住宅やビルの外壁、打ちっ放しコンクリートなどは、年月が経過すると汚れてきます。
空気中の汚れが付着して汚れることもあれば、外壁の環境によっては、カビやコケが生えたりして汚れていきます。
外壁の汚れが目立ってくると、建物が古びて見えます。外壁を、定期的に清掃したいものですが、外壁の清掃は高いところもあるので、なかなか出来るものではありません。
そこで、光触媒の防汚効果を利用する方法があります。光触媒は、光が当たると外壁の汚れを落としてくれたり、カビやコケが発生しなくなったりします。
しかし、光触媒成分の選択や塗装方法を間違ってしまうと、それらの効果が得られない場合もあります。
この記事では、外壁に汚れが付着するメカニズムや、光触媒を塗装したときの防汚効果を発揮するメカニズム、光触媒成分の選び方、施工方法を解説します。
外壁が汚れるメカニズム
外壁が汚れる理由には、空気中に浮遊している汚れが外壁に付着する汚れと、外壁にカビやコケが発生する汚れがあります。これらのメカニズムを解説いたします。
空気中の汚れの付着による汚れ
空気中には、目に見えないほどの小さな埃が浮遊しています。その埃が外壁に接触したとしても、風が吹いたら取れるはずです。それが取れずに、壁に付着したままになる理由は、油分が外壁に付着するからです。
空気中には、目に見えない埃の他にも油分も浮遊しています。
例えば、厨房やキッチンで料理をしていると、フライパンから油分が飛ぶことがあります。その油が気体となって、部屋の中に浮遊して、壁に付着するのです。油料理の多いお店では、フロアの床がヌメヌメしていることがありますが、空気の流れで油分がフロアに移動して付着したからです。
外気は厨房と比較して、圧倒的に油分は少ないのですが、毎日少しずつ油分が付着していきます。また、その油分が雨水にも含まれるので、それらが付着していって外壁や窓ガラスに油膜をつくります。
油分は粘性を持っているので、外壁の油膜に埃が付着して、少しずつ外壁が汚れていきます。
窓ガラスの汚れは、外壁と比べて平らな面なので、外壁ほど汚れが付着しませんが、空気中の油分や無機成分のシリカなどが付着し汚れが目立ってしまいます。
カビやコケの発生による汚れ
外壁にカビやコケが発生する理由は、湿気です。特に、コケは外壁の近くに木が生えていたり、外壁の近くに森があったりすると、発生しやすいです。
外壁でも直射日光が当たる場所は、カビやコケが発生しにくいです。外壁に雨水が当たって湿気たとしても、直射日光によって乾きやすいからです。また、コケは植物ですが、直射日光に弱いので、直射日光が当たる壁面にはコケが生えにくいのです。
しかし、北側の壁や、外壁の周りが森林に囲まれて日陰になりやすい場所で、特に周りがジメジメしているところでは、外壁にカビやコケが発生しやすいです。
カビはさまざまなものを栄養素とするので、水分さえあればどこにでも発生します。また、コケも水分から栄養を取るので、直射日光が当たらないジメジメしているところに発生しやすいです。
このように、外壁の防汚には、「外壁に付着した汚れを落とすこと」と、「外壁にカビやコケを発生させいないこと」の2種類があります。それぞれの光触媒による防汚のメカニズムを解説いたします。
光触媒による汚れの防汚
(セルフクリーニング)のメカニズム
光触媒によって外壁に付着した汚れを防汚するメカニズムを解説いたします。
光触媒が外壁に付着する油分を分解
外壁に光触媒をコーティング、もしくは光触媒が入った塗料を塗布します。その上に油分が付着します。光触媒は有機物を酸化分解する性質を持っているので、その油分も有機物ですから分解されていきます。
ただし、分解されるのは光触媒に接触している箇所ですから、油分としての粘性は残っているので、油分に汚れが付着していって、汚れが目立ってしまうことがあります。
また、光触媒と接触している油分は分解されて、落ちやすい状態になっていますが、落ちていくことはあまりありません。
雨水による親水性で油分を剥がして落とす
そのうちに雨が降って、外壁に雨水が当たります。光触媒は親水性の効果があるので、次のメカニズムによって、汚れが落ちていきます。
①まず、光触媒コーティングされた、もしくは光触媒が入った塗料が塗られな面に雨水が馴染みます。②光触媒の親水性によって、汚れと外壁の間に水が入り込みます。③そこに付着している汚れは、落ちやすい状態になっているので、雨水の流れといっしょに、汚れも落ちていきます。
このように、光触媒による汚れの防汚は、光触媒と雨水が組み合わさって、自動的に行われます。この効果のことを、セルフクリーニングといいます。
そのようなことで、雨水が当たらない外壁は、汚れが目立ってしまうことがあります。
光触媒によるカビ防止・コケ防止のメカニズム
光触媒によって外壁のカビ防止・コケ防止をするメカニズムを解説いたします。次の図をご覧ください。
①光触媒に光が当たると、表面にOHラジカルという活性酸素を発生させます。この成分は、とても強力な活性酸素です。②そこに、微細なカビやコケが接触すると、それらの表面を酸化分解する効果があります。③酸化分解されたら、カビやコケは活動できなくなったり、死滅したりして、カビ防止やコケ防止ができます。
ここでのポイントは、光触媒が光によって活性化することです。光触媒成分によって、活性化する光の種類が異なるので、外壁の環境に最適な光触媒成分を選ぶことが大事です。
例えば、もっともよく利用されている光触媒成分は、酸化チタンです。酸化チタン光触媒をコーティングしたとすると、そこに紫外線が当たれば活性化してOHラジカルを発生させます。
酸化チタンを使った場合は、紫外線が当たる外壁に最適だということです。
光触媒塗装と光触媒コーティング
外壁に光触媒を塗布する方法には、光触媒塗料を用いる方法と、光触媒コーティング液剤を用いる方法があります。
光触媒塗料とは?
