
先日、賃貸アパートに入居された方からご相談をいただきました。
賃貸アパートは、前の入居者が退去されたら、壁紙を新しいものに交換することが多いと思います。
「臭いによって、頭がボーッとしてしまうので、消臭してもらいたい」というものでした。
この記事では、賃貸アパートや賃貸マンションなどの物件にて、壁紙を新しいものに交換したときに発生する臭いの原因や、その対策についてご説明いたします。
賃貸アパートに入居された方で臭いにお困りの方、賃貸アパートの付加価値を高めたいオーナー様は、ぜひ最後までご覧ください。
ご相談の経緯

賃貸アパートにお住まいの方から、「屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を購入したい」とのご相談をいただきました。
事情を伺うと、「賃貸アパートに入居したが、部屋の臭いで頭がボーッとしてしまう」とのことでした。
同じようなご経験の方は、多いことでしょう。
弊社のホームーページをご覧になられ、臭いの原因がVOCガス(揮発性有機化合物)であるとお考えになり、自分で施工をされようと思われたのでしょう。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)とは、いろいろなVOCを強力に分解でき、消臭ができる銅ドープ酸化チタンを使った光触媒コーティング剤です。
この液剤の効果などは、後ほどご説明いたしますが、これを利用できたら相談者様の悩みは解決できる可能性が高いです。
ところが、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)は、弊社が推奨する専用の塗装装置を用いないと、塗りムラが発生してしまい、見栄えが悪くなってしまいます。この塗装装置は、セットで30万円以上しますから、それをご購入いただくことも現実的ではございませんから、地元の施工代理店に行ってもらうことにしました。
賃貸物件特有の臭いの原因
リフォーム直後の賃貸物件は、入居すると特有の臭いがします。人によっては酸っぱい臭いに感じることもあるようです。その臭いの感度も人によって異なり、相談者様は臭いに敏感な方のようでした。
この臭いは、壁紙に使用されている接着剤から出るガスだと思われます。接着剤には有機溶剤が利用されているので、それが揮発して部屋の中に充満し、臭いがしているのだと思います。
そのようなガスの成分ことを、揮発性有機化合物(VOC)といいます。
VOCの種類はたくさんあり、100種類とも200種類とも言われています。有名なものはホルムアルデヒドです。ホルムアルデヒドは、新築住宅であれば規制が厳しいようですが、賃貸物件ではあまり気にしていないように思います。
賃貸物件の場合には収益性が大事ですから、入居者が退去した後のリフォームは、格安で行うことが基本となります。すると、使用する建材や接着剤も格安のものになり、VOCガスが発生しやすいものが利用されるのではないかと考えます。
ご相談いただいたシーズンが夏ということもあり、室内の温度が上昇すると、VOCガスの発生量も多くなります。また、外出時や冷房のときは、窓を閉め切っているので、室内が換気されなくて、VOC濃度も高くなる場合が多いです。
賃貸物件のVOCガス対策の方法
賃貸物件のVOCガス対策の基本は、何といっても換気です。換気をすることで、新鮮な外気を取り入れて、VOCガスを室外に排出することです。
とは言うものの、換気もユニットバスのものを利用すれば24時間換気はできますが、VOCガスに敏感な人にとっては、焼け石に水かもしれません。外出時や冷房をしているときは、窓を閉め切っている場合には、VOCガスを換気することが難しくもなります。
そういった場合には、次のような方法が考えられますが、賃貸アパートの施工には限界があります。
VOC対策 | 方法 |
---|---|
VOC吸着 | 活性炭、吸着剤 |
VOC分解 | 光触媒、専用の薬剤 |
VOC吸着
先に結論から述べると、VOC吸着はあまり効果的ではありません。
活性炭は言わずと知れたものですが、VOCが活性炭に触れるように空気を循環させておく必要があります。吸着量には限界があり、限界に達したときには、新しいものに交換する必要があります。
吸着剤も同様です。スプレータイプの吸着剤もありますが、発生し続けるVOCガスにずっとスプレーし続けるのも無理があります。
VOC分解
光触媒とは、光が当たるとOHラジカルと言われる活性酸素を発生させ、VOCガスを分解する性質のある、酸化チタンなどの酸化金属を主成分とする触媒です。
光触媒の利用は、適切な光触媒の種類を選ぶことで、いろいろな種類のVOCを分解することができるので、賃貸アパートのVOC対策に最適だと思われます。光触媒については、後ほど詳しくご説明いたします。
VOCガスを分解できる専用の薬剤ですが、VOCガスを分解すると薬剤の成分が変性して、それ以上分解し続けることはありません。そのため、専用の薬剤を使用し続ける必要があります。
VOCガスはいろいろな種類があるので、どのような種類のVOCガスによって頭がボーッとするのかわかりませんから、いろいろな種類の薬剤を利用して、臭いが消えるものを試す必要があり、効率的ではありません。
光触媒によるVOCガス分解
光触媒の性質やVOCガスを分解できる光触媒の種類をご説明いたします。光触媒と言ってもいろいろな種類があるのですが、多くの種類において賃貸アパートの環境では、VOCガスを分解できません。
ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの一部のVOCガスならどのような光触媒でも分解ができるのですが、トルエンやキシレンといったベンゼン環を持つVOCガスの分解は難しいからです。ですので、光触媒の性質をしっかりご理解ください
光触媒とは?
光触媒とは、光が当たることで表面に電子を放出する性質があります。その電子が空気中の酸素や水と反応して、OHラジカルと言われる活性酸素を発生させます。
OHラジカルは強い酸化力を持つ物質で、それに触れるVOCガスを酸化分解し、水や二酸化炭素などに分解することができます。VOCガスに触れなかったOHラジカルは、すぐに水に戻ってしまいます。

