
実用化されている可視光応答型光触媒の中でもっとも触媒効果の高いのが銅ドープ酸化チタンです。
銅担持酸化チタンともいいます。
銅ドープ酸化チタンは、ナノサイズの酸化銅によって、光が当たっていなくても触媒効果を発揮します。それと光触媒としての効果との相乗効果によって、高い効果を発揮します。
その効果の一つとして、いろいろな種類のVOCの分解があります。
VOCとは、揮発性有機化合物の略で、住宅であれば建材、印刷工場では塗料といった、いろいろな場所に使用されている有機溶剤が揮発して部屋の中に充満しますが、そのガスのことです。VOCはシックハウスの原因物質とも言われますから、濃度の基準値が設けられています。
厚生労働省が定めた、住宅におけるVOCの基準値は、東京都福祉保健局「厚生労働省による化学物質の室内濃度指針値」をご参照ください。
この記事では、銅ドープ酸化チタンによってVOCを分解除去した試験結果と、銅ドープ酸化チタンの魅力を解説いたします。
銅ドープ酸化チタンによるVOCの分解
VOCにはたくさんの種類があります。その種類の中で、光触媒で分解しやすいVOCと、分解できないVOCがあります。
光触媒にもいろいろな種類があります。数ある光触媒の中でもっとも利用されているものは、酸化チタンです。他にも酸化タングステンがあります。
酸化チタンで分解除去しやすい代表的なVOCの種類は、次の通りです。
- ホルムアルデヒド
- アセトアルデヒド
反対に酸化チタンでは分解除去できない主なVOCの種類は、次の通りです。
- トルエン
- キシレン
- スチレン
一般的な光触媒ではベンゼン環VOCが分解できない
分解の可否を分けるものは、「ベンゼン環を持つVOCかどうか?」です。ベンゼン環は、炭素が強く結合しているので、分解除去が難しいです。
ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドはベンゼン環を持たない物質です。そういったものは酸化チタンで容易に分解ができます。それに対して、トルエンやキシレン、スチレンはベンゼン環を持つ物質ですから、分解除去ができません。
次の図は、酸化チタンに紫外線を照射することによって、トルエンやキシレン、スチレンが分解さるかどうかを試験した結果です。ブランクは、何も使用していないところに紫外線のみを照射しました。



どのグラフも、ブランクと酸化チタンでの濃度変化はほぼ一致しています。つまり、酸化チタンに紫外線を照射してもトルエンやキシレン、スチレンが分解できないことを意味します。
酸化タングステンなどの他の光触媒では、酸化チタンよりも効果が弱いので、ベンゼン環を分解できません。
銅ドープ酸化チタンならベンゼン環VOCの分解除去が可能
それでは、銅ドープ酸化チタンならどうでしょうか?
次の図は、先ほどの図に銅ドープ酸化チタンでの濃度変化を追加しました。



銅ドープ酸化チタンの場合には、それぞれの濃度がグングンと下がっていることがわかります。このように、銅ドープ酸化チタンはベンゼン環を分解除去できると言えます。
銅ドープ酸化チタンは、可視光吸収も吸収するので、紫外線でなく可視光でもVOCを分解除去できます。
他のVOCでも試験を順次行っていく予定です。
「このVOCを分解できるか試したい」という方は、銅ドープ酸化チタンを使った液剤のサンプル50mLや、有償になりますが銅ドープ酸化チタンを塗布した試験片(5cm×5cmのガラス片)をご提供しておりますので、貴社にて試験ができます。もちろん弊社でも試験を承っています。
銅ドープ酸化チタンによるVOC除去方法
銅ドープ酸化チタンを使ってVOC除去をする方法は、主に次の4種類ございます。
- 銅ドープ酸化チタン光触媒スプレーを用いる
- 銅ドープ酸化チタンコーティング剤を部屋中に塗装する
- 銅ドープ酸化チタンを使ったVOC分解装置を利用する
- 銅ドープ酸化チタンをコーティング加工した活性炭を利用する
銅ドープ酸化チタン光触媒スプレー
銅ドープ酸化チタン光触媒スプレーとは、銅ドープ酸化チタンを液剤にしたものをスプレーボトルに入れた製品です。

弊社製品であれば、光触媒スプレー「アキュートクリーン」です。
接着成分が入っていませんから、VOC除去効果は一時的になりますが、手軽で安価に利用できることが特長です。
アキュートクリーンは、200mL入っていて、600回ほどスプレーができます。価格は、2,200円(税込)です。
VOCを分解除去したい部屋の中にて、スプレーノズルを天井に向けてスプレーするだけです。
銅ドープ酸化チタンコーティング剤
銅ドープ酸化チタンコーティング剤とは、銅ドープ酸化チタンを液剤にしたものに、接着成分を添加したものです。この液剤を塗布すると、塗布面に銅ドープ酸化チタンが付着するので、光触媒スプレーと比べて効果が持続します。
効果の持続期間は、接着成分の耐久性にもよりますが、フッ素樹脂などの有機バインダーを用いたものであれば1~3年ほど、アモルファス酸化チタンなどの無機バインダーを用いたものは5~10年ほどの耐久性があります。