光触媒塗料とは、ペンキのような顔料が入った塗料に、光触媒成分が加えられたものです。一般的には酸化チタン(アナターゼ型)が加えられている製品が多いです。
特徴としては、ペンキのようにハケやペイントローラーで塗装ができるので、手軽に塗装ができることです。手軽さ故に、一般の方でも塗装が可能です。
光触媒成分として酸化チタンが加えられたものは、直射日光が当たれば強い抗酸化力を持ちます。そのため、光触媒塗料の顔料や接着成分が有機原料を使用している場合は、そのものをも分解してしまって、色あせや塗料の劣化が起こることもあります。
また、北側の外壁や薄暗い場所では、紫外線が当たりにくいので、カビ防止やコケ防止といった防汚効果が発揮されない場合もあります。
光触媒コーティング液剤とは?
光触媒コーティング液剤とは、水のような粘性の液剤に光触媒成分がナノサイズの微粒子として溶け込んでいる液剤です。この液剤を塗装することを、光触媒コーティングといいます。
基本的にどのような面にも塗装ができ、液剤にはうっすらと緑色っぽい色をしていたり、黄色っぽい色をしていることもありますが、塗装をすると透明になるので、塗装面の装飾性を損なうことはありません。
光触媒コーティング塗装をした壁面が、ペンキや樹脂、木材などの有機物の場合は、光触媒の効果によって劣化させてしまう場合があります。それを防ぐ方法としては、光触媒成分の分量を抑えるか、光触媒成分が塗装面に直接触れないようにする下地剤(プライマー)をあらかじめ塗装します。
光触媒成分の分量を抑えると、当然ながら光触媒による防汚効果が弱くなります。また、プライマーを利用する場合は、施工費用が高くなります。そういったジレンマがあります。
しかし、光触媒成分の分量が少ないと、本来の目的である防汚ができない場合がありますから、プライマーを利用し、光触媒成分もしっかり入った光触媒コーティング液剤を選ぶことが大事です。
日陰になる外壁での問題点
日陰になる外壁では、紫外線が当たりにくいため、酸化チタンを使った光触媒塗料や光触媒コーティング剤は防汚効果を発揮しにくいという問題があります。
そこで、紫外線でなくても防汚効果を発揮する光触媒成分が添加された光触媒塗料、もしくは光触媒コーティング液剤を用いることが求められます。紫外線でなくても反応し、光触媒製品としてリリースされている成分は、主に次の3種類があります。
- 銅ドープ酸化チタン
- 窒素ドープ酸化チタン
- 酸化タングステン
これらの3成分は、可視光応答型光触媒と言って、青色の光が当たっても触媒の効果を発揮する成分です。青色の光は、人の目に見える光ですから、可視光応答型と名付けられています。
北側の外壁や薄暗い外壁であったとしても、紫外線は当たりませんが、可視光なら当たりますから、防汚効果が期待できます。
ところで、これら3成分にも光触媒の効果に差があります。これら3成分の中でもっとも効果の高い光触媒は、1つ目の銅ドープ酸化チタンです。他の2つの成分と比較しても、数倍以上の効果があります。
日陰の外壁は銅ドープ酸化チタンの光触媒コーティング
日陰の箇所には銅ドープ酸化チタンを使った光触媒を塗装したら良いことが判りました。では、光触媒塗料と光触媒コーティング液剤のどちらを選んだら良いかということになります。
実は、光触媒塗料には銅ドープ酸化チタンを使った製品が、現存しません。光触媒コーティング液剤にしか存在しないのです。そのため、家全体を防汚したい場合は、光触媒コーティング液剤を使うしかありませんから、最初から光触媒コーティングを選ぶことになります。
下地剤(プライマー)の問題
先ほど、外壁にペンキが塗られていたり、樹脂や木材などの有機物でできている場合は、「光触媒コーティング液剤を塗装する前に、プライマーを塗装すること」とお伝えしました。さもないと、光触媒成分が塗装面の有機物を分解するからです。
そこでプライマーを利用するわけですが、プライマーにもメーカーによっては問題がある場合があります。
それは、プライマー成分として一般的に利用されているアモルファス酸化チタンが、紫外線の影響を受けて結晶化するという問題です。酸化チタンが結晶化すると、光触媒の効果が出てしまい、塗装面の劣化を抑える役割のプライマーが、塗装面を劣化させる性質を持ってしまうのです。