光触媒は、OHラジカルを発生させ、VOCガスを分解しても、光触媒自体は化学変化しません。つまり、賃貸アパートの部屋中に、光触媒を何らかの方法で塗布することができれば、そこに光触媒があり、光が当たり続けることでVOCガスを分解し続けてくれます。
光触媒は、そのような優れものなのです。
光触媒の問題点
そのような優れものの光触媒ですが、問題点もあります。それは、光触媒が効果を発揮するための条件があるからです。
もちろん光触媒にVOCガスが接触する必要はあるものの、光が当たっていないとOHラジカルが発生しませんから、VOCガスを分解する効果が発揮されません。さらには、光触媒の種類によっては、紫外線が当たらないと効果が出ないものもあります。
その代表が酸化チタンです。
賃貸アパートで利用される光は、昼間の窓から直射日光が入り、それに含まれる紫外線で効果を発揮するかもしれませんが、昼間は仕事で出かけるのでカーテンを閉め切っています。室内の光が灯るのは、朝と夜だけで、しかもLEDや蛍光灯といった光源のみです。
それらの光源からはほとんど紫外線が出ていないため、酸化チタンを使用してもVOCガスは分解できません。酸化チタンは、紫外線が当たると強力にVOCガスを分解してくれる効果が期待できますが、賃貸アパートの室内では何も起きないのでムダです。

可視光応答型光触媒ならどうか?
酸化チタンは紫外線が当たったときでないとVOCガスを分解する効果がありませんでした。そこで、「LEDや蛍光灯といった照明器具の光でもVOCガスが分解できる光触媒は無いのだろうか?」ということになります。
もちろんあります。そのような、可視光でも反応する光触媒のことを、可視光応答型光触媒といいます。よく利用されている可視光応答型光触媒は、窒素ドープ酸化チタンと酸化タングステンです。
窒素ドープ酸化チタンは、酸化チタンに窒素を結合させて、可視光応答するようにした成分です。酸化タングステンは、そのままでも可視光応答します。
ところが、実用化されている可視光応答型光触媒のほとんどは、VOCガスを分解する効果が弱いのです。その理由は、可視光は紫外線と比べて光エネルギーが弱いので、OHラジカルが発生しにくいことです。
「光触媒はダメじゃないか」とガッカリされたかもしれませんが、ご安心ください。
VOCガス分解なら銅ドープ酸化チタン光触媒

