光触媒塗料とは、ペンキのような顔料の入った塗料に光触媒成分が添加されたものです。主に外壁に利用されます。
光触媒は、光エネルギーを受けることで、除菌や防カビ、消臭、化学物質やアレルゲンの分解、防汚などといった効果を発揮します。
この記事では、光触媒塗料とはどういったものか、光触媒塗料の問題点や克服方法、光触媒コーティング液剤との違いなどを解説します。
光触媒塗料とは?
光触媒塗料とは、ペンキのような顔料の入った塗料に光触媒成分が添加されたものです。
光触媒塗料に用いられる光触媒成分
光触媒塗料に一般的に用いられる光触媒成分は、アナターゼ型酸化チタンです。
酸化チタンには、いくつかの結晶構造があり、アナターゼ型と言われる結晶構造が光触媒成分として一般的に利用されています。
酸化チタンは、紫外線が当たると触媒の効果や親水性の効果を発揮します。
触媒の効果とは、有機物を酸化分解する性質のことです。有機物には、菌類や苔類、アレルゲン、臭い成分などがあります。これらの有機物が、触媒活性している光触媒に触れると、それら自体、もしくはそれらの接触面が酸化分解されるので、除菌や防カビ、消臭などができます。
親水性とは、水を弾くのではなく、逆に水と馴染む性質のことです。光触媒塗料を塗装しておくと、そこに付着した油分や汚れが分解されていき、親水性の効果によって汚れが自動的に落ちていきます。このように、自動的に汚れが落ちていく効果のことを、セルフクリーニングといいます。
紫外線が当たる場所で、親水性の効果が求められる場所と言えば、外壁です。光触媒塗料は、主に外壁用として利用されます。
光触媒塗料と光触媒コーティング液剤の違い
光触媒塗料は、ペンキのようにハケやペイントローラーで塗装ができる、粘性の高い塗料です。それに対して光触媒コーティング液剤は、水のような粘性の塗料で、専用の塗装機械とスプレーガンを用いて塗装します。
光触媒塗料は、主に外壁に塗装する塗料です。酸化チタンが用いられていることが多い理由は、外壁ですと直射日光による紫外線が外壁に当たるので、触媒の効果を発揮しやすいからです。
光触媒コーティング液剤には、もちろん酸化チタンを使ったものもありますが、室内用に塗装するために、室内でも活性化しやすい可視光応答型光触媒といわれる成分を添加されたものもあります。
光触媒塗料と光触媒コーティング液剤の違いを述べるとするならば、光触媒塗料は主に外壁の塗料として利用されます。光触媒コーティング液剤は、外壁を含め、いろいろな場所に塗装できるように工夫された、さまざまな種類のものがあります。
光触媒塗料の問題点
光触媒塗料は優れた触媒の効果を発揮しますが、その効果の高さ故に、問題点が発生してしまいます。
色あせの問題
ペンキを塗装したら、ペンキが直射日光の影響で色あせしていくことは、よくご存じのことと思います。光触媒塗料でも、同じような現象が起きます。
さらには、光触媒は紫外線が当たることで有機物を分解するわけですから、有機物である顔料をも分解し、色あせが加速される場合があります。
以前に、大手塗料メーカーにて、「外壁の美しさが15~20年保たれる」というふれ込みで、光触媒塗料を発売していたことがありました。ところが、そのメーカーは、販売から10年ほどで撤退していきました。
塗料が色あせして、色むらになり、美しさが保てなかったようです。
塗料の劣化、チョーキングの発生
また、塗料には有機系の接着成分(バインダー)が用いられていることが多いです。有機系の接着成分は、有機物ですから、光触媒によって分解される対象となります。つまり、光触媒塗料に有機系の接着成分を用いていると、自らを劣化させて、白い粉が吹き出したようになったり、剥離の原因になります。
この白い粉が発生する現象のことを、チョーキングといいます。もちろんチョーキングが発生したら、色が白っぽくなるので、色あせと同じです。
まだチョーキングだけで終われば良いのですが、いずれは塗料そのものが剥がれおちてくるようになります。塗料が剥がれ落ちてしまったら、建物を雨水から守ることができなくなるので、建物自体が腐食し始めてしまうのです。
外壁に苔やカビが発生することも
さらには、光触媒塗料を塗装した外壁であったとしても、北側やジメジメした日陰の箇所には、苔やカビが発生することがあります。特に、家の近くに森がや木があると、コケが生えやすいです。
光触媒塗料に含まれる酸化チタンは、紫外線が当たることで苔やカビ、それらの胞子を分解してくれるのですが、北側の壁やジメジメした日陰の箇所では、紫外線が当たりませんから、苔やカビなどを分解してくれません。
そういったことで、せっかく光触媒塗料を塗り「外壁の美しさが保てるのだ」と思っていても、実際には苔やカビが発生して、外壁が汚れていくことがあります。
塗装箇所が限られる
光触媒塗料は、ペンキのようなものですから、外壁ならともかく室内への塗装や、打ちっ放しコンクリートなどへの塗装はできません。
室内の壁紙であれば、同じ色の光触媒塗料を利用できます。打ちっ放しコンクリートには、その質感を犠牲にするのであれば塗装は可能です。部屋全体に光触媒を塗装したかったり、打ちっ放しコンクリートの質感を残したい場合には、光触媒塗料が利用できません。
そういった場合には、光触媒コーティング液剤を用いることになります。
これらの問題が発生しない光触媒塗料はあるのか?
