住宅の室内の壁にカビが発生することがあります。
カビ防止の基本は換気ですが、うっかりしてカビが生えたり、結露でカビが生えたりと、カビ対策は怠れません。
新築であっても、カビ防止は必須です。窓際や北側の部屋、地下室は換気が必須です。換気が行き届かない場所ではカビ防止に奔走することになります。
そして、普段から換気を気にしていても、うっかりカビの発生を許してしまうこともあります。光触媒塗装によって、うっかりのカビを防止できます。
光触媒による室内のカビ防止の方法は、次の3種類があります。
- 光触媒塗料の塗装
- 光触媒コーティング剤の塗装
- 光触媒の除菌・消臭剤スプレーの利用
この記事では、室内のカビ防止を光触媒で行う3つの方法を解説いたします。それぞれのメリット・デメリットを解説するので、室内のカビ防止をお考えの方に、どの方法が自分に合っているのかをご検討いただければと思います。
市販されている光触媒製品の中には、効果が怪しいものもあるので、光触媒でカビ防止をお考えの方は、しっかりお読みください。
光触媒で室内に発生するカビを防止できるのか?
最初に、そもそも光触媒で室内のカビ防止ができるのか、光触媒によるカビ防止のメカニズムを解説いたします。そのメカニズムを知っていないと、室内に光触媒を導入しても、カビ防止にまったく効果のないこともあるからです。
光触媒のカビ防止のメカニズム
光触媒は、光が当たると有機物を酸化分解するOHラジカルという成分が発生する性質を持ちます。OHラジカルは、微細な有機物を分解する性質があるので、カビ菌の細胞壁を破壊して、カビ菌を殺菌してくれる効果があります。
カビ菌やカビの胞子の大きさは、種類により異なりますが5μmほどです。それに対して光触媒成分の大きさは5nmほどと、1,000倍ほどの差があります。光触媒がカビ菌を完全に分解することは、現実的に難しいと思います。
カビ菌は、おそらくは細胞壁の一部が破壊されたらカビ菌が死んでしまうので、光触媒のサイズは小さかったとしても、カビ菌の発生を抑える効果があります。
光触媒成分の種類と性質
一般家庭で利用されている光触媒成分は、酸化チタンや酸化タングステンなど、いろいろな種類があります。
もっとも利用されている酸化チタン光触媒の性質
現在、もっとも多く利用されている光触媒成分は酸化チタンです。酸化チタンは、光の中でも特に紫外線が当たると、高い触媒の効果を発揮します。
酸化チタンを壁面に塗装し、紫外線を当てることができたら、高いカビ防止効果を発揮します。
ところが、部屋の中では蛍光灯やLED照明を利用していますが、それらの光源から紫外線はほとんど出てきませんから、部屋の中に酸化チタン光触媒を塗装しても、カビ防止の効果はありません。
窓から直射日光が入ってくるところは紫外線が当たるかもしれませんが、そういった場所はそもそもカビが発生しにくいものです。
そういったことから、一般的に多く利用されている酸化チタンとは異なる、室内にある光源の光でも反応して触媒の効果を発揮する光触媒成分を用いなければいけません。
室内の光でも光触媒の効果を発揮するのは「可視光応答型光触媒」
室内のカビ防止を光触媒で行いたいのであれば、蛍光灯やLED照明の光でも反応する光触媒成分を用いることが必須です。そのような光触媒成分のことを、目に見える光に反応する光触媒だということで、可視光応答型光触媒といいます。
可視光応答型光触媒にもいろいろな種類があり、現在最も利用されているものが酸化タングステンです。
可視光応答型光触媒については、とても大事なところなので、後ほど詳しく解説いたします。
詐欺的なPRをしている光触媒メーカーもある
他社の光触媒コーティング剤を調査していたところ、内装施工用塗装材として販売されているのに、光触媒成分が「酸化チタンを使用」と書かれているものがありました。室内で紫外線が当たる場所と言えば、窓際の直射日光が当たる箇所だけです。
カビ防止をしたい場所は、直射日光が当たらない湿気のこもる場所です。そういった製品を利用してしまうと、カビ防止効果はまったく無いと思います。
その内装施工用塗装材の謳い文句は、「紫外線を照射したらホルムアルデヒドを分解できた」とあり、ホルムアルデヒドが時間と共に減っていくグラフが添えてありました。紫外線を照射して試験したら、効果があって当たり前です。
そのように、あたかも効果のあるようなPRをしている製品が存在するので、カビ防止で光触媒製品を選ぶ際は注意が必要です。
可視光応答型光触媒ならすべてカビ防止が可能か?
