お風呂場は湿気があるので、カビの温床です。壁紙クロスや外壁でも、湿気っぽいところはカビが発生しやすいです。
防カビができるコーティング剤にはいろいろな種類がありますが、カビを長期間防止できる方法として、光触媒コーティング塗装があります。
この記事では、光触媒によって防カビができるメカニズムや、防カビに効果の高い光触媒／効果の弱い光触媒の種類、銅ドープ酸化チタンの利用方法などを解説いたします。
光触媒による防カビのメカニズムをしっかり把握し、効果の高い光触媒を選んでください。なぜなら、光触媒成分によっては、防カビの効果が弱かったり、効果がまったくない場合もあるからです。
光触媒による防カビのメカニズム
まずは、光触媒による防カビのメカニズムを解説します。少し専門用語を使うので、ゆっくり解説したいと思います。
光触媒とは？
まず、防カビの前に「光触媒とは何か？」ということですが、光触媒とは、光エネルギーを受けると触媒の効果を発揮する成分です。
触媒の効果が発揮されたら、それに触れている有機物が酸化分解され、別の成分になります。最終的には、水や二酸化炭素、窒素酸化物などに分解されます。
ただし、酸化分解ができるものはナノサイズのものに限られます。顕微鏡でないと見えないカビ菌といえども、光触媒成分からすると巨大なので、分解は難しいです。
光触媒からOHラジカルが発生するメカニズム
光触媒が有機物を酸化分解する成分は、OHラジカルといわれる成分です。OHラジカルは、強力な酸化力を持つ活性酸素として知られています。光触媒からOHラジカルが発生して、OHラジカルによって有機物を分解します。カビも有機物ですから、酸化分解されるわけです。
OHラジカルが発生するメカニズムは、次の図をご覧ください。
光触媒成分に光が当たります。すると光触媒から、励起電子（e–）が発生します。励起電子は、活性化している電子なので、空気中の酸素分子と結合して、酸素イオン（O2–）になります。
酸素イオンは、空気中の水の分子（H2O）と結合して、過酸化水素（H2O2）を発生させます。過酸化水素は不安定で、水素原子と酸素原子が1つずつ結合した、OHラジカル（・OH）を発生させます。
OHラジカルは、非常に酸化力が強いので、空気中に漂うことがほぼ無く、光触媒の表面のみに存在します。ですから、光が当たって活性化した光触媒に接触する有機物だけが分解されるものとお考えください。
光触媒で防カビができるメカニズム
活性化しOHラジカルが発生している光触媒に、カビ菌が接触すると、カビ菌の表面の成分や細胞壁の一部が酸化分解されます。
カビ菌自体は、OHラジカルからすると巨大なものですが、ものすごく時間をかけたら、カビ菌自体を分解できるかもしれません。しかし、カビ菌の分解には時間がかかります。ところが、カビ菌の表面の一部であれば、すぐに分解されます。
カビ菌の表面や細胞壁の一部が分解されたら、カビ菌の活動が弱まります。また、細胞壁が一部でも分解されたら、細胞が呼吸しにくくなりますし、孔が空いたら細胞の中身が飛び出してしまい、細胞として機能しなくなります。カビ菌の胞子も同様です。
このようにして、カビ菌の活動を弱めたり、止めたりします。これによって、防カビができます。
光触媒が防カビで活躍する場面
このように、光触媒によって防カビができるわけですが、弊社の光触媒コーティングとなった光触媒成分が実際に活躍している場所は、次のような箇所です。
- 壁紙クロス
- お風呂場
- エアコンの内部やフィルター
- 打ちっ放しコンクリート
- サイディング
- 軒下の石膏ボード
- 漆喰
戸建てやマンション、ビル、工場などの防カビにご利用いただいています。
光触媒について少し知識をお持ちの方であれば、「軒下は直射日光が当たらないし、壁紙クロスは室内だし、お風呂場はさらに光が少ない。エアコンの内部なんて真っ暗だから、本当に防カビができるのだろうか？」と思われるかもしれません。
確かに、一般的な光触媒成分を利用していると、それらの場所では防カビ効果が弱かったり、まったく効果の無いものさえあります。
実は、世の中には特別な効果を持つ光触媒成分があるのです。その特別な光触媒成分は、弊社の技術チームが世界で初めて発見し、光触媒コーティング剤への製品化に成功しました。その成分について、次に解説いたします。
室内や日陰で防カビができる光触媒成分とは？
光触媒成分には、本当にたくさんの種類があります。市販されている光触媒コーティング剤や光触媒塗料に使用されている光触媒成分は、酸化チタンや酸化タングステンです。
そして、弊社が世界で初めて発見した特別な成分は、「銅ドープ酸化チタン」です。
反応する光の種類による光触媒の分類
光触媒には、反応する光の種類があります。それによって室内でも防カビができるかどうかの分かれ道があります。
光触媒成分は、反応する光の種類で分類されます。その分類とは、「紫外線で反応するものか、紫外線以外でも反応するものか」という分類です。それぞれ名称があります。
- 紫外線応答型光触媒・・・紫外線のみに反応する光触媒成分（アナターゼ型酸化チタン）
- 可視光応答型光触媒・・・紫外線のみならず可視光にも応答する光触媒成分
