
シンナーは塗料を薄めたり、塗料を掃除したりするときに使用する有機溶剤のことです。
臭いの強いシンナーは、ラッカーシンナーです。
有機溶剤には、トルエンやキシレンなどの芳香族系、アセトンなどのケトン系といった溶剤が含まれています。
塗装工場では、シンナーの臭いが充満している場所もあります。
ご家庭でもプラモデルの製作や塗装をしているときに、シンナーを利用される方は多いと思います。
この記事では、シンナーの臭い対策をしたいとお考えの方に向けて、シンナーの臭いを強力分解できる光触媒「銅担持酸化チタン」をご紹介いたします。
銅担持酸化チタンとは?
銅担持酸化チタン(銅ドープ酸化チタン)とは、アナターゼ型酸化チタンにナノサイズの酸化銅を結合させた可視光応答型光触媒です。
難しい言葉がいろいろと出てきましたが、わかりやすくご説明いたします。
光触媒とは?
最初に光触媒の意味をご説明します。光触媒とは、光が当たると触媒の効果を発揮する成分のことです。触媒の効果が発揮されると、それに触れるものを酸化分解する性質があります。
そのメカニズムは、次の図をご覧ください。

光触媒に光が当たると励起電子が飛び出し、空気中の酸素分子や水分子によってOHラジカルが発生します。このOHラジカルは強い酸化力を持ち、それに触れるものを酸化分解します。
シンナーは燃える成分ですから、OHラジカルによって酸化分解ができる可能性があります。
ただし、光触媒の種類によって酸化分解できる効果の高さが異なるので、シンナーを分解できるものとできないものに分かれます。そして、銅担持酸化チタンが一般的に流通している光触媒の中で、シンナーを強力に分解できる成分です。
アナターゼ型酸化チタンとは?
酸化チタンは、金属原子であるチタンに酸素が2個結合した二酸化チタンのことです。酸化チタンは、単独で存在するアモルファス酸化チタンと、結晶構造を持った酸化チタンがあります。
その結晶構造には、次の3種類があることが知られています。
- アナターゼ型
- ルチル型
- ブルッカイト型
この中でアナターゼ型が、一般的に光触媒として利用される成分です。アナターゼ酸化チタンは、紫外線が当たると光触媒としての効果を発揮します。
可視光応答型光触媒とは?
それに対して、可視光が当たっても光触媒としての効果を発揮する成分のことを、可視光応答型光触媒といいます。可視光とは、目に見える光のことで、紫色、青色、水色(シアン)、緑色、黄色、橙色、赤色といった光のことです。
アナターゼ型酸化チタンは、目に見えない紫外線によって効果が出るので、紫外線活性型光触媒の一種です。それに対して、可視光応答型光触媒は、可視光で効果が出ます。
可視光応答型光触媒は、大きく2種類に分かれます。
- 可視光応答する成分を用いる
- アナターゼ型酸化チタンを可視光応答させる
前者で代表的なものは、酸化タングステンです。酸化タングステンは、紫外線や紫色、青色、水色(シアン)の光に反応して触媒の効果を発揮します。酸化タングステンのデメリットとしては、可視光応答するものの効果が弱いことです。
そこでアナターゼ型酸化チタンが可視光でも活性化するようにする方法が用いられます。その方法としては、酸化チタンに別の物質を結合させて、可視光応答させるというものです。アナターゼ型酸化チタンを基材として、そこに補触媒となる別の物質を結合させます。そのことを、「担持(たんじ)」や「ドープ」といいます。
銅担持酸化チタンとは?
銅担持酸化チタン(銅ドープ酸化チタン)とは、アナターゼ型酸化チタンにナノサイズの酸化銅を担持させた成分です。銅を担持させる方法は、弊社が世界で初めて開発し、製造特許を取得しました。
銅担持酸化チタンには不思議な効果があります。その効果とは
- アナターゼ型酸化チタンが可視光応答する(紫色、青色、水色)
- アナターゼ型酸化チタンでも分解できなかったものが分解できる
- 光の当たらない暗所でも触媒効果を発揮する
- 今現在のところ、一般利用されているどの光触媒成分よりも強く応答する
このような効果のある銅担持酸化チタンで、シンナーの成分を分解できるかを試験しました。
アナターゼ型酸化チタンに紫外線を当てると
シンナーを分解消臭できるか?
アナターゼ酸化チタンは、バンドギャップが3.8eVあり、このバンドギャップを超える光エネルギーを受けると自由電子が飛び出します。この自由電子によってOHラジカルという活性酸素が発生し、シンナーを酸化分解できる可能性があります。
バンドギャップが3.8eVは、光エネルギーでは紫外線に相当します。ですのでアナターゼ酸化チタンが光触媒として活性化するためには、紫外線が照射されなければいけません。
では、アナターゼ型はシンナーが分解できるかどうかを確認したいと思います。シンナーの成分である、トルエン、キシレン、スチレンに対して、アナターゼ型酸化チタンに紫外線を照射してそれらのガスが分解できるかを試験しました。その結果は次のグラフになります。