弊社の製品であれば、屋内用光触媒コーティング剤(BX01-AB1)です。
この製品は、アモルファス酸化チタンを用いているので、耐久性の高さを自負しております。
銅ドープ酸化チタンコーティング剤の塗装は、専用の塗装装置を用い、塗装スキルや専門知識を必要とします。そのため、銅ドープ酸化チタンコーティング剤の利用は専門業者にご依頼いただくことをおすすめします。
施工後は、VOCの分解を促進させるために、カーテンを開けて外の光を室内に取り入れたり、部屋の照明を明るくしたりしてください。
銅ドープ酸化チタンを使ったVOC分解装置
銅ドープ酸化チタンを使ったVOC分解装置とは、銅ドープ酸化チタンをコーティング加工したフィルターと紫外線ランプを内部に設置し、送風することでVOCが分解除去されたできる装置です。
銅ドープ酸化チタンは、紫外線を当てるとVOCを分解除去する効果が高まるので、VOCを効率的に除去できます。
プラスチック工場や印刷工場などから、「排気ガスからVOCを除去したい」とお考えの工場でご利用いただくことが多いです。
銅ドープ酸化チタンを使ったVOC分解装置をご要望の方は、弊社までご相談ください。
銅ドープ酸化チタンをコーティング加工した活性炭
一般的な活性炭でもVOCを除去できますが、活性炭が吸着できるVOCの量には限界があります。VOCを吸着し切ってしまったら、それ以上吸着してくれなくなります。
ホルムアルデヒドであれば、少しずつ自然分解されていきますから、ホルムアルデヒドを少しずつですが吸着し続けてくれると思います。ベンゼン環は自然分解されないので、吸着し切ったら、活性炭を再処理して、また吸着できるようにすることが一般的です。
このように、一般的な活性炭は吸着が悪くなることや、交換の手間やコストがかかります。
では、活性炭を銅ドープ酸化チタンでコーティング塗装したらどうでしょうか?
活性炭が吸着したVOCを銅ドープ酸化チタンが分解し続けてくれるので、半永久的にVOCを吸着できる活性炭になります。
活性炭メーカーからすると、禁断の活性炭です。
ただし、活性炭に可視光や紫外光を当てる必要があるので、VOC分解装置に組み込んで使用することが一般的だと思います。内部にランプを使用しない装置の場合は、「吸着効果が落ちたら天日干しをして分解する」という方法もあります。
以上、いろいろな種類のVOCを分解除去できる銅ドープ酸化チタンの効果や利用方法をご説明いたしました。
銅ドープ酸化チタンなら、一般的な光触媒では分解ができないベンゼン環を持つVOCをも分解ができます。
VOC除去をお考えの方は、弊社までお気軽にご相談ください。
一般のご家庭の方であれば、銅ドープ酸化チタンコーティング施工をおすすめします。屋内施工に対応した施工代理店一覧は、こちらのページです。弊社にご相談いただきましたら、お近くの施工代理店からご連絡を差し上げるようにお手配いたします。
佐賀県や福岡県、長崎県にお住まいご家庭であれば、弊社でも施工をいたしております。詳細は、抗菌・消臭コーティング施工(佐賀県・福岡県・長崎県)をご覧ください。
排気ガスからVOCを分解除去したい方は、装置の開発をいたします。「近隣にご迷惑をかけたくない」という工場のお客様からよくご相談いただいています。「銅ドープ酸化チタンを使ったVOC分解装置を開発したい」とお考えの企業様にも対応いたします。
この記事の著者/責任者

株式会社イリス 代表取締役
島田 幸一 (Shimada Koichi)
私はもともと、地元農業のソリューション提供を事業としていたが、野菜や果物の劣化を促進させるエチレンガスの分解を研究したことで、光触媒の可能性を感じ起業いたしました。運よく可視光でも効果のある酸化チタン光触媒を世界で初めて開発して脚光を浴び、さまざまな業種のお客様から注文をいただける企業にまで成長できました。現在弊社は、可視光応答型光触媒を使ったコーティング剤を始め、外壁やガラス、石材、自動車の車内にクリア塗装ができる光触媒コーティング剤や、酸化チタンから下地を守るプライマーの開発。その後も、さまざまな材質に光触媒を定着するための研究を続け、多くの企業で採用されています。