太陽光パネルは、空気中の汚れや雨水の汚れが付着したら、太陽光が阻害されて、発電電力量が減ってしまいます。
太陽光パネルを定期的に掃除したら良いのですが、それだけ掃除の手間やコストがかかってしまいます。ご家庭の太陽光パネルは屋根の上にあるので容易に清掃ができません。メガソーラーといった大規模な太陽光発電所では、掃除用の水の確保も難しいと思います。
そういった背景から、太陽光パネルを光触媒による防汚コーティングが注目されています。光触媒をガラス面に塗装すると、セルフクリーニング効果によって、太陽光パネルが自動的に掃除されるというものです。
この記事では、太陽光パネルにセルフクリーニング効果を付与するための、防汚コーティング施工の方法を解説します。
太陽光パネルのセルフクリーニング効果
セルフクリーニングとは?
誰しも、雨水がガラスの表面を流れ落ちるところを見たことあることと思います。一般的に、ガラスは水を弾くので、雨水がガラスの表面を流れ落ちるのです。この性質のことを、撥水性と言います。
光触媒をガラス面にコーティングしたら、水をはじかなくなり、水が水滴にならずに馴染むようになります。この性質のことを親水性と言います。撥水性と親水性は、真逆の性質です。
また、光触媒は汚れを分解する効果があります。目に見えるような大きな汚れは、完全に分解されることはありませんが、光触媒と接触している箇所は分解され、剥がれ落ちやすくなっています。そこに雨水が当たると、水が光触媒の親水性によって汚れの間に入り込み、ガラス面の汚れが自動的に剥がれ落ちていきます。
この効果のことを、セルフクリーニングと言います。
セルフクリーニング効果のメカニズム
太陽光パネルのセルフクリーニング効果のメカニズムを図で解説いたします。次の図をご覧ください。
図の①では、太陽光パネルのガラス面に光触媒コーティング層ができています。その表面に汚れが付着しています。そこに雨が降ってきた様子です。光触媒コーティングの表面に付着した汚れは、光触媒によって汚れそのものが分解され、雨水で落ちやすい状態にもなります。
②では、光触媒の親水性の効果によって、雨水が光触媒コーティング層と汚れの間に入り込んでいきます。そして③のように、太陽光パネルの汚れが雨水といっしょに落ちていきます。
太陽光パネルは、太陽の角度に合わせて傾けられています。なるべく太陽光に向けて傾けた方が、発電電力量が多くなるからです。この角度によって、雨水が当たると流れ落ちていくため、太陽光パネルに光触媒コーティングすることで、セルフクリーニング効果を付与することが可能となります。
セルフクリーニングを発揮するための条件
ただし、光触媒成分がガラス面に直接塗布されることが条件となります。もし、ガラス面に汚れが付着しており、その上から光触媒コーティングをすると、水がガラス面に馴染まず、光触媒コーティングをする前と同じ撥水した状態になってしまいます。このような状態ではセルフクリーニング効果が得られません。
太陽光パネルに光触媒コーティングするときは、太陽光パネルのガラス面を予めしっかりと洗浄することが大事です。
太陽光パネルの洗浄方法について
太陽光パネルのガラス面を、「どの程度洗浄したら良いのか?」ということですが、実は研磨するほどの洗浄が必要となります。
すでに設置済の太陽光パネルは、外気や雨水に晒されています。すると、外気や雨水に含まれるシリカや油分の汚れがこびりついています。また、太陽光パネルの目地の部分から滲み出てくるシリコーン油脂がこびりついています。これらの汚れが付着した状態ですと、ガラス面に直接光触媒をコーティングすることができません。
シリカや油分の洗浄は、窓ガラスの清掃業者が洗浄液を使って清掃したとしても取り切れないくらい、こびりついています。ですので、太陽光パネル設置後に防汚コーティングしようとしたら、研磨をする工賃の分だけ施工費用が高くなります。
できれば、太陽光パネルを設置する前に防汚コーティングした方が良いです。
太陽光パネルに最適な防汚コーティング剤
太陽光パネルに最適な防汚コーティング剤は、ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)です。
この製品は、光触媒効果の高い酸化チタンに酸化タングステンを加えて親水性を高め、セルフクリーニングが起こりやすくしてあります。また、ガラスにクリア塗装ができます。クリア塗装とは、透明な塗装のことです。
太陽光パネルは、セルフクリーニング効果だけでなく、クリア塗装も求められます。光が透過することで発電をするわけですから、なるべくクリア塗装ができた方が良いことは述べるまでもありません。
完全なクリア塗装ができる条件は、ガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)を用いることと、薄く均一に塗装する技術を要することです。光触媒コーティングの塗り方にムラがあったら、光の当たり方によってガラス面が虹色に見えることがあり、完全なクリア塗装にならないことがあります。
実のところ、窓ガラスは室内から外を眺めることがあるので、本当に何も映らないようなクリア塗装が求められますが、太陽光パネルはそれほど厳密なクリア塗装が求められるわけではありません。虹色のムラが出たとしても、太陽光パネルの発電量はほとんど変わらないからです。
光触媒による防汚コーティング施工手順
光触媒による防汚コーティング施工の手順は、次のような流れになります。
- 太陽光パネルの入念な洗浄および研磨
- 光触媒コーティング剤の塗装
- 乾燥
太陽光パネルの入念な洗浄および研磨
太陽光パネルのガラス面は、光触媒コーティングをする前に入念に掃除をします。先ほど洗浄方法を解説いたしましたが、太陽光パネルに付着している汚れを、ビルの窓ガラス清掃のように落とすだけではありません。すでに設置済の太陽光パネルは表面にシリカや油汚れが強力に付着しているので、それを取るために研磨をします。
研磨には、酸化セリウムを用います。
入念な研磨が必要な場合は、それなりに手間がかかるので、施工費用が高くなります。研磨する度合いと面積によって、施工費用が大きく異なります。
太陽光パネルを光触媒コーティングするタイミングは、太陽光パネルの設置前、もしくは設置直後がおすすめです。
光触媒コーティング剤の塗装
光触媒コーティング塗装には、専用の塗装機械とスプレーガンを使用します。おすすめは、ABAC温風低圧塗装機で、スプレーノズルにφ0.3mmといった小口径のノズルを使用することです。
ABAC温風低圧塗装機のスプレーガンは、スプレーされる光触媒コーティング剤が飛散していかないように、エアカーテンも同時に噴出しています。すると、光触媒コーティングがガラス面に定着する割合(塗着効率)が、一般的なスプレーガンと比べて圧倒的に高くなります。
塗料カップにガラス用光触媒コーティング剤(BTG01)を入れます。このような専用の塗装機械とスプレーガンを用いて、素早く均一に塗装をするようにしてください。
以上、太陽光パネルのセルフクリーニング効果のメリットや太陽光パネルの洗浄方法、光触媒コーティング剤の特長や施工方法を解説いたしました。
太陽光パネルの防汚コーティングのご依頼は、弊社もしくは弊社製品を扱う施工代理店までご相談ください。施工代理店一覧は、太陽光発電の光触媒コーティング施工代理店をご覧ください。
この記事の著者/責任者
株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。