッ素樹脂を用いたものの2種類があります。ナフィオンを代表とするフッ素樹脂は光触媒によって分解されにくいのですが、無機バインダーであるアモルファス酸化チタンを使った光触媒コーティング剤の方が、耐久性が高いと言えます。
それぞれどのような製品を選べば良いのか?
それぞれどのような製品を選べば良いのかをとめると、次のようになります。
光触媒塗料 | 無機顔料や無機硬化剤を用いた製品を利用する |
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光触媒コーティング剤 | 下地保護剤(バインダー)も製造しているメーカーの光触媒コーティング剤で、かつアモルファス酸化チタンが入った製品を選ぶ。 |
覚えておいてほしいことは、光触媒は有機物を分解する性質があることです。そしてその対象には、光触媒製品そのものも含まれますし、塗装した外壁も含まれることです。
光触媒塗料や光触媒コーティングには無機成分を利用したものを選んでください。また、光触媒コーティング剤を利用する場合には、下地保護剤(バインダー)も製造しているメーカー品を選んでください。
市販されている光触媒コーティング剤の中で、「この製品は、バインダーが必要ありません」というものを見かけることがあります。そういった製品は、光触媒によって外壁を劣化させないようにするために、光触媒の添加量を著しく低くしている可能性があります。その場合には、外壁の防汚効果が落ちてしまいますから、それもクレームの元になりかねません。
光触媒塗料と光触媒コーティング剤のどちらを選ぶべき?
光触媒塗料と光触媒コーティング剤の性質をご理解いただきましたが、結局のところどちらを選べばいいのかをご説明いたします。それは、求める価値によって異なるので、価値毎に検討したいと思います。
施工費用の安さで選びたい場合
最初は、やはり施工費用の安さで選びたいと思います。施工費用の安さでは、業者に施工を依頼するのであれば、あまり大差は無いかもしれませんが、光触媒塗料の方が安い可能性があります。その理由は、光触媒塗料は自分でも塗装が可能だからです。
塗装の出来栄えは自己責任になりますが、光触媒塗料はペイントローラーで塗装ができるわけです。そのため、光触媒塗料を手に入れることができれば、施工費用がゼロ円になり、光触媒塗料の費用だけで施工が出来る可能性があるわけです。
光触媒コーティング剤の塗装も自分でできる可能性がありますが、塗装機材を準備する必要がありますから、現実的ではありません。
光触媒塗料は、無機成分を利用するとなると、メーカー選びや色選びに制約があり、あまり多くの製品を選ぶことができませんが、自分で施工ができて費用を安く抑えられることは魅力的です。
外壁の色に好きな色を選びたい場合
外壁の色に好きな色を選びたい場合は、光触媒コーティング塗装を選ぶことになります。光触媒塗料で、かつ劣化しにくい製品の中に自分の気に入る塗料が存在したら、それを選ぶことで費用を抑えられるかもしれませんが、種類がとても少ないです。
そこで、一般的な外壁で好きな色を選んで、その上からクリア塗装ができる光触媒コーティング塗装を選ぶと良いでしょう。
光触媒コーティング塗装をする場合は、外壁施工を行った直後で、外壁に足場がある状態にて行うことで、施工費用を安く抑えることができます。
外壁のカビやコケを防止したい場合
先ほどご説明いたしましたが、外壁の防汚には埃などの汚れの付着を防止することと、カビやコケの付着を防止する防汚があります。カビやコケを防止する場合には、一般的な外壁用の光触媒塗装では防止できない場合があります。
その理由は、多くの光触媒塗料や光触媒コーティング剤に用いられている光触媒成分は、アナターゼ酸化チタンです。アナターゼ酸化チタンは、紫外線が当たることで防汚効果を発揮します。
ところが、カビやコケが発生しやすい外壁は、北側でジメジメした場所ですから、直射日光の紫外線が当たらないので、防汚効果が弱くなってしまうのです。カビやコケを防止したい場合には、一般的な外壁用の光触媒塗料や光触媒コーティング剤を用いたのでは、効果が無い可能性があります。
カビやコケを防止したい場合には、紫外線でなくてもカビやコケを防止できる光触媒成分を使った光触媒塗装が求められます。もっとも効果の高い光触媒成分は、銅ドープ酸化チタン(銅担持酸化チタン)です。
銅ドープ酸化チタンとは、アナターゼ酸化チタンに銅を結合させた成分です。銅を結合させることで、それまで紫外線にしか効果を発揮しなかった酸化チタンが、可視光にも効果を発揮するようになり、紫外線が当たらない場所に発生するカビやコケの防止が期待できます。
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒塗装をしたい場合には、今現在のところ光触媒コーティングすることになります。光触媒塗料に銅ドープ酸化チタンを使用したものが存在しないからです。
以上、外壁の防汚コーティングをしたいとお考えの方、もしくは外壁の光触媒塗装を事業化したいとお考えの方に、光触媒塗料と光触媒コーティング剤のどちらを選べば良いのかをご説明いたしました。
弊社は光触媒コーティング剤のメーカーで、銅ドープ酸化チタンのパイオニア企業です。さまざまな用途の光触媒コーティングを開発しているので、どのような光触媒コーティング剤を用いたら良いのか、お気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。