お待たせしました。やっと、いろいろな種類のVOCガスを分解できる光触媒の登場です。
銅ドープ酸化チタンとは、酸化チタン結晶の表面に酸化銅を結合させた特殊な光触媒です。「ドープ」とは「結合させた」という意味ですが、日本語で「担持(たんじ)」とも言うので、銅担持酸化チタンとも言われることもあります。
銅ドープ酸化チタンも可視光応答型光触媒の一種ですから、室内の明かりでも反応して、VOCガスが分解できます。
しかも「強力に」です。
なぜ銅ドープ酸化チタンは、VOCガスを強力に分解できるのかと言いますと、酸化チタン結晶の表面に結合された酸化銅それ自身も触媒効果を発揮し、光触媒としての効果と銅の触媒効果が合わさって、強力にVOCガスを分解できるようです。
先ほどご説明した通り、酸化チタンは紫外線が当たったときでないとVOCガスは分解できませんでした。可視光応答型光触媒は、室内の光でも分解はできるものの、その効果はとても弱いものでした。また、これらの光触媒は、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなら簡単に分解できるのですが、ベンゼン環を持つVOCガスは、分解ができません。
ところが、銅ドープ酸化チタンだけがベンゼン環を持つVOCガスをも分解できます。
銅ドープ酸化チタンによるベンゼン環VOCの分解試験
次の図をご覧ください。このグラフは、酸化チタンと銅ドープ酸化チタンにそれぞれ紫外線を照射したときに、トルエン、キシレン、スチレンが分解できるかを試験したものです。



酸化チタンは、紫外線を当てることでホルムアルデヒドやアセトアルデヒドは簡単に分解することが知られています。ところが、トルエンやキシレン、スチレンといったベンゼン環を持つVOCガスは分解できていません。
それに対して銅ドープ酸化チタンは、それらのVOCガスをグングンと分解していっています。
この試験は、外部の試験業者様に依頼したのですが、その試験担当者様から試験前に、「光触媒では、トルエンなどは分解できないよ」とおっしゃられていました。ところが、試験結果を目の当たりにした試験担当者様は、光触媒による考えを改めたようです。
光触媒の業界では、ベンゼン環を分解できることは、一つの目標でもありました。銅ドープ酸化チタンが排気ガス処理の常識を変えるものにもなり得ると思います。
賃貸アパートに入居したときに、化学物質の臭いがする場合は、それがホルムアルデヒドやアセトアルデヒドであれば銅ドープ酸化チタンでなくても分解ができると思います。VOCガスの種類が特定できていない場合には、銅ドープ酸化チタンを利用した方が得策です。
もちろん、VOCガスの種類を特定するためには高い分析費用がかかってしまうので、使用したい光触媒の種類にコダワリがなければ、最初から銅ドープ酸化チタンを使った方が良いと思います。
トルエンやキシレン、スチレンのVOCガス分解試験の詳細は、「揮発性有機化合物(VOC)を分解できる光触媒成分とは?」をご参照ください。
銅ドープ酸化チタンの利用方法
さて、話を賃貸アパートに戻したいと思います。銅ドープ酸化チタンの利用方法は、次の2種類あります。
- 光触媒コーティング施工
- 光触媒スプレーの利用
光触媒コーティング施工