上記のような色あせや劣化、苔やカビの発生を防ぐ方法があります。
色あせやチョーキング、劣化が発生しにくい光触媒塗料とは?
色あせやチョーキング、劣化が発生しにくくするためには、無機系光触媒塗料か、光触媒の効果を極めて弱めた光触媒塗料を選ぶことです。
光触媒は有機系の成分を分解するので、無機系の顔料や接着成分であれば、光触媒で分解されることはありません。
また、屋外では直射日光という強い光が当たるため、光触媒が活性しやすいので、酸化チタンの含有量を抑えた光触媒塗料を用いることも、一つの方法です。しかし、酸化チタンの含有量が少ないと、光触媒の効果も落ちてしまうので、セルフクリーニングが十分に起こらなくて汚れが目立ってしまったり、苔やカビが発生しやすくなる恐れがあります。
北側やジメジメした日陰でも苔やカビが発生しない光触媒塗料とは?
北側やジメジメした日陰では、紫外線が当たらないので苔やカビが発生するということでした。その理由は、酸化チタン光触媒が紫外線にしか反応しないためでした。
そうであるならば、紫外線でなくても反応をする別の光触媒成分を使ったら良いということになります。
薄暗い場所でも光触媒の効果の高い成分は、銅ドープ酸化チタンです。銅ドープ酸化チタンであれば、日陰になりやすい場所ばかりか、暗い場所でも苔やカビの発生を防止してくれます。それほど強い効果を発揮します。
ですが、そのような強い効果があるので、今度は光触媒塗料の劣化が問題になります。
このように、光触媒塗料は効果の高さと劣化の矛盾した問題をはらんでいるのです。完全に無機系でさらには銅ドープ酸化チタンを使った光触媒塗料があれば良いのですが、今現在のところ、そのような塗料は存在しません。
外壁塗装に光触媒コーティング液剤を
利用する場合の注意点
そのようなことで、外壁塗装に光触媒塗料を選ばないで、光触媒コーティング液剤の塗装を選ぶ人もいます。最後に、光触媒コーティング液剤を利用する場合の注意点を解説いたします。
光触媒コーティング液剤も万能ではないからです。
プライマー(下地材)を販売している
メーカーの製品を扱う施工店に依頼する
光触媒コーティング液剤は、透明な塗装ができる塗料です。住宅の樹脂製のサイディング、漆喰、石膏ボード、木材といった、下地の材質にとらわれず、ほとんど何にでも塗装ができます。
しかし、そのまま塗装をすると、先ほどチョーキングのところでも解説したように、樹脂系などの有機物の外壁の場合は、光触媒の効果によって下地を劣化させる恐れがあります。
そこで、光触媒コーティングをする前に、プライマーと言われる無機系の下地材を塗装します。
しかし、外壁用のプライマーの開発はとても難しいので、外壁用プライマーを販売しているメーカーは、とても技術レベルの高いメーカーと言えます。
なぜ難しいのかと言いますと、外壁用プライマーはクリア塗装ができるという条件を満たすために、光触媒の効果を持たないアモルファス酸化チタンが用いられることが多いのですが、そのアモルファス酸化チタンは直射日光の紫外線が当たると結晶化してしまい、光触媒の効果を発揮する酸化チタンに変化してしまうからです。
下地剤として塗装したものが光触媒成分に変化してしまったら、塗装面を劣化させてしまうのです。
この現象を最初に指摘したのは弊社なのですが、その忠告を無視してプライマーの改善を怠った業者は、その指摘から数年後にクレームの山を抱え、今や存在していません。そのような現状があります。
外壁に光触媒コーティング塗装をしたい場合は、必ずプライマー(下地材)を販売しているメーカーの製品を扱う施工店を選ぶことは、もちろのことです。そのプライマーが本当に下地を守ってくれるのか、実績を見てから注文するようにした方が良いです。
ちなみに、弊社が開発した屋外用プライマー(ASS01)は、屋外用光触媒コーティング剤(BX01)の下地剤として最適化された成分構成になっているため、他社の光触媒コーティング液剤ではご利用いただけません。
常に日陰になる箇所やジメジメした箇所は銅ドープ酸化チタンを選ぶ
次に、光触媒コーティング液剤に利用されている光触媒成分ですが、外壁用であれば基本的に光触媒塗料と同じアナターゼ型酸化チタンです。
ところが、上述したようにアナターゼ型酸化チタンは紫外線にしか反応しないため、常に日陰になる箇所やジメジメした箇所では、苔やカビが発生することがあります。そういったことから、日陰や暗所でも苔やカビを防止してくれる効果を発揮する、銅ドープ酸化チタンを用いることをお伝えしました。
それと同様に、日陰やジメジメした箇所には、酸化チタンではなく、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤を選ぶことです。
弊社が開発した、銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング液剤は、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。名称が「屋内用」となっていますが、外壁にも強固に定着しますから、安心してご利用ください。
以上、触媒塗料とはどういったものか、光触媒塗料の問題点や克服方法、光触媒コーティング液剤との違い、光触媒コーティング液剤を選ぶときの注意点を解説します。
光触媒は、光エネルギーを受けることで、除菌や防カビ、防苔、消臭、化学物質やアレルゲンの分解、防汚などといった効果を発揮します。それらの効果を得つつ、外壁の美しさを保つためには、光触媒塗料ではなく光触媒コーティング液剤を塗装することをおすすめします。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。