紫外線とは、UVとか日焼け止めとかでも知られている光です。人の目に見えない光ですが、光エネルギーが高い光です。その成分として一般的なものは、アナターゼ型といわれる結晶構造を持った酸化チタンです。
可視光とは、人の目に見える光の種類です。紫色、青色、緑色、黄色、赤色といった光です。可視光応答型光触媒の種類は、後ほど解説いたします。
これらの光の種類は、光の波長によって異なります。波長が400nmの光は青色、700nmの光は赤色という具合です。波長が、380nmよりも短い光は、紫外線になります。
室内や日陰でも防カビができる光触媒成分は？
室内や外壁でも日陰になる場所は、紫外線が当たりにくいので、紫外線応答型光触媒は防カビ効果が出にくいです。そういった場所には、可視光応答型光触媒を利用することが必須となります。
市販されている防カビ目的の光触媒コーティング剤で、それに利用されている可視光応答型光触媒は、次の4種類があります。
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 鉄ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
可視光応答型光触媒は、とても種類が多いのですが、光触媒コーティング剤として利用できる光触媒成分は、防カビ効果があるものであること以外にも、安価であること、身体に安全であることなど、いろいろな条件があるので、この4種類が主に利用されています。
この4成分の中で、もっとも防カビの効果が高いものは、「銅ドープ酸化チタン」です。
銅ドープ酸化チタンとは、酸化チタンに銅を結合させて、紫外線にしか反応しない酸化チタンを可視光でも反応させるようにした成分です。さらには、窒素ドープ酸化チタンや酸化タングステンなどと比べて、同じ環境でも数倍もの防カビ効果を発揮します。
銅ドープ酸化チタンは暗所でも防カビ効果を発揮
銅ドープ酸化チタンは、可視光応答するだけでなく、暗所でも触媒の効果を発揮する、驚くべき性能があります。
その理由は、よくわかっていませんが、おそらくは添加された銅がナノサイズの酸化銅として存在するので、その触媒の効果が発揮されて、暗所でも防カビができるのだと考えます。ナノサイズの酸化銅は、加熱しなくても高い触媒の効果を発揮することが知られています。
ともあれ、さまざまな試験を行ったところ、銅ドープ酸化チタンのみが暗所でも高い防カビ効果を発揮することが判りました。
では、酸化タングステンによる防カビはどうなのでしょうか？
現在、弊社製品を扱う施工代理店様の一社が、酸化タングステンを使って、壁紙クロスのコーティングをしていたそうです。そのときに、物件によっては施工してから1年も経過しないうちにカビが発生して、クレームが入ったそうです。しかも、クレームの頻度はかなり高かったとのことです。
その施工業者様は、弊社の光触媒コーティング剤に切り替えてからは、クレームがゼロになったそうです。
ちなみに、その施工業者様が選ばれた光触媒コーティング剤は、屋内用光触媒コーティング剤（BX01-AB1）です。
なぜ酸化タングステンは効果が無かったのか？
なぜ酸化タングステンでは、防カビが出来なかったのか。その理由はおそらく、湿気が発生しやすい北側の部屋で、昼間は利用していない部屋だったのだと思います。
そのような部屋は、普段はカーテンを閉めていて、昼間の光が入りにくい状態だったので、暗所と同じですから、酸化タングステンは効果を発揮しません。
酸化タングステンによって防カビができる条件は、光を当てている状態のときだけです。暗所になったら、防カビ効果はありませんから、室内の照明を切っている時間が長ければ長いほど、カビが発生しやすくなります。
部屋はどのような使われ方をするか分かりませんから、室内の防カビ目的で光触媒コーティングをするなら、銅ドープ酸化チタンを用いることが必須となります。屋内用光触媒コーティング剤（BX01-AB1）は、防カビに気をつかう食品工場でも利用されている製品ですから、効果と安全性の高さは実証済です。
防カビ目的で光触媒を利用する方法
銅ドープ酸化チタンを使って防カビをすることが必須であれば、「銅ドープ酸化チタンが入った塗料は何か？」ということになります。
光触媒が入った塗料には、光触媒コーティング剤と光触媒塗料の2種類があります。
光触媒コーティング剤とは、水のような粘性の液剤で、スプレーガンを使ってコーティング塗装するものです。光触媒塗料とは、ペンキのような顔料が入った塗料で、ハケやペイントローラーで塗装します。
今現在のところ、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒塗料は存在しないので、防カビ目的で光触媒を塗装するなら、光触媒コーティング剤を塗装することになります。
光触媒コーティング剤の塗装は、専用の塗装機械とスプレーガンを用いて塗装するため、施工業者にご依頼いただくことになります。
もし弊社の光触媒コーティング剤をご利用になられたい場合は、弊社もしくは弊社製品を扱う施工代理店にご相談ください。施工代理店一覧は、こちらのページです。
この記事の著者／責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。