光触媒コーティング施工とは、光触媒コーティング剤と言われる液剤を、賃貸アパートの部屋中に塗布する施工のことです。
光触媒コーティング剤には、光触媒成分と接着成分がブレンドされた液剤です。ペンキのような塗料とは違って、水のような粘性の液剤です。
光触媒成分には、もちろん銅ドープ酸化チタンを使用したものを利用します。接着成分には、もちろん有機溶剤が利用されたものは利用してはいけません。VOCガスの臭いを消臭するわけですから、接着成分に有機溶剤が利用されていたら本末転倒です。
この場合には、無機の接着成分には、アモルファス酸化チタンを利用した光触媒コーティング剤を利用します。
光触媒に銅ドープ酸化チタンを、接着成分にはアモルファス酸化チタンを使ったものをご利用ください。
弊社製品であれば、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)の塗布は、冒頭でもご説明した通り、弊社が推奨する専用の塗装装置を用います。ですから、一般消費者の方は施工ができませんから、弊社の光触媒製品を扱う施工代理店にご依頼いただくことになり、費用も高くなります。
また、賃貸アパートの施工は、家主様の許可も必要になります。
ですが、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を利用すると、部屋中に銅ドープ酸化チタンを塗布できるので、強力にVOCガスを分解できます。また、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を塗装しても、部屋の見栄えは変わりませんから、家主様も許可なさることと思います。
銅ドープ酸化チタンによるVOC分解の効果を高めるために、施工後しばらくは、部屋の電気を点灯させたままにしておいてください。
施工方法の詳細は、「室内用光触媒コーティング剤BX01-AB1の塗装方法や注意点」をご参照ください。
光触媒スプレーの利用

「もっと手軽にVOCガスを分解したい」という方は、銅ドープ酸化チタンの添加量が多い光触媒スプレー「ホントに消臭」をご利用になられた方が良いと思います。
「ホントに消臭」を、部屋中の壁紙、できれば天井や畳にもまんべんなく塗布してください。
「ホントに消臭」の成分も、有機溶剤などは使用しておらず、成分は銅ドープ酸化チタンと水だけです。
水に含まれたナノサイズの銅ドープ酸化チタンを塗布すると、水の毛細管現象で、銅ドープ酸化チタンが塗布面にしみ込んでいくため、銅ドープ酸化チタンの効果が長続きします。
また、エアコンの中にも「ホントに消臭」をスプレーしておくと、エアコンで空気が循環するときに、VOCガスを分解してくれます。
1度の塗布でVOCガスの臭いが軽減されない場合は、2度、3度と行ってください。おそらく2度の塗布で、ほとんどの場合は臭いが消えることと思います。

「ホントに消臭」をご利用になられた方のご感想
ご相談者様は、施工代理店のアドバイスによって、「ホントに消臭」を利用することにしたようです。そして、次の日に喜びのご感想をメールでいただきました。その全文は、次の通りです。
施工代理店様の見立てでは、特に酷い臭いも感じず、コーティング施工の前に消臭スプレーだけでも良いのではとのアドバイスで「ホントに消臭」を販売して頂き、半年なり様子見をする事となりました。
昨日早速「ホントに消臭」をエアコンへ使用してみた処、お蔭様で気になっていた化学物質の臭いは、ほぼ皆無になりました。一晩過ごしてみて、頭の重たい感じも軽減された気がします。
「暫く使い続け、それでも改善されない場合は、また何時でもご相談下さい。」との施工代理店様の、非常に親切で良心的なご対応に甘え、当面は消臭スプレーを活用させて頂き、どうしても改善されない場合は連絡する事と致します。
この度のクイックレスポンスなご対応並びに素晴らしい商品の開発に大変感謝しております。ご対応ご紹介頂き誠に有難うございました。
以上メールで恐縮ですが、ご対応へのお礼とご報告まで。
光触媒コーティング施工であれば、VOCガスを強力に分解できますが、施工代理店の担当者が「そこまで臭いが酷くないので、光触媒スプレーで対策ができる」と現場で判断してくださり、「ホントに消臭」を販売されたようです。
以上、賃貸アパートの入居時の臭い対策についてご説明いたしました。
まとめると、入居時の臭いの原因はVOCガスです。VOCガスの対策には、銅ドープ酸化チタン光触媒を利用すると効果的です。
銅ドープ酸化チタンの利用方法には、光触媒コーティング施工と光触媒スプレーの利用があります。光触媒コーティング施工では、接着成分にアモルファス酸化チタンを使った、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)を利用します。光触媒スプレーは、銅ドープ酸化チタンの添加量を多くした「ホントに消臭」を利用します。
賃貸アパートの入居時の臭いにお困りの方は、イリスまでお気軽にご相談ください。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。