そのように、外壁用のプライマーの開発は、とても難しいものがありますが、それを克服したメーカーのプライマーを利用することが必須となります。もちろん弊社は克服しております。
外壁の光触媒コーティング施工方法
最後に、光触媒コーティング液剤を塗装する機材や液剤、施工方法を解説します。消費者の方は、どのような機材を使って、どのような流れで施工するのか、把握しておいてください。
光触媒コーティング液剤の塗装機材と液剤
光触媒コーティング液剤を塗装する機械には、専用の装置とスプレーガンを用います。弊社が推奨する塗装機械は、ABAC温風低圧塗装機です。写真は、ABAC温風低圧塗装機SG-91とスプレーガンです。
弊社の光触媒コーティング製品を用いる 場合は、次の光触媒製品を、塗装面積に合わせた分量を用意します。
屋外用光触媒コーティング剤(BX01)は、酸化チタンが主成分の光触媒コーティング液剤です。屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、銅ドープ酸化チタンが主成分の光触媒コーティング液剤で、名称が「屋内用」となっていますが、外壁にも利用できます。
屋外用プライマー(ASS01)は、塗装面が有機物の場合に利用します。コンクリート用プライマー(セラミックプライマー)は、塗装面が打ちっ放しコンクリートの場合に利用します。
光触媒コーティング施工の流れ
光触媒コーティング施工の流れは、次の通りです。
- 近隣への事前説明
- 足場の設置
- 塗装面の清掃
- 塗料の付着を避けたい箇所の養生
- 屋外用プライマーASS01の塗装
- 乾燥
- 屋外用光触媒コーティング剤BX01や屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗装
- 乾燥
- 片付け、塗装機材の清掃、足場の撤去
光触媒コーティング施工の流れの中でのポイントは、「3.塗装面の清掃」と「4.塗料の付着を避けたい箇所の養生」です。この2点について、少し解説いたします。
外壁の清掃について
塗装面の清掃を怠り、塗装面が汚れた状態のまま、その上から光触媒コーティング塗装をすると、防汚効果の持続期間が短くなってしまいます。光触媒が汚れを分解して落ちていくときに、光触媒成分もいっしょに落ちていくからです。
外壁は汚れていないように見えて、かなり汚れていることが多いです。
また、カビやコケがすでに発生している外壁では、専用の洗浄剤やブラシ、高圧洗浄機などを使って入念に掃除することが大事です。特にカビは、一度発生してしまったら、根っ子が外壁の中にまで侵入していって、光触媒コーティング塗装をしてもカビが出てきてしまう恐れがあるからです。
もし、光触媒コーティング塗装をしたところにカビが発生しても、光触媒に接触している部分は分解されているので、すぐに落とすことができます。
養生について
ABAC温風低圧塗装機は、スプレーガンにエアーカーテン方式の塗布方法を採用しているので、屋外の施工において多少の風でも問題なく施工することが出来ますが、それでも、光触媒コーティング液剤が飛び散らないと言い切る事は出来ませんので、塗装現場の近くは、車等を養生して頂く必要があります。
養生は、一般的な塗装と同じ要領です。養生シートをかぶせて養生テープでしっかり止めます。
施工の流れや施工方法の詳細は、「屋外用光触媒コーティング剤BX01の塗装方法や注意点」や「【外壁の光触媒塗装】光触媒コーティング剤の塗装方法」をご参照ください。
以上、光触媒による防汚効果のメカニズムを解説しつつ、外壁の環境によって光触媒成分を選ぶことの大切さをお伝えしました。銅ドープ酸化チタンを使った外壁のカビ防止・コケ防止は、光触媒コーティング液剤を使うしかありません。
外壁の防汚や銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティングをお求めの方は、ぜひ弊社もしくは弊社の製品を扱う施工代理店にご依頼ください。施工代理店の一覧は、こちらのページです。
お問い合わせやご相談がございましても、お電話もしくはお問い合わせフォームにて、お気軽にご連絡ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。