どれもほとんど分解できていないことがわかります。この試験結果から言えることは、アナターゼ型酸化チタンでは、トルエンやキシレン、スチレンを含むシンナーは分解ができないということです。
銅担持酸化チタンによるシンナーの分解
続いて、銅担持酸化チタンによってトルエン、キシレン、スチレンが分解できるかを試験しました。先ほどのグラフに銅担持酸化チタンの結果を加えました。

アナターゼ酸化チタンでは分解できなかったシンナーの成分でしたが、銅担持酸化チタンではグングンと分解していっていることがわかります。
なぜアナターゼ型酸化チタンでは分解ができなかったのに、銅担持酸化チタンでは分解ができたのでしょうか?
弊社でも長らく謎でしたが、おそらくナノサイズの酸化チタンが触媒効果を発揮したものと思われます。銅は300℃ほどに加熱しないと触媒効果を発揮しないのですが、ナノサイズの酸化チタンは常温でも触媒効果を発揮することが知られており、その効果によるものと考えます。
この試験は、紫外線を照射して行いましたが、分解にナノサイズの酸化銅が関与しているので、おそらく可視光を当てたときや暗所であったとしても分解ができます。
銅担持酸化チタンの利用方法
銅担持酸化チタンによってシンナーの成分が分解できることがわかりました。では、銅担持酸化チタンをどのように利用したら良いのでしょうか?
その方法として、コーティング塗装をする方法と、シンナー脱臭装置を利用する方法が考えられます。
銅担持酸化チタンのコーティング塗装

銅担持酸化チタンは、光触媒コーティング剤として存在します。光触媒コーティング剤とは、光触媒成分が添加された液剤のことです。弊社の製品は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
光触媒コーティング剤は、スプレーガンによって塗布することができます。シンナーを利用する部屋の中に塗装しておけば、室内に浮遊しているシンナーを分解していってくれます。
塗装面は次のような箇所に可能です。
- 壁紙クロス
- 天井パネル
- タイル
- コンクリート
- 漆喰
- 珪藻土
- 木材
- プラスチック
塗装できない箇所は、ガラスだけです。なお、水を弾きやすいプラスチックへの塗装は、濡れ性を高めたプラスチック用光触媒コーティング剤もございます。
銅担持酸化チタンを使ったシンナー脱臭装置
シンナー脱臭装置は、空気清浄機に似た装置で、銅担持酸化チタンを塗布したフィルターを設置する装置のことです。
大型の装置であれば、ステンレスメッシュに銅担持酸化チタンをコーティング塗装し、それを装着した送風機にすると良いでしょう。紫外線を照射するとさらに効果的です。シンナーの量に合わせて、ステンレスメッシュフィルターを何重にもすると効果的にシンナーを分解できるはずです。

大型空調機であれば、不織布フィルターに銅担持酸化チタンをコーティング塗装すると良いのですが、シンナーを消臭するとなると何重にもフィルターを重ねた方が良いので、専用の装置を設けた方が良いと思います。
コーティング塗装の費用(概算)
銅担持酸化チタンのコーティング塗装を部屋の中に行なったときの費用は、塗装面積に応じます。
塗装単価は、一般的に3,500円/m2~5,000円/m2です。100m2ほどの施工であれば、35万円~50万円ほどになります。これに部屋の清掃や養生の費用、諸経費、出張費などが加わり、料金が決まります。それらの費用がおおよそ10万円ほどとすれば、100m2のコーティング塗装の費用は、45万円~60万円ほどとなります。
部屋がちらかっている場合には、施工前に部屋を片付けておくこと。また部屋に家具や什器など何も置いていない状態にしておくことで、施工費用を抑えることができます。
以上、シンナーを強力分解できる銅担持酸化チタンをご紹介しました。コーティング塗装は、弊社の業務用製品を扱う施工代理店にお任せください。施工代理店一覧はこちらのページです。
また、シンナー脱臭装置の開発は、弊社までお気軽にご相談ください。今のところ、銅担持酸化チタンを使ったシンナー脱臭装置は世の中に存在しませんから、開発できたら世界初になります。弊社にて試作した手のひらサイズの脱臭装置を販売しているので、効果をお試しください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。