室内の明かりで反応する可視光応答型光触媒ですが、たくさんの種類があり、それぞれ触媒効果の高さが異なります。ですので、「可視光応答型光触媒を使用した」と言っても、カビが発生してクレームになることもあります。
可視光応答型光触媒で実用化され、一般的に使用されている光触媒成分は、主に次の2種類です。
- 窒素ドープ型酸化チタン
- 酸化タングステン
どちらも可視光応答型光触媒として、屋内用の光触媒塗料や光触媒コーティング剤などに利用されています。ところが、これらの成分では、カビ防止までの効果が無いのではないかと思える口コミをよく耳にします。
例えば、弊社の施工代理店になられている企業様の中で、「以前に他社の光触媒コーティング剤を利用していたが、塗装して1年も経たないうちにカビが発生してクレームになった。そのクレームが1件ではなく、何件もあった。」とのことでした。
ちなみに、そのクレームのあった光触媒コーティング剤は、酸化タングステンを利用したものでした。
その理由は、これらの可視光応答型光触媒では、室内の弱い光では、カビ菌の繁殖を抑えるほどの効果が出ないことにあります。
とある光触媒コーティング剤のメーカーの広告で、「蛍光灯の光(1,000lx)でカビを防止できた」と謳っているものがありましたが、1,000lxと言えば手術室くらいの明るさです。室内では200lxほどですから、カビ防止ができなくて当然だと思えます。
最も効果の高い光触媒成分は「銅ドープ酸化チタン」
では、「室内の弱い光でもカビ防止ができる光触媒は何か?」ということですが、それは銅ドープ酸化チタンです。
銅ドープ酸化チタンとは、酸化チタン光触媒に銅を添加して担持させたものです。酸化チタンに銅を合体させたものが、今現在に市販されている可視光応答型光触媒の中では、最もカビ防止効果の高い成分です。
市販されている光触媒スプレーの中には、「銅イオンと酸化チタンを混ぜたハイブリッド光触媒」と謳っている製品も出回っていますが、単に銅イオンを混ぜただけでは、効果は弱いと思います。酸化チタンに銅を合体させたもの、担持させたものが効果の高い成分となります。
まとめますと、世の中に光触媒成分は数多くありますが、カビ菌は繁殖力が高いので、「銅ドープ酸化チタン光触媒を使用しなければ、室内ではカビ防止の効果が無い」とお考えください。将来的に、もっと効果の高い光触媒成分が出現するかもしれませんが、現在のところ銅ドープ酸化チタンが最強です。
光触媒塗料とは?
前置きの基礎知識はさておき、光触媒塗料を解説いたします。光触媒塗料とは、ペンキのような顔料を含む塗料の中に、光触媒成分が加えられたものです。
光触媒塗料のメリット
光触媒塗料のメリットは、次の通りです。
- ペイントローラーで手軽に塗装ができる
- 1種類の塗料を塗装すれば良い
- そのため、塗装の工賃は安い
光触媒塗料はペンキを塗装するように塗ることができます。特殊な塗装機械は必要ありません。ですので、光触媒塗料はネット通販でも販売されているので、それを手に入れて、自分で塗装もできます。
また、光触媒塗料は購入した塗料を1種類だけ塗装するだけです。下地剤などの塗装は必要ありません。
そのような塗装の手間の少なさが、光触媒塗料のメリットです。
光触媒塗料のデメリット
光触媒塗料のデメリットは、次の通りです。
- 色の種類が少ない
- ペンキのように塗装するので、塗装できる箇所に限りがある
- 光触媒塗料は厚く塗られるものなので、効果を出すために光触媒成分を多く含み、相対的に塗料の価格が高くなる
- そもそも、銅ドープ酸化チタンを使ったものは、現在のところ存在しない
光触媒塗料は、色のレパートリーが少ないです。白色やクリーム色のものが多いです。室内に塗装するわけですから、白色やクリーム色であれば、事足りるとも言えます。
また、ペンキのように塗装するので、塗装できる箇所に限りがあります。室内であれば、壁紙クロスや打ちっ放しのコンクリートくらいでしょう。木目調や漆喰などに塗ってしまったら、それらの質感が失われてしまいます。机やテーブル、キッチンパネル、トイレの便器、お風呂場のパネル、窓のサッシといった、除菌をもっとも必要とされる箇所には塗装ができません。
そして、残念ながら今現在のところ銅ドープ酸化チタンを使った光触媒塗料は存在しません。ですから、カビ防止を目的とするのであれば、光触媒塗料は選択肢から外れることになります。
光触媒コーティング剤とは?
光触媒コーティング剤とは、専用の塗装機械とスプレーガンを使って吹き付け塗装をする液剤のことです。
光触媒コーティング剤のメリット
光触媒コーティング剤のメリットは、次の通りです。
- 銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤が存在する(銅ドープ酸化チタンを使ったものであれば、強力にカビ防止をしてくれる)
- 基本的に何にでも塗装ができるので、部屋全体の塗装も可能
- クリア塗装なので、塗装後の見た目の変化はない
光触媒コーティング剤には、メーカーにもよりますが、銅ドープ酸化チタンを使ったものが存在します。銅ドープ酸化チタンを使ったものであれば、室内でもカビ防止に効果があります。
光触媒塗料はペンキのようなものでしたが、光触媒コーティング剤は水のような液体です。それを吹き付け塗装によって、基本的に何にでも塗装ができます。そして塗装面は透明な塗装ですので、塗装面の見た目の色が変わったり、変色したりといった変化はありません。
ただし、カビ防止ではありませんが、ガラス面に塗装する場合は、均一な塗装をしないと、ガラス面の光の反射によって、虹色が出ることがあります。
光触媒コーティング剤のデメリット
光触媒コーティング剤のデメリットは、次の通りです。
- 壁面の塗装には専用の塗装機械とスプレーガンが必要
- 専門業者に依頼しないといけない
光触媒コーティング剤の塗装には、専用の塗装機械とスプレーガンを用います。そのような機械を用いるわけですから、専門業者に依頼することになります。
もし塗装機械を持っていない人が塗装するとなると、光触媒コーティング剤をハケやローラーで塗ると思いますが、そういった塗り方ですと厚く塗り過ぎてしまって、シミのような模様が出ます。
光触媒コーティング剤を美しく塗装するためには、本当に薄く吹き付け塗装をすることが大事です。調べたことはありませんが、おそらくは塗装された光触媒コーティングの厚みは、ナノサイズほどです。
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤
銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤は、弊社が世界で初めて開発したものです。
その製品は、開発当時からさまざまな改良が加えられ、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)という名称で、業務用製品として販売しています。
塗装には、専用の塗装機械とスプレーガンを用います。弊社では、ABAC温風低圧塗装機をおすすめしています。ABAC温風低圧塗装機と専用のスプレーガンの詳細は、ABAC温風低圧塗装機SG-91光触媒塗装セットをご覧ください。
光触媒の除菌・消臭剤スプレーとは?
続いて、光触媒の除菌・消臭剤スプレーを解説します。除菌・消臭剤スプレーは、ご家庭でも利用される除菌・消臭スプレーに、光触媒成分が添加されたものです。
光触媒の除菌・消臭剤スプレーのメリット
光触媒の除菌・消臭剤スプレーのメリットは、次の通りです。
- 銅ドープ酸化チタンを用いたものなら、カビ防止が可能
- 誰でも手軽に使用できる
- 手に入れやすい
光触媒の除菌・消臭剤スプレーのデメリット
- 接着成分が入っていないので、耐久性が弱い
- 光触媒成分の濃度が低い
光触媒の除菌・消臭剤スプレーは、もともとは手軽な除菌・消臭が目的ですから、カビ防止として開発されたものではないため、接着成分は入っていませんし、光触媒の成分量は光触媒コーティング剤と比べると少ないです。
銅ドープ酸化チタンを用いた除菌・消臭剤スプレーであっても、接着成分が入っていないことや、光触媒成分の濃度が低いこともあり、頻繁にスプレーしないとカビ防止ができません。
もし接着成分が入った光触媒スプレーのコーティング剤を使ったとしたら、光触媒コーティング塗装が均一にできないと思います。そのため、塗装面の仕上がりが悪くなります。「見た目が悪くなっても、カビが生えるよりは良い」とお考えの方であれば良いかもしれませんが、おすすめしません。
銅ドープ酸化チタンを使った除菌・消臭剤スプレー
銅ドープ酸化チタンを使った除菌・消臭剤スプレーは、いくつかのメーカーから市販されていますが、弊社ではアキュートクリーンという名称の商品を販売しています。
この商品は、室内の除菌・消臭を目的として一般のご家庭向けに開発したものですが、カビ防止の効果があることも、ユーザー様の声として頂いております。
除菌・消臭効果の高さが評価され、飲食店や介護の現場、ペットショップなどでもご利用いただいています。ペットショップ用としては、ペット向けのペットの消臭という商品もあるので、どうぞご利用ください。
まとめ
以上、室内のカビ防止を光触媒で行う場合の、光触媒塗料、光触媒コーティング剤、光触媒の除菌・消臭スプレーについて、メリット・デメリットを解説いたしました。
光触媒塗料は、手軽に塗装ができますが、銅ドープ酸化チタンを使った製品が存在しないことを考えると、選択肢から外れます。光触媒コーティング剤は専門業者に依頼することになるので、コストがかかりますが、カビ防止の効果が高いです。手軽さで選ぶなら、光触媒の除菌・消臭スプレーです。
光触媒コーティング施工なら、弊社の光触媒製品を扱う施工代理店にお任せください。施工代理店一覧は、室内の光触媒コーティング施工代理店をご覧ください。施工のご依頼は、弊社もしくは施工代理店までご連絡ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。